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19)宿の夫婦1

 王都の東門には、特別な意味がある。常に緊張が絶えなかったティタイトに最も近い門だ。王都を囲む高い城壁にある東西南北の門のなかでも、最も頑強な構造をしている。


 その東門に近い宿が、ただの宿のはずがない。

「この宿は、客の一部が、我々狼の手の者です。彼らが安全に休める場所を提供するのがあなたの仕事です」

ケヴィンの目の前には、影の長、狼の一族の当主がいた。


「彼らにとって、ここは家です。あなた方は、彼らの家族です。何ら特別なことは必要ありません。ただ、安全な場所を提供してください。寝首をかかれる心配がなく、眠れる場所が必要なのです。誰がということはお伝えできません。この国に生きる多くの民にとって家が安らぎの場所であるように、この宿を彼らが寛げる場所としてください」

淡々と言葉を紡ぐロバートに、そういう場所はあるのだろうか。ケヴィンはふと、心配になった。


「あなたにはその場所はあるのですか」

ケヴィンの言葉に、ロバートが驚いたように目を見張った。きれいな瞳だ。影の長の厳しい表情が消えた。


「私のいる場所が、そうなるように、周囲の者が心を配ってくれています。ありがたいことです」

「そうですか。それならばよかった、です」

ロバートが、今も武装していることは、服の上からでもわかる。ロバートの言葉に、嘘がないこともわかる。


 会うことの出来なかった娘リズの友人ローズの夫、狼の一族の当主、ライティーザ王国国王アルフレッドと王太子アレキサンダーに信頼されている若き宰相ロバート・マクシミリアン公爵と、ロバートは多くを背負う。


「誠心誠意勤めさせていただきます」

もう逃げない。ケヴィンの決意に、ロバートが深く頷いた。


 


 


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