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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
37/49

お弁当

バレンタインですね。

今回は、Androidの特別編です。

ボクシングジム...。

後に愛し合うことになった彼らはそこで出会った。

ジムの扉の前で3人の女子たちが集まっていた。彼女たちはジムのマネージャーである。桃色でゆるふわな髪型で、他のみんなと比べて小柄の『カスミ』、水色でショートカットの『ミソラ』、そして茶髪で、その髪をハーフアップにまとめている『マリ』だ。彼女らは、遅れて来ているもう一人のマネージャーを待っていた。彼女の名前はアカリ。いつでもヘッドフォンを着け、他者と関わろうとしない変わった子だ。なめらかな赤橙色の髪と、同色の瞳で、いつも黄色のパーカーを着ている。暖色系とは程遠いほど、寒色的な態度である。

「あ、きたきた! 遅いよアカリちゃん!」

やっと来た彼女を、マリが見つけて言った。アカリは一言謝り、皆とジムに入った。

「おはようございまーす!」

マネージャーたちが声を揃えて言うと、トレーナー(通称・先生)が大きな声で挨拶を返す。いつものことだ。

選手たちがやって来るまでのあいだ、掃除や器具の調整をして環境を整える。サンドバッグを、軽く消毒液を染み込ませた雑巾で拭いたり、床をモップ掛けしたり、器具の調子をメンテナンスをしてそれを終える。

「ざいあーす。」

やる気のないような声で入ってきたのは、先生が直々にスカウトし、誰よりも真剣に練習を重ねている男だ。名前はエージ。頬に白い絆創膏を付けている彼は、顔立ちも良く、真っ直ぐな性格から、マネージャーや他の選手たちの間でも人気だ。


昼。

たくさんの選手や見習いたちの各々が自分のすべき練習をしていた。サンドバッグを殴る音や、動く度の「シュッ!」でその場が満ちていた。汗のにおいがやんわりしてきたため、不快さで集中を崩させないために、元々つけていた換気扇と併せて窓を全開にしてそれを逃がす。

正午を過ぎると、選手たちは、昼の休憩に自分が持ってきた弁当を食べ始めたり、食べ物を買いにいったり、外食に出るものもいた。

皆が休憩をしているなか、エージだけはずっと練習を続けている。

「彼、休憩しないのかな? もう3時間は水のんでないよ...?」

ミソラが呟くように言った。

このジムの4人のマネージャーは、選手のなかから最低でも1人は選んで支えなければならない。

「アカリ...倒れないうちに水分補給させなよ...。」

カスミが、彼のマネージャーを務める彼女に言った。

「...ボク...?」

嫌そうな表情を浮かべた彼女は、深くため息を()き、渋々ながらもスポーツドリンクを取り出した。

「...エージさん、脱水する前に水分摂って...。」

彼は練習を中断させ、そう言う彼女を見ると、すぐに再開した。

「...はぁ。 マネージャーの身にもなれっつーの...。」

ボソッとそう呟き、手に持っていた冷たいそれを床に置いてみんなのもとへ戻る。

「なんか...不機嫌そうだね...。何かあったのかな...?」

カスミがアカリに問う。

「さぁーね。って言ってもまぁ、いつものことだけどね。」

彼女はエージのマネージメントを担当しているが、何かをしようとしてもシカトをキメられてしまう。だから放置しているのだ。

「...そういえばエージさんがお昼食べてるところ見たことないかも...。」

カスミがアカリに言った。

彼女はそんなこと知っていた。しかし、話しかけにくさから、放って置いていたのだ。

「...ボクが知ったことじゃないよ...。」

「そんなこと言わないであげなよ...?」

「だってさぁ...。」

そんなことを言っておきながら、実は弁当を二人分作っており、持ってきていたショルダーバックに入っている。

話しかけにくいから放って置いていた、とあったが、それは彼女に勇気がないからである。そのため、余ったもう一人分の弁当は、自身の夕飯にしている。

改めてそれを考えると、少し背徳感を感じてしまい、表情が暗くなった。

「お腹空かないのかな...?」

カスミがそんな彼女に追い討ちをかけるように言う。

「あーもう! わかったよ!」

カバンの中にあったもう1つの弁当箱を取り出し、エージの元へ駆けた。

「あの...ごはん、ここにおいときます...。」

先程置いたスポーツドリンクの隣にそれを置き、去った。

その時にカスミの手を引っ張り、足早に休憩室へ向かった。


昼食を終え、徐々にトレーニングルームに戻る選手たちが増えている。アカリたちは時間の許す限りリラックスしてから戻った。

相変わらずエージは一人でトレーニングをしている。その様子に弁当を食べていないことを察した彼女の心に傷が付いた。弁当箱を回収しに彼の近くに向かう。

すると、その隣にあったスポーツドリンクのペットボトルが空になっていたことに気付いた。まさかと思って箱を持ってみると、軽く感じ、その蓋を開けると、中身は空っぽになっていた。弁当箱の下敷きになっていた紙切れに気付き、手にとってそれを見る。

_ うまかった。ありがとう。

少し乱れてるような字でそう書かれている。不器用な雰囲気で、あまり話したことはないが、どこか彼の人柄が出ているような感じがした。

彼のマネージャーとなって数週間、間接的だが、やっとコミュニケーションが取れた気がして嬉しい。それのあまり、彼女は目をキラキラと輝かせながら、ずっと箱を見つめていた。ふと我に帰ると、足早にそこから離れる。

嬉しそうな表情を初めて見たカスミが、何があったのかをきいたが、なんでもないとだけ言った。

「...変な女だ...。」

その様子を横目で見ていたエージが、自分にしか聞こえないような声でそう言った。

気になってもう一度その女を見ると、嬉しそうにずっと空になっている弁当箱を見つめていた。


気が付けば太陽は沈んでおり、時計の針は19時の約10分前を示していた。

エージは汗の処理や着替えをしてからジムを出ることにしており、備え付けのシャワールームへ足を運んでいる。

「...。」

彼はそこの入り口の前に待つアカリの姿に気づき、足を止めた。

「...なんか用か...?」

嫌味のつもりではないが、疲労のせいでそう聞こえる。当然、本来はそのつもりではない...。

「...あの...。」

言いかけたそのあと、アカリは恥ずかしそうにゴニョゴニョと何かを言った。はっきり聞こえず、聞き返したが、先程と同じようになった。それどころか顔がみるみる赤くなり始めている。その様子が、普段の彼女らしくなくて少し可愛く思えた。こういうのを、世では“ギャップ萌え”というらしい。

「..悪ィけど付き合ってらんねぇ。じゃあな__ 」

「待って...!」

入り口を通ろうとした彼の筋肉質な腕を、それと比べて細い両手でつかみ、止めた。

「...用があんなら早くしてくれ。」

本当は振りほどいてやりたいところだが、昼の貸しがある。彼は少し苛つきながら、赤くなっている彼女の顔を見た。

「...き、きりゅう...あ、ああ、あかり...。ぼく...のなま、え...。」

一切視線を合わせないよう、うつむきながら、彼女は小さな声で名乗った。

「...?」

どういう意図で、今更名乗ったのかが不明で、困惑する。こういうとき、どうすればいいのか分からない。

5秒の沈黙が生まれると、すぐに彼女はエージの腕から手を離し、逃げるように走り去った。

「なんだあいつ...。」

彼は少し彼女が気になり始めた。

一方、外ではカスミたちがアカリを待っていた。

出入口の扉を開き、中から赤橙色の髪をした女の子が飛び出し、カスミとぶつかった。

「ご、ごめん...!」

その子はカスミに頭を下げて謝ると、彼女はアカリの肩をポンポンと優しく叩き、許した。

「それで、どうだった?」

「む、無茶だよ...! まともに話したこともないのに...!」

「だから自己紹介が必要だったんじゃない?」

水色のショートカットの女の子、ミソラがクスクスと笑ながら言う。

「もう...。」

他者と関わらないはずの彼女がミソラたちと話すようになるには相当の時間がかかった。同性であり、共に働いていてもこうなのに、いきなり選手のマネージャーをしろと言われたときは辞めようとも思った。彼女がそうしなかったのは、単にカスミやミソラ、そしてマリのお陰なのだ。

もちろん彼女たちもそれぞれの選手のマネージャーをしている。

皆きちんとその役割をこなし、彼らとの絆もある。中にはそれを深めすぎた者もいるらしいが...。

そもそも、何故アカリのような女子がこのジムでマネージャーを務めるようになったのかというと、元々は中学からの友人であるマリに誘われたからである。

__ バイト募集のチラシを見つけたマリは、それのコピーをもって、同じ高校で隣のクラスにいるアカリを直撃した。

「時給350レルクだってよ!」

窓側の席でうつ伏せながら太陽の光を浴びている彼女に対し、少々嬉しそうに話す。

ちなみに、レルクとはスラフ州のお金の単位である。

「350レルク...。 結構貰えるんだね。」

顔をあげ、マリの顔を見た。いかにも眠そうな表情で、おでこが赤く染まっていた。

「一緒にやろ! 私となら、アカリだって怖くないでしょ?」

「ボクはいいよ...。使い道ないからお金に困ってるわけじゃないし。」

言いながら再び机に突っ伏した。

「えー...。じゃあ...私がバイト始めたら忙しくてあまり話せなくなるけど、それでもいい?」

ピクッと反応し、ゆっくり顔を上げてマリを見る。満面の笑みだ。

「...わかったよ...。ボクもやりゃいいんでしょー。」

大きなため息を()きながら再び伏せた。マリはそんな彼女の頭をポンポンと撫でてやった__ 。


あれから出勤する度に弁当を作り、彼に出していた。食べてくれる度に書き置きが記され、次第に文通をするようになっていた。

_ いつもアカリが作ってんのか、これ?

うん、そうだよ。

_ おまえ、料理できんだな。

凄いでしょ? エージさんには無理そうだね?

_ 俺だって料理くらいできる。

卵焼きとか?

_ いや、ラーメン。

ラーメン!? どうやって?

_ お湯を注ぐだけだ。

それは料理じゃないよ...。

だんだん互いの手紙が楽しみになっていた。

エージの返事を読み、クスッと笑う。そして紙とシャープペンシルを取り出し、返事を書く。今回は少し立ち入り、恋愛の話を振ることにしてみようと思った。

「アカリー?」

マリだ。彼女がアカリの背中から肩をガシッと掴んで呼んだ。それにビックリしたアカリは大きく肩をビクッとさせた。

「何かいてるのー?」

「な、なんでもないよ! ...み、見ないで...!」

「...って言われると見たくなるじゃん?」

「やだ! ぜーったい見せない!」

覗こうとするマリと、それを阻止するアカリ。それをカスミとミソラは見ていた。

「アカリちゃん、最近元気あるよね?」

カスミが言った。ミソラはそれに頷いて反応を示す。確かに今までと比べると見違えるように違う。しかも、仕事中、頻繁に時計をチラッと見るのだ。まるで昼休憩を待っているような様子だった。

「ねぇ、もしかしてアカリちゃんってさ、エージさんのこと好きなのかな?」

ミソラは、目の前にいるカスミ以外の誰にも聞かれない声量で言った。

「えー? それはないんじゃないかな...?」

「だって、初めてお弁当を渡してから今までの温度差を思い出してみなよ?」

言われてみれば確かにそうだ。もしかして本当にそうなのだろうか?

...翌日。

_ エージさんは好きな人とかいないの?

弁当箱を包んだふろしきに、それと一緒に入っていた紙切れにそう書かれていた。

「...。」

普段は返事を書いてから弁当を頂く彼だったが、今回は珍しく後回しにした。

いつものように美味い弁当を平らげると。いよいよ書かなければならなくなった。白紙をピリピリっと破り、ボールペンで返事を書く。

_ エージさんは好きな人とかいないの?

...おれ、人を好きになったことがねぇんだ。

そう書いて弁当箱と一緒にふろしきで包んだ。しかしその直後、包みを解いて紙切れを取り出し、その裏に付け足しで何かを書いた。そして再びふろしきで包み、いつものところに置いた。

アカリが休憩室から戻り、嬉しそうにその包みを持って行った。

彼女は誰にも見られないよう、慎重に紙切れにある文字を読んだ。

_ おれ、人を好きになったことがねぇんだ。

相変わらず少し乱れた文字だ。少し彼のことが分かったような気がして嬉しかった。ふとその紙の裏をみると、こう続けてあった。

_ 今度、外で会わねぇか? お前とゆっくり話したい。

この文字を目にしてドキッとし、何かがこみ上がってきた。

「おー、やっぱそうだったかー!」

今度はビクッとなった。声がした後ろの方を振り向くと、茶髪でハーフアップの女子、マリが笑みを浮かべて覗いていた。

「な、なな...!!」

「大丈夫大丈夫! 誰にも言わないよ!」

アカリの頭をポンポンと撫でながらそう言った。

「へぇ...エージさんに“デート”に誘われたんだ!」

「ま、まって! そんなんじゃ...というか、まだそんな仲じゃないし...!」

「“まだ”でしょ? 全くアカリったらー!」

「...! そ、そそ、そういうんじゃ...!」

「まぁまぁ、アカリの初恋、応援するよー!」

「は、はつこ...!? ちがっ...ボクは...!」

マリは、そう言うアカリにデコピンして言葉を途切らせた。

「みなまでいうなー! ほら、こういうものの返事は直接いきなよ!」

マリがそう言うと、アカリの背中をポンッと叩き、エージの元へ向かわせる。

彼は練習開始の時間まで余裕があるため、その場に座り込んで休んでいた。

「ぁ、あの...!」

「...?」

アカリが顔を真っ赤にしながら声をかけて来た。彼は全身を彼女に向け、話を聞く姿勢になる。

「あ、あの、あの...紙の...後ろに、あったやつ...。ぜ、ぜひ...。いいですか...?」

どんどん声が小さくなる彼女を見て、思わずクスッと笑う。アカリはそれに気付いてムッとした様子でエージを見た。

「おう! ありがとな、アカリ!」

今度は嬉しそうに笑みを浮かべ、そう言った。

「じゃあ明日...日曜だし、9時頃で...駅前広場でいいか?」

彼女は頷いて応えると、お辞儀をして戻って行った。


約束のとき...。

彼女は急いで広場まで走る。よく聞くのは、デートではハイヒールをはくらしい。しかし、アカリは恋愛とは縁のないような性格ゆえ、おしゃれのことも知らず、当然ハイヒールなんてものは持っていなかった。化粧もろくにしたことがなく、かといってこの日のためだけに化粧品を買ったり、実際にしてみるなんて大それたことはできない。

せめて服だけでも何とかしようと思って買ったパーカーも、何を思ったのか、同じようなデザインの、しかもメンズで、その上Lサイズを買ってきてしまった。

“穴があったら入りたい”気持ちで一杯になった頭を悩ませ、閉店ギリギリの洋服屋に駆け込んでワンピースを買った。上が長袖の白色で、下のスカートが綺麗な青色のそれの上に淡黄色のニットパーカーを着ている。靴はムートンブーツだ。自分では頑張った方だと思っている。

息を切らして広場の真ん中にある時計台の下で辺りを見渡し、彼がいないかを確認する。

「...お、いたいた!」

後ろの方から声がしたので、振り向くと、彼...エージがニコッとしながら待っていてくれていた。

私服のエージを初めて見たが、なんとまぁ彼らしい...のか?

上は青のチェック柄のパーカーで、黒デニムパンツ。靴は普通のスニーカーだ。

「...お前そんな格好するんだな...。」

彼がアカリの格好を見て言った。

「...な、なんですか...。ボクなりに...頑張ったのに...。」

バカにされた感じがして悔しい。一気に彼を嫌いになりそうになったが、彼は口角を少しあげ、少し照れながらこう言った。

「いや、可愛いと思うけどな...。」

恥ずかしくなり、顔が熱くなった。好きな訳ではない。しかし、初めて異性に言われたその一言が嬉しくなったのだ。

「さて、どこ行こうかなぁ...?」

顎に手を当て、彼は考え始めた。

「か、考えてないんですか...?」

人混みにかき消されそうに思ったが、彼はどうやら聞き取れたらしく、

「あぁ。こういうの初めてだからさ。」

と応えた。

初めてにしては動じていない気がする。彼女はそれも気になった。だが、それよりも、先程走ったせいでお腹を空かせている自分がいる。腹の虫を聞かれまいと必死に静めるが、どうしても鳴りそうになってしまう。

「腹へったし、飯行こうぜ。」

まるで自分の気持ちを汲み取ってくれているような感じがした。エスパーか何かなのかと勘違いしてしまいそうになった。


楽しいと、時間の進む速度は1時間すらも短く感じる。

太陽は既に沈み、暗がり始める街の灯りがつき始める。

雪が降り始め、冬ならではの光景になり始める。

「...なぁ、アカリって何歳だっけ?」

「ボク...? ボクは17だよ?」

たくさん話し、打ち解け、今では普通に話せるようになった。

「17...。高校2年かぁ。」

「うん。それが、どうしたの?」

「...。いや...。」

彼の頬が少し赤くなった。きっと寒さからだろう。彼女はそう思ったが、そうではなかったようだ。

「...そうか...じゃあ無理だな...。」

「何が...?」

「...いや...俺...__」

周りの環境音が一気に静まり、無意識のうちにアカリは彼の言葉に集中していた。

彼はそんな彼女の目を見て、言った。

「__ お前のこと好きなんだよ。」

......。

「...は...?」

唐突すぎる告白に思わず足を止める。顔が赤い彼女は、ただぼーっと彼の顔を見つめる。

「でも高校生か...。...4歳差...。おれ捕まっちまわねぇかなぁ...。」

「いや、そうじゃなくて...なんで今...?」

「....? ...あ..。」

「いや『あ...』じゃなくて...!」

「まぁそういうことだ...! あー、忘れろ忘れろ!」

彼はニコッとしてそう言った。彼のその言葉に少しイラっと来たが、今はそんなことどうでも良くなった。

「で、でも...人のこと好きになったことないのに...なんでわかるの!?」

「...そりゃ...先生に聞いたりしたから...?」

「せ、先生に...!?」

「まぁでも...歳が歳だからなぁ...。諦めるわ! さ、行こうぜ?」

彼はそう言って彼女に背中を向け、歩みを再開した。アカリはその背中をただ見ていると、深呼吸をして彼のとなりに駆ける。

「...結婚できる年齢だから...一応、合法だよ...。」

彼女はエージに、交際することができるということを教え、彼の手を握る。

「...その...さっきの...返事...。...え、エージさんだけだと、ほら、その...。可哀想だから...。」

「...?」

「ボクが、マネージャーとしてだけじゃなくて...。その...。え、エージの...女の子として...? 隣にいなかったら...ダメな気がするから...。」

「............。」

「...だ、ダメ...?」

再び歩みを止めると、エージがアカリの顔をじっと見つめた。真っ赤に染まった頬が目立ち、それが可愛い。彼は彼女の頭をポンポンと撫でると、思わず吹き出した。

「いや? うれしいよ!」

手を強く握りしめ、彼は彼女を引っ張っていくような感じでどこかへ向かっていく。

「わっ! エージ!? どこ行くの!?」

「俺に着いてこい! アカリー!」


アカリの家には弁当箱が二人分ある。

1つは自分用で、もう1つは夕飯用。いや、今の後者の箱は、自分の彼氏の分だ。


Android #X(特別編:前) お弁当

続きます。

えぇ、ホワイトデーですね。あはは。

もう一組分ありますので、お楽しみに。

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