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# 102 いざっ! 鍛錬の森へ

「くぁ〜今日も爽快な目覚め! 鍛錬日和!」布団から起き上がり大きく伸びをする

「おはようございます。サクラ様」布団を片付けているシェリーに声を掛けられる

「おはよう、シェリー。あれっ? レイももう起きてるの? 私最後?」

「はい。皆少し前に起きて外に出ております」

「出遅れたか〜。よし、私も支度しなきゃ」パジャマを脱いでシェリーが用意してくれていた服に着替える。今日は鍛錬向きの動きやすいコーディネートだ

「皆もまだ起きたばかりなので水場にいると思いますよ」

「分かった。行ってみるね」シェリーから洗面道具を受け取ってテントから出た

「セバスチャンおはよう」

「お嬢様、おはようございます」

「う〜ん、良い匂い〜。顔洗って来るね」朝食の準備をしているセバスチャンに声を掛けて水場に向かった

「天ちゃん、レイ、おはよう!」

「サクラ、起きたの? 早いわね。おはよう」

《サクラさま〜おはよう》天ちゃんが私の所まで飛んで来た

「天ちゃん、昨夜はよく眠れた? セバスチャンとふたりで大丈夫だった?」

《うん。大丈夫だよ。セバスチャンといっぱいお話もしたよ》天ちゃんは機嫌良さそうに私の周りをクルクル回った

「そっか。良かった。今日も鍛錬の森で頑張ろうね。私たちは今日が初めてだから天ちゃんよろしくね」

《分かった〜。ボク今日も頑張るね》


『ザ・和食』な朝食を食べて『鍛錬の森』へ向かう

入口を前に「やっぱりちょっと緊張しちゃうね」そう言った私にシェリーが目を見開く

「シェリー、今そんなはずないとか思わなかった?」

「えっ? いえ、そんな事は……」シェリーが視線を逸らす。ふふっ、やっぱりシェリーは可愛いなぁ

「思うに決まってるでしょう。誰よりも『鍛錬の森』に『ダンジョン』、魔物がいる場所に興味津々なサクラがこの後に及んで緊張とか!」レイが相変わらずのフンっって感じで言い放つ

「興味と体験はまた別物よ。『鍛錬の森』も『ダンジョン』も『未知なる冒険』もワクワクするじゃない。まぁ……実際にそこに行って自分の目で見て経験して……って言うのは結構ハードル高いよ、うん。でも……これまで空想……想像の世界だったはずの場所がそこにある……。怖くても行ってみたいじゃない。ねっ?」

「お嬢様らしいですね」セバスチャンの微笑に少し肩の力を抜く事が出来た

「でもそれはみんなのおかげだよ? 私ひとりだったら絶対に無理。……だけどみんなが居てくれるから……私はしり込みしないでやってみたい事をやりたいって言えるんだと思う。色んな事にチャレンジしてみたいって思えるから」そう、みんなが居るから私は強くなりたいって思うしみんなの為……自分の為にもどうしたら良いか考えて行動する事が出来るんだと思う

「だから! これからもよろしくね。みんなには私の我儘にもとことん付き合って貰うつもりだから」

「もちろんですよ。お嬢様」

「ワ、ワタクシは常にサクラ様と共に在りたいと思っております。我儘などとは少しも思いませんのでお気を遣わないで下さいませ」

「フンっ、我儘を自覚するのは成長でもあるから良いんじゃない?」

《ワガママ? サクラさまはボクだちを困らせたりしないからワガママじゃないよ? ボクもずっとサクラさまと一緒だよ》

「て、天ちゃん、ホントマジ天使!」天ちゃんを抱き締めて天ちゃんのふわもこに顔を埋めた

「……ったく……行くわよ」ため息混じりのレイの言葉にハッと我に返る。「そうだ鍛錬の森に入るんだった」

「思い出した?」レイに勝ち誇った様な眼差しを向けられる。うっ……ぐうの音も出ないとはこの事か……

「さぁ、参りましょう」シェリーの笑いを噛み殺している背中が言った


「へぇー。もっと薄暗くて怖い感じかと思ったけど意外と日が差し込んでるね」

「そうでございますね。ワタクシももっとおどろおどろした感じをイメージしておりました」

シェリーが思ったほど緊張でガチガチになっていなくて少しほっとする

「魔物が来ます」シェリーに緊張が走る。程なくして前方からスライムが2体ぴょんぴょん跳ねて近ずいて来るのが見えた

「シェリー、レイ、倒せる?」

「ええ」レイは冷静にスライムを見つめる

「……」シェリー? 大丈夫?

「っ、はい。やれます」少し青ざめたシェリーだけど大丈夫そうかな

シェリーとレイはほぼ同時に魔力を発動してスライムを一撃で倒した。スライムは消えた

「また来ます」シェリーの視線の先を見ていると今度は一角うさぎの姿が確認出来た

次も難なくふたりは魔物を倒した

「跡形もなく消えちゃったね。ドロップアイテムもないし」ちょっと言葉に不服そうなニュアンスが乗ったのか「鍛錬の森は言わば人工的な魔物ですから」セバスチャンが苦笑混じりに言う

「うん。そうなんだけど……なんか成果? 実感みたいなのが感じられないって言うか……」

「成果はレベルアップでしょうが」レイがヤレヤレ感を出す

「出会った頃のサクラ様を思い出してしまいました。魔物の亡骸を前にオロオロされるサクラ様は」

「わぁ〜! なんか恥ずかしい事思い出させないで〜」一瞬にして記憶が蘇りシェリーの言葉を遮る

「へぇーオロオロねぇ。詳しく聞かせて欲しいわね」

《あのね、サクラさまは》

「わっ、天ちゃんまで! いいの言わなくて。思い出さなくて」慌てて天ちゃんの口を塞ぐ。いや、口から言葉を発してる訳じゃないけど

「ですが……今ならあの時のサクラ様のお心が理解出来る様な気がします」シェリーが穏やかな瞳を向けてくれる

「ん?」

訓練室(へや)でのシュミレーションとは違って本物の魔物は雰囲気……殺気でしょうか? 威圧感がございます。気圧されない様にこちらも気持ちを強く持たなければならないのですね。あの頃の……魔物の存在すらご存知ではなかったサクラ様の動揺は計り知れないものだったと。ワタクシは何も分からずに……」シェリーが申し訳なさそうな苦しげな表情を浮かべる

「そんな事もあったね。シェリーには助けられたし考えてみれば最初っからお世話になりっぱなしだね」

「いえ、ワタクシは……」

「そうなの! まぁ今でも魔物を前にしたらテンパる可能性はあるけど……今は頼り甲斐のある仲間も増えたから大丈夫。だよね? シェリー?」

「はい……」

「よっし! ガンガン行きましょうか!」


こうして私達はしばらく魔物と戦闘を繰り返した


――つづく――







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