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#12 精霊の森

『精霊様の御使い様じゃぁ〜』って何?


村の子供たちは天ちゃんに興味津々の様で私の回りに ……って言うか、天ちゃんの回りに集まって来ていた

当の天ちゃんは子供たちの手が届かない高さに上昇していて回りで子供たちがピョンピョン飛び跳ねている

う〜ん、ジャンプしても天ちゃんに届かない思うぞぉ〜


「精霊様の御使い様ぁ〜、

あれは何? 雲? 雲なの? 触りたーい」

女の子が私に向かって言った途端、他の子供達も「私も〜」「僕も〜」と私にすがりついて来た


……え〜っ……えっと……

「天ちゃん、みんなが天ちゃんとお友達になりたいって、大丈夫かな? 」

天ちゃんは少し困った様にモジモジしていた


私は子供たちの目線に腰を落として言った

「みんな、この子はね、天ちゃんって言うの

天ちゃんと仲良く出来る? 」

「うん、出来る〜」「出来る〜」

「仲良くしたい〜」


「うんうん、みんな良い子だね

天ちゃんに触りたい?」

「触りたい」「触りたい〜」口々に言う


「よしよし、分かった

じゃぁ、約束出来るかな?

天ちゃんには優しくしてね、

優しくビックリさせない様にそ〜っとね」

子供たちとそんな約束する


「天ちゃん、少し降りて来てくれるかな?

みんな天ちゃんと仲良くしたいって。

大丈夫だよ? 」

天ちゃんにそう声を掛けると、

天ちゃんも少し戸惑いながらも下へ降りて来た


子供たちも恐る恐る……

おっかなびっくりって感じて天ちゃんにそっと触れる

「わぁ〜ふわふわ〜」

「凄〜い、気持ち良い〜」

どの子も目をキラキラさせながら約束通り優しく天ちゃんに触れていた

天ちゃんも最初は怖がっていた様だが、嬉しそうに子供たちに撫でて貰っていた


そんな風に子供たちと過ごしていると、

村の奥から先ほど走って行った村人を先頭に、何人かの村人さんがこちらへやって来た


1人は大分お年を召したお爺様で、

もう1人は神父さんの様な服装の男性だった


神父さんが私の前に跪く……

いやいやちょっと待って!

慌てる私に神父さんが

「お待ちしておりました精霊様の御使い様……

私はこの村で精霊様の守人をしております神官のペターソンと申します。こちらはこの村の長老で……」と言いかけたタイミングで

「長老様! 神官様! 大変です! 」と声が聞こえた


大きな声のした村の入口を見ると、

2人の男性に身体を支えられながら歩く男性と、足を引き摺り気味にしている男性が見えた


皆で駆け寄ると

「……神官様……精霊様の祠が……」と息も絶え絶えになりながら話し始める

「まずは怪我の手当を! 」

神官殿の声に「はい」と声がして女性がどこかへ掛けていく


足を負傷した男性と腹部を負傷した男性……

どちらも獣に引き裂かれた様な爪痕が痛々しかった

そして……その傷にも私達が遭遇した魔物がまとっていた黒いモヤの様なものがまとわりついていた


村の女性が傷口に緑色の薬らしき物を塗る……

あれはもしかして薬草で作った軟膏の様なものなのかな?

腹部に広範囲の傷を負った患部には湿布の様なシートを貼っていた


「っ!! 神官様、傷口が塞がりませんっ」

女性が悲痛な声で叫ぶ

「くっ……闇魔法か?」神官が呟くような声で言う


「私の治癒魔法で」

そう言って私は男性の足の怪我に手をかざす……

意識を集中して……

『ヒール』心の中で唱える

傷口がみるみる塞がって行く

やった、成功したっ!

そう思った瞬間………

閉じた傷口がまた開き出した

えっ? どうして?


「やはり闇魔法か……」

神官が顔をしかめて苦しそうに呟く

「闇魔法? やっぱり? 」

思わず口から出る

「この黒いモヤは闇魔法なのですか? 」

神官はハッとした様に私を見た

もしかして声に出してるつもりがなかったのかしら?


でもこれが闇魔法だとしたら、

光魔法で何とか出来るんじゃない?

私は再度意識を集中して黒いモヤに手をかざした


どうすればこれを消滅させられるの?

まずは黒いモヤを身体から引き剥がすイメージで手をかざし意識を集中させる

「うっ……」男性が苦しそうに顔をしかめた

「ごめん、痛い? 」思わず手を離しそうになる

「そのまま続けて」神官のよく通る声が響いた


私は神官の声に頷き、そのまま黒いモヤを身体からホンの数ミリ剥がす事に成功した

そして今度は黒いモヤを浄化・消滅させるイメージを膨らませた

光る白いモヤが黒いモヤを包み込み……

ふたつのモヤが混ざり合うように消えた


出来た……次は治癒魔法……

今度はすんなりと傷は塞がった

続いて腹部に傷を負った男性の番だ

同じイメージを再構築するのはさっきより楽だった

でも……

モヤを消滅させた辺りから言いようの無い頭痛が私を襲った……

治癒魔法を掛けている途中その痛みは激しさを増し……あとちょっと……だから……

もう少し……待って……

もう良し……出来た……

私は直後、意識を手放した……

「サクラ様っ! サクラ様っ! 」

シェリーの声が遠くから聞こえる……

ごめん、シェリー……大丈夫だから……

……そんな悲痛な声を出さないで……

大丈夫だか……ら……


………………

どれ程の時間が経ったのだろう?

私は意識を取り戻し、ガバッと起き上がった

「うっ……頭が……」思わずこめかみの辺りを押さえる

「サクラ様、意識が……

良かった……本当に良かった……」

あれっ? シェリー泣いてる?

「……ご、ごめんねシェリー

……心配かけちゃったね……」

「いえ、大丈夫でございます、

サクラ様がご無事なら……

ただ……あまり無茶をなさらないで下さい……」


「うん、気をつける……」とりあえず反省する

「シェリー、私どれ位気を失ってたの? あの怪我をした人達は? 」

シェリーに尋ねて確認しようとしたら

「あの者たちは大丈夫です

サクラ様のおかげで一命を取り留めました」

いつの間に入って来たのか、神官が落ち着いたバリトンで言った

「そうですか、良かった……」


「サクラ様は『光の魔法』保持者なのですね?

精霊様のお告げで精霊の森とこの村を救ってくださる方が来る事は分かっていましたが……

まさか『光魔法』の保持者とは……」


……えっ?!……救うって? 何?

なんの事??


私の反応が思いがけなかったのか?

ハッとした様に

「申し訳ございません、村の者をお助け下さりありがとうございました

心から感謝致します……」

そう言って神官は深々と頭を下げた


「いえいえ、頭を上げて下さい

ご覧の通り私は未熟者でこの体たらくです」

ポリポリと頭を搔いてちょっと落ち込む……


「いえ、サクラ様がいらっしゃらなかったらあの二人、アレクとアレスは今頃……

本当にありがとうこざいます」

また頭を下げて神官が言葉を続ける

「森の精霊様から『遥か南からこの村を訪れる者に助けを乞う様』お告げを受けました

それが貴女様、サクラ様でございます」


森の精霊? どういう事?

もしかしてその精霊が私をこの世界に?


「サクラ様、どうか『精霊の森』を

この『ペタの村』をお救い下さい……」


はっ、しまった聞いてなかった……

シェリーからテレパシーが入る……

「精霊の森と村をサクラ様に救って欲しいそうです」

えっ?? 無理無理無理……

見たでしょ? さっきぶっ倒れたの?

うっわぁ〜……凄い期待に満ちた目で見てる〜

「う〜」思わず頭を抱える……


「サクラ様っ! 申し訳ございません

まだお身体の方が?」

今度は心配に満ちた目で見られた……

「いえ、大丈夫です……

えっと……まずは詳しく聞かせて貰えますか? 」

何だか訳の分からない状況になって来たけど、『森の精霊様』とやらは私の事を知ってるって事だよね……

とりあえず詳しく聞かないと


神官のペターソン氏の話によると、

森があの黒いモヤに包まれたのは突然のことだったらしい

そしてモヤに包み込まれる寸前に『精霊様からのお告げ』があったんだそうだ

森には凶暴な魔物が出現し、精霊様の安否も分からず途方にくれていたらしい

ただこの村は精霊様の加護を受けていて魔物は入ってこれない様になっているので村に居れば被害はないそうだ

村への加護が変わらないという事で、精霊様は無事だろうとの意見も多かったらしい

だが、精霊の森を守って来た村にとっては精霊の森そして精霊様がどうなってしまったのが気が気ではなかった

あの黒いモヤが見えるのは魔力の高い限られた者たちだけだったが、あの禍々しさに動揺を隠せない者も少なくなかったらしい


お告げにあった『精霊様の御使い様』を待った方が良いとの声が多かったが、心配をする者も多く、この村の精鋭が代表して『精霊様の祠』の様子を確認しに出かけたそうだ


その後は私も見た通り……


なるほど……

森の中はかなり危険な状態みたいだって事かな?


「少し、お時間を頂いても良いですか?

シェリーと天ちゃんと話したいので……」

そう神官殿ペターソン氏に告げると

「分かりました、サクラ様は良い従者をお連れですね。サクラ様がお倒れになった時、とても心配されていましたよ」

そう言ってペターソン氏は微笑んだ……

……初めて笑顔見た……気付かなかったけど結構イケメンじゃん……



――つづく――



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