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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
33/49

平和な国・レディナ

三時間の車移動と、二時間のフライトを経てようやくレディナに到着した。

「外国人旅行客だけど、目的はあくまでもテオスの拠点だということを忘れるな。」

ショウとラータが所属している“ガーディアンズ”には、彼らしか持っていない特別なパスポートがある。通常はアーマーロイドも兵器として扱われるために海外に連れていくわけにはいかない。しかし、そのパスポートさえあれば自由に行き来できる。しかし、それを使用する際は国の首相が直々にサインしたものでなければならない。期限があり、短くても2週間程度しか滞在できない。もちろん必要とあれば延長もできるが、その人が首相にどの程度信用されているかで不可が決まる。

要するに、ショウは最大1年はいられるが、ダイスケは最大3週間程度しか居られない。

「パレン、今回の目的を改めて__」

「私のことバカにしてるんですか、ご主人様ー? 分かってますよ! テオスの拠点ですよね!」

以前と同じくミントグリーンのセーターと赤いゆるふわベレー帽を着ている。今回は白い綺麗なロングスカートをはいている。

「おしゃれですね、パレンさん。」

ラータが嫌みたらしく言った。

「ありがとうございます!」

それに気付いてない彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「とりあえず飯でもどうだ。偽りの姿ではあったが、レディナは仕事柄よく来ていた。近くに良い店を知っている。」

ダイスケはそう言ってショウたちをその店に連れていった。


タクシーに乗って三十分後、着いたのはいかにもなレストランだった。

中に入ると、そこはレトロで落ち着きのあるところだった。ほんのり香るカレーの香りが空の腹を鳴らした。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」

接客してきたのは、恐らくここのオーナーと思われる人だ。かなり歳もあるだろう。

一行は窓側のソファ席に座った。

「ダイちゃん、どこで知ったのこのお店...。」

「まぁ、仕事仲間に勧められたんだ。味も旨いし、しかも安い。ボリュームもある、知る人ぞ知る穴場のような店だ。チェーンでもないし、ここの味はここにしかない。」

とんでもない所を知ったと思った。

メニューを開くと、まず目に入ったのはカレーの文字だ。そしてその隣にはチーズ入りやらメンチカツ入りやら書かれていた。

「カレーのチーズ入り...! 」

ショウが目をキラキラさせた。

「ここのカレーは裏メニューがあってな。コーヒー付きで頼むと安くなる。しかも、合うぞ。」

「本当ですか?」

コーヒーが好きなラータが半信半疑できいた。

本当だ、と頷いた。

「カレー専門店なのかな? ここは?」

ショウが問う。

「元々はな。だが今はこのとおり、ロールキャベツもある。」


食事を終えた一行は、会計を済ませて店を出た。

「また行きたくなるなぁここ。」

ショウも気に入ってくれたようで、ダイスケは嬉しかった。

「そうだ、テオスの拠点はどこにあるんだ?」

「あぁ、田舎の方にある。移動には1日程要するから、今日は無理だな。移動のバスも確保しなければならないし。」

「めんどくさぁ...。」

ショウがボソッと呟いた。

またダイスケに案内してもらってホテルを見つけた。部屋は一部屋しか空いていなかったが、そこにした。

窓のカーテンを開けば街を一望できる。

ショウとダイスケが出掛けている間、パレンはずっと窓の外の景色を見ていた。気になったラータは、彼女の隣にやって来て何を見ているのかをきいた。

「あの大きな、くるーくるーって回ってるやつ...。楽しそうだなって。」

指差した向こうには、観覧車があった。

「ショウに頼んでみますか?」

「...ご主人様、怒らないかな...。」

「きっと怒りませんよ。優しい方なのですから。」

「...そうだよね...!」

「一緒に頼んでみましょうか!」

「うん!」

二人は窓から離れ、フロントにいるショウに電話をかけてみた。

「ショウですか?」

《あ、うん。なに、どうしたの?》

「パレンと私で遊園地に行きたいのですが、良いですか?」

《パレンが言ったの?》

「どうしてわかるのですか?」

《ラータから外に出たいって言うとこ見たことないし。》

「ま、まぁそうでしたね。パレンが言いました。」

《...んー、わかってると思うけど、明日、もしかしたら戦うかもしれないんだよ?》

「...。」

《...はしゃいで疲れて動けないなんてない程度にな?》

「!」

《俺の財布あるから、持っていっていいよ。あ、ただし二人合わせて使える額は3万までにするからな。入場料込みで!》

「ありがとうございます!」


「楽しんでー。」

《はい!》

__ プツン

「入場料...?」

ダイスケがさっきの通話の一部を聞いていた。

彼は持っている二つの缶コーヒーのうちの一つをショウに手渡した。

ダイスケはすぐにプルタブを開け、一口飲んだ。

「あぁ、遊園地に行きたいって言ってきてな。」

続けざまに飲んでいたが、ショウの発言にむせ始めた。

「ばか野郎かお前...! 明日戦闘になるかもしれねぇんだぞ...!」

周りの客に聞こえないようにボソボソと言った。

「俺とおんなじこと言ってんの。」

ショウは、ダイスケの発言とさっきの自分の発言を重ねてクスッと笑った。

「笑ってる場合じゃ...。」

「初めての海外なんだ。少しだけでも楽しませてやろうよ、な?」

コーヒーが入っている缶をかかげ、乾杯を待つ。

「...どうなっても知らねぇぞ...。」

呆れてそう言い、ショウが掲げたその缶に自分の缶を当てた。

「...何に対しての乾杯だ...?」

「...今の...この“小さな平和”に、だ。」

「洒落てるな。」

二人がコーヒーを飲んでいると、スーツ姿の男がやって来た。

「大変お待たせしました...! パシーサ行きのバスが見付かりました!」

ここのホテルマンだ。

「おぉ、あったか。どれくらい空いてる?」

ダイスケが彼に問う。空いている席を数えるより、埋まっている席を数えた方が遥かに早いくらいだと言うことが判明した。

「結構空いてんな。パシーサは観光地でもあるだろ...?」

「えぇ、そうなんです。しかしパシーサは最近物騒でして...。だから、旅行客の方はあまり行こうと思わないんですよ。」

そう説明したあと、ホテルマンは続けた。

「あの、立ち入った質問で申し訳ないのですが...皆様はどちらに...?」

「あぁ、実はバードウォッチャーでして。パシーサにしか生息していない、赤と青に色が変わる幻の鳥を探しに来たんですよ。」

ショウが一眼レフカメラを取り出して言った。

「あぁ、リリー鳥ですね?」

「えぇ。」

下準備として、バードウォッチャーを装うためにおおまかな知識を仕入れた。そうすれば森のなかへ立ち入っても違和感はない。

「リリー鳥、見つかると良いですね!」

「えぇ、ありがとうございます!」

「それではバスの手配の方、水上様のお名前で手続きを致しますね!」

スーツ姿のホテルマンはそう言って去っていった。

「バスの手配は終わったな。空き時間どうする?」

ダイスケがショウにきいた。

「エージらに進行報告して...その後はー...。」

「やることがないな。一杯やるか?」

「時間あったらお酒...そればっかやってると、体壊すぞ。」

「ほっとけ。他にないだろう...。ラータたちももう行っただろうし。」

「パシーサ...物騒だって言ってたな...。何があったか調べてみよう。」

「どうやって?」

「ネット。」


一方...ルアフにて...。

「やぁ諸君!」

ルーグとネガがエンディアを連れて街を攻撃していた。

エージらは現場に急ぐと、街は瓦礫があちこちに飛び散っていた。

「ふざけやがって...!」

カズトがパワーナイフを構えた。ショウがレディナに向かう前に、カズトに渡すように言ってタクミに預けたものだ。そして彼はカズトに渡した。

「ショウが作ったやつか! ...そのショウはどこだ...?」

ギクリとした。さすがにバレるか。

「ショ、ショウなら! テオスの拠点に向かったぞ! 帰れ帰れ!」

エージが大きな声で言った。

「テオスの拠点に...。」

ネガが自分の顎をつまむような形で手を当てて考え始めた。

「ルアフにある拠点は崩落を確認したハズだ...。」

彼がボソボソと言っていたことを隣できいていたルーグは、それをもとに考え始めた。

「...なるほどなぁ...。レディナか...。」

エージを睨んで言うと、彼はギクッとした。

「レディナだな。よし。」

「ち、ちげぇし! んなわけねぇだろぉ!?」

エージが慌てて言った。それが確信になった。カズトとタクミが彼をぶっ叩いた。

「まぁ、念のためあそこには戦力を置いておいた。あいつだけだったら...死んだな。」

ルーグが仮面越しにも分かるような、不気味な笑みを浮かべて言った。

「!?」



Android #30 平和の国・レディナ

ショウ「書くことがないからって書かないのはダメでしょ」

ショウ「あらすじ書けばいいじゃん。」

ショウ「え? 『あらすじを書くこと自体がめんどくさい』? 」

ショウ「あまってたれんな作者ァア!」

さーせん♨️

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