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えんげきっく!【レドラスタジオ・アーカイブス】  作者: 彩条あきら


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第02話 第五の部員・後編

    * * *


「ちょっといい?」

 それはその日ホームルームを終えた情也が、帰り支度をしている最中のことだった。

 何故か突然、難しい顔をした日野愛理が情也の元へとやってきたのである。

「ゲッ、お前か。一体何の用だよ」

「人の顔見るなり『ゲッ』て何よ。失礼ね」

「はいはい。で、本題は?」

「倫のことよ」

 日野愛理は大層真剣な眼差しをして言った。


「話は聞いたけど、あんまりあの子を助けたりしないで。前に言ったと思うけど、倫は勇気を身につけなきゃ駄目なの。何かあってもひとりで解決出来るようにならなくちゃ、社会に出て生きていけないんだから」

「どっかの教育ママかお前は」

「茶化さないでよね」

「それならひとつ教えてほしいんだが、何かあっても助けるなっていうのは、亜麻乃自身が言い出したことなのか? それともお前が決めたことなのか?」

 情也は聞いた。個人的にはとても重要なことだった。

「一応アタシの提案だけど、それがどうしたっていうのよ」

「そうか。じゃあ断る」

「何でよ⁉」

 情也が無下に言い放った言葉に、憤る日野愛理。自分の言われた意味が全く分からないといった具合であった。


「何でもクソもあるか。一体どうして、俺がお前の決めた方針に従わなきゃならん。アイツにとって何が一番良いのか、決めるのは亜麻乃自身だ。お前の見解なんかどうだっていい」

「だから言ってるでしょ、倫自身が強くなりたがっているんだってば!」

「だから、そんな急に無理させたって上手くいく訳ねぇだろうが。どうしてもっていうなら、せめてこの間みたく衣装着せてからやらせろよ」

「駄目よ、それじゃ訓練にならないでしょ」

「どうしてお前がそこまで指示するんだよ」

 言い合っているうちにイライラしてきたせいか、情也も次第に語気が荒くなってきていた。それを見ていた周囲の生徒たちは先日同様の危険を感じ取ったのか、いつの間にかそそくさと退散し始める。混ぜるな危険、とは正にこのことであった。

 どうにも情也と日野愛理は相性が悪いようだった。


「言わせてもらうが、お前は少し他人の痛みに鈍感すぎる。人間ってのは弱いんだよ。誰も彼もがお前みたいに、かかってくる問題を全部正面突破出来る訳じゃないんだ。そのぐらい分かっとけよ、このスカタン」

「勝手に人を馬鹿みたいに言わないでよ! そっちこそ――」

「日野さんはいますか?」

 絶妙なタイミングで須田教諭が現れた。彼は教室前方の入り口から顔を出して、それから言い争っている情也と日野愛理の姿を見て目を丸くする。誰だってそうなるだろう。

「お邪魔かな?」

「あ、いえ、別にいいんです。演劇部のことですか?」

「ええ、そのことで少し相談が」

「分かりました。霧島、ちょっとそこで待ってなさいよ」


 そう言って須田教諭の元へと行ってしまう日野愛理。帰りたいんですけど?

 そんな情也の都合は気にも留めずに、日野愛理は何やら演劇部の状況について須田教諭と熱心に話し始めてしまった。その内容が大まかにだが情也の元にも聞こえてくる。

「――存続が危ないって、どうしてですか⁉ この前の劇で確かに――」

「――部活動予算縮小の関係で、承認のための最低人数が五人に――」

「――そんな急に変更されたって――」

「――キリのいい数字のほうが生徒も分かりやすいだろうって、教頭先生が――」

 分かりやすいどころか、はた迷惑でしかないだろう。教師の下らない思いつきに生徒が振り回される構図はどこも同じのようだ。こればかりは日野愛理に同情した情也であった。


「―― 一体どうすれば――」

「――そのことだけど、学校の他の部活と合同で予算決定のためのコンペを六月初旬ごろに開催するそうだから、それまでに部員をもう一人見つけてきて――」

 もうこの時点で不穏な空気を感じ取っていた情也は、出来るだけ音を立てないようにして鞄を脇に抱えると、そのままコッソリと教室を抜け出してやった。

「ちょっときりし――って霧島どこ行ったの⁉」

 日野愛理の()頓狂(とんきょう)な声が彼方より聞こえてくる。須田教諭の言葉の意味を理解した彼女が振り返ったのは、ちょうど情也が教室後方のドアより退散した直後のことであった。

 三十六計逃げるに如かず。面倒事はスルーが吉なのだ。

 さっさと帰ってやりたい事をやろう。そう思って情也は自宅への道のりを歩き出した。

『本当に、それでいいのか?』

 情也は思わず沈黙した。

『演劇部が潰れれば、あんなにも頑張っている亜麻乃倫の居場所はなくなる。それで本当にいいのか? 日野愛理の言うことにだって一理あると、お前は分かっているハズだ』

「うるさいよ」

 情也は冷たく呟いてその声を振り払うと、仁と合流すべく一階の昇降口へと急いだ。情也の周囲には彼以外、誰の姿もありはしなかった。


    * * *


 夜。

 自室で机に向かう情也の前に、比較的大きめのノートパソコンが起動していた。その画面を見つめ続けながら、情也はイライラを表すかのように頭髪をワシャワシャと掻きむしる。

 その幅広の液晶画面には現在、情也の書き進めている最新のオリジナル小説が表示されていた。だが事前に準備しておいたプロットに沿って進めているにも拘らず、何故か一時間程前から一行も筆が進まないでいた。何を書いてみてもどうしても違和感を覚えてしまうのである。こういった創作活動を始めてもう四年にもなるが、これほどハッキリとスランプ状態に陥ってしまうのはおそらく初めてのことであった。

「あーもう、くっそ!」

 情也は苛立ち紛れに叫ぶと、持っていたアイデア帳を机の隅に放り出した。このまま考え続けていてもきっと駄目だ、と思った。煮詰まってきているなら、嫌でも一旦休むほかないだろう。情也がグデッと椅子の背もたれに体を預けると、県営団地の古びた天井と蛍光灯の白さが視界いっぱいに広がって見えた。

 情也は椅子から飛び降りると、自室の一角にある本棚へと近づいていって、その一番下の段にある引き出しから一枚の色紙を取り出した。


 フルカラー印刷の上から、黒の油性ペンでサインを書き込まれた色鮮やかな色紙。

 『ケーリンズバイダー』。

 それが色紙の真ん中に陣取る特撮ヒーローの名前だった。

 赤いスーツに白いマフラー、部分的に黄色のアクセント。大きな複眼を伴ったマスクの額からは昆虫のごとき触角を伸ばし、その胸部に大きくシンボルマークの『Z』を掲げた正義の戦士。『平成マスクドケーリン』シリーズの第一弾と銘打たれたそのヒーローこそが、情也が生まれて初めて観た日本の特撮ヒーロー作品なのだ。

「……懐かしいなぁ」

 そう呟く情也の脳裏には、かつてこの色紙を受け取った日の出来事がまざまざと思い起こされていた。

 ある幼き日、母親に連れていかれた近所のショッピングモールで子供を襲う悪の怪人たちと対峙しながら、一人勇敢に立ち回っていた変身ヒーロー。そのショーが終わった直後に目の前で配っていた色紙にサインをしてくれた上、小さかった情也の手を握ってくれたその手の暖かさと力強さ。それを情也は今でも覚えている。

 あの日あの体験こそが、今こうして情也が特撮ヒーローへの憧れを持ち続け、仕舞いにはオリジナルのヒーロー小説を書いてWEB公開させるまでになった、そもそものキッカケであった。いずれは本家シリーズのシナリオ制作に関わりたい。それが現在の情也が抱く最も大きな夢であり目標であった。

 情也は色紙を眺めながら、フフッと小さく笑みをこぼした。


『――だが今のお前は、果たしてそれに相応しい人間と呼べるのか?』

「アーアー、聞こえない聞こえなーい」

『誤魔化したって無駄なことだ。私はお前の心に直接語りかけているのだからな』

「ふざけろ、そんな都合のいい設定があってたまるもんか」

『……お前はどうして、そう(かたく)なな性格になってしまったのだ』

「うるせえ。大体昼間から思ってたが、アンタ一体何者だ。そろそろ姿を見せやがれ!」

『お望みとあらば』

 すると次の瞬間、『トウッ』という威勢のいい掛け声とともに、換気のために開けておいた窓から何者かがカーテンを揺らし、室内へ颯爽と飛び込んできた。シュタッと音を立てて軽快に部屋の床に着地したその存在は、全体的に赤い色合いをしていた。しゃがんだ状態から立ち上がってみるとスラリとした高身長で、とても筋肉質な見た目だった。


「……………………え?」

 情也は茫然とさせられた。

 かつての憧れが、いま目の前に立ちふさがっていた。

『ハァーッハッハッハッハ! 正義の味方、ケーリンズバイダーただいま参上!』

「はああああああああああああああああああああああああ⁉」

 状況が全く理解できなかった。理解しろという方が無理な話である。

 色紙の中に描かれたケーリンズバイダーの姿が、そのまんま現実世界へと飛び出して来ていた。一体何が起こったというのだろうか。

『ハッハッハ。驚いたかね情也』

「当たり前だろうが! っていうかなんで現実にいんだよ⁉」

『ハッハッハ。まぁ、細かいことはいいじゃないか!』

「良くねーよ! 気になるわ!」

『ハッハッハ。それよりも情也、私は悲しいぞー』

「何が」

『ハッハッハ。とぼけるのはよしたまえ。お前は演劇部を見捨てようとしているじゃないか』

 何故かその言葉は、情也の心にぐさりと突き刺さった気がした。


『私の活躍を誰よりも見てきたお前ならば、知っているハズだ。ズバイダーの魂は愛とともにあり! とね。困った相手を見捨てない。悪を決して見逃さない。それこそが、ケーリンズバイダーたる私の根本要素なのだよ』

「……それは、アンタ個人の話だろうが。俺ら一般人にまで押し付けるんじゃねえ」

『ハッハッハ。それはそうさ。生半可な覚悟で人を愛そうとしても不可能だからね。だけど情也、お前は本来そうするべきなんだよ』

「何で?」

『お前はそもそも、私への憧れを元にヒーローの世界を描いているのだろう。ならば普段の行動で、私の示した魂を否定しようとしているのはおかしな話じゃないか』

「うっ……」

『目の前で困っている人間を見捨ててしまう者が、正義と愛の戦士を描こうって? それはスランプにもなろうというものだよ、情也。君自身の主義にも反することだろう?』

「うるせぇ、見捨てる見捨てる言うんじゃねえよ。大体、自分の嫌な思い出封じ込めてまで他人に奉仕できる奴なんか、そうそう簡単にいてたまるかっつーの」

『ハッハッハ。それはそうかもしれないがね!』


 どうでもいいが、事あるごとに胸を()らし高笑いするその仕草は途轍(とてつ)もなくウザかった。

 ケーリンズバイダーとはこんなキャラクターだっただろうか? 情也は段々自分の記憶を怪しまざるを得なくなってきていた。確かに市民の悲鳴を聞きつければ、ゴキブリ一匹退治するためだけでも駆けつけるような献身的なヤツではあるが。ここまで押しつけがましい上に笑い声のウザい人物ではなかったハズである。

 情也は静かにため息をついた。

「……大体、いつまでも昔のままでいるなんて、そんなの不可能なんだよ」


 それは本心からの言葉だった。

 ズバイダーとは人間を愛する戦士である。かつて情也がその姿勢に憧れたことを否定する気はないし、今更ズバイダーを偽善的とか呼ばわる気も毛頭ない。だがしかし、今の情也がその姿勢を真似しようとすることは不可能だった。情也は人間が嫌いなのである。

 別に劇的な出来事があったとは言わない。それでもいつの頃からか、情也の記憶の中では人間の醜く、おぞましい部分ばかりが幾度となくリピートされるようになっていた。

 他者を見下し(えつ)に入る姿。大勢で一人を痛めつける姿。過ちから決して学ばない姿。

 そういったものばかりを見るにつけ、次第に情也の中で人間とは(いつく)しみ守るべき存在ではなくなっていった。ただ見苦しく、ひたすらに救いようのない存在へと真っ逆さまに()ちていったのである。情也はそれらが嫌いで嫌いで(たま)らなかった。

 そして何より。

 そういう感情しか抱けなくなっている自分が、一番嫌いだったのである。


『何も、そこまで思いつめることはないだろう』

 ズバイダーが言った。

『少なくともお前は恩返しという建前ではあるが、亜麻乃倫を、演劇部を助けたのだからな。変わってなどいない。口先では嫌い嫌いと言いながらも、お前の人間への愛は無くなってはいないのだよ』

「そりゃどうも。つぅか、アンタ結局何しに来たんだよ。今まで何処にいた? 俺を(けな)したいのか、持ち上げたいのか、一体どっちなんだよ。ハッキリしてくれ」

『さぁて、どうなんだろうねぇ』

「勿体つけるのやめろ。用がないなら帰ってくれ」

「そうしよう、ハァーッハッハッハッハ!」

 そう言って再び鬱陶(うっとう)しい笑い声を上げると、『トウッ』と叫んでズバイダーは入ってきた窓からもう一度外へと去っていった。嵐を呼ぶとはこういうのを言うのだろか。

『さらばだ、情也! 私はいつでも、君の心とともにある。それを忘れ――』

「帰れ!」


 外から性懲りもなく声がしたので、情也はイライラを抑えられず怒鳴り返した。心身ともに疲れ果てたような気がして、情也はそのままパソコンの前に突っ伏してしまった。

 それから、世界が暗転するような感覚があった。

 情也が顔を上げると、いつの間にか深夜の時間帯になっていた。何だか途轍(とてつ)もない悪夢を見ていたような気がして、情也は頭がクラクラとするのを感じた。

 情也はそれから大人しくノートパソコンを閉じ、そのまま風呂場に直行することを決めた。入浴と睡眠は頭をスッキリさせる最上の手段である。そうでなくても、情也は風呂に入るのが好きだった。

 入浴剤をぶち込んだ浴槽に浸かり、久々に思い出した『ケーリンズバイダー』の主題歌を口ずさんだりしながら、情也は三十分ほど一人で風呂を堪能した。

 どうでもいいが、ズバイダーの登場が明らかに不法侵入であると気付いたのは、風呂から出て体を拭き、寝巻を着込んでいる最中のことであった。


    * * *


 これより先は、情也が後に聞かされた話である。

 あくる日の放課後、演劇部室は緊張感に包まれていた。

「今日は皆さんにふたつお知らせがあります。ひとつは、約ひと月半後の部活動予算コンペの開催が正式に決定しました。ここで実力を発揮できないと、入学直後からの頑張りが全て無駄になってしまいます」

 亜麻乃倫、大和芽衣、瀬野宮優子、そして日野愛理の四名は、彼女らの前に立った顧問の報告を真剣きわまる表情で、一言一句聞き漏らさないようにしていた。

 各自の示す反応は概ねいつものソレと変わらなかったが、とりあえず一番不安げな表情をしていたのが亜麻乃倫だというのは説明するまでもないだろう。日野愛理も緊張を見せていたが、それはどちらかといえば負けてなるものかという決意の顔に近かったかもしれない。


「いよいよ、覚悟を決めなきゃ駄目みたいね」

「頑張ろうね、愛理」

「い、いっしょう、懸命、頑張り、がんばり、ます、えと、あの、」

「……やるしかない」

「問題は部員だけどね。霧島はアレから逃げっぱなしだし、ホントにやんなっちゃ――」

「そして、ふたつ目のお知らせは」

 それらを見渡してから、須田教諭は続けた。

 全員が思わず黙り込む。

「演劇部に入部希望者が現れました。これで人数の問題についてはクリアです」


 これには一斉に驚きの声が上がった。

 特に日野愛理などは須田の方に身を乗り出して、体全体で喜びの意を表していた。

「せ、先生、本当に入部してくれる人がいたんですか⁉」

「ええ。もう、部室の外に来てますよ。中に入ってもらいましょう」

 そう言って笑顔の須田は入口の方に向かって歩いていった。

「ど、どんな、人、でしょうか」

「こんな大変なときに入ってきてくれるんだもん、いい人に決まってるわよ」

「そ、そう、でしょうか」

「じゃ、中へどうぞ。ようこそ演劇部へ」


 須田がドアを開けた。

 瀬野宮優子が興味津々にそちらを見た。

 大和芽衣が無言で顔を上げた。

 亜麻乃倫が不安げに手を握りしめた。

 日野愛理がそわそわしながら、廊下に立っていた人物の顔を注視した。

 次の瞬間、ほぼ全員が息を呑んだ。

「なーにが、『いい人に決まってる』だよ。調子のいい」

 そこに立っていたのは、紛れもなく霧島情也であった。

 日野愛理と亜麻乃倫が、殆ど同時に椅子から落ちそうになって机にしがみついた。


「霧島!」

「じょ、情也さん!」

「ま、そういう訳だから。今日からここで世話になるわ。よろしく」

「あ、アンタ本気? 本当に演劇部に入ってくれるの?」

「あー、うるせえな。そうだよ、本当に入部するんだよ。なんか文句あるか?」

「べ、別にないけど」

 不本意ながらな、と情也は心の中で付け加えた。

「情也さん……よ、よう、こそっ」

「ああ、よろしく亜麻乃」

 そう言ってまたまた頭を下げてくれた亜麻乃倫に、情也は優しく言葉を返した。

 自分を見つめてくる彼女らの表情を見返しながら、一体何をやっているんだか、と情也は自嘲気味に首を振った。


 もう、関わりたくなかったハズなのに。

 どうして自分はここにいるのだろう。

 本当に自分という男は甘いな、と情也は軽くため息をつくのだった。

「よーし、これで部員も五人分揃ったし、今から彩ヶ守高校演劇部、正式スタートよ!」

「お、おーっ」

「おー!」

「……おー」

「その前にひとついいか」

「何よ」

「俺が入部するのはいいが、それには条件がある」

 情也は言った。日野愛理が途端に恐れをなしたような表情になる。


「な、何よ……まさか自分を部長にしろとか言う気?」

「そんなんじゃない。もっと簡単なことだ」

 情也はここでちょっとタメを作ってみた。全員の顔を見回してみる。

 大和芽衣を除くほぼ全員が、何やら不安げな面持ちをしていた。

 大和芽衣は特に表情を変えていなかったが、若干情也を品定めするような目つきになっている。それが情也にはおかしくて、小さく息を吐くように笑ってしまった。


「部室を掃除してくれ」

 その瞬間、その場にいた全員が呆気にとられたような表情へと変わった。

 まあ、拍子抜けだったろう。

 日野愛理以下四名の女子にて使用されていた演劇部室は、相変わらず埃と木屑にまみれたままになっていた。先日情也が招待されたときから、一切掃除をした痕跡がなかった。

 こんなんでやっていけるのかと、情也はまた再びため息をつくのだった。


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