表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

12)花畑

 ニコラスに近づくことができて、話しかけることが出来る人は限られている。ケヴィンは迷ったが、ロバートに鉢植えを預けた。


 ライティーザ王国唯一の公爵家の当主であるのに、驕ることのないロバートは気安く引き受けてくれた。

「これならば、ニコラスも花を楽しめますね。彼が自分で育ててみても良いかも知れません。部屋から出るきっかけにもなるでしょうし」


 ロバートはニコラスに水やりを教えたらしい。庭の片隅の鉢植えの前で、青年を見かけるようになった。庭にいれば、ジェームズ達庭師と会う機会も増える。ニコラスは庭師達やケヴィンを見ても、逃げなくなった。話しかけたら頷くようになった。


 ニコラスは花が咲いたのが、嬉しかったらしい。花の絵を沢山描いた。鉢植えが置いてあった場所は、花畑になった。庭師達はニコラスの花畑と呼んでいる。自分の名前がついた花畑が気に入ったのだろう。ニコラスは庭師に混じって庭仕事をするようになった。


 ニコラスの花畑を気に入ったのは、ニコラスだけではなかった。屋敷に出入りする絵描きや、絵描きの見習いが、花の絵を描きにきた。ニコラスは、絵描き達とも少しずつ親しくなった。


 見習いと並んで、絵描きに手ほどきを受けるニコラスの姿にリックは感激したらしい。

「俺は、ロバートに一生ついていく!」

付き合いがあまり長くないケヴィンですら、もう何回聞いたかわからない決意表明を叫んでいた。


宣言した瞬間に、エリックの訂正が入るのもお決まりだ。

「マクシミリアン公爵様です」

「俺は」

「私」

「私は、マクシミリアン公爵様に一生ついていき、まいります」

「よろしい」

懲りないリックと、諦めないエリックは、何故か仲が良い。


 ある日、ケヴィンは、ロバートから一枚の絵を渡された。

「ニコラスからの御礼です。彼がこういった絵を描くのは、相当珍しいそうですよ。彼は見たものしか描かないはずですから」

絵の中には、モニカとリズが手を繋いで並んでいた。その隣にケヴィンが立っていた。


 ニコラスの記憶にある若い頃のモニカとリズに、今のケヴィンを並べて描いてくれたのだろう。三人の足元には沢山の花があった。ニコラスの花畑の花だ。嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ