第一話 機械都市メカ・メカ(1)
ラジオから火が出た。
それは午前4時のことで、街ではボク一人だけが起きていた。
いや、もう一人起きていたが、それは犬のイフリートだ。ラジオから出た火が燃え移って、そのままどこかへ消えてしまった。それ以来ボクはイフリートを探して街をさまよった。
しばらく探したが、もうこの街にイフリートはいない。旅に出なければならないようだ。
すべての発端である焼け焦げたラジオを修理すれば、何か手がかりを受信できるかもしれない。腕利きの機械屋ならば直せるだろう。
機械の都メカ・メカに辿り着いたのは夜だった。
ラジオ男A「それ、修理したいのかい?
なんだこりゃ、かなり古いタイプだ。
あの水車小屋が見えるかい?
オレの弟が住んでるんだが
そいつなら直せるかもしれない」
ラジオ男B「それ、修理したいのかい?
それより僕と踊らない?
昨日までは、かわいいギターガールがここにいて
毎日僕と踊ってくれた。
でも、目が覚めるといなくなってた。
ラジオをいじる元気なんて出ないよ。」
ラジオ男C「それよりも、富士山に登れ。
電波教団に入れ。
君のラジオは壊れていない。」
ラジオ男D「ウソだ!
そんなことよりも野球クラブに入ろうぜ。
グローブを買えよ。
バットは貸してもらえるよ。」
ラジオ男E「待て、待て。
脳の中には一カ所だけ、鉱石質の部分がある。
そこであの御方の声を受信できるはずだ。
すべてを見通す御方。
君の犬の居場所もご存知だ。」
☆
どうやらメカ・メカには四方八方にラジオ波が飛び交っているらしく、ボクの頭の中は声でいっぱいになってしまった。目が回って、うずくまっていると、またもう一つの声がした。
???「君、それじゃまるで裸であーる。この街では特殊のスーツが必要であーる。」
ボク「何者だ!?」
つづく