#6スキルのネットを使ってみた
陽が大分傾いて来た……
ここから日が暮れるのも早いかも知れない
建物の明かりがない世界ってどんなだろう?
子供の頃キャンプで行ったコテージを思い出す……
満天の星が綺麗だった……
街の明かりがない空気の澄んだ場所だとこんなに星が見えるんだって感動したっけ……
この世界の夜空には星が瞬いているのかな?
月明かりでもあれば少しは明るいかもしれない?
……う〜っ!!
なんて悠長な事を考えてる場合じゃないよ〜
夜に備えて準備しないとまずいかもっ!
ここで野宿よね……
寒くはないけどここに直に寝るのはやっぱりヤダ
魔法で家とか出せないのかな?
………………………………………
……何も起こらない……
何でもありの世界じゃないの?
何か泣きたくなって来た……
う〜どうしよう?!と頭を抱える……
「グゥ〜」あっ、お腹が鳴った……
そう言えばお腹空いたな
今頃気付いたけど、飲まず食わずでここまで歩いて来たんだっけ
お腹も空くわね……
異世界でもやっぱり飲食は必要なんだ……
食べもの……
さっきのお肉?
……いやいや、あれって生だし!
調理道具とかないしっ!
……ぐっ……
私の弱点を思い出す……
……ですよね
たとえ道具があっても私にはお料理なんて……
ふっ……詰んだわ〜
おしまいだぁ〜
私はここで餓死するんだ〜
……………………………
「あ〜〜! デリバリー〜〜〜!!
何でも良いから誰か配達して〜」
そう叫んではたと思い当たる……
「スキル! ネット! ケータイ! 」
「ケータイ! 持ってるじゃないっ!
これってそういう事?」
急いで携帯電話の電源を入れる……
やっぱり使える?
充電状態を表す『電池』のマークが何か『魔法陣』っぽくなってるのは気になるけど……
とりあえず『お弁当屋さん』のアプリをタップしてみた
おぉ〜出た出た〜
普通に使えそうじゃん
「よし、チキン南蛮弁当にしよう!!」
メニューから『チキン南蛮弁当』をチョイス
数量を入力して……カートへ入れて『次へ』のボタンをタップ『注文する』をタップ
…………ドキドキ…………
見覚えのあるレジ袋が目の前に出現した!
中を確認すると『チキン南蛮弁当』がお箸と共に入ってる〜
「やった〜注文出来た〜!
ネットスキル凄いっ!」
小躍りしながら……
……あれっ?
支払いは? どうなったの?
まさかリアルな世界で決済したの?
血の気が引く……
青くなる……ってこういう事?
私、多分死んでるんだよね?
死んだ後の請求行ったらまずくない?
「シェ、シェリー!」
「……はい」
「分かる? これの支払いってどうなってるのか? 」
「……そちらの『チキン南蛮弁当』が出現する直前にサクラ様の所持金に変動がございました。
支払いがされたのではないでしょうか? 」
「……!?……そっか……そういう仕組み?
……デビットカードで支払い的な?
アイテム欄にある所持金が紐付けされてるって感じ?」
……ってか所持金……あるんだ……
良かった……
所持金ゼロだったら買えなかったのね……
危な〜……
「ねぇシェリー、所持金ってどれだけ減ったの?
分かる? 」
「……はい、銅貨が2枚減りました」
銅貨……って日本円にしていくらなのか……
えっと……ケータイを操作してチキン南蛮の値段を確認する……
えっ?!200円?! いやいや500円位でしょう?
えっ? 何? 異世界で買うと安くなるの?
もしかして物価……の違いが反映されてるとか?
……いや、もういいや、考えても分からないし、考えてもしょうがない事……だよね?
そう! チキン南蛮弁当は200円で銅貨2枚って事実が分かったんだからそれで良い
無理やりこの件に関しての思考をストップさせる
って事は日本円の感覚で銅貨1枚は100円って事になるのかな?
まぁ、日本円に換算したって対して意味は無いのかもしれないけれど……
で、私の所持金は……
「ぐぅ〜」私のお腹の虫が食事を催促した……
うん、そうだね。
今は食事だ、まずはご飯を食べよう
バッグからハンカチを出し地面に広げる
ちょっと小さいけど仕方ない
その上に座ってウェットティッシュで手を拭いて……
「いただきます!」
私は相当お腹が空いてたみたいでガツガツとお弁当を平らげた
「ふ〜。とりあえず満足。お茶が欲しいな……」
さっきのチキン南蛮弁当出現に味をしめた私は今度は『ネットスーパー』を開いた
家の近くにお店があるから使う機会はなかったけど、とりあえず登録はしてたのよね〜
『飲料』のページから手頃なお茶を購入する
40円だった……
……4割程度の値段で買えるって事なのかな?
ペットボトルの蓋を開けながら
「シェリー、今度は所持金いくら減ったか教えて貰って良い? 」
自分で確認せずにシェリーに聞くって……
横着者だね……
ごめんね、シェリー……心の中で謝る
「…はい、鉄貨が4枚減りました」
ふむふむ。って事は鉄貨は1枚10円相当って事ね
『銅貨』に『鉄貨』と来たら……
残りは『銀貨』と『金貨』?
ゴールドとかベリーとかゼニーではないのね……
お茶を飲みながらはたと気付く……
1人でバクバク食べちゃったよ〜
シェリーって食事とかするのかな?
「シェリー? ごめんなさい!!
私ひとりで食事しちゃって……
勝手なイメージでシェリーは食事は摂らないって決めつけてたけど……
シェリーのエネルギー源は何?
私と同じ物食べれたりするのかな?」
「……いえ、サクラ様の仰る食事は必要と致しません」
………少し間があった
「ワタクシのエネルギー源はサクラ様ご自身でございます」
「私?」
一瞬『生気』を吸い取られる想像をしてしまった
ごめんっ! んな訳ないよね、ははっ
「言葉が足りず申し訳ございません」
「大丈夫、大丈夫、勝手に妄想してるのは私なんだから」
「サクラ様ご自身と言うのはサクラ様の……どう申し上げれば良いのか……」
シェリーでも説明に困る事があるのね
「魔力とか? 」
「いえ、魔力ではございません
サクラ様の存在そのものがワタクシが存在するエネルギーでございます」
分かった様な分からない様な……
そう言えば『心をエネルギーとして生きる霊界獣』って子が出てくる漫画があった様な……
それに似た感じなのかな?
「私が居るだけでシェリーのエネルギー源は確保されてるって事?」
「……はい」
「ん〜っと、もしかして私が魔物と戦って傷付いたり、精神的に落ち込んだりしたらシェリーもその影響を受けて具合が悪くなったりするの? 」
「……いえ……そのような事はありません
ワタクシはサクラ様と共に在りますが、シンクロしている状態ではありませんので」
「そっか、分かった、ありがとう」
……良かった……
私の体調とか感情起伏でシェリーを巻き込まなくて……
――つづく――