激戦・平和な国
バスの中...。
「昨日の遊園地、楽しかったか?」
「はい!」
ショウの隣にラータが座り、その前の座席ではダイスケとパレンが座っている。
前日の19時頃に二人は帰ってきた。お土産として、遊園地の中で売っていたチュロスを買ってきてくれた。
「ここからは4時間かかる。2時間の毎に休憩はあるが、トイレは済ませてあるんだろうな?」
ダイスケがショウとラータに言った。
二人は頷いた。大丈夫だということだろう。
「あ、それと昼食は出るからな。」
「なんだって...?」
バスの中で食事が出ると聞いて驚いた。初耳だ。...といっても、サンドイッチとコーヒー程度の軽食らしい。
三時間後、気が付けば外の景色に多く見られたビル等の建物が、石造りの家等になっていた。
ダイスケから聞いた話によると、パシーサはどうやらこの道の先にあるらしい。
町だと聞いていたのだが...。
ショウは、ふと隣に座っていたラータの様子を見ようと思って振り向くと、自分の肩にもたれて眠っていた。
つい可愛く思って頭を撫で、添い寝した。
もうすぐ到着することを知らせるため、ダイスケは後部の二人の方へ向こうとしたが、それを見てやめた。
「まるで家族のみたいだよね、あの二人...!」
パレンが微笑みながら言った。ダイスケは静かに頷いた。
「ショウ、起きろ。」
ダイスケが寝ているショウとラータを起こした。
「...着いたの...?」
「あぁ。パシーサだ。」
目を開いてから体を伸ばすと、隣のラータも揺らして起こした。
一行は荷物を持ってバスから降り、タクシーに乗ってある程度進むことにした。
テオスの拠点はどうやら山奥にあるらしく、不自然にならないようなところで降りた。
それがある山奥まで歩くことにした。
パシーサは平和な田舎町という印象だ。都会に住んでいたショウたちからすれば、不思議な空間だった。
「行くぞ、ついてこい。」
ダイスケがそう言うと、ショウたちはついていった。
ひたすら歩き続けること1時間弱の所でダイスケが立ち止まった。
「ここだ。」
周りには何もなく、人が通ることもない。再びダイスケに案内されて進むと、地下室への扉のようなものがあった。
「セキュリティは?」
「なに言ってる。ぶっ壊すんだよ。」
ダイスケはそう言い、コア・システムを取り出してイスパードに変身した。
「やるぞ。」
ショウもパワーナイフを取り出し、ラータとアームドしてジクティアに変身し、その上にフォームアップでパレンともアームドした。
「行こう。」
専用の弓、ブレイクアローを召喚してエネルギーをチャージする。
《ブレイクアロー!》
武器から音声が流れた。
「喋るのか、その武器。」
「チャージするのにいちいちメーター見てらんないから、音声ガイドにした。」
《チャージ・アタック!》
「うるさくないか、それ。」
「音量調整機能、入れ忘れてた。」
《ブレイク・ストライク!》
《アロー・フィニッシュ!》
《デストロイ・フィニッシャー!》
最大までエネルギーを貯め、射出した。
緑と水色のエネルギー弾が何発も現れ、ドアを集中攻撃した。被弾したドアは派手な大爆発を起こし、そのせいで出入り口がかなり広がった。
「それ、誰が声を当ててんだ...?」
「? 電子音声だけど?」
「ならよかった...。あ、いや、クセが強くてな...。」
「何いってんだよ。行くぞ!」
テオスの拠点への乗り込みが始まった。
ルアフでもルーグらとウルフらが戦闘を繰り広げていた。
しかし、アームドしているエージ一人だけ動かなかった。
『エージ!? どうしたんだよ!?』
キドラが心配して声をかけた。
「分からねぇ...! 動こうにも...体が言うこときかねぇ...!」
今まで経験したことのない状況に、恐怖すら感じていた。
「そりゃあそうだろう。」
ルーグが彼の前に現れた。
「お前の相棒のキドラは、以前のアーマーロイドなんかじゃない。進化を遂げたチャージロイドだ。遥かにパワーアップしている。お前はそれについていけてないんだよ。」
「んだと...!」
「キドラも可哀想だなぁ。自分の体も満足に動かせない奴が自分の主なんてよぉ。それに、ジクティアも...。」
彼の名前が出た瞬間、エージの表情が変わった。
「まずは、ラータを殺す...。次にウルフとカズトを俺が捻り潰してやるんだ...。そうして残されたショウは、お前の目の前で苦しませながらぶち殺してやんのさ...。早くあいつの命乞いが聞きたくて堪らないなぁ!」
エージの...クレイの手が震えた。恐怖によるものではなく、仲間であるショウを侮辱された怒りだ。
「いつもは可愛らしい顔だが...苦しむ時はどんな顔をするんだろうな...? お前は動けないから、ショウを助けることも俺を倒すこともできない...。」
「...くそ...くそっ! くそっ!!」
クレイの瞳が光を放った。
そして次の瞬間、クレイの身体中に走っていた電流が一気に消えた。
「ショウは...関係ねぇだろ...ッ!」
強い怒りがルーグに向けられた。
それなのにその本人は、ついに覚醒したなと喜んでいた。
エンディアと戦っていたタクミは、ルーグの言動に違和感を覚えていた。
中身のない、煽り文句だったのだ。
「お前を家族だと思っていたショウを裏切った...俺はてめぇを...絶対ェ許さねぇ!!」
強く相手を睨み、構えをとった。瞬間、高速でルーグに接近し、拳を当てた。
「なに...!?」
カズトがそれを驚いたような表情で見ていた。
「うぉおりゃああ!!!」
2発目、3発目と連打し、相手を圧倒させる。
「ッ...予想を越えた力だ...! 流石だなクレイ...!」
「うぉぉおおおお!! レイトォー!!」
銀色に光る鎧が、更に光沢を増させた。
再び体に電流が走った。しかし気にしなくなるまで暴れ、ルーグをぼこぼこにした。
「...やるな...!」
二人が息を切らして睨み合う。
「あの時ぶりだ...。お前が初めてキドラとアームドしたとき以来の喜びだ...!」
ネガとカズトも肉弾戦をしていた。
「覚醒させたか。まぁいい。」
ネガはライフルでカズトを狙い、引き金を長押ししてエネルギーを溜めた。ある程度溜まり、引き金を離して何発ものエネルギー弾が射出された。
「んなもん効くと思ってんじゃねぇってんだよ!!」
被弾しているのに勢いを止めることなく走ってきた。渾身のパンチをネガの胸部真ん中に叩きつけた。
「...!? なぜあの時より...! そうか、その装置か...!」
パワーナイフを使ったことにより、カズトの鎧姿も変わっていた。顔半分を隠すほどの黄色を基調とした仮面をしており、髪は逆立っている。比較的シンプルなデザインの鎧だが、先程のようにエネルギー弾が被弾しても全く動じないほどの防御力を誇っている。肩アーマーにはチューブが繋がっている。それは背中に繋がっており、その時その時の感情の変化でパンチの威力が上がる仕様になっている。また、システムの使い方によっては手のひらから銀色のスライムを飛ばすこともでき、それはなんと爆発させることが可能である。
「てめぇをぶっ潰す。覚悟しろ。」
これが決め台詞となった。
基地の中は警報音が鳴り響いており、テオスの兵士たち(エンディア)がジクティアたちを迎え撃っていた。
「邪魔だっての! 退きなさいよ!」
《アロー・フィニッシュ!》
ブレイクアローを三段チャージして放った。
「ここは任せた。俺は個人情報ファイルを探る。」
イスパードがジクティアの肩をぽんっと叩いた。
「早めにな!」
「もちろんだ!」
イスパードを見送った後、ゾロゾロとやって来るエンディアたちを一匹も残さずに片付ける。
「今からお前たちに魅せてやる! 最高の__」
『勝利を!』
「おいおい...俺の台詞を取るんじゃないよ、パレン...。」
決め台詞を言いそびれが、やってくるエンディアたちの片付け作業を再開させた。
一方イスパードは...。
「いたぞ!」
「チッ!」
生身の兵士たちに追われていた。
「邪魔だ! そこを退け!!」
二丁ショットガンを取り出して兵士らの足元を撃ち、次に天井を撃った。もちろん通常のショットガンではなく、アームドした人間に対しての武器であるため、高い威力によって天井が崩れて瓦礫が降ってきた。
「死にたくなければ道を開けろ!!」
マチェットも取り出し、振り回しながら突き進んだ。
お目当てのものがあると思われる部屋を見つけ、ドアをこじ開けて中にはいった。
「探せ! 見つけて殺せ!!」
兵士たちは自分を探している。急いでアライ モモの資料を見つけなくてはならない。
といっても20年も前のものだ。そう簡単に見つかるか?
《指令室! 指令室! こちらアルファ1! 緑と水色の奴により、被害増大! 至急増援を頼む!! オーバー!》
《こちら指令室、了解。増援を派遣した。到着まで持ち堪えろ。アウト。》
無線機の傍受システムが作動した。急がなければショウが危ういことを直感した。
「...! そうか...!」
アライ モモは最重要機密情報となっていたことを思い出した。とすればあるのは...。
イスパードは急いでジクティアのもとへ戻った。
到着すると、彼は追い込まれてピンチになっていた。イスパードは、自分も初めて使う能力を発動させた。“イスパードネット”だ。
「な、なんだこれ...!?」
敵方の拘束に成功した。ジクティアが彼を見付け、駆けた。
「アライ モモの資料はここではなく、金庫にある! ここからそう遠くはない。行くぞ!」
「あぁ、分かった!」
重要資料は金庫にしまってある。そしてその場所はもっと奥だ。二人はそこへ走った。
到着すると、屈強な男が二人で番をしていた。
「お前たちが忍び込んだネズミか。」
ゴリラを連想させるくらいに厳めしい顔のガードマンが言った。
「あぁそうだ。通してもらえる?」
ジクティアは、相手を小バカにするように言った。
「通すわけなかろう!」
二人のガードマンはエンディアになった。初めて見る光景に困惑を隠せなかったが、パワーアップしたジクティアの敵ではなかった。さっさて倒して金庫の扉をぶっ壊した。
「中を調べる。待っていろ!」
イスパードが再びジクティアを置いて資料を探しに行った。
「あったぞ...! アライ モモの資料だ!」
それを手に取り、関連のものと見られる書類を全て持ってきた鞄に詰め込んだ。
金庫の外に出ると、ジクティアを連れて外まで逃げた。
外へ出ると、追っ手が諦める頃まで走り続けた。
「はぁ...なんでこんな...怪盗みたいな...。」
息切れしてハァハァ言わせながらダイスケに問う
「怪盗はもっと...華麗に盗むだろ...。」
ダイスケはそれに突っ込んだ。
「もっと離れるぞ! 休憩は後回しだ!」
彼はショウを起こし、移動をさせようとした。
しかし、目の前に漆黒色の厳つい甲冑を着た何者かが立ちはだかった。
「誰だ...?」
「私に...名前はない...。」
Android #31 激戦・平和の国
ショウ「次回から後書きも無くなる説が浮上してる。」
ラータ「適当な仕事ばかり...。」




