歓喜の歌
「もっとかっけぇコメント残せよな?」
カズトがショウの脇腹を軽く突きながら言った。
「そんなすぐにできるかよ...。」
恥ずかしそうに顔を背ける。男たちの背中をラータたちが追うようにして家に戻る。
到着すると、すぐに地下室のコンピューターを起動させ、USBメモリも挿した。
「産まれた理由が兵器利用なら...俺が奴らの企みを阻止する...。」
決意を口にして強く表す。指を鳴らし、キーボードを弾く。
質素な部屋にカタカタという音だけが鳴る。
そういえばフォームアップでクートを試していなかった、なんてことを思いながらコーヒーを飲み、一息ついてから作業を始める。
一階では、カズトがミユのファンである故に握手を求めていた。オフの時はファンの方とは交流しない、といっているのにしつこいやつだ。
タクミはソファに座ってミホを愛でていた。ミホは確かに狼だが、これでは飼い犬と飼い主だ。はたから見たら犬耳をつけた女の子と男がイチャついているようにしか見えない。
エージは珍しく新聞を読んでいた。
「エージ、それ逆だよ?」
「ん? あ、あぁ、そうかそうか。」
キドラに指摘されて持ち方を正した。大々的に取り上げられていたのは、ガーディアンズだ。見出しは「実在していたヒーロー! 今後の活躍に注目!?」...。ボクサーだった頃から思っていたが、何故わざわざプレッシャーを与えるだけのような文を大きくしているのだろう。頼られている感じがして気持ちがいいことには変わりないが、これじゃ上手く力が出せなくなる。
グメアがキドラの隣に立ち、ぎゅーっと抱き締めた。
何もないと平和だ。
だが忘れてはいけないことだが、大空には大きな穴が空いている。あれが一体何なのかを調べる必要がある。ショウは、そのためのシステムを製作していた。
夜。
「ショウ?」
「んー?」
ミユだ。パジャマ姿でいる。
「どうした? もう夜更けだろ?」
「あ、うん...その...眠れなくて...。」
ミユはいつの間にか居候になっている。彼女のベッドも地下にあり、作業中は音に注意していた。
「あー、うるさかった?」
「ううん、むしろ少し何か音があった方が安心する。」
「そう?」
「うん。」
ショウは作業を続けながら言った。ミユは少し彼に自分を見て欲しくなって悔しかった。
「手伝う?」
彼女はそう言って隣に座った。
「アイドルは肌が命だろ? 早く寝なよ。」
冗談めかしながらそう言った。
「そういうの、いいから。ほら、何すればいい?」
「大丈夫だって。」
「眠くなるまでの暇潰しがしたいの。早く。」
「...。じゃあこれ接合して。それが終わったらCの基盤お願い。経路図はそこにある。」
「分かった。任せて。」
黙々と作業をする彼の横顔をチラッと見ながら言われた仕事をこなす。彼はそんなこと気にしないで続けていた。
「ショウ。」
しばらくしてから彼女から声をかけた。
「ん?」
何故か胸が高鳴る。
「...恋愛とかってしたことある?」
「なに急に。」
手元を見ながら会話を続ける。
「いや...あるかなって...。ほら、会ったときも言ったじゃん? ショウって経験無さそうだなって。」
「んー。」
モノクルを着け、細かいところを拡大して見ながら作業をする。
「言われてみればねーな。」
ミユは何故かホッとした。自分でも分からない。
「つーかファーストキスもお前だし。」
表情一つ変えずに言った。急なことでドキッとして手元が滑った。大きなミスにならなかったことにホッとした。
「やめてよ...。」
顔が熱くなった。少なくともそれが、はんだごてを使っているからではないのは分かっている。
「お前から始めたんじゃん。」
「...そうだったね...。」
顔を背け、深呼吸をして落ち着かせる。
「なんかおかしくない? どうした?」
ショウから声をかけた。それにビクッてして急いで顔をショウに向ける。
「さ、さぁ...? そうかな?」
「なんか、そんな気が弱かったっけなーって。」
ミユは視線を手元に戻した。
「...もうちょっと強い方が好き?」
「その方がいつものミユじゃん。」
無理だ。いつもと何かが違う。何が違うのか、いや、そもそもいつもとはなにか? 普通とは何か? 訳がわからなくなってきている。
「ミユさー。」
名前を呼ばれて少し嬉しい。今までそんなことはなかった。
「...! な、なに?」
「そっちはないの? 恋愛。」
一切も目を合わすことなく話す。
「れんあ...!?」
「...?」
「え、えぇと...。わかんない...かな...?」
「なんだそれ...。」
軽く笑いながらつっこんだ。その笑ったときの顔にきゅんと来た。
もしかして今か? 初恋は今か?
「あ、そうだ。お前に聞きたかったことがあるんだ。」
「ん、ん?」
「お前、なんか白い羽とか生えてなかった?」
「え!? あ、えーと...。」
「...。答えたくないならいいんだけどな。」
「...。ごめん...。」
シュンとした。
「いや、いいんだ。」
それ以降、二人が話すことはなかった。
そのまま朝を迎えた頃にはシステムは完成していた。
「やっぱミユがいてくれると助かるわぁー!」
彼女はそう言われて嬉しかった。必要とされている感じがしたからだ。
「? お前、なんか変じゃね?」
ショウが彼女の顔を初めて見つめる。恥ずかしくなって顔が熱くなった。徹夜した疲れが吹っ飛んだ。
「...え?なんで?」
必死に誤魔化す。
「“お前でも“そんな乙女みたいな顔するんだな。」
「...ッ!」
掌底が彼の溝を突いた。
「い"っで!!」
前のめりになり、ゆっくり膝から崩れた。
「失礼だな! もう!」
「入った....完全に入った....!」
苦しそうに声を上げた。
小型のクリスマスツリーくらいの装置ができた。
皆を集め、早速出掛ける。
「よし...起動させるぞ...。」
穴のある山の麓にそれを持っていき、起動スイッチを押した。
三本のアンテナが現れ、それが展開し、時計回りに激しく回る。
「やっぱり穴が大きくなってる。しかもこの装着用のデータを見ると、この中心部に高圧エネルギーが集中している。」
よくみると確かに中心部だけ色が赤っぽく変色している。
一体何がどうなっているのか分からない。しかし、エネルギーの正体を確かめるためにスキャンをして分かったことは、この世界に存在していない”未知のエネルギー”だったということだ。だからそれがこのように集まってどのように作用するのか分からない。
「どうすんだよ...?」
エージがショウにきいた。
「一回攻撃してみるか。」
カズトが応える。
「大丈夫なのかよ?」
「さぁな...?」
ショウがどうするかを考えていると、背後から誰かが近付いて来ているのが分かった。ふり替えると、そこにいたのはルーグ、ネガ、そして紫の鎧の戦士だ。
「お前ら...!」
タクミが奴らを睨む。
「おぉ、今日は全員集合か。」
ルーグが煽るように言った。
「タイミングが合っている。今までもそうだった。それは、盗聴器があったから。違うか?」
ショウが言う。
「...バレてたのか。」
「だから俺とラータしか知らないストロフモードも知っていた...。だな?」
「いや、それは違う理由だ。俺は、寄生した人間と同じ血を流す者の思想をある程度読み取ることができる。」
「同じ血を流す者...?」
「ラータしか知らないんだろう? だったら答えは出ただろうが。」
「...!!?」
ラータはレイトの娘だった。初めて知ったことだ。
彼女も驚きで目を丸くしていた。
「クロザキ レイト...その娘、クロザキ ナツミは、アーマーロイド初号機のラータなんだよ。」
「お前...。レイトさんだけじゃなく...レイトさんの娘にまで!!」
パワーナイフをとりだし、起動させた。
一斉にアームドすると、新しいの武器を取り出した。
「ストロフ・バスターだ...!」
これもジクティウェポン同様にソードモードとガンモードになる。いや、ガンモードというよりかはバズーカモードだ。大きくなったそれは、もはやガンというには無理がある。
ウルフはネガと、レイシスとクレイは紫の鎧の戦士と交戦し始めた。
『ショウ...。』
ラータが震え声で言った。
『私...母さんが...。』
「...? どうした? ラータ??」
『母さんが...!』
アームドしていた鎧がざらめく。
『うわぁぁぁぁあ!!』
「ラータ!! ラータ!!!!」
エラーを起こしている。
体のあちこちが火花を散らして爆発している。
「あぁ、ナツミの母親か。クロザキ メイは異世界に送っている。心配するな。もう少しで会える。多分な。」
「...! お前の目的は何なんだよ!」
「目的? 課せられたミッションの達成だ。この世界を俺たちの領土にするためのな。」
「ふざけんな...そんなことが許されるわけねぇだろ!!」
『....! 取り乱しました...すみません...!』
「いけるな、ラータ!」
ジクティアは立ち上がり、ルーレットのレバーを2回引いた。
《ラビット!》
《ラビット!》
《アーマーロイド! ラータ!!》
続けてレバーを4回引く。
《スピードファイター! ストロフ・ラビット!》
全身が赤色の鎧になった。仮面も赤くはっている。これは、防御力を犠牲にして移動速度を爆上げしている姿だ。
「やってやる...!」
「...!?」
超速の彼の動きについていけず、翻弄される。ウサギとしての能力、高跳びを使って翻弄しながら攻撃する。
バスターをソードモードにして切り刻む。
「やるな...! ジクティア!」
「うっさい黙れ!」
容赦なくズタズタに切り続けると、ルーグの鎧の所々に薄い傷ができていたのが分かった。
「これで最後だ!」
大きく振りかざし、高く飛び上がってそのまま落下する。その勢いでぶち切ろうというのだ。
「ルーグー!!!」
しかしその攻撃を誰かに阻まれた。
「...ッ!?」
レイシスとクレイは紫の鎧の戦士を相手に戦っていた。
相手の動きが素人のそれだった。だが、力でそれをカバーしている。防御力も高いため、なかなか怯ませることができない。
「くそ! こいつどうやって倒す...?」
レイシスが相手から視線を外すことなくクレイにきく。
「簡単だよ! 鎧をぶっ壊せばいい!」
彼らしく呑気な感じで答えた。
「...へっ...。...だな...!!」
指と肩をならし、立ち向かう。
『カズ! 武器あるよ! 使う?』
「あんのかよ! 使うに決まってらぁ!」
出てきたのは、彼に合うよう、金色に塗装されたメリケンサックだ。
「あ。」
それを見たクレイがなにかを思い出すように言った。
「あ?」
レイシスが何のことか分からずに見た。
いつぞやに使っていた懐かしの武器を取り出した。
『あー!』
“ドラロクナックル”だ。
ショウが彼に作った最初の武器だ。ボタンを押すことで攻撃段階を上げることができる。
「なるほど、初期武器ってやつか...。」
レイシスが言った。
「ナックルとナックル! 鎧をぶっ壊すにはうってつけじゃねぇか?」
クレイが彼を見てニヤリと笑う。
「だな!!」
二人は構えると、すぐにかかった。
二人のナックルが紫の鎧に当たる。可能な限り同じ部分を攻撃して効率よく砕こうとしている。
「ぐっ...! 失せろ...!」
戦士がそう言うと、紫色の竜巻を起こした。クレイを庇ってレイシスがそれをくらって吹っ飛ぶ。
「レイシス!」
「クレイ! これ使え!!」
彼はそう言って自身のナックルを投げ飛ばした。
上手くキャッチしたクレイは、早速もう片手にそれをはめ、ボクサーのファイティングポーズをとった。目をつむって瞑想し、全神経を集中させる。
相手は銃を取りだし、撃ち込んできた。クレイは弾丸をナックルで弾くか避けるかで当たらないようにしながら距離を詰める。
「いくぜ!!」
キドラの龍の力を発動させ、両手に青紫色の炎を纏わせる。
一気に近付き、左手でボディーブローをかました。崩れたところを、本命の右ストレートで顔面をぶん殴った。
相手側のアームドが解除され、ローナと身なりの整った男性が現れた。
「くっ...貴様ら...!」
「よ、おっさん。」
彼の後ろにレイシスが座り込んでいた。そして目隠しをし、ロープで手足をグルグル巻きにした。
「~~~~ッ!!」
芋虫のように暴れる男性の背中をドンッと叩く。
「話なら後で聞く。署でな。」
彼は大人しくなった。
「さて...後は作戦通りにいけばいいが...。」
クレイがジクティアを見て言った。
レイシスがハッとして彼の肩を叩き、ウルフの助太刀をするように言った。レイシスはこの男性を連行するために政府に連絡を入れた。
「頼むぞ、リーダー。そして...。」
いいかけたとき、クレイがすっ飛ばされてきた。
「おい! 何だってんだよ!」
「いやあいつ強ェ!!」
「あ?!」
強化されたクレイが吹っ飛ばされる程、ネガは強い...はずなのに、ウルフと互角に戦っているように見える。
ウルフがそこまで強いということなのだろうか?
ジクティアはルーグにトドメの一撃をくらわせようとしたところを何者かに邪魔され、地面に転がった。
「紹介するよ...。新しい兵器...ダーブロルだ...!」
顔がよく見えないが、恐らく自分も知っている人だ。
「...久し振りだな...。...ジクティア...。」
__ イスパード...ダイスケだ。
「あんた...なんで...!?」
「最初から演技だったんだよ。いきなり改心するとか、何の脈絡もないし、適当な理由で不自然だったろう? おかしかったぞ、お前らが完全にこいつを信じていた様子がな!」
イスパード改めダーブロルがジクティアを見下すように見ている。
「信じるって...言ったのに...!!」
「信じたお前が悪い...。死んでもらうぞ...ジクティア...!」
マチェットを構え、ジクティアに襲い掛かる。
攻撃のひとつひとつをさばき、隙を見つけようとする。ダーブロルの目がしっかりと自分を見つめており、プレッシャーを感じる。
形勢は一気にダーブロルに有利となってしまった。立て続けに攻撃し、ジクティアの肩をかすった。それによって調子を狂わせ、圧倒的に攻撃を受ける形になってしまった。
「ぐっ...!」
「......。」
『...?』
ラータは何かに違和感を感じていた。ルーグが攻撃してこないこともあるが、なにより...。
ウルフとネガが肉弾戦を繰り広げている。ウルフは相手の攻撃を適切にさばき、無駄な体力を使わないことに集中している。
ネガの拳を手で受け止めると、二人は息を切らして睨み合う。
「...お前、確かウルフだったか..?」
ネガがきいてきた。
「...あぁ。」
彼はそう返事して頷いた。
「...よろしく頼むぞ?」
ネガがニヤッと笑い、ライフルを取り出した。
「...“頃合い”か。」
ウルフも持っていた銃を取り出す。
手を離し、それぞれの武器の標準を“ある人”に当て、引き金を引いた。
ジクティアとダーブロルが決着を着けようとして戦っている。
ダーブロルの優勢のまま変わらず、ついにジクティアの膝を地面につけさせた。
「ダイスケさん...あんたって人は...!」
ジクティアが仮面越しに彼を睨む。
「......。」
睨まれる彼はライフルの銃口をジクティアに向ける。
ルーグはそれを黙って見ていた。
「早く消せ。」
「...。」
ジクティアがフッと笑った。
「...策士だよな...!」
ダーブロルの銃口がジクティアからルーグに向けられた。一瞬でジクティウェポンをガンモードにしてルーグを撃つ。
背後から2発の弾丸が飛んでいき、それもルーグを目掛けていった。
「!?」
4発の弾丸をモロで食らったルーグが地面に膝を着ける。
「ダイスケ!!」
ネガが紫色のパワーナイフを彼に投げた。
上手くキャッチし、ナイフをさしかえた。
「勘違いするな、ルーグ。俺は貴様の仲間なんぞではない。俺は、俺の信じる正義のために戦う。」
ダーブロルがルーグを強く睨みつける。
そのとなりにローナがやって来た。彼女は、ネガの変身者のダイチが作った新型のアーマーロイドで、体内に自爆装置が組み込まれている。だからネガに逆らえない。しかも、ネガはわりと最初からジクティア側に付いていた。
「貴様ら...!」
「“俺の信じた正義を見ろ”!!」
そう言ってダイチは腰にある変身装置のレバーを押した。
《ウェイク・アップ!》
《真! ダーブロル!!》
「アームド...!」
強い意識を感じられるほど、力を込められた声で言った。すると、ローナが紫色の光の粒子となり、彼を包んだ。
黒と紫を基調とした硬い装甲に身を包み、緑色のスカートが風になびく。
今までは仮面は着けても顔半分が隠れる程度だったが、彼は全部が隠れている。まるで中世の鎧のようだ。
「厳つぅ...!」
クレイがそれを見て言った。
今、敵はルーグだけだ。
「何が何だかわかんねぇぞ...?」
レイシスが棒立ちで立ち尽くす。すぐに今からやるべきことを把握し、クレイを引っ張ってジクティアたちに並ぶ。
ガーディアンズが再び5人揃った。
「...ッ!!」
「どうする? アーマーロイドの劣化版の旧式じゃ、俺たちには勝てないんじゃないか?」
「...どうやらそのようだな...。」
ネガすらもジクティアの味方をしている。すべての計画は崩れてしまった...ように思えた。
「だが...俺の正体を知っているなら、そんなそとは関係ないことも知っているはずだ。」
「...まぁね。いくぞ!!」
5対1で数だけ見れば確かにこちらが有利だが、ルーグはまだなにかを隠し持っていることは分かりきっている。
やはり互角に戦ってえている。若干いつもの余裕さは伺えないが、それでもやりあえている事実がある。
ルーグは精神に寄生する生命体。その力は未知の領域である。警戒することをそれぞれ心がけている。
ネガは変身を解除して戦闘データの収集に専念することにした。
ついにルーグを地面にふさせた。
「くっ...! くそっ....!!」
「これで終わりだ...!」
ストロフバスターをバズーカモードにして構える。
これで平和が戻る。そう思った。
「ルーグー!!」
引き金を引き、特大サイズの弾丸をぶっ放した。
大きな爆発が起き、煙や粉塵が舞う。中から現れたのは、ルーグではなく、変身を解除されたレイトだ。
「調子に乗るのも今のうちだ...!」
そう言って姿を消した。
「山頂だ! 一気に移動する! 捕まれ!」
ダイチが慌ててネガに再変身し、ジクティアに言った。
ルーグと同じ能力で山頂まで来た。
ボロボロの状態で大穴を見つめる。
「頃合いだ...来い...“エルシーヴァ”!!」
レイトが叫ぶと、大穴が一気に縮小し、彼の前に落ちてきた。
再び広がり、成人男性より大きい程度の黒い穴だ。
そこから鼻唄が聞こえた。“第9 歓喜の歌”だ。
「...!?」
そこから女性が現れた。
血のように赤いロングコートと、同色の髪を風になびかせる。
豊かな胸、括れた腹と丸びを帯びた腰で高身長だ。恐らく190cmあるだろう。露出が多く、戦士というには無理がある。
「エルシーヴァ・アレース...。異世界で造られた大量破壊兵器だ!」
ルーグがニヤリと、不気味に微笑んだ。
エルシーヴァという名を持つ彼女は、そんなことをするとは思えない程に優しい笑顔を浮かべた。
しかし、そう思った矢先、手をネガにかざした。そこが赤く光ったと思うと、赤色の光線弾が飛んできた。モロで食らってしまい、すぐさま強制変身解除がされた。
「グフ....ッ!!」
ダイチが吐血した。
「ダイチ!」
レイシスが彼をかくまった。
「ハァ...ハァ...。レイシス...。お前にしたこと...ここで謝る...。」
「バカ野郎...! 何いってんだ...!」
サテルのためだと欺き続けたことを、彼から謝ってきたのだ。しかし、レイシスはもう喋るなと、そんな彼を落ち着かせる。
変身するための一式が破壊され、もうネガになることはできない。
「ふふ♪ 弱いのね、あなた?」
エルシーヴァが再びニコッと笑った。ジクティアがそのとなりにいる男を強く睨んだ。
「...ルーグ...お前...!」
『ショウ...。』
「...なんだよ...?」
『...。』
再びラータの調子が狂う。
「気付いたか。エルシーヴァは...お前の母親、“クロザキ メイ”...だ...。」
「...!?」
Android #38 歓喜の歌




