Starting Room
書き次第ポイポイしてるのでいつかこの連続投稿も終わります。
「あ、そういえば桜沢君はSRの意味分からないわよね。えっと、最初の授業を始める前のスターティングルームって時間でね?出席取ったりお知らせをしたりするのよ」
「そうですか、ありがとうございます。」
・・・私、田園です。この聖浄学園高等部に勤め始めて4年目で初めてクラスを受け持つことになった新人教師です。一応全教科教えられますが、専門は国語です。あ、彼氏無し独身です。
初めてのクラスというのもあり男子生徒とちゃんと向き合えるか不安でしたが、入学式以来学校に来る男子生徒は少なく、その少ない男子も見学だけして帰っていきました。
なので今回初めて登校してくれた桜沢君は非常に貴重な男子なのです!
何故なら!女子生徒達のやる気が段違いだから!!
春の始まりには「もしかしたら男子とキャッキャウフフ出来るかも!?」と意気込んで頑張って勉強していた彼女達は、ここ最近の地獄の様な男子率のせいで目が死んでいました。ご褒美無く常に努力だけ求められる生活は彼女達にとっては本当の地獄だったでしょう。(特にこの学園はイベントが多い代わりに勉強のスピードが速いですから)
そんな彼女達を一番間近で見ていた私も辛かったので、つい昨日彼女達に言ってしまったのです。
「明日!男子生徒が登校してくることが決まりました!」と。
その瞬間、生徒達は全員席を立ち、「詳しく」と血走った目で私に思念を送ってきました。それは最早殺気でもあり、もし桜沢君が今日来なければ私は埋められていたかも知れません。
でも来てくれました!これで彼女達にご褒美を渡せます!それに接する限り桜沢君は優しくて良い子で私のお婿さんに欲しいくらいですから、きっと彼女達の天使になることでしょう!
「起立!」
「気をつけ!」
「っ礼!」
「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」
「お、おはようございます。」
桜沢君には外で待って貰い、先にクラス内で挨拶をするといつもの3倍は切れの良い挨拶が来ました。貴女たち昨日まではそんなにきっちり踵と指の先揃えてなかったでしょ。
「では早速ですが、」
「・・・・」ΣΣΣΣΣ
「・・・・」ΣΣΣΣΣΣ
「・・・・」ΣΣΣΣΣ
護身術程度しか学んでいない私でも分かる闘志を生徒達は抱えている。あんたらは世紀末ファイターかと聞きたくなるほどの覇気だ。桜沢君が怯えちゃうから仕舞いなさい!!
「皆さんに朗報がございます。本日よりこのクラスに、」
『━━━━━━━━ゴクッ』
「男子生徒が所属します。では、桜沢君、どうぞ」
私の扉に振られた左手に合わせて全員の顔がクラスの扉を向く。
「は、初めまして!今日からこのクラスにて一緒に学びます、桜沢 二兎です!宜しくお願いします!」
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先生に呼ばれてクラスに入り、考えていた通りの言葉を噛むこと無く言い終わる。
よし、第一段階はクリアだ。たぶんこの後質問タイムが・・・!
「えー、桜沢君。女生徒達から少し質問してもいいかしら?」
「はい。」
「では、質問あるひ」
ジュバッ!
先生が言いきる前に女子たちが一斉に挙手した。背中が背もたれについておらず、それでいて背筋がまっすぐで腕も綺麗にまっすぐ挙げる姿は凄く綺麗だった。本当に選りすぐりの女子が集まっているらしい。
「え、えっとでは・・・森さん」
「はい!桜沢君の、好きな食べ物は何でしょうか!?森です!」
凄い気迫で簡単な質問を言った後に、名前を言われた。なんか口癖みたいな言い方だったな。
と、好きな食べ物か。好きな・・・・好きな?
「えっと、一般的に美味しいとされるもの全般?です。ただ舌は一般的日本人だと思うので海外の料理とかは良くわかりません。」
「!・・お答えいただき、ありがとうございました!」
綺麗な気をつけから鋭いお辞儀をした後にこれまた音を立てずにすっと座った。・・・本当に学生なのか疑わしいとすら思ってしまう。
「じゃあ次は・・・佐藤さん」
「はい。桜沢君のご趣味はなんでしょうか?佐藤です」
最近はゲームだけど元々は読書・・・かな?いやそこまで沢山読んでたわけではないけど。あとこの後ろに名前を付けるのは僕にアピールしているの?あまりの平坦さに聞き逃しそうになったけど。
「えー、前は本を読むことが多くて、最近はゲームをやります。なのでこれと言う趣味は無い・・・かな?」
「ご返答ありがとうございます。」
まるで記者みたいな人だった。こうドラマの中の会見とかで出る美人記者みたいな。
「まだ大丈夫かな?」
「はい。時間が大丈夫なら」
「じゃあ、笹見さん。」
「はい!!桜沢君の、お好きな女性はァッ!?」
笹見さんが質問を言う途中で腰から崩れ落ちた。
「え!?」
「ああ、ご安心を。彼女は持病持ちなのでそれが運悪く発症したのでしょう。このまま机で寝かせておけば問題ありません」
「そ、そうですか?明らかに持病の声じゃ」
「気管支系なので変な声が出たのだと思います。なので桜沢君も忘れてあげてください。あ、私は龍崎です。」
気管支系持病なら机にうつ伏せで放置するのは不味いと思うんだけど、見る限り息してるしたぶん大丈夫なんだろう。
で、えっと質問の内容は僕の好きな女性、でいいのかな?
「えー。僕の好きな女性、を答えればいいんですか?」
「モー」
何故かモーちゃんから空気読めと言われた。何の空気も無かったでしょうが。
「・・・・・・桜沢君が大丈夫なら答えてあげて♪」
「具体的に考えた事は無いです。ただ、やっぱり一緒にいて楽しい人が良いかなぁとは思います。楽しくない人と一緒にいるのは辛いですから」
「そうなのねぇ~。じゃあもう時間切れね。これから桜沢君はクラスメイトになるわけですから、決して変なことしないようにして下さいね。破ったら、分かってますね?」
『はい!』
前の世界だったら少年院的な所に送られたりするらしいけど、こっちでも高校生が犯罪を犯したら少女院(想像)に入らされたりするのかな?
「桜沢君の席は、一番前の真ん中ね」
「・・・・・はい」
後ろの席駄目ですか・・・・。
最後に最悪の席に着くことが確定してしまったがクラスメイト達が良さそうな人達だと分かったSRであった。
SR・・・ありそう。あ、ないですか。そうですか