#37 城下町 その2
「それにしても……2人共なんか静かじゃない?
疲れた? 休憩する?」2人に尋ねる
商店街の様な通りを歩いていた時は2人共私と同様、色んな物に興味津々だった
でも、こっちの通りに入ってからは静かに付いて歩いてる感じだった
「いえ、疲れてなどは……ただちょっと……
ここは何だか落ち着かなくて……すみません」とアレスが頭を下げる
続いてアレクも「何だか高そうな物ばかりで壊したらどうしようって心配になってしまいました」とモジモジしている
「そっか、気持ちは分からなくもないよ、うん。
でもね、色んな物に興味を持って近くで見て、触っても良い物には触れてみて……そうする事で世界がもっと広がるよ? 怖がる事なんてないから!」
2人の顔が少し明るくなる
「ごめんね、私だけはしゃいじゃって。
2人の不安な気持ちに気付かなくて」反省……
「いえ、そんな事は……俺たちが勝手に気後れしてただけです」
アレスがそう言うとアレクもウンウンと頷く
「分かった、じゃあ次の雑貨屋さんでは色々と意見を聞かせてね」
そう言って雑貨屋さんに向かおうとした所……
「サクラ様、休憩も兼ねてお食事をされては如何でしょうか?」ダイアナから提案を受ける
そう言えばもうお昼過ぎた頃かな?
ダイアナ……やっぱり気が利くなぁ〜
「そうだね、ありがとう。
ずっと歩き回って少し疲れたかも」私の返事に
「あちらにお食事の出来るお店がございます」とダイアナが方向を示してくれる
「ありがとう、ダイアナ。リクエスト……じゃなくて、ひとつお願いしても良いかな?」
「はい、なんなりとお申し付け下さい」
背筋を伸ばして張り切った感が出ていて何だか可愛いダイアナだ
「あのね、こっちの通りじゃなくて、町の人達が普段行くお店に行ってみたいの、庶民的なお店? ダイアナは行った事ある?」
そう尋ねるとダイアナはパァーっと顔を明るく輝かせ
「もちろんでございます。お任せ下さい」と胸を叩いた
少し戻ってまた新しい通りに入る
こちらの通りも最初に行った商店街の様に色々な系統のお店が並んでいた
先程の高級感漂うお店の通りより人通りも多く賑わっている
「飲食店以外にも沢山のお店がございます」ダイアナが説明してくれる
「まずは私の良く行くお店にご案内致します。
美味しいのはもちろんですがお値段も満足のお店です」そう言って微笑む
「わぁ〜美味しくてリーズナブルなんてサイコーね、楽しみだわ〜」
ダイアナがお勧めしてくれたお店はとても賑わっていた
活気のある店内でテーブル席も間もなく満席になりそうな感じだ
ちょうど隅っこのテーブルの片付けが終わった所だったのでその席にみんなで座る
「ダイアナのお勧めは何?」
「そうですね〜どれも美味しいのですが……
お腹が空いてる時に良く食べるのが『オーク肉の塩焼き』です。食べ応えがあります。
それと、『ロックバートの漬け込み焼き』はお肉に味が染み込んでて美味しいです。
お野菜も沢山食べたい時は『ボア肉と野菜の煮込みスープ』がお勧めです」
……なんか……
さら〜っと魔物の名前を並べてくれたね……
やっぱり食べるんだね……魔物……
異世界の食文化……恐るべし……
村での食事の時は食材については敢えて聞かない様にしてたんだけど、やっぱりあれも……
でもそれがここでは普通の事なんだから深く考えない事にしよう……
どんな食べものだって『命』を頂いてる事には変わりないんだから……
食べられる事に感謝しなきゃね……
「どれも美味しそうだね〜。色々頼んでみんなで少しず食べない?」そう提案してみる
「あっ、それ良いですね」アレクがすぐに乗って来る
「色んな種類が食べれるのは楽しそうですね」アレスも賛成してくれた
「ありがとう、じゃあダイアナお勧めの品とその他にも注文して貰っても良いかな? 」
「はい! 畏まりました」
そして「注文お願いしま〜す」と、店員さんに声を掛ける
程なくテーブルに沢山の料理が並ぶ
どれも美味しそうだ
食事を始める前に……
ちっちゃくなって私のカバンに入っていた天ちゃんを膝の上に乗せる
「ごめんね、天ちゃん。狭い所に入って貰っちゃって」そう言いながら天ちゃんを撫でる
《ううん、ボク平気だよ。サクラさまのカバンの中もユラユラして気持ち良いよ》天ちゃんがそんな風に言ってくれる
「天ちゃ〜ん、なんて良い子なの〜」思わず天ちゃんを抱きしめる
「天ちゃんも一緒にご飯食べようね、でも今日は私のお膝の上で小さいままで居てね」と天ちゃんを撫でる
《うん、分かった》
ダイアナのお勧めのお店だけあって、料理はどれも絶品だった
「美味しい〜」ひとつ食べる毎に自然と声が出る
みんなでシェアしての食事は、居酒屋でのお食事会を思い出して何だか楽しくなった
アレクやアレスもガッツリ食べるけど、ダイアナもなかなか……細い身体の何処に入るの? って感じで良く食べた
美味しそうに食べる3人につられて私もいつもより沢山食べた気がする
少し離れた席で私達を見守りながら食事をしている護衛の方々もこっちで一緒に食べれば良いのに……
そんな事を思いダイアナに「護衛の人って一緒に食事しちゃダメなのかな?」と聞いてみた
ダイアナは目を丸くした後「彼らは仕事中ですから……本来ならば私もあちらの席に居なければなりません」そう言って目を伏せた
「そっか……そうだね……ごめん……考えが足りなかった……でもダイアナは別だよ?」そう言ってダイアナの顔を覗き込む
「だってダイアナは私達を案内してくれるんでしょ? そばにいてくれなきゃいろいろ聞けないし! ねっ?」
そう言うとダイアナはパッと明るい顔をして「ありがとうございます」と微笑んだ
うん、ダイアナにはやっぱり笑顔が似合うね
お腹も膨れたし、休憩も出来たし!
「さぁ! 探索を再開しましょう!」と店を後にした
「あっダイアナ、今度はまた違ったお店も案内してね」と最後に付け加えた
ダイアナは「はいっ!」と元気に返事をしてくれた
みんなで通りを歩く
先程入ったお店の様に店内で食事の出来るお店の他にも、焼き鳥の様に肉や野菜を串に刺した物も売っていた
食べ歩きや小腹を満たすのに良さそうだ
テイクアウトっぽいけど、お店の前にテーブルを並べて食べる形式のお店も多い
何だか時代劇に出てくる『お団子屋さん』? が頭に浮かんだ
飲食店以外にも色んなお店が並んでいる
生活用品はここでお買い物すれば一通り揃うんじゃないかと思えた
入浴に必要な『石鹸・ボディソープ』や『シャンプー・コンディショナー』『洗面器・バスチェア』『タオル・バスタオル』の類がないかと気を付けてはいたけど見つからない
タオル……手ぬぐい系はあったんだけど……
そう言えば『洗剤』も食器用も洗濯用もなかった気が……
探しても見つけられないのでダイアナに聞いてみる
「ねぇダイアナ? 石鹸とかシャンプーと洗剤とか……って売ってないのかな? 」
「はい、石鹸は高級品なのでこちらの通りにはございません。先程の通りの雑貨店にございます。
それから……シャンプーとセンザイとはどの様なものでしょう?」
ダイアナが困惑した表情で小首を傾げる
……うっ……なんか可愛い……
「えっとね、シャンプーは髪の毛を洗う為の物で、洗剤は食器を洗う物や汚れた衣服を洗う物なんだけど……ないのかな?」
一瞬ダイアナに見蕩れてしまったが気を取り直して聞いてみる
「石鹸を使われる方々は髪も石鹸で洗います。普通の人は洗浄用の植物を利用します。そちらは『薬草』等を取り揃えているお店で購入する事も可能です」
「へぇ〜洗浄用の植物なんてあるんだね。凄いな〜」
確かに環境には優しそうだ
「洗浄用の植物でしたら、自分達で採取も出来ます。薬草を採り行ったついでに採取したりします」
アレスが追加で説明してくれる
「なるほど〜、薬草にも色々種類があるのね? 今度教えて欲しいな」アレスに言ってみる
「はい、いつでもご案内致します」元気に了承してくれた
どんな薬草からどんな薬が出来るのか何だか化学の実験みたいでワクワクする
薬草はまたの機会に……って事で、気持ちを元に戻す
先程の通りに戻り雑貨屋さんを目指す
雑貨屋さんなだけあって、色々な品物が並んでいる
綺麗なティーカップや絵皿の様なお皿……
小物入れの様な箱にも様々な大きさの物がある
良質な物なんでしょうが……
どれもお高いっ! ほとんどの品物が金貨1枚以上安い物でも銀貨5枚!?
日本円に換算すると5千円から数万円……
庶民には手が出せないんじゃないでしょうか……
雑貨とは呼べないラインナップです……
そしてお目当ての『石鹸』……
こちらもたっかっ! 銀貨2枚?!
えっ? 石鹸1個2千円ですか?!
ダイアナ曰く、これでも安い方だとか……
香りの良い物は銀貨3枚はするのだとか……
確かにこの値段じゃお金持ちじゃないと買えませんね……
もしかしてお風呂を設置するのもお金が掛かるのかな? と思いダイアナに小声で聞いてみる
何故に小声かと言うと、店員さんの視線が痛かったから……
私には高級品過ぎて購買意欲が湧きません……
でも……目的の『石鹸』は購入致します!
はい、『清水の舞台から飛び降りる』決意です
他の物も、本当に素敵で良いお品だとは思うのですが、私には手が出せません……
石鹸ひとつお買い上げでお店を後にしました
……なんか無駄遣いした感が拭いきれません……
自宅にお風呂を設置するのはやはり高額になるそうだ
お風呂……浴槽自体のお値段も張るが排水に関しての設備も必要になるのだそうだ
そっか……大きな町だからと言って上下水道が完備されてる訳じゃないのね……
工事も必要だし、浄化用の魔道具等も必要なのだそうだ
お風呂だと大量の水を使うし、やっぱり石鹸は環境に良くないって事なのかな?
う〜ん、銭湯を作るって思った以上に大変なのかも……
あれこれ思考を巡らしながら王宮へ戻った
――つづく―




