13 精霊の森突入
「シェリー……どういう事かな? 」
「何でございましょう? 」
「私ってさ……『光魔法』も『闇魔法』も使えるんだよね?
でも……さっき光魔法を発動したら凄い頭痛がしたの……
痛いの我慢して発動し続けたら意識が途切れて倒れちゃった……
『光魔法』って使ったらダメなのかな? 」
しばらくの沈黙の後、シェリーが話し出した
「サクラ様……『闇魔法』『光魔法』は特殊な魔法で使える……所持している者はほんの僅かだそうです
……まだ未知の部分も多いとか……
それを踏まえて聞いて頂けますか?」
と、シェリーが言葉を切る
「うん、分かった。聞かせて?」
「サクラ様もお気付きかと思いますが、
魔法にも段階があります
少しずつレベルを上げて、強力な魔法が使える様になるのです」
「うん、分かる……
いきなり強力な魔法の発動は出来ない……
って言うかしちゃいけないって事かな?
私みたいにレベルは低いのに魔力が高いって言うのは特殊なケースだよね……
本来なら発動出来ない様な、レベルに見合ってない魔法が使えてしまう……って事だよね?
でも……シェリー気付いてたんだね? 凄いな〜」
テヘッとおどけてみせる
実は少し思い当たる事があったのだ……
天ちゃんと魔物を倒した時……
カミナリを全体魔法として発動させる為に『サンダー』と『スパーク』を掛け合わせて発動させた
その時……ちょっとふらついたんだよね……
あれがまだレベルに見合ってない魔法を使ったって事なんだろうな……
「光魔法も小さな魔法から少しずつ慣れて習得されるのが安全で確実です
それなのに……今回はいきなり光魔法と相反する闇魔法を祓ったのです
お身体にその反動が来ても不思議はないと思われます
……お命に関わったのかもしれませんよ? 」
「いやいや、それはさすがにオーバーだし、私だって自分の限界位……」
「分かってらっしゃらなかったですよね? 」
シェリーにピシャリと言われた
「ごめん……あと少し! って感じがしてちょっと無理したかも……」
シェリーの深いため息が聞こえた……
気がした……
「……おそらく今回幸いしたのがサクラ様の『スキルレベル』なのではないとと思います」
「スキルレベル? 確かにかなり上がってるよね」
シェリーを仲間にしてスキルレベルは50になったけど、その後天ちゃんを召喚した事で更なるアップがあった
あ〜それから魔物避け?
アコギを鳴らす事でも少しずつレベルアップしてたんだよね〜
なんかスキルレベルは上げ放題? な感じで
「スキルレベルが高かった事で多少の無理も可能になったのではないでしょうか?
ただ……今回の光魔法はサクラ様にダメージを与えました
治癒魔法だけでしたら問題なかったのでしょうが……
闇魔法を祓った事でお身体に影響を与えたのではないかと……
闇魔法はやはり危険です」
……確かに……闇魔法は危険だ……
でもこのまま放って置く訳にも行かない……
「う〜ん、ゲームだったら少し戻ってレベル上げして再チャレンジ!!って出来るけど、そう言う訳にもいかないよね〜」
「サクラ様……やはり精霊の森へ入るおつもりなのですね?
あれほど戦闘を嫌われていたのにどうしてですか?
闇魔法の危険性もお分かりですよね?
危険過ぎます!!おやめ下さい」
シェリーが後半は懇願する様に声を荒らげる
だよね〜
……私も出来る事なら関わりたくない……
このまま逃げ出したい……
でも関わっちゃったしな〜
闇魔法祓ったし、怪我治しちゃったし……
やりすぎた? 目立ち過ぎた?
そんな後悔もチラッとよぎりながらも……
なんか……やらなきゃいけないって気もしてたり……
「ありがとうシェリー
シェリーが心配してくれる気持ちは良くわかるよ?
私もホントは怖い……
逃げ出したいよ……
私には無理……って
でも……この村も森も放って置く訳にはいかないでしょう?
私に出来るかは分かんないし自信もないけど……
やらなきゃいけない気がするんだ……
だから……
手伝って……くれないかな?
天ちゃんも……
2人とも私に力を貸してくれないかな?
私ひとりじゃ絶対無理だけど……
2人がいてくれたら……
きっと……私も頑張れる……
……ダメかな?」
「……お止めしてもサクラ様なら森へ向かうと仰られると思っておりました……
もちろんワタクシもお供させて頂きます」
天ちゃんも私に突進するかの様に私の顔に擦り寄って来た
「わっ、天ちゃん、分かった分かった! ありがとう〜」
「2人がいてくれたら心強いよ!
それでね、ちょっと思いついたんだけど……」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
しばらく休んで体調も戻った
部屋から出ると神官殿初め、村人全員じゃないかって位の人が集まっていた
びっくりした〜
「サクラ様!!お身体の方は大丈夫ですか? 」
神官殿が凄い勢いで詰め寄って来た
いや、近いっ、近いって!!
「それでサクラ様……精霊の森へは……」
倒れるなんて醜態晒しちゃったから信用も落ちたよね……
「どうか、どうかお願いいたします
精霊の森をお救い下さい」
無言で視線を逸らしちゃったせいか神官殿が切実な顔をして更に詰め寄って来た
だから近いって~
「私に何が出来るか正直分かりませんが、森へ入ってみようと思います
さっき情けない姿をお見せしちゃいましたけど……」とポリポリと頭を搔いた
「おぉ〜」村人達からも安堵の声が上がる
そう言えばまさに『固唾を飲む』って感じで村人さんたちは私達を遠巻きに見守ってる感じですね……
「ありがとうございます
本当にありがとうございます……」
神官殿……なんか少しウルウルしてない?
そして気を取り直した様に神官殿が言う
「サクラ様、どうかこの2人を案内人に……」
神官殿の言葉に2人の男性が前に出た
「あなた達はさっきの? 」
「はい、サクラ様に命を救って頂きました
ありがとうございました」
「この命に替えてもサクラ様をお守りする覚悟でございます」
あ〜命に替えてなんて良いから……
命より大事なものはないよ?
そんな事を思いながら若い2人に問いかける
「でもあなた達、もう身体は大丈夫なの?」
「はい、すっかり元通りです」と胸を張る2人
「そう……ん〜でも危険だよ? 良いの? 」
「もちろんです! どうかお供させて下さい」
さっきは気づかなかったけどこの子達、かなり若い
私より年下っぽくて、ついタメ口になってしまった……
いかん、いかん……年下だって敬意は示さないと……
でも……どうしよう……
戦力は多い方が良いのかな?
戸惑っている私に
「サクラ様、どうか2人が同行する事をお許し下さい
この2人はこの村でも戦闘に長けている者です」
神官殿からの更なる後押しもあり私も了承した
「分かりました。
じゃぁ案内よろしくお願いします
でも、絶対に無理はしないって約束して下さい
力を貸してくれるのは嬉しいし心強いけど、
『命に替えて』はダメだから!
『命』に替えて良いものなんてないよ?!
だから約束して! いい? 出来る?」
私は2人に念を押した
「……はいっ! 」元気良く2人が頷いた
「えっと……アレクさんとアレスさんでしたよね? どっちがどっち? 」
と、今更感もあったが改めて自己紹介してもらった
怪我の大きかった方が剣術が得意なアレク
足に負傷した彼が魔法を得意とする弟のアレス
兄弟だと言う事もあってか2人のコンビネーションは村随一だそうだ
強力な助っ人も加わり、先程シェリー達と相談した作戦を2人にも説明した
作戦……と言っても
まずは私のレベルアップを図る為になるべく少数の魔物に対峙して『光魔法』に慣れて行くってだけなのだが……
私が黒いモヤ……闇魔法で操られている魔物から闇魔法を祓い、その後も魔物が向かって来るなら攻撃は天ちゃん・アレク・アレスが担当する
シェリーには敵の位置や数を把握して奥へのルートを考えてもらう
それぞれの役割を確認し合い、私たちは森へ足を踏み入れた
――つづく――




