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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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終末

街では安全だと思われた所までもエンディアたちが迫って来ていた。

SBやギルドの隊員たちのお陰で被害は食い止められるものの、それでも皆が慌てている。

「クソ! もう終わりだ!!」

そう嘆く男を襲うエンディアをレイシスが蹴り飛ばす。

「諦めてんじゃねぇよ!」

「お前らなんか端から信用しちゃいけなかったんだよ!! くそ...! くそ!!」

レイシスはその男をただ見ていた。ただそう言われることに悔しさを噛み締めながら。

絶望の嘆きが街に響く。

すると、街の大きなモニターの画面が急に変わった。

《やっほーみんなー! ミユっすよー!》

ミユだ。人気ネットアイドルのMoon...ネット社会になった今、知らない者はいない。

何度も大きな歌番組にも出ているからでもある。

スピーカーから彼女の声が聞こえる。

《みんな、覚えてる? あの時、みんなの目の前に現れたヒーローたちのこと...。》

「なんだ...? ミユちゃんじゃないか...?」

レイシスは周りにいた男たちがモニターを見つめていることに気付いた。

「ミユたん...何を...?」

《今、彼らが皆のために命をかけて戦ってるの! それなのに…皆が..諦めてどうするのさ…?》


「私もね...ちょっと前なら皆みたいに諦めてたかも...。だから凄く気持ちは分かるよ...! でも...でも、今、巨大な敵を前にして立ち上がっている…!」

「お願い! もう一回...もう一回だけでいいの...! ヒーローたちを信じてあげて...!」


街にある街灯モニターのすべてにミユが映り、そして彼女の声が聞こえた。

彼女はBGMとしてMoonの曲、off vocalバージョンを流した。疾走感があり、聴く人の気分を高揚させるようなそれは、絶望に落ちていた民衆が少し救われた気持ちになるのに充分だった。そして__

「頑張れ...」

一人の男性が声を出した。

「頑張れー!!」

その声は徐々に広がって行き、民衆全員が、今戦っている英雄たちを応援した。

「がんばれー!!」

「疑ってごめんね!! もう一回信じるよ!! だからがんばれー!」

「お前たちが居なくなったら誰が戦うんだって話だよな!!」

「また会えてよかった!!」

「ぶっ飛ばせー!!」

その場にいたレイシスは、なにか込み上げてくるものを感じ、胸が熱くなった。

「ったく...。 こう言うときだけ媚びやがる...。」

レイシスが満更でもなさそうに言うと、近くにいたエンディアを蹴り飛ばした。

「悪くねぇ...!」

一部の人々はヴェルカーを、落ちていた鉄パイプや、外れた道路標識の看板部分などでぶん殴っていた。

絶望に染まった街は、一気に希望の光で満ちた。

「ったく……いくらなんでも手のひら返しが激しすぎるんだ……。」

それを監視カメラから映された画面を越してダイチが見ていた。

「………それくらい、ミユの影響力もあるってことか…大したアイドルだよ…ほんとに……。」

街頭の画面はそのまま中継し、黒煙を上げる街中を映した。


塔の頂点でも、応援の声は聞こえていた。

ジクティアはフッと笑った。

「バカな奴らだ...。」

シヴァレスが呆れた様子で言う。

「さぁ...どうかな...?」

仮面が半壊しているジクティアがシヴァレスを睨みながら言ってやる。

「...?」

「聞こえる...皆の声が...。希望を預かってんだ...。負けられるかよ...!!」

クレイが立ち上がり、拳を握りしめ、勢いよく突き出して構える。

「人間、なめんじゃねぇ!!」

ジクティウェポンをソードモードにすると、一気にシヴァレスへ斬りかかろうとする。その時、赤と青の鎧がそれぞれの光を放った。

「...!?」

斜めから振り下ろしたそれはシヴァレスの鎧に傷をつけた。第二撃を繰り出そうと試みるが、その剣と別々にして吹き飛ばされてしまう。

ジクティアは再び一気に距離を詰め、拳を腹部に食らわせる。結構の重撃で、シヴァレスは思わず腹を押さえて苦しんだ。

蹴りをおみまいしてやり、ぶっとばす。

「応援されるヒーローって...強いんだぞ...。」

ジクティアが言うと、シヴァレスは本気になったようだ。やられたことと同じように、彼の腹部に攻撃を仕掛けるが、全て避ける。

お互いに譲らない激戦が始まった。

隙を探るが、見当たらない。どうやっても反撃に転じることができない。

「うぉりゃあー!」

クレイがシヴァレスをぶん殴ってぶっ飛ばした。

「ナイス!」

「おう!」

二人はそれぞれの拳を当てる。

「ふん...! だがそれでもお前らに勝ち目はないぞ。」

シヴァレスはいつも余裕だというように立ち回っていたが、どうやら今の彼にはそれはないようだ。

「上等だ。それでも勝ってやる。」

クレイが拳を突きだして言った。

「勝てるといいなぁ...。この無謀な戦いに...!」

さすがに特異な能力への対処法はないため、上手くかわしながらやっていくしかない。しかし、二人とももうすでに限界ギリギリである。あと一撃技を食らったらアームド強制解除だ。

上手く立ち回り、互いをフォローするようにシヴァレスを相手にした。


「クレイらは上手くやってると思うか?」

ウルフに再アームドしたタクミがダーブロルにきいた。

「そう思いたいな...。」

彼はそう答えた。

「思うだけいいだろ...?」

レイシスが言った。

周りにいたエンディアたちはなんとかある程度だけ片付いた。

ヴェルカーも、どうやらほぼ片付いたらしく、フィリオたちが攻撃したことによって瀕死になっている奴らは、駆除部隊によってどこかへと運び込まれていくのが見えた。

後は塔の上での決戦の勝利をただ祈るだけだ。

「首相!」

ウルフが驚いた様子で声を出す。ダーブロルらが振り向くと、ルアフを初めとするスラフの現首相が集合していた。

「...和平を取り付けた...。今サテルにいるエンディアたちをオーラモの軍が排除している。」

知らない間に国同士で手を取り合っていたようだ。

ミユのやったことは立派な電波妨害罪だが、これで勝てたなら...。

「頼んだぞ、ジクティアたち...。」


塔の上では激闘が繰り広げられている。しかし、ジクティアたちが押されていることには変わりはない。

再びジクティアの鎧がざらついた。

『ショウ...!』

「大丈夫...。」

「何が大丈夫なんだ…? ジクティア!!」

シヴァレスがライフルを撃ってきた。全部避けきると、さらに鎧がざらつきだした。

クレイがシヴァレスを殴るが、腕を捕まれ、ゼロ距離でライフルをぶっ放される。

さすがの攻撃に力なく崩れると、間も無く蹴飛ばされてしまった。強制アームド解除機能が働き、生身の状態に戻ってしまう。

「...!」

「次はお前だ、ジクティア...!」

鎧のザラつきが治まらない。それはやがて激しさを増し、ついに所々が二重になって見えるようになってしまう。しかもそれぞれ色が違っている。

まずい。このままでは...。

「お前だけは戦わずしてラータの力を無くすことができる。楽だなァ?」

再びあの余裕を表す体制になった。

「最後のキーワードは...。」

ここまでか。しかし最後の最後に抗いを_

「“メルト-ダウン”......。」

_ …遅かった。

「...?」

「...なに...?」

何も起こらない。

ハッとしてなにかが脳裏を過った。

それは、“ゲニウス”というワードだ。

『...ッ。』

ふと我にかえると、ラータが苦しそうにしていたのが分かった。

「..ちっ...アライ モモめ...キーワードを変えたな...まぁいい...この弾丸一発でお前を殺す...!」

二丁ショットガンの銃口をジクティアに向ける。

「くっ...! 動け...どうして動かない...!!」

自分の体が動かない。それもそのはずだ。彼の体はすでに限界を越えている。

シヴァレスはニヤッと笑い、

「アディオス...。」

と言うと、すぐに引き金を引く。

銃声が空にこだまし、弾丸がジクティアの胸部を貫いた。


応援する声は止まなかった。街中にいたエンディアやヴェルカーの掃討は完了している。問題は塔の上だ。エリアスやフィリオ、リュウガたちもそこをただ見つめていた。


「やった..殺った! 殺ったぞ!! フッハハハハ!!」

エージの表情が絶望に染まった。ジクティアが反応しないのだ。

「呆気ないものだな、ジクティアー! いやぁ...ミカミ ショウ! アッハハハハ...!!」

エージは怒りで相手をつよく睨むと、相手の鎧がざらつき出したのが分かった。


Android #43 終末

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