忠誠・愛国・仁義
ショウ「キドラも戻ったし、これで一段落か。」
エージ「あー腹へった。ラーメン食おー。」
キドラ「ふわぁ...僕ねむいからねるー。」
ショウ「いや平和かよ。戦争やってんだぞ。」
「世話になるぜ、ジクティア。」
ショウの家に、リュックを背負ったタクミとミホがいた。
「待てや!!!」
包帯で怪我している部分をぐるぐる巻きにしているショウが大きな声を出した。
「なんでだ!! 何でなんだ!?」
「いいじゃねーかよジクティア。減るもんじゃねえーんだし。」
「減るわ!! 部屋もスペースも!」
「ショウ、お体に障ります。お静かに。」
ラータが彼を静止させる。
「リビングでいいぞ。」
「よかぁねぇよぉ!」
「おいおい、何がいけないってんだ?」
タクミがリュックをおろし、チャックを開け始めた。
「こっちはな! ラータの部屋、エージの部屋、キドラの部屋で一杯なんだよ! ウーペがもうリビングで寝てんの! しかも地下にある部屋! あそこは俺の部屋なのに、ミユが__!」
「ミユ? そんなアーマーロイド知らないぞ。」
「アーマーロイドじゃない! ネットアイドルー!!」
タクミが驚いた表情でショウを見た。
ネットアイドルと同居していたという話に耳を疑っていた。それもそうだろうな、と思った。
「ただでとは言わないさ。例えば、そうだな...。コーヒーを作ってやる。どうだ?」
「コーヒーかぁ...?」
ショウの表情が渋くなった。
「...はぁ...。...まぁ戦力にもなるしなぁ...いいかぁ...?」
タクミがグッと小さくガッツポーズをした。
ホワイトボードを用意し、そこに部屋割りを書いた。
ウーペ、キドラ、ミホの女子組とエージとタクミとダイスケの男子組に分け、残りは皆地下に押し込む。
ラータはショウの側にいないともしもの時に面倒だ。(というか、以前からずっと一緒だ。)
ミユは、勝手に部屋を動かすことができない。もしそうしたら...多分激しく怒るだろう。そういえば彼女がしばらく家に帰っていなかったことに気付いた。どこかに寝泊まりしているのかもしれないが、だとしたら頼むから下着や着替え、私物を持っていって欲しいものだ。
そう思っていると、ショウは何故か嫌な予感をおぼえた。
パレンやクートは、政府官邸に住み込みで働くことになった。
「さて、これからどうするか、考えてあるのか?」
リビングにあるテーブルを皆で囲んで話し合いをしている。タクミがショウにきいた。
「...まずさ。」
彼はそれに答えようとした。
「俺らのグループの名前決めない?」
真剣な表情で思いもしなかったことを言ってきたものだから、一気に緊張感が欠けた。
「なんだよそれ。」
「ジクティア、クレイ、イスパード、ウルフ...だっけ。いや本格的に正義のヒーローやるんだからさ、そうした方が絶対いいよ!」
ショウ一人だけ心を踊らせていた。タクミは、まぁわからなくはないと言い、命名に前向きだった。
30分の話し合いの末に決定した名前は、シンプルに“ガーディアンズ”となった。守護者という意味である。
「さ、名前も決まったし、これからどうするか話そうか。」
タクミが仕切る。
「それは前から決まってる。カズトだ。あいつを仲間に入れるんだ。」
今度のショウもまた真剣な表情で答えた。
「カズト?」
「この前ルーグと戦ってた金色の戦士だ。あいつは強い。」
「あぁ、それは確かに見ていて思った。荒々しくて乱暴だが、戦力しては申し分ない。それに、あいつは業界で有名なチンピラだったらしいからな。」
「...え???」
初耳だ。以前からそれを彷彿とさせるような格好や戦い方、煽り文句は耳にしてきた。だがまさか本当にそうだったとは思わなかった。
サテルにだけに留まらず、スラフ州の不良やヤクザの人間にその名を知らない者は居なかったという。
喧嘩好きと噂されていた彼は、地元の不良をボコボコにし、物足りなくなった挙げ句、一人でヤクザの事務所に乗り込んで暴れまわったという。
同じくらい有名な男もおり、有名なチンピラ同士で喧嘩をしたこともあったらしい。彼の頬にある傷はその時に出来たものだという。
あまりにも出来すぎた話しに、誰かの作り話だと言われるようになり、その存在は伝説となってしまった。しかし、ショウたちはいつも、そんな男を相手に戦っていたのだ。
アーマーロイドの力がなければ、いや、あったとしてもあの新規能力が無ければ確実に死んでいた。
「潰したヤクザの数は5組。いずれもあいつは一人でやったらしい。素手だぞ。」
タクミが追加で説明した。
「...奴の噂は政府にも届いた。あいつが潰したとされる組は実在していたが、噂を聞いたあとに確認しに向かうと、確かに荒れ果てていたな。」
元政府役人のダイスケが言った。
寒気がした。そんなやつを野放しにするわけにはいかない。
ショウは一刻でも早く彼を仲間にしたいと思った。
「けど、仲間にする以前にどうやって見つけんだよ。」
エージがショウに問いかけた。
「それは...。」
質問の回答ができなかった。確かに仲間にする以前の大きな問題だ。
「ご安心ください。戦闘履歴からカズトのアーマーロイド、グメアを分析しました。よって捜索が可能です。」
ラータがそう言った。
「ほんとか!?」
「はい。」
さすがだ、と褒めちぎりたいところだ。
「今からでもできるか?」
「もちろんです。半径2キロ圏内の捜索を開始します。」
彼女はそう言って目をつむった。
5分後、ラータは目を開いた。
「いました。ヤルバ港です。」
「よし、行ってくる!」
ショウはハンガーにかかったベージュのコートを取り、羽織って外へ出た。
「え、もう行くのか!?」
タクミが彼を追い、ミホはその彼を追った。
ヤルバ港。
聞こえてくる波の音と、肌に当たる海風が心地良い。1隻の船が港にとまると、数回の汽笛が鳴り響く。戻ってきたという合図だ。見渡す限りに青が見える。この青の向こう側には、違う国の大地があるのだと思うとワクワクしてくる。
港の外れにちょっとした広場がある。いつものそこは駐輪された自転車(勝手にとめてるから処分対象になっている)がたくさんあるのだが、そこにぽつんと小さなテントが張ってあった。
「あそこに居るのかもしれません。」
ラータが言った。
ショウは彼女を見て頷き、テントに近付いた。
「誰かいるか?」
テントに向かってそう言うと、チャックが開いて、中からカズトが首を出した。
「おっ? お前らか。」
何か食べてるのか、口元をモグモグとさせている。時刻も昼過ぎだから昼食でも食べていたのだろうか。
「話がある。」
「...ちょっと待ってろ。」
首を引っ込め、テントの中からゴソゴソと音がした。
しばらくしてから、今度はちゃんと出てきてくれた。
「話ってなんだ。」
「あぁ、実は、お前に__」
「仲間になれってか。」
「...あぁ、そういうことだ。」
後ろから二人分の足音がした。振り向くと、やっと追い付いたタクミとミホがいた。
「誰だ、あいつら。」
「新しい仲間だ。...突然現れてそうなった...。」
「...馴染みすぎだろ。」
「...それは俺も思う...。けど強いから何でもよくなった。」
「へぇ。」
敵同士だったとは思えないほど日常的な会話をしていたことに気付き、戦争がいかに愚かしい行為かを再認識した。話し合いで解決するものを、わざわざ殺し合いなんてしなくても...。
「タクミだ。こいつは相方のミホ。」
「初めまして...。」
改めて彼女を見ると、狼らしいさというより犬らしい。耳も尻尾もそれにしか見えない。やっぱりこういう子は、口を大きく開けると八重歯が目立つのだろうか、気になった。
「タクミ...ミホ...。この間の戦いで乱入してきた強ェ奴か。」
「コードネームは“ウルフ”だ。」
かっこいいだろ、と言いたげな表情でカズトを見た。もしかしてタクミはナルシスト気質なのだろうか。
「それで、お前はどうするんだ? サテルのために戦うっつっても、肝心のサテルがテオスにやられたんだろ。」
彼はカズトをしっかりと見た。真剣な表情だ。ショウも続けた。
「俺たちの敵はテオスだ。サテルと敵対する意味はない。」
カズトはしばらく考えた。そして言った。
「なぁ...一応きくが、俺がどこの人間かを知ってて誘ってんのか?」
「どこって...サテルだろ?」
ショウが答えた。
「...まぁ、そうだろうな。」
カズトはそう言って瞳を曇らせた。
「...俺は、一応テオスの人間だ。」
「...!?」
グメアはテオスの兵器で、チャージロイド初号機だという。
「俺の元は確かにサテルの兵士長だ。だが、テオスに入っていることも確かだ。」
「でもそれは、初号機の実験のためなんだろ?」
タクミが彼に問う。
「それでも、俺はお前たちの敵勢力だ。悪いが仲間にはなれねぇ。話しは終わりだ。」
彼はそう言ってテントに戻ろうとしたが、タクミがそれを止めるように言った。
「でもあいつらはお前を裏切ったんだろ?」
「逆だ。俺があいつらを裏切った。」
「だったら尚更...。それにお前に居場所がないだろうが...!」
「仕方ねぇだろ。腐っても俺は、元テオスの人間で、サテルの人間だ。ルアフを助ける義理も目的もねぇ。もういいか?」
「そんなの気にならない。サテルは鎖国しているし、テオスはお前を排除しようとしているんだぞ。ここにいても居づらいだけだろ? だったら、お前の好きなサテルを助けに行こうじゃねぇか...?」
「その俺の好きなサテルを、俺は裏切ったんだっていってんだ。」
頑固な奴だ。話を聞いているうちに、ショウがカズトの前に立ち、拳を頬にめり込ませた。
「おいバカ...!」
タクミが彼に言った。
ラータがカズトからの反撃を警戒して身構える。
カズトは、自分の頬にあるその拳を握り、退かした。
「ずっと俺をぶん殴ってきたのは、なんのためだったんだよ...? 紛れもないサテルのためなんだろ...?」
「てめぇ...。」
「テオスに魂売ったのは他でもないサテルのため...。そのサテルがやられた今、あいつらに忠誠を誓う意味なんて...これっぽっちもねぇだろ!?」
「...忠誠なんざ誓うかよ...! 俺の心はずっと...。」
「サテルのために戦うって決めてたんだろ...?」
「...。」
カズトは自分の拳を握り、それを見つめた。
「...お前のいうとおりだ。俺の心はずっとサテルのために戦うって決めていた...例えそのために、悪魔に魂を売ったとしても...。」
拳が小刻みに震えている。
「だからこそ、俺は一人でケリをつけようとしてんだ...!」
「分かってるだろ? 例えお前でも、一人じゃ無理だ。今回の戦争を始めさせるような戦略と、各国にある基地がそれを示してる。」
カズトにも彼なりのプライドを持っていた。
故郷をやった組織を許さない。国のために一人で乗り込み、かつてヤクザの事務所を潰し回ったように、各国にある拠点を潰そうとしたのかもしれない。だが相手は本格的な兵器をごまんと保持している。それは、テオスに所属していたからこそ分かってることだ。
「頭、冷えたか?」
「...。」
ショウが低い声で言った。カズトの表情は曇っている。
どこか分かっていたことだったのは確かだ。
だんだん自分が何のために戦っているのか分からなくなってきていた。それと同時に、密かにショウたちと共に戦った方が良いのではないかとも思っていた。
だがルアフを攻撃した背徳感から、そんなことから目を背けていた。
__
「...俺らの仲間にならないか?」
「なんだよ急に。なるわけねぇだろ。」
「まぁ急だし、そうだよな...!」
二人は同じタイミングで立ち上がった。
__
あの時の言葉が脳裏に蘇り、心が大きく揺らいだ。
そして彼はついに決心した。
「お前、名前は?」
「ショウ。水上 翔だ。」
「そうか...。俺は信藤 和登だ。よろしく頼むぞ。」
カズトが握っていた拳を開き、ショウに差し出した。彼の表情は晴れ、その手を握った。固い握手を交わした。
「お前、ちっせぇくせに度胸あんだな。」
ショウの頭をポンポンと撫でてそう言った。言われた彼は、密かにピキッと来ていた。
「てなわけで、今日から世話になる信藤 和登だ。カズとかカズっちとかって呼んでくれ。」
晴れやかな表情でそう言った。彼の相方のグメアは、大きなリュックを降ろし、両腕を上げて背伸びした。
「いやだから待てやァァア!!!」
ショウがまた大きな声を出した。
「んだよ?」
きょとんとした顔で彼を見る。
「だぁかぁらぁ!! 部屋がだなぁ!?」
机を三回叩いて訴えるように言った。
「一部屋空いてたじゃねぇか?」
ラーメンを食べながらエージが言った。
「言うな言うな言うな!」
小声でショウは彼に言う。
「お、じゃあそこが寝床だな。」
カズトがリュックを持ち上げ、部屋に向かおうとした。
「待てやァア!!」
ショウがそれを止める。
「うるさーい! なんの騒ぎだー!」
女子組の部屋からキドラが現れた。サイズの合ってないぶっかぶかのパジャマを着た、だらしのない格好だ。またエージから借りたのだろう。
グメアが二度見した。
「そんな格好で出てくるんじゃないよ!!」
キドラの頭をぽかっと軽く叩いて言った。
「かわいい...。」
グメアがボソッと呟いた。隣にいたカズトにはハッキリと聞こえた。
「は?」
「かわいいー!!」
リュックをカズトに投げ飛ばし、キドラをぎゅっと抱き締めた。
「わぷ!?」
「可愛いなー君! 名前は何て言うの?」
「き、キドラ...。」
「キドラちゃんかー! よろしくねぇえ!!! あーもぅ天使じゃないっすかぁ!!」
「うぇ? ちょ、ちょっと...胸、でか...苦しい...!」
グメアの豊かな胸が作り上げた谷間に、キドラの顔がめり込んでいる。死ぬんじゃないかとヒヤヒヤして見守っているショウに指さして助けを求めるが、僕は男の子なので女の子には触れられませーん、と棒読みして逃げ去った。
「わぁぁぁあ!! 恨むからなぁぁ! っわっぷ!」
賑やかになりそうだ。
Android #28 忠誠・愛国・仁義
グメア「キドラちゃん可愛いねぇ♥️」
キドラ「う、うぅ...//」
グメア「照れてる!可愛い!!」
キドラ「う、うせー!//」
エージ「なんか変な気持ちだな。」
ショウ「嫉妬っていうんだ。覚えとけ。」




