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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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ヒーローって

ショウ「名前を決めたぞ!」

エージ「なににしたんだ?」

ショウ「ふふん。それは本編からのおたのしみってことだね!」

エージ「はっ、なんじゃそりゃ。」

ショウ「それより例の件もいい感じだぞ!」

エージ「あ、それなんだけどよ、エキスは基本的に2つだろ? 3つにしたらどうなるんだ?強くなれんの?」

ショウ「それは……ど、どうなる第4話!」

エージ「ごまかしやがった。」

「おいエンディア! そこまでだ!」

よくあるヒーロー番組で主人公の登場シーンに多く使われる台詞と共に、アームド姿のショウが現れた。エンディアは1体のみ。その姿は禍々しく、針のような体毛でどこかハリネズミを思わせるような見た目をしている。赤く光る瞳が確かにショウを捉える。するとまるで威嚇するかのように体毛の針を逆立てる。そういえばショウは、バイクで移動していたのにも関わらず、運転することよりもアームドしたときの名称を考えていた。そんな危ないことをするべきではなかろうと、ショウの後ろに乗っていたラータは思った。そしてそれは決まったようだ。

「そんなに暴れたいなら、“ジクティア”が相手だ!」

ラータはショウにアームドしながら、呆れていた。

ジークとビクトリアを合わせた造語だが、ジークはドイツ語で「勝利」、ビクトリアは英語で「勝利」になるわけで、これはくどいのではとラータが指摘すると、それほど勝つ自信があると本人は言った。ラータはあまり気に入っていないので、ならば仮ということにしようとショウは言ったが、絶対にこんな名前はいやだと頑なだ。

エンディアが片言の言葉を話すが、何を言っているのかはよく聞こえない。けど多分バカにしてるのだろうというのは分かった。エンディアになる肉体改造を施されると、知能も低下する。暴れるだけしか脳がないモンスターにするためだ。しかし、稀に言葉を発するエンディアがいる。何故かは分からない。というかそもそもエンディアが何故ここで暴れるのかはもちろんのこと、そいつはどこから送られてきているのか等が一切不明である。

「さて、片づけますか!」

赤と青のオーラを身に纏い、高速移動をしてエンディアの後ろに回り込み、胴に蹴りを入れる。しかしやはり針のような体毛は本当に針だった。それがショウの足を串刺しにした。激痛どころの騒ぎじゃない。あまりにも痛すぎるのか、瞬間ではあるが一周回って痛みを感じない。そして声をあげることもない。エンディアが串刺しの足を取り、片手でショウを投げ飛ばす。2階建ての建物の壁に激しくぶち当たり、轟音をたて、瓦礫と共に崩れ落ちる。普通だったら足を串刺しにされて壁に叩きつけられた時点で死んでいるが、アームドしているお陰で一命はとりとめた。しかし重症であることには変わりはない。歩けもしない。傷口から土埃や菌が入り込まないよう、ラータが足にバリアを張る。

『勝利勝利とうるさいわりにはあっけないですね?』

「…酷いこと言うね…でも…勝つことにはかわりない…」

壁を使ってやっとのことで立ち上がったショウ。

しかしエンディアが第2の攻撃を仕掛けてくる。ラータはショウに今すぐここから撤退するか、死ぬかを問う。ショウの回答は、どちらでもなく、戦うことを選んだ。何か対策はあるのだろうかとラータは思ったが、それでも片足が使えないことにはかわりない。バリアもいつまで保てるか分からない。

エンディアが近付いてくる。登場して数秒で危機に陥っている。こんなヒーロー不格好すぎる。

バリアの強度を確認するためか、壁に思いきり足を叩きつける。なにか閃いたようだ。

「大丈夫…俺は……天才だから…」

エンディアが走って襲ってきた。そしてその拳がショウの顔面に襲いかかるその瞬間を見計らって、バリアの張られた足で今度こそ横腹に蹴りを入れる。案の定、バリアは針をへし折って直接肉体にダメージを与えてやった。怯んだエンディアの逆立てた体毛が元の状態になり、今だとばかりにバリアの片足を頭部に叩きつける。よろめいたエンディアの腹部に同じく蹴りを入れ、そして渾身の力で顔面に拳をめり込ませる。鼻から血を流して後退するエンディアに、毎度のごとく必ず殺さないように調節されたキックを食らわせてK.Oさせた。

死んでいないことを確認すると、持参した縄でエンディアをぐるぐる巻きにし、政府の役人に撃破の報告と生け捕りの依頼をした後、ショウはこの場を速やかに去った。


「な? 勝っただろ? 強いでしょ? さすがでしょ? すごいでしょ? いわゆるフラグってやつをへし折ってやったんだよ! 天才でしょ?」

入院服で病院のベッドに横になりながらショウは興奮してラータに話す。しかし足は確かに重症で、無茶苦茶なやつだと医師に言われていた。

「はいはい。 入院している間くらい静かにしたらどうです? せっかくなら手術のときに声帯を摘出されればよかったのに。」

酷い言いようだ。

しかしショウは傷付くわけもなく、逆にどこか安心したような表情をした。それに気付いたラータは、ベッドの横の椅子に座り、ショウの手を握った。

「どうか無茶はしないでください…。私の治癒能力も万能ではないんですよ…?」

さっきまでの毒舌がまるで嘘のようにショウの身を案じていた。鎧という役割をもつラータからすれば、国民や町人の命はもちろんだが、ショウもまた自分が守る人間の対象である。ラータがいるから戦いがあるが、ラータがいるから守ることもできる。

彼女は、非常に重要な役割を担っていた。

「…気をつけるよ。…そうだ、退院して帰ったら武器を作るか。うーん、銃とか剣とかがいいな?」

「…そうですね。ずっと肉弾戦でしたし、今回のように厄介な敵も現れるでしょう。私も手伝いますよ。」

ショウの顔が喜びと楽しみに満ちていた。どんな武器にしようか、どんな性能をつけようか、を考えていた。ラータはそれを見て安心していた。しかし、忘れていたことを思い出した。エージのことだ。

「あ。」

病室のドアをノックする音が聞こえ、開けるとエージが果物を持って見舞いに来た。だが本当に果物を持っている。かごにたくさん入れて持ってきているとかではなく、赤いリンゴを1つだけ手に持ってやってきた。

「…見舞いとか行ったことねぇからこんなもんだけどよ…。ここに置いとくぞ。」

「どうせなら直接俺に渡しなさいよ。」

ラータがショウの手を握るのをやめると、その手を今度はエージの方に広げて見せる。

リンゴを机に置こうとしたエージはそれを見て、リンゴを確かに手渡しした。

「ちょうどお腹が空いてたんだよ。ゴリラのくせに気が利くのな、ありがとう。」

エージに礼を言うと、リンゴにまるごとかじりついた。シャリっという音が病室に響く。何かに勘づいたのか、噛むのをやめて吐き出す。

「お前…手汗…出てるよな…。」

ショウが顔を真っ青にしてエージにきく。そう言えば直接それを持ってきていた。手汗をかくだろうし、かいてなくとも何かしらあるだろう。それをエージに確認している。エージは手のひらを見つめ、キリッとした表情で頷いた。それを見て、ショウは嗚咽した。


「お前、出掛けるときに俺のことぶっとばしたろ? あれってどうなってんだ?」

エージが言っているのは、ハリネズミのエンディアが現れたことを知らされ、現場に向かおうとしたショウに同じく向かおうとしたエージを説得したときのことだ。エージは自分が足手まといにはならないことを言葉ではなく実際に見て納得してもらおうとして実際に殴ったが、アーマーロイド装着者に備わっている能力で一発K.Oされたのだ。エージはその能力のことをショウにきいた。

「その前に、お前はどうやって俺がここに入院しているってことを知ったんだよ?」

「黎兎さんだよ。病院から連絡があったって。忙しいから自分の代わりにリンゴ持って行ってくれって。」

このリンゴは黎兎さんの家にあったリンゴだったのか。しかしさすがに袋かなにかに包んで持ってきてほしいものだ。食べたくても食べれないではないか、とい言いたげな表情でラータを見る。ラータは無言で手を差し出す。察してくれたのだろう。ショウはそう思ってリンゴを彼女に手渡す。そしてラータはそれを持って病室を出た。

「捨てんのか?」

きょとんとした顔つきでエージがきいた。

「そんなわけないでしょうよ。見てろ、俺のラータは最ッ高に有能だから。」

エージはその言葉をきいて、ラータとショウは互いを理解している相棒的存在なのかと思った。ふと本題を思い出して改めてショウにきく。

「あれはアーマーロイドの装着者に備わる能力だ。」

アーマーロイドを装着していると、だんだん体が馴染んできて本来はアーマーロイドにだけあるエキスが装着者に染み込むようなイメージだと言う。詳しくはショウも知らない。何故ならそもそもアーマーロイドを作ったのは彼ではないからだ。では誰が作ったのかというと、“荒井 桃”という人物であるという。この人物についてはどうやら内緒のようで、国もさすがにショウに話していない。国家の闇とでも言うべきか。だが確かに触れられると、政府の役人は皆いい顔をしない。

「…よくわかんねぇけど…まぁ自分もなれば分かるか。…あ! そうだよ! エキスの件どうなってんだよ?」

「あ…あー!! そう言えばそうだった! ちょ、携帯取って!」

ラータが持ってきてくれたであろう革の鞄からショウの携帯を取り出す。そしてそれをショウに渡すと、そのまま政府機関に連絡し始めた。用件を話すと、どうやらそれは見つかったらしい。重傷のくせに喜んでいる。封印の力の相手は伝説の龍だった。龍の他の候補は不死鳥のフェニックスや威厳の鳳凰があったそうだが、相手を拘束したなら高火力の攻撃をして効率よくダメージを与えたいということで龍になったらしい。

「ドラゴン…いい響きだな…!」

ショウの隣にいるエージは目を輝かせていた。

「…サブキャラの戦力が高いんじゃ、主人公の俺の立場がぁぁ…。」

「? 主人公とかサブキャラとかなんだよ?」

「ヒーローは俺、つまり主人公は俺なの。お前は助手、サブキャラなの。」

「はぁ!? 意味わかんねぇし! 俺が強いなら俺が主人公でいいだろ!」

「よくないの! もううるさいねぇ。バナナでも食べてなさいよこのゴリラ。」

「ゴリラのなにがいけねぇんだよ! 筋肉すげぇだろ! ゴリライコール強いで俺が主人公だろ!」

「あーもう! うるっさいなぁ!!」

ショウとエージがしょうもない口喧嘩をしていると、病室の扉が開く。そしてラータが入ってくると、手元には家にあった皿と、その上には先程預けたリンゴが器用にウサギになって戻ってきた。

「二人とも、廊下まで声が聞こえます。恥ずかしいのでやめてください。」

冷ややかな目で二人を見つめながらそう言うと、しょぼんとして返事だけをし、リンゴを食べた。


後日、退院してすぐに伝説の龍のエキスが届いた。専用の機器で封印と龍を1つにする。そしてそれを政府に送り返す。1週間するかしないか辺りでアーマーロイドが来る。あとは主人次第だ。

ショウの携帯が着信を知らせる。着信に応えると、どうやらアーマーロイドができたので届けに来るようだ。それを聞いたショウは一人で家のなかを飛び回る。それを気にせずにラータは黎兎さんが淹れたコーヒーを飲む。

「ちょっとは落ち着いたらどうだ、ショウ?」

黎兎さんがショウの分のコーヒーを淹れる。ショウはソファーに座ってそのコーヒーを飲む。

「うん、まずい!」

「まずいなんてひどいなぁ…ミルク入れろよ」

実はショウはコーヒーが飲めない。だから何倍も薄めて飲みやすくする。もはや甘いカフェオレだ。

「お子さまにはこの味のよさが分からないかぁ」

「お子さまじゃない。24だぞ俺。」

「なおさら部屋を飛び回ったりコーヒー飲めなかったりしないだろ? ましてや男が。ほんとについてんのか? 俺を見ろよ。こーんな、イケてる30代の大人はそうそういないぞ?」

「うるさいねぇ…苦いもんは苦いの。テンション上がれば誰だってじっとしてられないでしょーよ。」

ふとラータを見ると、こんなに騒がしいのにうとうとしていた。それを見たショウは少し落ち着き、またコーヒーをすすった。黎兎さんがショウの肩をつかむ。

「うとうとしてる女の子は例え兵器だろうが可愛いもんだよな。」

「…ラータは兵器じゃない。俺の相棒だ。」

「……ふっ…そうだったな。」

ショウはラータの隣に移動し、着ていたコートを布団がわりに被せてやった。うとうとどころか、とうに寝ていた。和んでいると、チャイムが鳴った。びっくりして起きるのかと思ったら寝返りをうった。ほっとしてから外の扉を開けると、政府の役人が迷彩のパーカーのフードを被った小柄の女の子を連れてきた。

「キドラだ。鍵と龍…そのまんまの名前だ。まぁ、名前は自由に変えてもらっても構わない。それじゃ。」

新しいアーマーロイドのキドラ。どこか不良のような雰囲気を感じる。役人が帰ると、キドラはショウに目を合わせた。目付きが悪い。ほんとに不良なのかもしれない。とりあえず家に入れる。そして地下に連れていってそこで筋トレをしているエージと対面させる。

「こいつが俺の…?」

「不服? ならいいや。僕もあんたと契約するの嫌だし。」

しれっと契約することを拒否した。これはびっくりするどころの騒ぎじゃない。契約させるために作ったのにまさかの拒否だと。

ショウがそれを指摘する。

「僕は僕。契約するかしないかを選ぶ権利はあるでしょ? まぁ、どうしてもっていうなら仕方ないね。ほら、この瓶あげる。ピンチの時はその中身を腕に着けるといいよ。一定時間は並みの人間より強くなるから。」

なんなんだこいつ、態度が気にくわない。ショウはイライラし始めた。




Android #4 ヒーローって

エージ「なんだよあいつ! 嫌なやつじゃねぇか!」

ショウ「まぁそこはさ…頼んだよ。あの不良少女…」

エージ「何をだよ! あー最悪だ! ラータみたいな可愛いやつがくるのかと思ったら不良少女かよ!」

キドラ「おい、今僕のこと不良少女って言った?」

エージ・ショウ「言ってませーん」

ラータ「はぁ…。」

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