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初登校

「・・・・」


車から降りた僕の視界には・・・・特に誰もいなかった。ていうか明らかに裏門から入ったように感じた。

そんな僕の拍子抜けな表情を読み取ってか、黒服さんが説明してくれた。


「こちらには女性生徒は立ち入れませんので、ご安心下さい。」


読み取れてなかったみたいだけど、とりあえず僕以外の生徒が存在しない理由は分かったので良しとする。


「では、これより職員室に向かいます。校内に入ると女子生徒と遭遇する可能性が高いので、私達からあまり離れないようにお願いします」


「もしかして校内でもずっと側に付くのですか?」


お金持ちとか偉い人なら慣れてるかも知れないけど、僕は普通の家庭の子なので黒服がいる生活は息苦しくてしょうがないだろう。だから出来れば校内でくらい一人で歩きたい。


「いえ、私達は登下校の送迎のみ担当しておりますので。もしご希望でしたら職員室で申し付け下さい。」


「あ、はい」


付いてこないと聞いて少し安心した。周りが女子だらけという女子校の様な環境は相変わらず圧だと思うが、最悪周りを受け入れない系男子として振る舞えば、寂しくも安心して生活出来ると思われる。

そんなことを考えていると黒服さん達は僕を囲みながら移動し始めた。


(モーちゃん、ちゃんといるよね?)

「モー」


そして僕はモーちゃんの存在を確認してから黒服さんについていった。




「ん?えっ・・!?」

「うそ・・・!」

「あれは・・・・・・ん?んん?」


「男子生徒が初登校しております。女子生徒の皆さんは壁に寄って下さい。」


なんか見たことあるような気がしなくも無いような感じで廊下の真ん中を突っ切っていく。一部の人はモーゼの海割りみたいな物を想像するかも知れない絵面だが、僕的には周囲の黒服さんのせいで本物の王族な感じを味わっている。

唯一マシな点としては女子達が壁に寄っても頭を下げたりしないことか。もしそこまでされたら絶対驕るようになると思う。




「・・・・」

「珍しいね。男子がこんな時間に登校するなんて」

「・・・今の子の名前分かるわよね?確か男子図鑑とかいうの作ってたでしょ」


「うーん・・・それなんだけど、まだ今年の1年生完成してないんだよねぇ。まあ一応似てる子は思い付くんだけど」

「誰?」

「写真とは全然雰囲気違うんだけど、たぶん・・・桜沢くん?かな」

「・・・5000」


「うーん・・・まあ確実じゃないからそれでいいや。えっと今年入学してきた桜沢 二兎君。成績、容姿、普通。性格、弱難有り・・・だったはずなんだけど」

「あれが演技なら確かに性格は難有りかしら?」

「でも私が調べた限りでは演技×なんだよね。まあ根は良い子だったみたいだから強すぎる事もないけど、基本感情は表に出す派なはず。」

「じゃあ・・・」

「うん。初登校でこの時間に来るのと合わせると、私の調べた前評判は使えないかも。」


「よし。私、あの子狙うわ」

「私達の方が先輩だよ?圧倒的不利だって」

「でもあの雰囲気に惚れたからしょうがないわよ。じゃあ作戦立てるの協力してね」

「うぇー」




職員室。僕はこの学校に入学して2ヶ月程度のほぼほぼ新入生だ。そのはずなのに、先生側の方が緊張しているように見えるのは気のせいだろうか?


「桜沢 二兎です。よろしくお願いします」

「は、はい!桜沢君が入る、1年A組の担任教師である田園です!宜しく御願い致します!」


動きがカクカクな先生が見せる背筋90度の綺麗なお辞儀。レディーススーツの上からでも分かる胸がその動きに従って揺れるのを見て少し恥ずかしく感じた。


「ほら、田園先生。桜沢君がこんなにリラックスしているのにあなたがカチカチでどうしますか。大人として、しっかりとした見本になりなさい」

「は、はい!教頭先生!」


その田園先生のとなりにはそこそこ歳をとっている教頭先生が立っている。勿論女性だ。


「では田園先生、説明を」

「はい!・・コホン。桜沢君にはこれから私と一緒にA組に行きます。そして出来れば皆さんの前でご挨拶をお願いします。」

「はい、分かりました。」

「あ、その、A組などのクラス分けについては事前に聞いていますか?」


?普通のクラス分けではないのだろうか?

とりあえず特殊な説明は受けていないので首を横に振った。


「そうですか。えー、この学園では男子生徒はA組から順番に所属していきます。そしてA組とB~E組は格分けをされています。基本的にA組にいる生徒は成績優秀で、男子に対して真摯に接すると判断された生徒達だけです。なので桜沢君にとっても一番安全なクラスということですね」


「はあ。」


そんな風にクラスが別れているのか。・・・そうか。つまり、A組は私立高校の選抜コースみたいな感じなのだろう。それで、学校側として優秀な生徒達へのご褒美兼火薬として男子生徒を多く配置する、のだと思われる。


「ただ、もし男子生徒の素行が悪ければその限りではありません。男子生徒はクラス単位の所属では無く学年単位の所属なので、A組から下のクラスに移行する場合もあります。もちろん素行が良くなればA組に戻る事もありますよ」


あー、そうなるのか。男子の生徒が少ないならどうやってクラス分別するのかと思ったが、男子はクラス間の移動が年中起こりうるのか。でもそれなら男子も比較的我を抑えて行動するかもしれない。・・・いや、普通そんなこと無くても抑える風に育つ気がするけど。つまり僕は、


「わかりました。つまり、僕は飴なんですね」


「え」

「あ」

「・・・モー」


・・・やってしまった。つい頭の言葉が口から出てしまった。もうちょっとオブラートに包んだほうが良かった・・・よね。


「・・・まあ、そうですわね。ですがそれだけではありませんのよ?桜沢君は理解しているようですから言ってしまいますが、この方式はあなた方を守るという事と頑張っている生徒達に対する褒美の両方の意図を持っています。言ってしまえばwin・winの方式という物です。」


「わかりました。」


教頭先生が正直に説明してくれた。ここまではっきり言って貰えると僕としても安心できる。何事も多面的意味を持ってしまうのが現実なのだから学校側の意味を教えて貰えると余計に疑わずに済むのだ。


「えっと・・・」


リーンゴーンリーンコーン


「あら、SRの時間ね。では田園先生、お願いしますね?」

「はい!で、では、桜沢君は私の後ろに付いてきて下さい!」

「はい」


SRが何かは分からないけどとりあえず鐘が鳴ったので田園先生の後ろを追いかけた。


(ところでモーちゃん。さっきの「言っちゃった」って余計じゃない?)


「・・・モー」


(こっち向けコラ)

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