闇と光《新たなる英雄》
「ジクティア...!!」
「シヴァレス......!!」
互いを強く睨み付ける。
構えをとると、激しく激突した。
赤の力を発揮させ、高速に動いて翻弄させようとした。しかし、どうやらそれを考えていたのはジクティアだけではなかったようで、高速戦を繰り広げる。
ダーブロルとレイシスが彼の参戦に気付く。
「ダブロ..! ここは任せたぞ!」
「あぁ...! ...ダブロ…?」
レイシス・ボルケーノフォームがシヴァレスに攻撃を当て、爆発を起こす。
「ぐっ...!?」
シヴァレスが腕でガードしていた。
基本フォームな分、ジクティアは圧倒的に不利だ。あまり考えたくはないが、負ける可能性が大いにある。
「良いだろう...塔の上に上がってこい...! そこで決着を着けてやる!」
シヴァレスはそう言うと高く飛びあがり、塔の頂点を目指した。
「...。」
ジクティアはただ塔の頂を見上げる。
「く...ッ! ジクティア...俺に...行かせろ!!」
エージだ。キドラが肩を持ってやっとのことで立ち上がっている状態でいる。
ジクティアがレイシスを見た。
「分かってる。クレイと行きたいんだろ? 相棒だもんな...!」
ニッと笑い、ジクティアの心を汲み取った。彼は静かに頷いた。
ラータには回復機能がある。しかし、それはあくまで一時的なものだ。それを説明した上で、エージに回復機能を使った。
「よし...。いくぞ、キドラ...!」
「泣いても笑っても最後だね...。」
しかしアームドしようにもできない。そう、アレスの反動だ。今の彼女のなかには龍のエキスが不足している。何か、その代わりに不足分を埋めるものがあれば………。
「そだ…これ使お…!」
エージらは何のことなのか分からず、首をかしげるが、そんな彼らをよそに、キドラはポケットからパワーナイフを取り出した。
「ルーグのやつからこっそりくすねてたエキス。封印のエキスだよ。」
これまた懐かしい...。キドラは基本フォームになろうと言っているのだ。エージは彼女の頭を撫で、再びクレイにアームドした。
「この並び...最初の頃を思い出すな...!」
何気にパワーナイフシステムを通した基本形態クレイは初めてだ。肩を回し、首を鳴らした彼は、ジクティアを見てそう言った。
「あぁ...。さぁ、いくぞ、相棒!」
「上等だ! 行くぜオラァー!」
二人に飛ぶ能力はない。...いや、クレイは多分あるが、どうせ忘れている。そのため正面突破をすることにした。
「頼んだぞ...ジクティア、クレイ!」
タクミが彼らの背中を見て言った。
背後から迫っていた光弾に気付かず、彼の背後で爆発し、そのダメージを受けてしまった。
「……!」
撃ったと思われるエンディアと目が合い、第二発を食らわそうとしたのが分かった。
このままでは死んでしまう。なんとか立ち上がろうとしたが、相手は既に光弾を撃っていた。
すると、横から一線に飛んできたもうひとつの光がそれとぶつかり、その場で爆発した。
「おい、大丈夫か? 若いの。」
見たことない男性が自分を守ってくれたのだ。
ロケットランチャーの弾を充填すると、さっきのエンディアに向けてもう一発ぶちこんだ。ダメージはなけれど、牽制にはなっただろう。
安全を確保していると、覆面の男が彼の元に駆けた。
「ボス! 包囲完了しました!」
覆面の男は“ボス”に敬礼してそう言った。
「分かった。...立てるか、あんた?」
「…...あんたは誰だ?」
「俺か? 俺はジャック・リーフィスだ。」
「....!?」
緑色の髪の穏やかな女性が自分を起こしてくれた。エリアスの部下にいたレテアに似ている。
「ん? あぁ、安心しろ。彼女はリアナ。俺の嫁だ。」
「...なっ...!?」
“伝説の英雄”とその奥さんが今目の前にいた。ということは...。
SBの軍旗をペイントしたヘリがやって来た。
噂通り、右目に眼帯をつけている。目付きが悪い男だ。
「やるぞ!!」
ジャックは大声でそう言うと、SBの部隊は力強く腕を上げ、叫んだ。
塔を駆ける二人の英雄。その背中を追うエンディアたち。
「しつけぇ奴等だな!」
「構うな! 上まで行くぞ!!」
「あぁ、わかってらぁ!!」
内部がまるごと螺旋階段のように形を成す廊下をただひたすらに走る。
次第に上の階からエンディアが現れるよつになってきた。
「邪魔だ! そこをどけ!!」
クレイが波動を撃つ。大きな爆発を起こし、それが壁に風穴を空けた。しかし、背後からやって来るエンディアと目の前のエンディアによって挟まれ、動けなくなった。
「……どうする……?」
「くそ……時間がないのに…!!」
ジクティアが苛立ちを感じていると__
「フィールミア!!」
_ 聞き覚えのない声が耳に入った。大人しくも力のある声だ。すると、前後にいたエンディアが炎上し始めたことに気付いた。
「なんだ…!?」
クレイが慌てて辺りを見渡しても、原因が分からない。
「油断するな…!」
ジクティアのその一言で一気に警戒すると、先程の爆発によってあいた穴から一人の男が入り込んできた。
「誰だお前...!?」
ジクティアが目を丸くして言った。それもそうだ。男は紫色のロングコートを身に纏い、白い仮面をしている。赤い瞳を光らせ、ニヤッと笑った。自分たちと同じにおいがする。
「ジクティア、ここは任せて早く行け!」
どこか高貴な雰囲気を感じる男が彼に言った。
「...何で俺の名前...。」
『ショウ、ここは彼の言う通りに...!』
「...あぁ...。 任せたぞ。」
彼はその男の肩をポンっと叩いてそう言った。白い仮面を着けた男は、その答えを待っていたと言わんばかりの表情で頷く。すると、その仮面に触れ、そこからピストルと黒色のサバイバルナイフに似た武器が現れた。
「すごっ!?」
「早く行くぞバカ。」
仮面の男は敵がいる方向に体をむけると、深呼吸をして瞑想する。そして力強い声で
「“アストラ”ッ!!」
と言うと、人型のネコのようなものが背後に現れた。
『サイロス!!』
それが喋ると、突風魔法でエンディアたちを吹き飛ばした。
「さぁ、行け!」
「ありがとう...! 名前、なんて言うんだ?」
「ふん..また会えるさ。それが答えだ! 行け!」
ジクティアは彼を信じ、クレイの手を引っ張って走った。
「あいつ、マタ=アエルサって言うのか?」
「バカは黙れ。」
ただ者ではない。何故かは分からないが、そう思えた。
「さぁ、ショータイムだ!」
ナイフをまるでペンだと思わせるくらい軽く回すと、ピストルでエンディアを撃ち抜いた。
『油断はするな。いいな。』
アストラと呼ばれたネコが男に言うと、彼は頷いた。
軽やかにエンディアたちの攻撃を避け、舞うようにして高く跳び上がり、ピストルを5発連射した。
『フィールミア!』
火炎属性の魔法で自身の周りにいるエンディアを焼却させる。
辺りのエンディアを一層すると、彼はジクティアたちが行った道を見つめ、ただ祈った。それが終えると、壁の穴から出ていった。
先程の穴から見えた景色から察するに、だいぶ上まで登り詰めたようだ。
ちょくちょく現れるエンディアは可能な限り無視して進む。今がどの辺にいるのかは分からないが、なんとなくもう少しだということは分かっている。走って走って走り続けると、やっと頂点...屋上への扉に到着した。
蹴ってこじ開けると、奥にはシヴァレスが立っていた。
「予想よりも早く到着したな?」
「...はぁ...はぁ...。」
息が切れて戦いどころではないが、そんな彼らをラータが回復させた。
「お前を...倒す!!」
ジクティアの怒りの眼差しがシヴァレスを捉える。
「基本フォームのお前らに、何ができる...?」
戦闘が始まった。案の定、ジクティアたちが押されている。相手は最強とかそんな言葉でも足りないくらいの力を秘めている。何とか相手の攻撃を避けながら反撃の隙を探る。
ジクティウェポンを取り出し、ガンモードにして引き金を引く。シヴァレスは小型のブラックホールを作り出し、弾を異空間へ飛ばした。
「嘘だろ...。」
瞬時にクレイを蹴り飛ばし、ジクティアを捉えると、赤黒いエネルギー弾を作りだして投げ飛ばす。寸でのでそれを避け、赤の力を発揮させて距離を詰めたが、パンチを手のひらに受け止められて蹴り飛ばされる。
「うわぁぁあ!!」
何度も背中を叩きつけられ、地面に転がる。
「終わりだ、ジクティア...そしてクレイ。」
「終わらせるわけにはいかねぇ...!」
クレイが立ち上がり、龍の覇気を纏った。
仮面の半分が割れている。
「お前をぶっ倒すまで!」
構えを取り、一気に詰め寄る。覇気を右手の拳に集中させ、それでシヴァレスをぶん殴る。青い龍を模したエネルギーが相手を貫くが、その手を捕まれ、投げ飛ばされた。
だが多少のダメージは入ったらしい。
「ジクティア、お前は最初から俺には勝てない。ラータの力がなければ、俺を倒すことはおろか、戦うことすらままならないだろうが……。」
「...うるせぇ...!」
怒りをバネに立ち上がり、拳を握りしめてそれをぶつける。
「最初からお前は兵器利用のために作られた! 正義のヒーローごっこをやって、英雄を演じるただの危険生物! 可哀想になぁ...! 皆のため、平和のためと唄っているくせに、お前が皆を脅かす存在になるんだよ!!」
「うるせぇええ!!!」
「産まれたことを後悔するんだな!! お前の両親も、アライ モモも! みーんな、お前一人のために死んだんだよー!!」
「.......ッ!!」
ジクティアはなにも言い返せなくなって黙り込む。絶望したと思ったシヴァレスは、今度こそとどめを刺してやろうと構えた。
「お前に...家族は...いない...!」
シヴァレスの一言が、ジクティアに心を殺した。
「......。」
力が抜けた…。拳を握るシヴァレスの手のひらがそう直感させる。
__ トドメだ。
「...家族...なら...代わりがいる...。」
ジクティアがボソッと呟くように言った。
「...?」
「ちょっと頼りないけどな...。」
彼がかすかにフッと笑うと、シヴァレス
の後ろからクレイが攻撃してきた。
「...ッ!」
初期フォームになる前に、エル・クレイの力を使っていたため、ダメージがそれなりに入ったようだ。
「ふ、ふふ...!」
油断していたために体勢を崩し、ジクティアの蹴りで後ずさった。
「俺は確かに兵器かもしれない。でもだからこそ、俺が平和を信じなきゃいけないんだ。俺が平和を祈らないとダメなんだ。俺が正義でいないとダメなんだ!」
「...!」
「いつまでめ演じてやるさ! 正義のヒーローごっこをやってやるさ!! この世界が...平和になるその時まで!!」
ジクティアの鎧が、まるでなにかのバグのようにざらつきだす。
「ぐっ...!?」
「そろそろ限界のようだな...! ジクティアァ!!」
シヴァレスは再び特異な能力を使って彼を吹っ飛ばした。
「てめ...!」
クレイが立ち上がり、ジクティアの救出を試みた。
「お前もだ!!」
同じような攻撃をされ、ダメージで身動きがとれなくなってしまった。
「殺してやる...! じっくりな..!」
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