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最終話 次へ

《こちらローレニア王立空軍第44飛行隊、アルサーレ管制塔、着陸許可を求む》


リゾートでの休暇も終わりいよいよ戦線に戻る、しかしその前にここに来ておきたかった。


《ーーこちらアルサーレ管制塔、スケジュールに無い。本国の飛行場へ着陸せよーー》


やっぱアポ無しだし無理かなー、仕方ないといえば仕方ないし、スクランブルされないだけありがたいと思うしかないか。

だが一応言っておく。


《ブルー隊だ、着陸許可を求む》

《ーー・・・・・・基地司令に確認する、しばらく待てーー》


話のわかる管制官でよかった、少しの間上空で旋回待機していると。


《ーー久しぶりじゃない、連絡ぐらいよこしなさいよーー》


アーノル大佐の声だ、わざわざ自ら来てくれたようだ。


《ご無沙汰です、アポなしですみません着陸許可をお願いしたくて》


《ーーいいわよ、降りてらっしゃいーー》


《ありがとうございます》


そして俺たちは大きく旋回、滑走路に向かい体勢を整え着陸準備に入る。


《あっ、剣くん下見て!》


水咲さんが何かに気がついたようで下を見るように促す、目に映ったのは。


《桜かぁ、綺麗だね》

《レイくんたちかな?》

《だと思うよ》


山の斜面の一角、少し開けた公園のような場所にあまり多くはないが桜が満開に咲いていて緑の山を薄ピンクに染めていた。

以前は無かった、あれをやるとしてらレイたちだろう。

俺たちはその綺麗な桜を横目に滑走路に着陸した。



懐かしい感じもするが、あのボロかった建物は全て建て変わりすごく綺麗になっていた。今いるローレニアの基地より綺麗なんじゃね?まあ、空襲されたし当然か。


そう考えるとアサギさんの顔がちらっと浮かぶ。


奥歯をギリッと噛み締めていると遠くから兵舎からアーノル大佐が出てくるのが見えて、俺たちを暖かく迎えてくれた。


「変わりないようで良かったわ、三人とも元気?」


ニコニコとしている大佐、なんか久しぶりに会ったお母さんみたいな感じで、キリッとしている印象しかないので少し戸惑ってしまう。


「おかげさまで、ところでレイたちは?」


レイの機体も見当たらなければチグサの機体、ナナリスの機体、ルリさんの漆黒の機体も見当たらない。すると、ニコニコしていた大佐の顔がいつもの顔に戻る。あれ?


「あの子たちは除隊したわ」

「は?」


思わず、何でですか!?と問い詰めそうになったが大佐に聞いてもどうしようもない、唇を噛んで黙っていると、大佐の携帯の着信音が鳴り、失礼と言って彼女は電話に出る。


「はい・・・・・・そうよ・・・・・・あら通しなさい、手続きはいいわよ、・・・・・・それじゃ」


ん?急用かな?


「来たって」

「来た?」


それ以上は何も言わない大佐、クエスチョンマークを浮かべて水咲さんと啓と顔を見合わせていると。


「ツルギさん!」


背中側から懐かしい声がした、ゆっくり振り向くとアイツが汗だくで走ってきている。久しぶりに見る俺より弟っぽいアイツ、頬を緩ませて迎えると勢いそのままに飛びついてきた。


「おっと、久しぶり元気だったか?」

「はい、おかげさまで」


そう言い終わると同時に泣き出してしまう俺の親友、レイ・アスール。そんなに泣くなよと思いつつも背中をさすってやり、困って水咲さんと啓を見るも微笑んで見守ってくれている。


「桜、綺麗だな、空からよく見える。アサギさん達にも見えてると思うよ」


俺は優しくレイ頭を撫でる。


「おつかれさん、自由に生きてるか?」


また一際ギュッと抱きしめてやると。


「はい!」


レイは泣き笑いしながら元気に答えてくれた。

ふと、彼の後ろに目をやるとチグサ、ルリさん、ナナリスの姿があった、何やってんだかと呆れた顔でレイを見ている、当然飛行服は来ていない。


「お、お久しぶりです」

「・・・・・・会えてよかった」

「元気してたぁ!?」


この感じ凄い懐かしいな、さらに頬が緩む。


「ああ、三人も元気そうでなにより」


何年ぶりかなか、1年ちょっと?

そんなに長く会っていないこともないがやっぱり懐かしい。


チグサはなんだかさらに大人っぽくなり、ルリさんは相変わらず幼女だし、ナナリスも相変わらず落ち着きがない。ほとんど変わってなくて安心するが。


「軍、辞めちゃったんだな」


会えて悲しそうな感じに言うと、レイは申し訳なさそうに視線を下げ。


「すみません・・・・・・」


と、謝ってくるが。


「いいよ、お前の人生だ」

「ちょっ!」


頭を思いっきりガシガシと掻きまくってやると、髪の毛がとんでもないぐらいボサボサになる、懐かしいなぁ。


「まぁ、寂しくないといえば嘘になるがな」

「い、一応予備役なんで、なんかあったら飛びますよ!」


ボサボサになった頭をぺたぺたと直しながらそう言うレイ、そんな簡単なもんじゃないと思うが、それを言っちゃ面白くない。そうか、と言ってまた髪の毛をボサボサにしてやった。


「王子様、すぐ帰っちゃうのぉ?」


遠巻きに見ていたナナリスがまた懐かしい呼び方で俺を呼ぶ。


「一応明日までいる予定、邪魔なら帰るけど?」


王子様呼びを指摘するのはだいぶ前に諦めたからスルー、特にどこに泊まるとかは決めてないけど、アルサーレはかなり復興してるしホテルぐらいあるだろう。

するとナナリスに右腕をガシッと掴まれる。


「家行こ家行こ家行こ家行こ家行こ!!!!!」


久々の連呼、耳がやばい。

何、家に行くって?

気がつくとルリさんも俺の左腕をつまんでいる。


「ちょっと、水咲さんたちの許可がいるから!」


尻に敷かれてる身なんでね!俺の一存じゃ無理です。


「いこいこ!」

「行くのはいいですが、剣くんから離れてください」


乗り気な水咲さんに、狼のようなするどい目線をナナリスとルリさんに送る啓、二人は怯えるように俺から手を離す。


「じゃー、許可降りたし行く、か・・・・・・」


ふと、光るものが目に入った。

チグサの左手薬指に。


「っ!!」

「んのっ!!」


俺は慌ててレイの左手を確認すると薬指に指輪が嵌めてある。


「はっ!!」


続いてナナリス、ルリさんも確認する。


「ちょっと!」

「・・・・・・っ!」


ない!

え?とレイの顔を見ると、へへへ、とちょっと照れくさそうにしてる。じょ、冗談じゃない!!


「レイが結婚してる!!!!」

「えっ!?」

「はい?」


俺の叫び声を聞いて水咲さんと啓もバタバタと二人の左手を確認する。


「ホントだ・・・・・・」

「凄い・・・・・・」


いや、マジでよく選べたな。

ナナリスリスもルリさんも結構積極的だと思ったけど、いやでも二人はそれで納得してるってことだろ?わけんからん!!


ん?その前になにか視線を感じる。


首をブンブンと振って水咲さんと啓を見るとレイとチグサの結婚指輪を見ては俺の顔を見るを繰り返し、ウルウルと瞳を潤わせている。あ、思わず叫んでしまったが失敗だったか・・・・・・。


俺はレイの頭を右腕を使い脇でがっしりとホールドし、彼女たちから少し離れる。


「いてて!なんですか!?」

「レイくん、俺の立場分かってる?」


痛がるレイをよそにコソコソと耳打ちする。


「へ?あ、まだ選んでないんですか?いてててて!!」


まだとか言うな!選べるかってんだよ。


「よくルリさんとナナリスがいいって言ったな」

「え?ああ、一緒に住めるならいいって」


えー、そんな感じ?全く参考にならんな。


「でもそれってよ、夜とかどうしてんの?」

「あー、基本的にはチグサと寝てますけど、たまにみんなで寝てますよ?」


ピュアか!聞いた俺が恥ずかしくなってる、左手でどうしたもんかと自分の頭を搔くがどうでもよくなってレイを解放すると。


「ねーねー、剣くん。結婚指輪すごく綺麗だったよ!」

「何話してたんですか?」


スッと水咲さんが豊満な胸を押し当てて買ってアピールをして来るわ。レイとコソコソ話していたのが気に食わなかったのか、俺の腕を掴む手の力がどんどん強くなっていく啓。


「私も王子様から指輪ほしいぃぃぃぃぃん!へぶっ!!」


ナナリスの野郎どっから出てきた、気が付いたら目の前に居るし、変なことを言い出すし、両手は塞がってるしで問答無用に頭突きを食らわす。


「何すんのっ!!」

「いてて・・・・・・、お前にはレイがいるだろ!」

「指輪欲しぃもーーーーん」


ダメだこりゃ。反射的に頭突きしたもんで頭に響き、目を顰める。

それを見ていたレイも笑ってるだけだし、俺にどうしろと?って感じだ。


「まあ、積もる話もあるでしょうし行きますか」


なに急に仕切り出すんだか、レイがみんなの背を叩いて先を急かし。


「整備費は王室に請求したらいいかしら?」

「えっ!!」


悪い笑顔をしているアーノル大佐。


「うそよ、サービスでしておくわ、ゆっくりしていきなさい」


なんの冗談なのやら、兄さんには内緒で来ている、王家に請求する権限は無いだろうどちょっとびっくりするよね。そして、大佐はにこやかに手を振り、俺たちは綺麗になった道を下っていきレイの家へ急いだ。



気がつけば夜になっていた。


俺たちに会えたのがそんなに嬉しかったのか、ナナリスは爆速で酒を飲み干しソファに倒れ。チグサとルリさんが追加の買い出しに出てしまっている。


「あいつホントに変わんないな」


リビングテーブルに俺たち三人と俺の隣にレイの四人で座り、俺は手に顎を乗せてぶっ倒れているナナリスを顔を顰めて見ていると。


「そこがいいんですけどね」

「惚気はやめろ」

「そんなんじゃないですよ!」


クスクスとナナリスを起こさないように声を殺して四人で笑う、アイツが起きたら面倒だから、とかじゃないよ?


「でも、ツルギさんって凄いですよね・・・・・・」


さっきまでワイワイ騒いでいてのに声のトーンを下げるレイ。


「どうした急に?」


急に改まるのは心臓に悪い、グラスに残っている氷多めのウイスキーをグイッと飲み干す。


「あのいつ死んでもおかしくない状態の戦争を生き延びて、それでもまだ空を飛んでいる。僕は怖くて降りてしまいました・・・・・・」


俺は黙ってレイの言葉を聴く。


「まあ、いざと言う時は飛びますけどね!」


ハハハ、とぎこちなく笑う。


「ツルギさん、いや、ソラさんはいつまで飛ぶんですか?」


レイが真面目に話している証拠、俺の事を偽名のソラの方で呼んでいる。

傭兵にまでなって空を飛び、元の場所へ帰ったと思ったら直ぐに戻ってきた俺、こいつからしてもよく分からんだろう、俺も分かってないし。


しかし、いつまで、か・・・・・・。


考えたこと無かったな。

水咲さんと啓の顔を伺うも答えは見つからない。


「そうだなぁ・・・・・・、世界が平和になるまでかな」


当たり障りのない答え、それをカッコつけて言うと。


「何それ」


水咲さんに笑われ。


「・・・・・・」


啓には反応すらされない。

大切な人を守るため、と言いたいが自分から危険に突っ込んで行っていることもあるし、なんか違う気もする。俺が戦闘機から降りる時は、そうだな、歳で降りるか・・・・・・。


死んだ時だ。


そんなこと言える訳がない。


「目標はでかくって言うでしょ?・・・・・・って、寝たか」


頭を掻きながらレイを見ると、こいつは頭を伏せてスースーと寝息をかいていた。


聞いといてなんだよとは思うが、もともと酒弱いしな、仕方ないだろう。

すると間もなくチグサたちが帰ってきた。


「ただいまー、って!寝ちゃってるし!」


彼女は揺すって起こそうとするが俺はそれを止める。


「もー、ナナを運んでもらおうと思ったのに」


あ、そっちね、こいつ毎回運び役だな。確かにソファに力なくぶっ倒れているし、チグサとルリさんの行き場がない。

ここは俺の出番か・・・・・・、一応水咲さんと啓の顔を確認すると。


「運んであげたら?」

「何もしないように見てます」

「しねーよ!」


一応許可が降りた、椅子から立ち上がりナナリスの横にしゃがみ彼女の脇と膝裏に腕を入れて、いわゆるお姫様抱っこをして持ち上げる。


「へへぇぇぇ、王子様ぁぁぁ・・・・・・」


やばいニヤケ顔をしながら寝言?を言うナナリス、ほんと寝てる?それに俺のシャツを掴んでギュッとしてくるし、ホント、黙ってりゃ可愛いのに。


「!!」


なんてことを考えていると凄い視線を感じ、顔だけ振り向くと啓が凄いジト目で俺の事を睨んでいた。怖い。


「見てますよ」

「しないって!」


ナナリス起きちゃうでしょ!まったく、この純粋無垢の俺が何をすると思ってるんだか。


ちょこちょこと前を歩くルリさんに先導されて彼女の部屋に入り、ベッドに寝かせて部屋を後にした。

それからしばらく女子会のような会話が続く。


「チグサさん、いつ結婚したの?」

「最近ですよ、三ヶ月前ぐらい」

「へぇ、いいなぁ」


チラチラ俺を見てくる水咲さん。


「でも、よくルリさんいいって言いましたね」

「・・・・・・不覚」


啓の質問にルリさんが答えるが、俺は思わずお酒を吹きそうになる。不覚ってどういうこと?しれっと結婚したのかな?


あまり献策するのはよそう。


「ミサキさんはまだなんですか?」


チグサが悪い顔で、水咲さんと同じように俺をちらっと見る。

爆弾をぶっ込まれて困惑し、目を逸らす俺。


「んー、どうなんだろうね。でも、ペアリングは貰ったよ」

「わー、こっちも可愛いですね!」


どうしたらいいのかわからない俺を他所に、女子たちでワイワイ騒いでいる。


やっぱケジメって必要だよなぁ、もう二人共に指輪渡してしまった方が早いんじゃないか?

でも、それってアリなの?


選べないんだぁ、とか言われそうだし。でも、どちらかが悲しむのも見たくないし。


かと言ってズルズル引っ張るのもなぁ。


困った!


そして、俺は今日は考えるのを辞めて、チグサが追加で買ってきたお酒をグビっと飲んだ。



翌日、昼。

アルサーレ空軍基地。


「シール王女から連絡があったわよ」

「えっ」


基地に着いてそうそうにアーノル大佐からそう告げられる。よくここが分かったな、てか何事だろう?ガクブルしながら続きを聞くと。


「早く帰って来なさいって。詳しくは聞いてないけど、貴方たち黙ってきたの?」

「あ、いやー、そのー・・・・・・」


懐疑的な目で俺を見てくる大佐、黙って来ないと来れないし!とは言えずモゴモゴしていると。


「まあ、ツルギさんって元々そうじゃないですか?」


二ヒヒと笑って肩を組んでくるレイ、おいっ!フォローになってないぞ!


「・・・・・・そうね」

「んなっ!」


納得するな!

なんでこうもみんなちょいちょい俺をいじってくるのか。

さてと、従姉さんも探してるみたいだし早く帰るか。


「それじゃあ、帰るな」

「ちょっ!」


レイの頭をガシガシと撫で回し駐機場に並べられている自分の機体に向かう。


「元気で!」

「がんばってぇぇぇぇ!!」

「・・・・・・応援してる」


チグサとナナリス、ルリさんの声援に手を振ってタラップに手をかけると。


「ツルギさん!」


振り向くと、レイがまた泣きそうな顔をしている。

その顔を見てニッと笑うと。


「また、また会えますか?」


なんだそんなことか。


「暇になったらまた来るよ」


さすがにいつ来るとは言えないしな、変に死亡フラグを立てたくもない。


「約束ですよ!」

「ああ」


あまり長々話しても寂しくなるだけだ。

気分を紛らわすようにコックピットに入り、ヘルメットを被り準備を終える。


「じゃあ、元気でな」

「ツルギさんこそ!」

俺は再びニッと笑い、軽く敬礼してキャノピーを閉めた。



後日。

俺たちの所属する「ローレニア民主王国」は領土問題を理由に南側の隣国、「ウイジクラン共和国」に宣戦を布告した。


どもども嶺司です。

とりあえず気晴らしとして始めた外伝、ようやく終わることが出来ました。


久々の水咲さんと啓、いい感じにかけたと思います( ̄▽ ̄)


どれぐらいの人が読んでくれたか検討もつきませんが、付き合ってくれてありがとうございます。

楽しく読んでいただけてたら幸いです。


さて、不穏な感じで終わりましたが、この続きはアザー・スカイの後半に続きます。

まだ書き貯めがありません、頑張って書きます!


なので次回更新は今月末!

長らくお待たせしますがご理解の程よろしくお願いします。


それでは短いですが

「アザー・スカイー死神と戦うエースー後半」でお会いしましょう!!

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