登校中
ピッピピッピピピ
カチャン
「・・・・・・・・・・おはよう、モーちゃん」
「モー」
何とか寝坊せずに起きることが出来たが、遅くまでゲームをしていたせいか仄かに目がしばしばする。やる時間を減らすのが一番なんだろうけど・・・目薬検討かなぁ。
二階の洗面所で歯磨き、洗顔を済ませ、制服に着替えてからリビングに降りた。
「おはよう、桜さん」
「お、おはようございます。お坊っちゃま。・・・本当に、行かれるのですね」
「うん。つぼみは?」
「お嬢様は、その、朝早くに朝練にと。」
「また?」
確か昨日は・・・日直だったか?いや用事があるだっけ。
「じゃあまたご飯食べずに行ったの?」
「いえ、私が用意したおにぎりを持って行かれましたので」
「・・・そっか。はぁ」
前の世界では疎まれてたけど、こっちだと避けられて・・・。しかも桜さんと違ってつぼみ相手だと僕も強く出れないからなぁ。
兄として妹を守ってきたからこその辛い部分である。
「あ、今日は洋食だ」
「本日から学校ということで軽めにしてあります。もし小腹が空きましたらこちらの小包を。中身はチョコレートです」
「うん(ほらモーさん。このキャベツ食べて良いよ)」
「モー♪」
「そしてこちらが昼食となっております。お昼頃には冷めてると思いますので後程専門の者に渡しておきます」
「うん(・・・美味しい?)」
「モ。モ。」
確かモーさんの好物はキャベツだったはずなので与えてみたら予想以上に好反応だった。草食とか関係ないよね?まあ、僕もドレッシングのかかったサラダは美味しいと思うけど。
食後、さっさと家を出ようとしたら桜さんに止められた。
「お待ち下さい。まだ車が着いておりませんので、食後の紅茶でもどうぞ」
「車?・・・ああ、そういえば送迎があるって言ってたね。」
(希少価値が高い故の防護って訳だね。・・・護送車だったりしないよね?)
ピンポーン
「噂をすれば影ですね。迎えが来たようです」
桜さんが玄関に向かい、僕も紅茶を置いてその後ろを付いていった。そして桜さんが扉を開けると、そこには黒い女性が立っていた。
「おはようございます。聖浄学園からお迎えに参りました」
「ご苦労様です。こちら、そちらが護衛する桜沢 二兎様です。」
「もう準備がお済みでしたか。お待たせして申し訳ありません」
「え。あ、いえ。特に」
正直僕は目の前のガチのSPみたいな人とその後ろに見えるリムジン?っぽい車で頭が混乱している。テレビの要人警護特集を見た記憶がフラッシュバック!
「お荷物お預かりします。」
「あ、はい。お願いします」
「!・・・命に懸けて、お守り致します。」
その格好とオーラから冗談と受けとることが出来ないのでたぶんこの人は本気で言っているのだろう。
僕がオドオドと荷物を渡すと、続いて桜さんが弁当を出した。
「こちらお坊っちゃまの昼食です。お出しする前に一度暖めて下さい」
「わかりました。」
・・・あ、さっき気にしなかったけど、専門ってこういうこと。
今日は朝っぱらから疑問が尽きないが、きっとこの先も色んな疑問が出るに違いない。
よし!最悪、その場の流れに任せて乗り切る事にしよう!考えようにもこの世界の女性の思考に関する判断材料が少ないし!!
「じゃあ行ってくるね、桜さん」
「はい。い、行ってらっしゃいませ、お坊っちゃま」
なんか桜さんが少し過剰に背中を伸ばしていた気がするがなんでだろう。ニートだった僕が学校に行くから・・・だったりするかなぁ?
ある程度分かってきた桜さんの謎挙動にやっぱり材料不足だと考えながら僕は学校に向かった。
「・・・桜沢家にお仕えしていて、本当に良かった・・・・!!!」
リムジン車内。そこにはメイド服姿の女性が一人だけいた。
「おはようございます。本日は、ご登校、有難うございます」
「おはようございます・・・」
「お茶、コーヒー、ミネラルウォーター、各種炭酸飲料、各種清涼飲料がございますが、ご要望はございますか?」
「では、お茶で・・・」
「かしこまりました。」
・・・え?もしかしてこの人、この車の中だけの配膳係!?只の男子高校性に対していくらなんでもやりすぎだよ!
すごく突っ込みたかったが、まずこの車内のがらんどうぶりを尋ねることにした。
「あの、質問良いですか?」
「はい。どのような質問でもどうぞ?」
「僕以外乗っていないんですが、もしかしてこの車って、僕専用車・・・だったりしますか?」
「いえ、この車両は聖浄学園所有の男子共用送迎車でございます。ただ、この時間帯のご利用が本日は桜沢様のみでしたのでこのようになっております。」
「あ、はぁ・・・え、僕一人?」
車だから着くの速いと思うけど、でも始業時間まであと30分も無いよ?つまり・・・男子生徒のほとんどが遅刻?
「はい。男子生徒は何限から参加しても良いとなっているので、皆様お好きな時間帯に参られるのです。ですが、桜沢様のように始業時間からご参加される方は非常に少ないですね。その就学意欲は我が校としても非常に嬉しく思っていると学園長のお言葉です」
「は、はぁ・・・。」
まさか男子生徒の大半がニートor不良みたいな生活だったとは。僕が特殊なんじゃ無くて、当たり前の高校生だったんだね。ごめんね、この世界の僕。
でも僕は心に誓った。せっかく親にお金を払って貰ったのだから出来るだけ通おうと。そして大半が女生徒だろうけど、友達もそこそこ作って出来るだけ楽しく生きていこう。まあ、さっさと女神様のお手伝いを終わらせて戻るならこの環境に馴染んじゃいけないんだけど。
「、まもなく学園に到着するようです。ご勉学、頑張って下さい!」
メイドさんがそう言うと間もなく車はスッと止まり、SPさん達がドアを開けた。このドアの外を考えると非常に怖いが、勇気を出して行くしかないだろう!
僕は今、聖浄学園という前世とは名前が違う高校に、立った!!
黒服「あのメイド羨ましすぎんだけど」
黒服「はー、なにあの挨拶。世の中不公平だわぁ」
黒服「まあ、私らにも優しいみたいだけどさぁ?」