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作者による解説 in 2021

本作の執筆は、主に大学一年から二年の頃。こんな内容ですが引き続きラノベ新人賞に送りつけてます。結果は言うまでもなし(笑)。ただ改めて読み直すと、意外に面白いというか当時の自分について色々発見があって資料としてはそれなりに価値が。


執筆とキャラクター造形の意図は、ズバリ「自分が中学・高校で見て来た『現実の学校の風景』をラノベの世界にぶち込む」ことでした。もっとハッキリ言っちゃうと「物語の中で描かれるほど学園生活なんて楽しくないよね」ってことです(蹴


当時は「現実とフィクションの乖離」に非常に苦しんでまして、自主映画の破綻にまつわる諸々で「俺の作ってるドラマなんの役にも立ってねーじゃねーか!」と無力感を覚えたのも序の口、高校卒業間近に仲良しと思ってた友人グループの卒業旅行に参加を表明したら、よりによって卒業式が終わったその日の夜に「ねえ君のこと誘ったっけ?実は私君のこと苦手なんだよねえw」と幾度か本の貸し借りまでしたリーダー格女子からメールが送りつけられ一人だけ卒業旅行からハブられたうえ、輪をかけて最悪なことにその数日後「仮面ライダーフォーゼ」26話の感動的な卒業式エピソードを観る羽目になるという(死亡)


”苦しく辛いことがあっても終わり良ければ総て良しさ!最後ぐらい三年間共に過ごした仲間たちと感動的な別れが待ってるよ!”と自分を鼓舞して地獄の学園生活を耐えていた自分には、卒業式当日に一番最悪の出来事が起きて、最後の最後まで何の救済もなく終わるという過酷な現実は相当堪えまして。マジでこの時期、声が出なくなってて無理矢理絞り出しても、かすれたような声量でしか喋れなくなったりしてましたよ…まあそんな状況でも、現実逃避の手段は自主映画だったりするんですけどね。休めよ、当時の自分。



* * *



こうした体験を消化したいという想いに、中学時代に所属していた演劇部での嫌な体験がドッキングします。今思えば、この物語で主人公の所属先が「演劇部」である必然性って特にないんです。本当にただ中学時代に自分が属していたからそれなりに詳細に書けるってだけで、別に好きでも何でもない。しかも当時配信などで見ていた特撮ネタをぶっこもうとした形跡が見られて、親和性がないからカオス度が増している。毎話冒頭に挿入される『東映特撮パロディ演劇』の場面とか、元ネタ知ってると爆笑だけど、知らない人には何が何だかw


本作読み返して一番初めに思うのが「日野愛理めっちゃウゼえ……」だと思うんですけど(自分で書いといて)、これ原因は彼女をジェットマンの天堂竜=レッドホークのポジションにしようとしたから。正義の味方なのに、自分の都合で上から目線の正論を巻き込まれただけの一般人に押し付けまくり反感買うっていう。考えて見たらこれ、フォーマットありきじゃないと伝わらないね。


作中で言及した「卒業したハズのOB・OGが延々居座って現役部員より権力を振るってしまい院政だか摂関政治みたくなる」って現象も、中学時代に実際に起きたこと。そしてその所為で現役部長にフラストレーションがたまり、OGが来なくなって以降も態度が極端に独裁的になったり、部員への指示が現実問題一切を黙殺した理想論オンリーになって軋轢が生まれるという…それ以外も諸々、基本的にぜんぶ自分の実体験。


演劇部には主人公含め五人の部員が存在しますが、何だかんだで彼ら彼女らの背景も作中で明示されることはありませんがちゃんと設定済み。手元に資料が残ってますので、そこから面白そうな部分をひとりひとり抜粋していきましょう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


霧島きりしま情也じょうや

基本的には小説家志望で、ヒーローもののラノベを書いて一発当てようと意気込んでいる。ネット上でも割と名前の知られた作者で固定ファンもいるが、アンチが多い。

親兄弟からの愛情不足、喧嘩の末の事故死など辛い経験が重なったショックが原因で、深層心理に七歳当時の記憶が焼き付いており、精神状態が極限まで不安定になると、その当時の人格が再現され幼児退行を引き起こすことがある。「お姉ちゃん、お日さまの香りがする……」

(以上資料から抜粋)


…早速やべーことが書いてあるw


劇中で、階段の隅で声を殺して泣くって場面がありますけど、あれ確か中学時代の実体験ですね。当時物凄く涙腺が弱かったんですけど、自分が男というのもあって涙を流すことに凄まじく罪の意識があった。慰めたり抱き締めたりしてくれる人の登場を期待してたんだろうなぁ。あと情也にだけ見えるヒーロー幻覚が作中で好き放題に喋ってますけど、あれも高校後半以降の実体験由来。一時期幻聴が酷くて正体不明の誰かから脳内で延々罵倒されてたんですよね。それをネタにしたら作中の様になりました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


日野ひの愛理あいり

演技のクオリティは情也よりも上だが、熱が篭もりすぎて自分に酔い、他者への指導が下手という欠点がある。その点を補ってもらえるという意味で、情也とはいいコンビネーションを見せる。言動は一直線で嘘がないが、実力が伴っていない傾向あり。霧島情也との関係は、『鳥人戦隊ジェットマン』における天堂竜と結城凱の関係性を適用。

(以上資料から抜粋)


「男らしくない」ってやたら言われるのは、母親が理不尽な振舞いするたびそう言って逆ギレ繰り返していたのと、確か部活でも何度かそういう趣旨の攻撃されたり、先述の人目を忍んで泣いたりした記憶が原型じゃないかなぁ。ただ、いくらジェットマン的対立のイメージとはいえ、仮にもメインヒロイン格のキャラが主人公を追い詰めて泣かせるってのは流石にどうなんだろうねw


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


瀬野宮せのみや優子ゆうこ

そばかす持ちだが、親しくなればそこがチャームポイントに見える、笑顔の素敵な女の子。やや控えめで奥手だが、本人によればそれは小学生の頃にそばかすを男子に馬鹿にされた経験からくるものだという。かつてやっていたブログで国際問題に対しての意見を書いたところ、運悪く内容を曲解されて閲覧者から『差別主義者』『ぶつぶつ女』『日本人じゃない』などと酷く罵られ、反論すればするほど傷ついたという過去がある。

(以上資料から抜粋)


ブログ云々は実体験由来。これはもう多く語らないことにしましょう(苦笑)


そばかす云々の設定が強調されてますけど、これ当時の僕が二次元萌えイラストを楽しみつつも、同時に「なんで皆して綺麗な肌の娘ばっかりなんだ!不自然だろ!ニキビやそばかすのある子の存在を黙殺するのは差別だ!」と、そばかすヒロインを作る使命に燃えていたため。いわゆるルッキズム批判って奴ですね。1~2年ぐらい物凄く気にしてたんだけど、ある時期からなんかもうどうでもよくなりましたね。何故だ。でも実際問題、そばかすヒロイン居たっていいよね。可愛いじゃん。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


亜麻乃あまのりん

部室内では主にゴスロリっぽい服ばかり着ている。着る服によって性格が大きく変動する天才肌少女。“その役柄の心情”に必要以上に同調するため、殆んどの場合『人格そのもの』をトレースしてしまう。ただし本人は、優柔不断な自分には個性がないと思い込んでいる。野○間友子リスペクト!

(以上資料から抜粋)


これは最後の一文にすべてが籠められてますね。本放送時から「フォーゼ」の友子ちゃんひたすら大好きだったんですよ。単独でも可愛いし、公式カップリングの流友が最高だった。劇場版にまで何度も持ちこされるしね…だけど実際リスペクトしたつもりで描いてみたら、作中の倫は一度もゴスロリなんて着なかったな。挙句にサムライ口調で喋りだす。彼女は何処へ向かっていたんだ。


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大和やまと芽衣めい

指示された内容は一言一句違わず正確に実行するが、裏を返せば一切の応用や機転、融通と言ったものが利かない、ロボットとも形容可能な人物。『判断』や『加減』が苦手。実はとある会社の社長令嬢であり、幼い頃より両親から厳しい教育を受けて育ってきた過去を持つ。そんな中で、親の命じたこと以外は一切何かをすることが許されず、また逆に指示待ちをしていれば「気が利かない子」と罵られた。それがあまりにも長い間続いたため、彼女は自分の意思や感情を放棄してしまっている。財産的には余裕がある反面、両親共に留守にすることが多いため、普段はいつも家で一人。綾波○イ!長門○紀!感情希薄少女というのを現実的に解釈してみたらこうなった。

(以上資料から抜粋)


これも完全に当時の僕の家庭環境というか、毒親全開だった母親との関係性から生まれたキャラ。自分は後にASD/発達障害/自閉症スペクトラムと判明しましたけど、当時はそういう言葉も自分に当てはまるとさえ思っておらず、何をやっても因縁をつけられ罵倒され続けることから、母親相手に感情表現を『無』にする努力をしてました(そしてほとんど成功しない)、そういう『感情が死ぬ』状態になったらアニメとかによくいる感情希薄少女もリアリティあるのかな、という想定ですね。なお似た様な理由で、時期はズレるが東映が配信した「がんばれ!ロボコン」を観て超本気でロボコンを応援してた。あいつは他人には思えない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


友枝ともえだじん

正式に所属してはいないものの事実上6人目の演劇部員。

中学校時代は卓球部の幽霊部員だったらしいが、詳細は不明。

(以上資料から抜粋)


いわゆる主人公の親友ポジション。彼もたしか部活がらみで嫌な目に遭った想定で、ぶらついていた時に偶々主人公と仲良くなったって裏設定があったのですが、具体的にどんな過去があったか資料にも記載してないのでもはや分からない。なんか「CLANNAD」あたりからの影響がある気がする。なお話が続いたら瀬野宮優子ちゃんと恋愛関係になる想定もあった。


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須田すだ淳一じゅんいち

終始人の良さそうな笑みを浮かべている。物語上、マミられてカニられる人物。


姉川あねがわ玲子れいこ

作劇には参加しないが、時代考証や言い回しなどの参考資料の収集で部に貢献する。真の顧問!

(以上資料から抜粋)


教師がらみの描写は、僕が大人への不信感に満ちていたことが全ての源泉。表面上良い事言ってるニコニコ顔の奴が実は信用できないクズで、下手に建前を使わず明け透けに本音をいう人の方が嘘が無くて信用できる…みたいな。あとどうでもいいけど、姉川先生の初登場シーンで国語総合の授業やってますが、この場面で言及してるのはまんま自分の自主映画の内容だったり。



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国村くにむらみつる


こんなキャラいたっけ…? と思ったが実はこいつ『二年生編』を想定して準備した後輩キャラ。ええ、こんな作品ですけど続編を書くつもりでいたんです。当時の資料によれば、設定は以下の通り。


基本的に強気な少年だが、“少女の人格”を内に秘める二重人格者。幼い頃から父親がおらず、自分以外の家族は4人全員が母親や姉であるといった、女性ばかりに囲まれた環境で成長する。母親は過剰な“男女平等主義者”で、男を逆差別してまでも女が優遇されることを『男女平等』と妄信。しつこいほどに「男は女を敬わなければいけない」と言われ続けて育ち、姉や妹に召使のように扱われながらもそれを当たり前のものと思い込んでいた。

13歳の頃それに疑問を抱いて母親に訊ねたところ、苛烈に暴力を振るわれる。その体験の中で彼は、「自分も女だったら」と思ってしまう。その頃から彼は、無意識のうちに自分を女性と思い込んだような言動が表出するようになり、気付いたときには人格が分裂していた。それがバレて母親に虐待を受け、児童相談所に保護される。一度は家庭に帰るが、その後再び虐待される。以来、実母とは離れて暮らしている。“女になりたい”という感情を押さえ込むため、彼は過剰な「男らしさ」を求めた外見や言動をするが、それでも頻繁に「女人格=ミツル」が顔を出す。

(以上資料から抜粋)


…まーたヤバいことが書いてあるw


でもこの、歪な男女平等を押し付けられた少年が疑問を抱いたら母親に虐待され「自分も女だったらいいのに」と願ったことで人格が分裂する、って完全とは言わないけど大分やはり自身の体験が元になってます。画一的な…というより、女が不正や無責任に居直るためだけに振りかざす「男らしさ」への反発が当時物凄くあって、それが直球で反映されてるキャラクター。当時またLGBTとかSOGIの概念知らなかったんだよな。しかし、ネットに公開する想定がなかった作品では大分明け透けに自分の状況書いてるなぁw


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


以上、キャラクター裏設定紹介でした。


なお本作、書いてく過程で亜麻乃倫ちゃんが可愛くなってしまい、彼女をメインヒロインに変更した18禁版サブルートの構想もあったり。当時のメモによれば仮題は『A LOVE OF A MIRROR SIDE』…どうも今回紹介した以上に初期設定はヤバい内容だったようですが、長くなるので割愛。


しかし、こうやって振り返るとキャラクターものがやりたいのか、私小説がやりたいのかさっぱり分からない。高校卒業後から大学在学中の期間に個人で書いた長編小説は、大体みんな同じ状況に陥ってますが、そこら辺のバランス感覚に苦慮してたんでしょうね。現実優先なのか、現実逃避優先なのかどっち?っていう。


現実世界を克明に描いても当事者は見て見ぬふりをし、現実逃避に振り切っても狂的に突撃を敢行してくる馬鹿に荒らされて逃げるのも許されない。笑ってしまうぐらい「表現」が無力だった。表現者であることしかアイデンティティが無いのに、肝心の「表現」に意義が見出せないっていう苦しみは中々ひどいですよ。まさしく「こんなモン作ったところで結局何の意味があるの?」って問いかけ。大学半ばぐらいまでずっとそう。寄りによってクリエイター養成の大学に通ってるのにw


幸い大学生活は楽しい事ばかりだったので少しずつトラウマは緩和され、卒業直後ぐらいからやっと自分の中で折り合いがつけられ始める訳ですが。まあそれ以前に、よく自殺とかしないで済んだよね、真面目な話。

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