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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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世界を巻き込む大戦

「俺は水上(ミカミ) (ショウ)。君たちに連絡を入れた者だ。」

自己紹介の後、ラータの紹介もする。

「こっちはラータ。俺の頼もしい相棒だ。」

彼女はカーテンシー方式でお辞儀をした。

「僕は五十嵐(イガラシ) 竜雅(リュウガ)です。今はヴェルカー専用の医者です。」

「僕はフィリオです! 道中で危ないところをイガラシ先生に助けてもらってから、色々あって一緒に行動することになってます!」

医者と、元気の良い男の子だ。

ショウが自分よりも少し大きい彼らを見ていると、奥からゾンビのようなものがゾロゾロと寄ってきていたのが分かった。

「ヴェルカー...! まだ追ってきてたのか!」

リュウガが構え、そう言う。

「ヴェルカー...。ふむ、あいつらのことか。」

ショウは、ゾンビの名称に納得すると、パワーナイフを取り出してジクティアに変身する。

「うお...!? か、かっけぇ!!」

フィリオが目を輝かせ、そう言った。

「だーろ?」

ジクティアは彼の頭を撫で、ジクティウェポンをソードモードして構えた。

「僕たちもやるよ、フィリオくん!」

「はい!」

リュウガは髪の色が朱色っぽくなった。多分正確な名称があるんだろうが、今は知らないからそれでいい。

フィリオは果物ナイフで手に傷を入れると、そこから黒色の炎が広がり、全身を包んだ。

それを払うようにして腕を振ると、そこには両頬に模様のようなものがあるフィリオくんがいた。しかもおしゃれに青色のマフラー(のようなもの)をしている。

「いくぞ!!」



「お前らか。ショウが言ってた仲間ってのは。」

緑色の瞳、黒髪の男がきいてきた。目付きの悪さはカズトと同じくらいか、もしくは少しマシくらいだ。

「あんたが『伝説の英雄』...エリアスさんか。」

タクミがきいた。今は彼一人だが、ショウから聞いた話だと全員で5人いるそうだ。

伝説の英雄...かつてアマルスを中心に世界中で暗躍していた非正規軍隊を根絶させたことからその二つ名がつけられた。

奴等は「世界をひとつにする」と言い、核兵器を大量に所持していた。国それぞれが大人しくしなければ、これをその国に落とすと脅したために手出しができずにいた。彼らは勇敢にもそれに挑み、見事に討ち果たした。

偉大なる功績を残した者に付けられる、『ヒーローマーク勲章』を授与される式典が国際生中継されたことでも有名だ。

「知っていたのか。ショウは知らなかったようだがな。」

エリアスが言った。

「あいつはあまりニュースとか見ないからな。うちのリーダーが失礼した。」

カズトが礼儀正しく頭を下げたが、ぎこちのない動きだった。

それがおかしくてつい、フッと吹き出した。

エリアスは彼らをギルドへ案内した。



「これで全員かな?」

最後の一体を倒し、リュウガが言った。

「早くコレイナさんたちのところに戻ろう!」

フィリオが変身を解除して言うと、皆も変身を解除した。

「コレイナ?」

「僕の仲間です! 急ぎましょう、リュウガさん!」

「そうだね! 」

ショウはストップウォッチのような物を取り出し、それにあったボタンを押すと、それを投げた。すると、目の前にバイクが現れた。

「すっごいでしょ? 知り合いの“マホー使い”に作ってもらったんだ。」

ミユのことだ。二人は目をキラキラと輝かせながらそれを見ている。

ハッとしたリュウガが急いで自分達のバイクにまたがった。

「この先もヴェルカーが大量に発生しています! 警戒してください!」

ヘルメットを被り、グローブをはめながらショウに言った。彼も同じようにヘルメットとグローブをつけると、親指を立てて合図を送った。

ハンドルを捻り、エンジンを鳴らす。

スタンドを起こし、バイクを走らせた。

ここに来る前に少し下調べをした。人を喰らう化け物・ヴェルカーは、元々医療目的で作られたとされていた人工微生物、「ヴェルクウイルス」を過剰に取り込んだ人の成れの果てだ。

ウイルスは繁殖するためにたんぱく質を要する。それを外部から摂取するため、生物を見境なく襲うらしい。なんとも恐ろしい奴が世に出てしまったものだ。

後ろに座っているラータも怖がっているのか、ショウの腰に腕を回してぎゅっと固定している。いつもは肩なのに。

「前方、来ます!」

リュウガに言われて前を見ると、たくさんのヴェルカーを確認した。

「突き抜けます!」

彼が続けた。

「ラータ、掴まってろ!」

ショウも覚悟してハンドルを捻り、タイヤの回転を加速させる。

やはり怖がっていたようで、さっきよりも密着してきた。

「邪魔だ! そこをどけ!!」

リュウガはそう言って退かないヴェルカーに、前輪を浮かせてそれをぶつけた。

「すご。」

群れを突っ切ると、そのままリュウガたちの後を追うようにしてショウたちが乗っているバイクも走り続けた。

到着したのは、キャンプ場だ。

ピンクやら青やら緑やら黄色やらと、随分とカラフルなものだ。

「戻ったよ!」

フィリオが言うと、黄色のテントから何やらチャラそうな金髪と、防弾チョッキやら迷彩服やらを着ている厳しそうな女性が出てきた。

「おーリュウガ! 無事で良かった! 」

彼の肩を持って、金髪の男が笑った。

「フィリオ!...帰ってこれたんだな...よかった...!」

意外と優しいのかもしれない、なんて思っていると、いつまでもくっついて離れないラータに気付いた。

「着いたぞ、ラータ?」

彼女は黙ってショウの背中に顔をうずくめている。ヴェルカーたちが相当怖かったようだ。

「おー、あんたたちが噂のmr.Xか。俺はソウゴ。よろしく!」

チャラそうな金髪は、ソウゴと名乗った。ソウゴはこちらに手を差し出したので、ショウも自己紹介をしてからその手を握って握手を交わす。

後ろのラータに気付いたようで、おーい、と手を振って見せるが、うんともすんとも言わなかった。

「あぁ...なんかヴェルカーがあまりにと怖すぎたみたいで...。こいつはラータ。俺の相棒だ。」

「アッハハ! そりゃ怖いだろうなー! あんなのが町にうじゃうじゃいるって考えるととんでもねーしな!」

ソウゴは笑って言った。少し和んだようで、締め付けの強さが若干弱まった。

「しょう...。」

か細い声で呼んだ。

「離れないでくださいね...?」

「はいはい。離れるわけないでしょーが。とりあえず降りよう?」

彼女は頷いて手を離し、二人はバイクから降りた。

「さぁ、リュウガ。ここに俺らがいるっつーことは、あらかた情報を集めたってことだ。」

「はい、承知しています! ...ヒロムさんたちを待った方がいいですよね...?」

「いや、どうやら事態は俺たちが思っているよりも遥かに深刻らしい。」

ジェスが動き出したらしい。

ジェスとは、ヴェルカーの親玉的存在だという。そして、それはウイルスで、リュウガの親友に寄生しているのだという。

彼らはヴェルカーを普通の人に戻すための医者で、極力殺さないようにしているのだという。そこでショウはあることを思い付いた。それは、「攻撃しながら治療をする方法」だ。

ショウたちが使っている武器も、実はちょっとした工夫が施されている。

そもそも彼らが戦っていたエンディアも、元を辿れば人間と適量のヴェルクウイルスだ。つまり、その武器を参考に彼らの武器を作ってやるのだ。

「そんなこと、できるんですか!?」

リュウガが半信半疑にきいてきた。

「あったりまえ! なんたって俺は、天才だからな!」

コレイナは嘘臭そうだという目でショウを見た。

「あ、発明で思い出した。」

ショウが彼らに協力を要請した理由はただひとつ。“サム”という科学者との接触だ。彼は、エリアスの父、ジャック・リーフィスが創立した軍隊、「スターオブベレツヘム」に所属している。スターオブベレツヘムの科学力は国際的に見ても優れている。彼がいれば、恐らくはストロフモードを制御させられる。さらに、武器の開発だってできるはずだ。

「じゃあ、その親玉のジェスを討伐しよう。そしてそのためにも__。」

みなまで言わなくとも、皆は理解した。

話し終わったあとに、青い髪の男と緑っぽい髪の男がそれぞれ剣と狙撃銃を持って帰ってきた。

青い髪がヒロム、緑っぽい髪がガクトというらしい。

「ヴェルカーがいない。」

ショウたちは、ヒロムの話を聞いて耳を疑った。ここに来る時に沢山のヴェルカーとすれ違っていたのに、今はいないのだという。

「...。」

ショウはこんな予想外の出来事が起きているのに、あることが気になった。

ルーグが大人しくしすぎているのだ。ルアフに何かあればすぐに知らせが来るようになっている。パレン、クート、ウーペらを置いていったから、非常事態があってもラータに通信が飛ばせる。...ジャミングさえされていなければ。

「そうだ、仮面の男は?」

リュウガはガクトに聞いた。

「仮面の男?」

ショウは引っ掛かって彼らにきいた。特徴や話し方を聞いた限り、そいつはルーグだ。

そういえばルアフに居たときから不意に静まることが少しあった。まさかここに来ていたのか? だとしたらなんのため__

_ まさか...。


「遅いかったじゃないか?」

赤黒のコートを着た仮面の男が、黒髪の爽やかな男性に言った。

「ジェス...。」

この男こそ、いや、この男に寄生している奴こそがジェスである。

彼はフッと笑って手をかざした。彼の後ろには、沢山のヴェルカーがゾロゾロと揃っていた。

「さて、全部揃ったぞ...! あとは...お前に任せたぞ...?」

後ろから、黒い軍服の上からコートを羽織った男が現れた。その男の隣に、紫色の髪を風になびかせる小柄な女の子が現れた。ローナだ。

「ダイスケ...?」

力強く、ギアルの政府官邸を睨み付け、小型の瓶のような機械を取り出した。それを腰に着けた装置に突っ込み、レバーを押した。

《ボブレイ・トル!!》

電子音が鳴った。

「変身...。」

《Neo Armed! ダーブロル!!》

機械から紫のスライムが溢れ、それが4肢に絡まる。すると、そこを中心にスライムが広がり、鎧を形成した。

イスパードの強化形態、ダーブロル。

そしてスーツ姿の男性がローナとアームドした。

「ふふ...この時を待っていた...!」

紫色の鎧を纏った戦士だ。

「ふふ...待たせたな、マコトのおっちゃん。」

マコトと呼ばれた男性は、ポキポキと関節をならした。

「フッハッハッハ!! 楽しもうぜ! 一世一代の戦い(まつり)をなぁ!!」

ルーグがそう言うと、皆が一斉に散っていった。

「さぁ...ジクティア...呪われた運命を持つ者、ビビよ...。俺に見せてくれ...お前の抗いっぷりを!」



Android #34 世界を巻き込む大戦

ショウ「残り8話らしい。」

エージ「マジか!」

フィリオ「いよいよ最終決戦へ向かってきているって感じがします...!」

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