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# 45 転移魔法の成果と天ちゃんの能力

家に向かって歩いていると前方からダイアナ・アレク・アレスが走って来る姿が見えた

「サクラ様〜」ダイアナの声に手を振って応える

「サクラ様……一体……今までどちらに……」膝に手を付き息を切らしながら喋るダイアナ

「あっ、ごめん……もしかして探してくれてたの? ペターソンさんに新しいお社を案内してもらってた」

「……神官様と……分かりました……」

ダイアナの息が整って来た所でアレクとアレスも到着した

2人共はぁはぁと息を切らしている

「ごめんね……なんか……あちこち探してくれてたのかな?」

「いえ……大丈夫です……村の中だから……安全だって……なのにダイアナが……探すって言って……」

アレクが途切れ途切れに説明してくれる

「そっか、ごめんね、心配させちゃって。

ありがとうダイアナ、アレク、アレス」

「サクラ様、こちらを皆様へ」シェリーが水の入ったコップを出してくれる

「ありがとう、シェリー。さっ、みんなお水よ、飲んで」

3人は水を一気に飲み干し、やっと一息ついた感じになった


「これから『転移魔法』の成果を確認するんだけど一緒に来る?」そう尋ねるとアレクとアレスは「はい」と元気良く返事をしてくれる

「転移魔法?」ダイアナは不思議そうな顔をしていたが「もちろん私もご一緒させて下さい」と意気込んだ


懐かしの我が家に辿り着いた

何だかここでの生活も板に付いてきたなぁ〜なんてちょっと思う


転移魔法の実験ももちろんだが、今回は天ちゃん特製の入れ物の効果検証も兼ねている

旅先から送った物と同じ様に、天ちゃん特製の箱にパンを入れた箱と、天ちゃん特製の瓶に入れた飲み物が入った天ちゃん特製の箱を用意しておいた

そして、そのまま普通のお皿に盛ったパンと普通のコップに入れた牛乳やジュースも一緒にテーブルの上に置いておいた


部屋に入ると……なんか臭う?

「変な臭いしませんか?」ダイアナが鼻をクンクンさせながら言う

「あ〜もしかして腐ったかも……」

「腐った? 何か食べ物を出したまま出掛けられたのですか?」ダイアナに問われて

「うん、実験しようと思ってね……」


テーブルの上のパンはカビていた……

そして悪臭の元は飲み物、特に牛乳が酷かった

……そっか……牛乳は傷みやすいものね……


ちょっとドキドキしながら天ちゃん特製の箱を開けてみる

パンはカビてなかったし、飲み物も見た目は普通だった

異臭もない……と言っても部屋全体に臭いがこもっているので本当にこれらから異臭がしていないと言い切れるのか自信がなかった


「とりあえず窓を開けて換気しよう!」みんなで窓を開けて空気の入れ替えをした

窓を開けている途中で神官殿が箱を抱えて到着した

「どうしたのですか? この臭いは……」

いつも穏やかなお顔が少しだけ嫌そうに歪んでいる

うん……やっぱり神官殿はイケメンだわ……そんなお顔もカッコ良く見える……

「すみません……検証用の食品が傷んでしまって……

考えが足りなかったです……」我ながら自分のお馬鹿加減に呆れるわぁ……


「なるほど……転移魔法で送った物と同様の物を部屋に置いて行かれたのですね?」

テーブルの上のカビたパンを見て神官殿はすぐに察してくれたようだ

「はい。転移魔法の影響がないかどうかと、天ちゃんの作ってくれる入れ物の効果の時間とかも調べたくて……」


「そうでしたか。見せて頂いても?」

「はい。もちろんです。ちょっと臭いがキツいですが……」

恐縮しながらテーブルへ進む


「そのまま置いてあった物は全て傷んでますね……」

そう言いながらパンを観察して飲み物の入った瓶を手に取る

「こちらもどれも傷んでいるようですね……」

一瞬少し残念そうな表情を浮かべ視線を天ちゃん特製の箱に移した

「こちらの箱にも同じ物が入っているのですか?」

神官殿が私に視線を移して尋ねる

「はい。天ちゃんが作る器や容器は時間経過が緩やかになる様なのです。なのでどれ位の差があるかの確認と……

転移魔法で送った食品が魔法の影響を受けて変化が起きたりしていないか比べて見ようかと思いまして……」

「なるほど……」神官殿はなんだか考え込んでしまった?


「やっぱ天ちゃんの箱はすげーな。こっちのはドロドロなのに箱に入ってる方はなんともなってないし」アレクが自慢げ? に言う

「そうですね……ここまで差があると本当に凄いとしか言いようがないです」アレスも感心したように言う


「あーそうだっ! これは……いけるかも?」

そう言って天ちゃんを見て「天ちゃん、ちょっと手伝ってくれるかな?」そう声を掛ける

《うん、なぁにサクラ様》天ちゃんがスリスリしてくれる

「うん。天ちゃんの新しい能力(ちから)『浄化』が試せるかも。このパンや飲み物の『菌』……悪い部分……食べちゃいけない物を天ちゃんの浄化で無くせないかな?」

《あっ、出来るかも! やってみるね》

天ちゃんがそう言うとパンと飲み物が白いモヤの様な物に包まれる

《出来たよ〜食べられない物はもうないよ》

「ありがとう天ちゃん! 凄いね」

そう言って天ちゃんを撫でる。

天ちゃんも満足そうに《ボク凄い?》と寄り添って来た


モヤがなくなり出てきたパンと飲み物の入った瓶を見ると……

「ちっちゃ!」パンは元の大きさの半分以下の欠片になっているものが数個残っていた。

消えた物は食べられる部分は残ってなかったって事かな?

「飲み物も中身が減ったね」

そう言いながらそっと『鑑定』してみる

『オレンジジュースだったもの。飲料は可能。身体に害はなないが美味しくはない』

どれも飲んでも問題はなさそうだけど美味しくないって鑑定だった

って事は既に元の味はしないって事なのかな?

『〇〇だったもの』って……今は違うって事?

なんか怖いけどどんな味がするのか飲んでみたい……


みんなでしばらく浄化されたパンや飲み物を確認した

あんなに異臭を放っていたのに浄化後の飲み物から臭いはしなかった

パンのカビももちろん全てなくなっている

「凄いですね……天ちゃんの『浄化』って」ダイアナが目を丸くしてパンと天ちゃんを交互に見ている

「でしょう? ノーム様が天ちゃんに授けて下さった能力なの」

《授けたとは言っても元々持っておった能力(ちから)を少しだけ増長させただけじゃがのぉ〜》

「ノーム様! び、びっくりした〜」

このお方は突然現れるお方だわ……

《おぉ……すまなんだのぉ。何やら面白そうな事をしておる様じゃったから見ておった。儂の事は気にせんと続けるが良いぞぉ》

ノーム様の気配が無くなる……神出鬼没……


「天ちゃん、お部屋に残ってるイヤな臭いも消したり出来る?」

《うん、できるよ。ちょっと待ってね》

一瞬視界が白くなって元に戻ると部屋から異臭が消えていた……超強力な空気清浄機……そんな感じ?

「ありがとう天ちゃん」私は天ちゃんを撫でて抱きしめた


次は『転移魔法』で送ったパンと飲み物の確認だ

部屋に置いてあった物と比べて見る

「どちらも同じに見えますね……

手に取って見ても宜しいですか?」

そう言って神官殿が私を見る

「はい、もちろんです。じゃあパンから……」

パンを取り出して手触りや重さを確認してみる

どちらも同じに感じられる

飲み物も量も同じで異臭がする事もない


鑑定をしてみると『少し古くなった〇〇パン賞味期限が近い』とどれも同じ鑑定結果が出た

飲み物に関しても同じ様な鑑定結果だったが『牛乳』だけは賞味期限切れだった

その他は古くはなっているけどまだ飲食可能な様だ

このまま放置すると近いうちに全て『賞味期限切れ』になりそうな感じがした

どちらも同じ鑑定内容だと言う事は『転移魔法』によって成分や内容量が変化したり事はないと言う事……

『転移魔法』の実験は成功したって思って良いかな?


「どちらも問題ないみたいですね。

このままもうしばらく様子を見たいと思います」

そう言ってみんなの顔を見た

「はい」みんな頷いてくれた

「…………」神官殿は少し考え込んでいる様に見えたけど……後で少しお話した方が良いかな? そんな風に考えた


「よし、検証は終了! 転移魔法も成功だった様だし、天ちゃん特製の入れ物の優秀さも確認出来て良かった。みんなも付き合ってくれてありがとね」

「はい。びっくりしましたけど凄い物を見れて良かったです」ダイアナが満足気に言う

「だけどあの臭いは酷かったな〜」アレクが思い出した様に顔を顰める

「サクラ様の転移魔法もですけど、天ちゃんの能力も……本当に凄いですね……」そう言いながらアレスが天ちゃんに頭ポンポンをしていた

天ちゃんも嬉しそうに見える


「じぁあ私はこれから精霊様の森へ行くから……みんな、また後でね」

「分かりました……」ちょっと不服そうな顔をするダイアナに苦笑しながら「大丈夫よ。みんなもやる事あるでしょう? 私は少し休ませて貰うから」そう言ってみんなと別れた


何か言いかけて淀んだ神官殿には別れ際「後できちんと説明しますので……」とそっと耳打ちした



――つづく――



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