とある少女の評価
今日は戦場だ。
私達はずっと待ち続けていた。
無限に続く砂漠を渡り続ける私達に癒しを与える存在を。
この聖浄学園はAクラスだけが常に男と共にいれると有名である。その独自な教育システムによって成績が良く、品行方正な生徒のみがAクラスに集められ、成績を維持し続け問題を起こさない限り男子を身近に感じられる。
逆に言えばそれ以外のクラスの生徒は運が良ければ一緒になれる程度である。
だからまずこの学校は受験の時から競争が始まっている。高い倍率を潜り抜け受かるのは最低限のこと、そこから更に良い点数を取って、更に面接で人格性格に問題なしと判定されなければならないのだ。
他の学校?ほとんどの学校が保護者やらPTAにびびって男子専用クラス作ってるから一緒になるのは無理。それこそ校舎毎違う私立もあるからそう言うところに(男子比率が多いと聞いて)入学した情弱どもは3年間泣きを見るのだ。
そして私は頑張った。超頑張った。母の助言で中二から受験勉強を密かに始め、ボランティアも行い、稼げるだけの点をかき集めて何とか!
なんとかAクラスとして入学できたのだ!やったぜぇ!
・・・・と思っていたのが3月前半。もしかして男子と一緒にお弁当を囲んだりー?などと妄想をしつつ入学してみれば、最初の入学式で一度見て以来、一度も男子を見ていない。
はぁーー????と血管がブチキレそうな程キレそうだったが、問題を起こせばAクラスから落とされ、これまでの努力が泡に帰してしまう。だからいつか、いつか男子に会うんだと私と同じくゾンビの様に飢えてしまったクラスメイトと協力しながら頑張っていた。
「ねぇ、知ってる?」
「何が。男子?」
「この学校のAクラスの噂あんじゃん」
「あー常にいれるつんぬん?」
「そ。あれね、二学期以降が普通らしいよ」
「「「はぁ!!???」」」
クラスメイトが部活の先輩に聞いた曰く、
最初の1学期は大抵の男子は来ない。
女子が理想と違いすぎて弱り果てた2学期頃から来始める。
という二つの真実が隠されているらしい・・・!!
つまり、私達も騙されていた情弱だということだぁー!!!ちくしょー!!!!
「だから2学期まで耐える事が出来ればそこそこマシになるんだって。」
「でもここの授業きついよー」
「明らかにスピード速いよね」
「まぁそれはねぇ。イベントの多さ考えたらこんなもんでしょ」
春に2回。夏に2回。秋に2回。冬に2回。他不定期。
とこの学校、最低でも学校行事が年間8回もある。この不定期というのは生徒会の意見から画期的と思われるものを突発的にやるものなので、下手すると10回を優に越える。
あ、今「こいつら成績大丈夫かよ・・・」と思ったそこのあなた。安心して欲しい。定期テストにて、規定の点数を取れなかった生徒は、次の定期テストで取れるようになるまで、修学旅行を除いて全ての行事に参加できなくなる。まあ、自習室とかビデオ教材とか一杯あるから、余程の馬鹿でも死ぬ気で頑張れば楽しめるだろう。
「で、既に最初の行事が終わって次の遠足が差し迫ってるわけですけどぉ?」
「あれは悲しかった・・・。何が悲しくて女30人で黙々と飯を食わねばならんのじゃ」
「せっかく借りたドレスが完全にゴミだったよね。あれだったらジャージで十二分だっつーの」
そう。一番最初の行事である、クラス単位でのお食事会。流石に全員が同じテーブルは無理なので5グループに別れてのご飯だったが、元々の「120分の間ご飯とデザートを頂きながらクラスメイトとお話ししてお友だちになろう!」みたいなコンセプトは男子0人が判明した時点で無くなった。
学校の昼の時間とほとんど変わらなかったのだ。ご飯は美味しかったけど。
「このまま遠足まで女30人お手々繋いでとかほんと勘弁して・・・!」
「だれか、誰か私達に心のオアシスを・・・!」
「もうこんなお互いのションベンを濾過して生き延びるサバイバルは嫌なんだぁ・・・・!!」
「うぇ、それは流石に汚すぎる。吐きそうになったぞ」
「あ、ごめん。でも気分的にはウプッ」
そんな事を話してから数日後。そろそろ目が荒んで来た私達に対して不味いと思ったのか、担任の田園せんせーが爆弾を投げてきた。
「あ、明日!このクラスに男子が登校することが決まりました!」
この一言で私達は大声を出した。心の底から叫んだ。神に祈りを捧げた。
ようなイメージをしていた。
実際にそんなことをすると態度で大きく減点を喰らうと分かっているので全員何とか歓喜の気持ちを心に押し込め、HRを過ごした。
その夜のクラスSNSは爆発していた。どんな男子なのか、容姿は?性格は?好みは?来る時間は?あらゆる事で議論が起きた。
中には嬉しさの余り、ネットの素材を作って歓喜のMAD動画を作っていた。お前宿題あるのに余裕あるなおい。
だがそのSNSも一人の「じゃあ私、明日に備えてパックして寝るわ」という一言が出ると、その他も一斉に別れの挨拶をし、結果12時前には誰も喋らなくなった。
私?さっさと宿題終わらせてからお風呂で半身浴を適度にやってから肌ケアとストレッチだけ多めにやってパックして11時には寝たよ。
そして来たる登校当日。
1年A組は全員臨戦態勢で学校に来ていた。まず、全員うすーく化粧をしている。やはりスッピンだと笑われるかもしれなくて校則違反にならない程度に薄くするのだ。こればかりは乙女の絶対心理だ。
次に登校時間!全員SRが始まる1時間前に来た。そして全員で顔があまり汚れないように、かつ丁寧に教室を掃除し直した。あと人によっては部活で汚れた上履きを捨てて新しいのを買っていた。
流石にそこまで気にする男子もいないだろうとは思うのだが。
最後に鏡!全員、異常に鏡を見る回数が多い。2分に1回は見ていた。同じ女性である私から見ても変化が分からないくらいの細かい直しをずーっとしていた。あ、もうちょっと前髪右寄りのほうが良いかな?
とここまでやっていた私達であるが、とある言葉で正気に戻った。
「そういえば、男子っていつ来るの?」
基本的に男子は自由登校となっているので、来るとしてもいつ来るか分からない。もしかしたら午後に来るかもしれない。
「先輩は初登校する男子の多くは昼頃に来るって言ってたよ」
「じゃあここまでした意味無いってこと?」
「・・・綺麗な環境で勉強出来るねやったー?」
「はぁ。肩に力入れすぎてたかもね~」
この一連の会話で私達の緊張は一気に解れ、「まあ掃除して悪いことはないでしょ」と気楽に先生の到着を待っていた。
「あ、せんせ・・・皆!男子来た!もう来てる!!」
『え!?』
まさかもう来てるなんて聞いてないよさっきから先輩の話役立たねーな畜生!
まさかまさかのSRからの出席だったが、最初の想定通りではあったのでそのまま最初のプランで行くことが出来た。
先生が壇上に上がり、一言一言喋る毎にいつ男子が入ってくるかと身構える。一番綺麗な私の姿を見せたい。この心を持たない女がいるだろうか?いやいない。
そして、男子の名前が呼ばれ、中に入ってきた瞬間・・・!
【キターーーーーーーーー!】
【キタキタキタキタキタキタキタキタキタキタキタキタ!!】
【キータヨキタキタフクガキター!】
頭の中で私達はスパークしていた。
彼の容姿はB。面食いな子からすると少し物足りないだろうけど、少し可愛らしさも感じられるし磨けばそこそこに光るタイプではあると思う!
そして体型はB+。私的には太っていないだけで全然ok!何なら腕とかを見る限り、少し鍛えているようにも見える・・・!???
最後に性格!こればっかりはある程度長期的に見ないと判定できないが、初対面の印象ではEXを飛び越えてEX+と言って良いと思う。
なんせ、私達の質問に全部答えてくれた挙げ句に最後の笹見の馬鹿がやらかした質問にもきっちりと答えてくれたのだから!(ちょっと曖昧だったけど)
それでいて答えるときにちゃんと質問者の顔を見ながら返しているからたぶん彼は私達に対する忌避感とか嫌悪感とかはほぼ存在しないとみた!なんなら好きな人を答えた時の少し照れた顔可愛すぎて鼻血出るかと思ったわぁぁぁぁ!!!
よって私の彼への判定はEX!何がなんでも結婚してください、お願いします!一生不自由無く養い続けますからぁぁぁぁ!!!!
・・・・しかしゲームか。私受験の時から絶ち切っちゃったからなぁ。なに遊んでるのか調べてママに頼んで買って貰お。最悪宿題は学校で終わらせればいいしね。
ちなみにこうして頑張ってる私でも成績はクラスの中位くらいなので彼の席からは遠いです。ちくしょう!上位が羨ましい!!
この子誰だろうね