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#2 女神の謁見

『この世の者とは思えない、美しくて愛らしい……形容する言葉すらこの世に存在しないレベルの美女』にしばし見蕩れて惚ける……


「聴きたいことは沢山ありそうね?」

女神様が顎に人差し指をつけて小首を傾げて言う……


絶世の美女のこの仕草はヤバいでしょう……

卒倒しそうになる精神に鞭打つように気合いを入れる私……このまま正気を保っていられるのだろうか


「まずは、ここは何処か?」

その言葉を受けてすがるように女神様を見る


「貴女が考えた場所に近い場所って回答で良いかしら?」


私はこくんと頷く


此処が何処なのか……やっぱり明確な回答はして頂けない……って解釈で良いのかな……

何だかこれ以上深追いはするなと言うニュアンスが含まれる声と言い方だった


「次へのステップを踏む場所って方がイメージしやすいかしら」と女神様が悪戯っぽく軽くウインク……


だぁ〜〜!だからそんな事されたら私の神経持ちませんから〜〜キュン死にする〜


「あっ、ただこの場所のこの景色は貴女の中のイメージを具現化したものだから……

貴女だけの世界ね」

そう言って遠くを見る目をする女神様……


私の世界?……ってどういう事?

ここに来た時は『綺麗な所』だって思った……

でも……ここは何だかとても寂しい場所……

綺麗だけど……何も無い……

時間が止まってしまった様な静寂の場所……


『天国』をイメージしてって言われたら多分、そよ風が吹いて天使が居たり小鳥が囀りながら飛んで居たりするのだろうけど……

ここは何処なのかな?

天国……その一歩手前の場所……


これが私のイメージ?

なんに対してのイメージなのかピンと来ないんだけど……

さっき『次へのステップを踏む場所』って聞いた様な……

何だか余計に分からなくなって来た


「詳しくは話せないのよ……」

女神様が少しバツの悪そうな顔をする……


「っ!大丈夫です!

深く考えたってきっと私には分からないでしょうからっ!!き……いや、お気になさらないで下さい」


何だかこの御方を困らせたりしたらいけないって気持ちが心を占めて咄嗟に口から出た言葉だった


「あらそう?良かったわ」

パッと輝くその瞳……


絶世の美女のその表情の変化……


……それ……もしかしてわざとですか?

分かってやってませんか?

……楽しんでません?

私が悶絶する姿を……

そんな思いがよぎりながらも

身体は硬直してしまう……

美し過ぎると言うことは罪なのかもしれない……

身を持って体験している気がした


「落ち着いたかしら?

やっと本題に入れそうね」

にこやかに話を進める女神様


「はい……す、すみません……

何か……ごちゃごちゃ考えちゃって……」


しょぼんとする私に

「ううん。良いのよ。

貴女のそんな所を気に入っ……

貴女に期待して呼んだのだから」


今『気に入って』って言いそうになって言い直しましたよね?

なんですかっ?それはっ?


……まぁ、気に入って頂けたのならそれはそれで嬉しいんで良いんですけど……

どう言う意味ですか?

何だか釈然とはしないけど……


「貴女には別の世界へ転移してもらいます」

……出たっ!『異世界転移』

『転生』じゃなくて『転移』なのね?


……じゃあ、もしかして私実は死んでなかったりして?

希望的見解を描いて見るけど、そんな甘くはないよね?


「そうね。

転生ではなくて転移なのはゼロから始める意味があまりないから……

それと……」


「それと?」

何故か言い淀んでる女神様に不思議な気持ちで視線を送る


()()()行って欲しいからよ」

そう言ってにっこり微笑む……


なんか誤魔化された気がしないでもないけど、この微笑みを観られただけで十分……

ちょっと呆けた顔になったほっぺたを両手で軽く挟んで気合いを入れる(戻って来〜い私〜)


『異世界転移』……

これまでいくつか『異世界物語』を読んで来たのでなんとなく想像は付く……

私の立ち位置は何処なんだろう?……


「まさかっ!!……勇者とかですか?

わっ、私には務まらないと思うのですが……」


……はっ!

「すみませんっ!

恐れ多い事を言いました」

ガバッとひれ伏す……


いかんいかん、何か普通に美女と話してる気になってた。相手は『聖・女神様』だぞぉ〜

私なんて簡単に消し去れる御方でしょうが〜〜


「んッ?どうしたのかな〜?

急にそんな体勢取ったりして?」

と一見和やかな微笑みを浮かべている女神様……


何か言った方が良いのかな?

テンパリながら思考を巡らす……


「貴女にはとある世界に転移してもらうけど、勇者としてではなくてよ?」


……良かった……

魔王と戦うなんて事、私には無理ですから……


「簡単に貴女の解りやすい言葉で説明すると、貴女の行く世界は『剣と魔法のファンタジー世界』

基本何でもありな世界よ

もちろん魔物もいるし魔王?も居るかもね?」

ここでまた軽くウインク……


「貴女の使命は世界を旅して、そこに住まうもの達を倖せににする事」

「倖せににする?」思わず聞き返した

「そう。貴女の国の言葉で言うと『一日一善』?

良い行いの積み重ねの先に『倖せ』があるの。

小さな波紋が大きな波を生むように……

貴女にならそれが出来ると私は信じているわ」


「一日一善……」

誰かを倖せするなんて難し過ぎる……

でも……小さな事の積み重ねなら出来ることもあるかもしれない

旅の途中で出会った誰かの手助けをして……

また別の誰かのお手伝いをする……

そんな些細な事の積み重ねで良いって事かな?

それが『倖せ』に繋がるのかどうかは想像出来ないけど……


だけど……

善意を押し付けて

『小さな親切大きなお世話』に……

なんて事になるとミッション失敗?

うっ……やっぱりなんか難しいかも〜


でもでも!

これから行く世界がどんな所か分からないけど……

行くしかないんだから……

んっ?行くしかない??

……これって断れるのかな?

そんな考えがフト頭に浮かぶ……

断る選択……



「じゃあ!頑張ってね

期待してるから!」


えっ?ちょっと待って!

いきなりですかぁ〜〜

まだお聞きしたい事とかっ!

心の準備とかあるじゃないですか〜


そして意識が遠のいて行った……




---―転移完了後の女神様―---


「よろしいのですか?」

女神の側近が姿を現し尋ねる


「んっ?何が」


「とぼけないで下さい

あの者に与えた力ですよ

大き過ぎるのではありませんか?」


「ん〜……良いんじゃない?」


「っ!もし暴走したらあの世界は滅びますよ?」


「そうね。『暴走したら』ねっ」


「……もしあの者がっ」

「大丈夫よ」

側近の言葉を途中で遮り女神がピシャリと言う


「申し訳ございません……」


「良いのよ。私を心配してくれているのでしょ?

もし……暴走しようとしたら私が止めるから」


「ですがっ……」


「分かってるわ。

それをしたらどうなるのか……

あの世界は消滅するし、私も……降格かしら?」

にっこり微笑んではいるが目は真剣だ


「大丈夫よ……

この場所を観て?

あの子はここを『寂しい』って言ってたけど……

ここはこんなに明るくて穏やかで暖かい……」


もう一度辺りを見渡し大きく息を吸い込んで……

「こんな世界が作れる子なのよ?

大丈夫……見守りましょう?」


「あの者がここでの謁見を覚えているのなら……」

悔しそうに歯噛みする側近……


「それは仕方ないわ……」

フッとため息が漏れる


「ここでの会話の何があの子の心に響いたかであの世界の運命が決まる」


本当はもう少し話をしたかったのだけど……

ついあの子があれこれ妄想……想像するのを待ってしまったわ

ふふっ……あの子の繰り広げる思考の渦が楽しくって……


ダメね……

もっとアドバイスしておきたかったのに……




私たちが決めた転移(転生)者の行く末は多種多様だ

こちらの思惑通りに行動する者の方が少ないのが現状

転移(転生)する前に『使命』を伝えるが、その時の記憶は転移(転生)する瞬間に全て消える

私たちは『使命を授けた記憶』を心の奥底に沈める事しか出来ない


今回あの子を転移した理由……

あの世界にあの子を送る事で何らかの化学反応が起きて世界が動く……と良いかな?


何かが起こる予感がしたの

あの子なら……って


私の選んだあの子は……

フッ……思わず笑みが零れる……

私はあの子の妄想……

いや想像力や発想の柔軟性に無限の可能性を感じたのよ

あの子は自分は小心者だと思っているようだけど、

どうしてなかなか!

肝が座ってると思うのよね


これからのあの子の行動をチェックするのが楽しみだわ、ふふっ



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