4 マサノブは納豆が食える
「ほら、ちゃんと納豆食べてるから背ぇも高いし勉強もできるマサノブ君が来たで」
「あてつけ方がいやらしいな!納豆のおかげとちゃうやろそれ!」
お母ちゃんにそう言い放ち、オレはランドセルをしょって玄関を出た。
すると門の前に、オレよりほんの少しだけ背が高く、
ほんの少しだけ男前で、ほんの少しだけ女子にモテて、
勉強もできて、運動もソツなくこなして、
爽やかな性格で、何と女子高生の彼女まで居て、
生意気なやっちゃなホンマに!
という、オレの幼なじみのイソモトマサノブが立っていた。
そんなマサノブに、オレは出会いがしらに聞いてみた。
「マサノブって、納豆好きか?」
それに対してマサノブは、爽やかな笑顔でこう答える。
「納豆?好きってほどでもないけど、あったら食べるで?」
生意気なやっちゃ!
とは(オレは反少年主義をかかげる大人の男なので)口には出さず、
オレはマサノブと一緒に庵地小学校へ向かって歩き出した。
「納豆がどうかしたんか?」
歩きながらたずねるマサノブに、オレはため息をつきながらこう返す。
「朝からお母ちゃんが、納豆を食べ食べうるさかったんや。オレ納豆嫌いやのに」
「ヨシオ納豆嫌いなんかいな?何で?」
「くさいやんか」
「くさいか?おれはそんなに気になれへんけどなぁ。
でもそんなにくさいなら、ファ○リーズをふりかけたらええんとちゃうか?」
「そういう問題とちゃうやろ!ファ○リーズをふるのは間違いやろ!」
「じゃあ消○力がええか?」
「商品の問題とちゃうわい!ファ○リーズも消○力も食べるモンとちゃうやろ!」
「わかった。納豆のくさいのんが気になるなら、
ドリアンのにおいをかぎながら納豆を食べたらええねん。
これなら納豆のにおいは気になれへんやろ?」
「それやとドリアンのにおいでもだえ苦しむわ!」
「逆転の発想やんか」
「逆転どころか更にくささが追加されとるがな!」
「うちのクラスに居る内藤君の事を納豆君って呼ぶようにしたら、
納豆の事も段々好きになるんとちゃうか?」
「お前それただのインシツなイジメやないか!そんなんあかんわ!」
「NATTO、北大西洋条約機構に就職すれば、納豆への理解も深まるんとちゃうか?」
「それはマッタク別のモンやろうが!
それからあれはNATTOやなくてNATOやからな!」
「お前、ワガママか!」
「そうかも知らんけど今その事で怒られるおぼえはないわ!」
「もうええもうええ、お前と納豆の話をしてもネバネバするだけで、
Never Endhing Storyやわ」
「どういう事やねん⁉うまく言うたつもりか⁉」
「とりあえず今日学校に行ったらら内藤君に、
『納豆君って呼んでごめんなさい』って謝っとけよ」
「呼んどらんわい!お前やろそれは!」
「もうええわ!そんなに納豆が嫌いならオクラでも食うとけや!」
「どんなキレ方やねん⁉」
「納豆の話はもうええか?」
「もうええ、ホンマにもうええわ。ますます納豆の事が嫌いになりそうやから」
「もっと楽しい話をしようか」