14 彼女の名はアミ
オレがそう言うと、お姉さんはすっくと立ち上がり、
ペコリと丁寧にお辞儀をしてこう言った。
「色々話を聞いてもらってありがとうございます。
ちょっとだけ気が楽になりました。
私、橋から飛び下りずに、もう少し前向きに生きていこうと思います」
「それがええですよ。
小学生のオレが言うのも何やけど、人生まだまだこれからなんやから」
「はい。そういえば、自己紹介がまだでしたね。
私、ニシジマアミといいます。
あなたのお名前も教えてもらっていいですか?」
「オレは、キタヤマヨシオっていいます」
オレがそう名乗ると、アミと名乗ったそのお姉さんは、少し眉を潜めた。
「ヨシオ?ヨシオ・・・・・・どこかで聞いたような名前ですね・・・・・・」
「そうですか?
まあ、そんなに珍しい名前でもないから、昔の知り合いにでも居たんじゃないですか?」
「う~ん、そうかもしれません。それでは私はもう帰ります。
もう背後から女性を襲ったりしてはいけませんよ?」
「だからあれは誤解ですって!」
オレがそう叫ぶと、アミさんは『さあ、どうだか』という笑みを浮かべ、
まわれ右をして去って行った。
どうやら誤解は全く解けてないみたいやけど、まあええわ。
それにしてもアミってどこかで聞いた名前やな?
はて、どこやったかいな?
割と最近聞いたような気もするけど。
アミ、アミ・・・・・・。
「あ」
その名前を思い出したオレは、思わずマヌケな声を上げた。
アミって、マサノブの彼女やないか・・・・・・。