表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/107

18 再び精霊の森へ

『闇魔法の属性を持つ魔石』

闇魔法の恐ろしさを目の当たりにしている分、この魔石も危険な物に思われてしまう……


でも……私は『闇魔法』が危険な悪の魔法と決めつけるのはどうかと思っている

もちろん、使い方次第では危険な物だと言う事は承知している

そう、使い方次第では……


他の魔法だって殺傷能力だってある訳だからその点はどの魔法だって同じでしょ?


闇魔法は他の魔法とは違うから……

心に影響を与える事が出来るから……

それは分かる……

でも……危険なだけではないと思う

……思いたい……信じたい……って気持ちがある


『闇』……それは怖いものではあるけど『安らぎ』でもあると思うから……

夜になり闇に包まれ……確かに怖いけど、同時に眠りにつく為には必要で、闇は深い眠りに(いざな)ってくれる安らぎだと思うから……


ねぇ、闇魔法の魔石さん?

私の想い……感じ取ってくれてるかな?

私はキミは危険なだけの存在じゃないと思うよ……

キミの力は……表裏一体? 諸刃の剣?

キミの事を『悪』だって決めつけるのは早いよね

だってキミの事、何も知らないんだから

キミはどう思ってるのかな?

勝手にあれこれ言ってる私達に呆れてるのかな?

キミは……

私は魔石に話し掛けながら眠りに落ちていた……


翌朝、目覚めると枕元には昨夜の魔石があった

あ〜……まぁ大丈夫だったから結果オーライ?

一応危険認定されちゃってる魔石を無造作に枕元に置きっぱなしにしたなんてバレたら……

……うっ……こわいっ……

ごめん! 内緒にさせて……


キミはとりあえず私のポケットに入っててね、

と魔石をポケットにしまった


「おはよ〜」と部屋から出ると皆さん早起きで……

ってか私が寝坊したのかな?

天ちゃんも一緒に寝てたし、シェリーにも起こされた訳ではないから寝過ごしたんじゃないと思うけど……


「サクラ様、おはようございます」

アレクとアレスが駆け寄って来た

「おはよう、アレク、アレス」

アレスは黙って頭を下げた

どう折り合いを付けたのかは不明だか吹っ切れた顔をしていた

背中をバシバシ叩いて、「良し! 」と声を掛けた

自分でも何が「良し」なのかは良く分からないけど何となく気持ちは伝わった気がした


「みんな早起きだね、私が遅すぎた?」

「そんな事はありません、みんな気持ち新たにって感じで張り切ってるんですよ」アレクが元気に言う

「そう……」朝からテンション高いな〜


「それから……精霊様が森へお帰りになるそうなのです」アレスが続いた

「えっ? しばらく村に滞在するんじゃなかったの? 」

「はい、その予定だっのですが、もう大丈夫だからと仰られたそうで……昨夜のうちに神官様に伝えられたそうです」

ふ〜ん……昨日の村人エナジーで充電満タンになったって事かな?


「それで……みんなで精霊様の祠まで行く事になったのです」

「みんなで? 精霊様の祠まで? なんで? 」

まんま繰り返して聞き返してしまった……

「はい、精霊様がみなで来て欲しいと仰られたとか……」


あっ……私が破壊した森をみんなに見せる為に……とか?

修復依頼とか……

なんか変な汗出てきた……


どうしよう……今のうちに正直に謝った方が……

《シェリー、どうしよう〜》と、縋り付くようなテレパシーを送ったが

《ワタクシにはどうする事も……お力になれず申し訳ございません》とクールに言われた


さらに《そんな事より、あの魔石はアイテムボックスへ入れなくて良いのですか? 》と聞かれた

そんな事って……私にはかなり重要なんだけど……ぐすん

《魔石はしばらく様子見で持っとく、アイテムボックスに入れると時間停止しちゃうでしょ? 》と返事をした

シェリーも思う事があるのか、何か言おうとしたようだが、言っても無駄? って思われたかな?

ごめん、シェリー……この子の事はとりあえず私に任せて


「サクラ様、おはようございます、食事の用意が出来ております、こちらへ……」と、神官殿に促された

「おはようございます」と村の方々に挨拶しながら神官殿に付いて歩いた


そして、朝食も無事に終わり……

この世界の独特な料理にも少し慣れた

まぁ、薄味とか……色々固めとか……

偏食な私にはちょっと辛い事もあったが、

子供たちにもあれこれ勧められて何だか嬉しかった

「これ食べて〜」「私のも〜」「これも美味しいよ〜」って賑やかな食卓に和んだ


そして、みんなで精霊様の祠へ行く……

ん〜、村を空っぽにしても良いのかな?

と少し心配になったて尋ねてみた


この村は精霊様より護りの結界が張られているのだそうだ

だから魔物も近づけないし、人もほぼ入って来れないとか……

精霊様の力って凄っ!!なんて思いつつ……

「んッ? 私普通に入って来れたよね? 」

と、色々物知りなアレスに尋ねた

「それはサクラ様が精霊様の御使い様だからです」

……なるほど……この村に入って来れただけでも普通ではないって事なのね……了解した


「たまに……本当にたまにですが迷い込んで来る人間もいます

その者達はほとんど『精霊様をお慕いしている』か、『精霊様のお力を感じる事の出来る者』です」


なるほど、信仰心の熱い人や、ここの村人の様な力がある人が招かれるって事なのかな?

この村人って閉塞的な感じがするんだけど、結構若い子とかいるから不思議だな〜って思ってたんだよね

もしかしたらそんな風に村の人口が増えるのかな?

そんな事を考えつつ、アレスに言った

「そっか、そうやって村に仲間が増えるって事ね

これからはもっと増えるんじゃないかな? 」

アレスがびっくりした様に私を見つめた

ん? 私なんか変な事言った?

……やっぱり閉塞的な部分もあるのかな?



精霊の森に入って程なくすると、先日の戦闘痕がそこかしこに残っていた

……もっとキレイに片付けておくべきだった?

なんて思っていると、アレクがどんな魔物がどんな風に出てどうやって倒したのか……身振り手振り嬉々と喋っていた

子供たちに混ざって青年達も興味津々で話を聞いている

なんか和むわ〜みんないい子だ……


そしてアレクが大きな声でアレスを呼ぶ

そうだね、アレスももう1人の立役者だ

「呼ばてるよ、行っといで!!」とアレスの背中を押し、行ってらっしゃいと手をヒラヒラ振った


さて問題の精霊様の祠付近の私が壊滅的なダメージを与えた場所が近づいて来た……

とりあえず現状を見て貰って平謝りしよう……と心に決めた


…………いや、これは酷いね……

すぐに立ち去ったからよくよくは見てなかったけど……

辺り一面、木がなくなり地面は黒く焦げていた……

村人さんたちもみな息をのみ固まってる


「あの……すみません……私が……」

と、おずおず名乗り出ようとしたその時……


「すっげ〜!!どうやったらこんなになんの?!」

と、村の青年が前に進み出た


「だろだろ〜すっげぇだろ!!」とアレクがまた自慢げに話し出す……

「こっんなでっかいタランチュラがさぁ〜」とジャンプしながら大きさを表現していた


「しかも、特大のタランチュラだけでなく、地面を覆い隠す数のタランチュラもいてさ〜」

うん、まぁ確かにそうだったね……

思い出すだけで鳥肌が立って叫びたくなるわ……


「俺もう、流石にこれは終わりだと思ったね……動く事も出来なくて戦意喪失した……」

少し悔しそうな顔してる?

「そしたらサクラ様がさぁ〜」おっ、持ち直した?

「光に包まれて特大の光魔法がさぁ、タランチュラ達を包み込んだんだよ」そう言って、うんうんと頷くアレク

「そしてその後が凄かった!!」

一旦言葉を区切り……

『固唾を飲む』ってこんな感じなのかな? って感じで皆がアレクの話の続きを待っていた

「どう説明したら良いか……

ファイヤーボールのデカいやつがさ、

すっげ〜数ドドド〜っ、ババババ〜っ

ってタランチュラの群れを襲ったんだよ……

あっという間にタランチュラは消し飛んだね、

足1本足りとも残さずに!!」

エッヘンって感じで胸を張るアレク

……この説明と焼け焦げた森を見たらなんとなく想像付くかな?

……いや、確かにやり過ぎましたよ……

反省してます……ちょっと凹んでしょんぼりする……


そんな私の気持ちとは裏腹に、村人からは

「おぉ〜すげぇ〜」とか「流石はサクラ様だ」とか私に手を合わせているご婦人とか……

なんか、賞賛の眼差しを向けられてしまった……


「あの……ごめんなさい……森をこんなにしてしまって」……と恐縮していると

「何を仰っているのですか、サクラ様」

と、神官殿が歩み寄って来た

「サクラ様には感謝しかございません」と神官様が言うと村人達も一斉に「そうだそうだ」「ありがとうございます」と口々言ってくれた

……うん……本当にこの村の人達は良い人ばかりだ……ほろり……


《さて、儂の出番じゃな》と精霊様の声がした

反応したのは私と神官殿だけだったので村人には聞こえてないようだ

精霊様の周りが輝きを増し、緑色に輝く波が地面を伝った……

そしてその波が通過した場所には青々とした草が生い茂った……

あっという間に向こう側まで移動した波の後には綺麗な草原が広がっていた……


「うそっ……凄い……」

その場にいる全員が息をするのも忘れる位、

さっきまで黒焦げだった森が草原に変わった景色に釘付けになっていた


《せっかく開けた場所が出来たのじゃからここはこれで良いな》と、満足そうに精霊様が呟いた


《次はこっちじゃ、付いてくるが良い》

と、精霊様がフワフワと移動する

慌てて私と神官殿が村人達に付いて来る様に伝える

精霊様が向かった先には何やら池の様なものがあった

《先の戦闘で地殻変動があった様じゃな、温泉()が湧いておる》

「『温泉()』??」慌てて池に近づき、そっと指先を池に入れる……

「温かい……温泉なの? 凄いっ!!」

「みんな、温泉よ! 温度も丁度良い!」

あ〜〜温泉〜〜お風呂入りたかったの〜〜

湯船に浸かりたかった〜〜


――つづく――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ