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反少年主義 第四幕  作者: 椎家 友妻
其の一 たたずむ乙女
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10 身代わりのダイブ

 オレの両の掌に、やけに柔らかくて幸せな感触が広がった。

それはまるで大きなマシュマロのようで、

その正体がお姉さんの、

お、お、おっぱいである事に気付くのに、

一秒もかからなかった。

 「あ」と声を上げるお姉さん。

 「OH・・・・・・」

何故か外国人のような声を上げるオレ。

そして次の瞬間。


「き、きゃああああっ!」


 文字通り絹を引き裂くような悲鳴を上げたお姉さんは、

凄い力でオレの体を持ち上げ、そのままオレを橋の欄干の外側へブン投げた。

そしてオレは一瞬宙に浮いたかと思うと、そのまま真っ逆さまに川に転落した。

 「うぉわぁあああああっ⁉」

 そして二秒もしないうちに、

 どっぼぉおおおん!

 オレは川の水面に腹から叩きつけられたのやった。

 「ごぼあばばばば!」

 川!

水!

溺れる!

 必死に手足をジタバタさせるオレ!

そして無我夢中で川岸に向かって泳いだ!

その後何とか川岸へ泳ぎつくと、

その場にひざまづいて両手をつき、思いっきりむせた。

 「ゴホッ!ガハッ!ゲヘッ!」

 元々泳ぎは得意な方やけど、

いきなり十メートルくらいの高さから川に落とされたらパニックになるわいな!

ホンマに死ぬかと思うたで!

そう思いながら体を返して尻もちをつき、

前かがみになってゼェゼェ言っていると、

(かたわ)らにオレのランドセルを抱えたさっきのお姉さんが歩み寄って来た。

オレがまだゼェゼェ言いながらそちらに目をやると、

お姉さんは警戒心と罪悪感が混じり合ったような、

何とも複雑な表情でオレの事を眺めている。

そして少し声を震わせながら口を開いた。

 「あ、あの、これ・・・・・・」

 そう言ってオレのランドセルを差し出すお姉さん。

オレが「あ、どうも」と言ってそれを受け取ると、

お姉さんは一歩後ずさり、両手で自分の胸元を隠すようにしてこう言った。

 「あ、あなたは、いつもあんな事をしているんですか?」

 「あんな事とは、どんな事ですか?」

 何となく予想はできたが、オレは一応聞いてみた。

それに対するお姉さんの答えはこうやった。

 「背後から女性に抱きついて、両手で胸をもみしだく・・・・・・」

 「違いますよ!」

 予想通りの答えにオレは力一杯否定したが、お姉さんは全く信じる様子もなくこう続けた。

 「じゃ、じゃあ、どうしていきなり抱きついてきたんですか?

私の胸をもみしだく為じゃないんですか?」

 「だから違いますって!無駄にいやらしい表現をしないでください!

それに後ろから抱きついたのは、

お姉さんが橋から飛び降りるのを止めようとしたんですよ!」

 「そ、その為に私の胸をもみほぐしたんですか?」

 「ほぐしとらんわい!

だからあれはたまたま触っちゃっただけで、それはそれで謝りますよ!

ゴメンナサイ!だけど橋から飛び降りようとするのはやっぱりよくないですよ。

まあ、こんな浅い川で死ぬのも難しいかもしれませんけど」

 「それは、わかっています。

だけど、もう生きているのが嫌になって、

気がついたら、橋から飛び下りようとしていたんです」

 「一体、何があったんですか?」

 「それは、言えません。とてもデリケートな問題なので・・・・・・」

 「まあ、そういう事なら無理に聞きはしませんけど」

 「聞きたいですか?」

 「いや、いいですよ。何か重い苦しい話をされても困るし」

 「聞きたいんですね?」

 「いや、だから聞きたくないですって」

 「そこまで詰め寄られたら仕方ありませんね・・・・・・」

 「詰め寄ってないわい!あんたが話したいんやろ!」

 オレはそう叫んだが、お姉さんはオレの隣にハンカチを敷いて腰を下ろし、

川の水面を眺めながら語り始めた。

 「最近、私の彼が冷たいんです・・・・・・」



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