怒り、仇、金色の戦士
ルアフ国のとある町に住む天才プログラマーの水上 翔。その正体は正体不明の化け物、通称・エンディアから町の人々を救う正義のヒーロー・ジクティアだった。
彼らに迫る謎の秘密結社・テオスの目的を暴き、そして彼と行動する相棒、アーマーロイドのラータと共にエンディアの脅威から平和を守っていた。
ルアフとサテルが終戦し、テオスがそよ猛威を奮い始めた。
ジクティアたちはテオスに対抗するために戦力を上げていこうとしていた...。
「できたぁぁぁぁあ!!!」
ショウはラータのアップデートが完了したことによって喜びを隠しきれていなかった、というより隠す気もなかった。
「お疲れ様です、ショウ。」
うなじにケーブルが繋がれているラータが言った。
「今外す。待ってろラータ。」
「はい。」
内容を保存し、転送し、反映させた。そしてケーブルを手順通りに外し、接続部分を閉じた。
「これは...。」
「さすがだろ?」
「えぇ。さすが私の主です。」
「まぁまぁそう褒めるんじゃないよぉ。いや褒めて、最高に褒めて!」
ショウは自分でも分かるくらいに子供っぽいところがある。直そうとしても、最高にまで高くなったテンションだとこうなってしまうのだ。
そういうときはラータが頭を撫でる。矛盾したことに、撫でられるのは嫌なのだという。
数日後、ルーグがショウたちをある場所に呼んだ。来なければルアフを沈める、と言って。
「さて、行くぞ、ラータ。」
「えぇ、ショウ。」
ウーペが出かけるショウとダイスケとラータを見送ろうとした。
「あ、ウーペとエージもな。」
理由は分からないが、言われた通りについていった。エージはキドラをおぶってまでついて行かせた。
「なんで私も? なんの役にもたたないよ?」
「さあ ? どうかなぁ?」
ウーペはすぐさま自分の主がダイスケになると直感した。彼はコア・システムの使用者であってアーマーロイドと契約はしていない。だからできる。ハズだ。
現地に着くと、ジクティア・ネガに変身するダイチもいた。
「サテルのことはお前たちも知っているだろう?」
ルーグが上機嫌に手を叩いて言った。相変わらず赤黒いコートと、目の部分が光る仮面を付けている。
「俺たちの力を思い知ったところで、お前たちにチャンスをやろうと思ってな。」
「なに?」
「俺たちの邪魔はよせ。もう少しだからさ。」
キドラをおぶっているエージがルーグを睨む。
「ん? ウーペじゃないか。主がいないお前が、こんなところに何しに来た?」
「私はついてこいって言われたからついていっただけ!」
それを聞いた彼は笑いだした。犠牲者が増えるだけなのに、と。
「さぁ? 果たしてそうかな?」
ショウは変身パッドを取り出し、腕に巻き付けた。そしてパワーナイフを起動させてシークエンスを行った後にラータをアームドした。
「ジクティア、参上!」
腰に手を当て、ルーグを指差した。
「はぁ。ダイチ、始末しろ。」
「分かっている。 チェンジ。」
ジクティア、そしてジクティア・ネガが互いを睨む。
「それ、盗作じゃん。」
ジクティアはネガのパッドを見て言った。
「同じ頭脳をしていたらこうもなるだろう。」
互いに構えを取り、ぶつかる。
ルーグがエージを攻撃しようとするが、同じコア・システムの使用者であるイスパードがそれを阻止した。
「ダイスケぇ!!」
「レイトぉ!!」
それぞれが激しくぶつかりあう。
決戦になるかも知らない戦いが今始まった。
ジクティアとネガの戦いは、互角に見えて少しジクティアが勝っていた。
彼はネガに攻撃することは諦めた。向こうからの攻撃をさばき、隙があれば肘で打ったり蹴ったりしている。高速でそれが繰り広げられている。
大きな隙ができ、ネガを思い切りキックして少し距離を作った。
「さぁ、今だ。」
ジクティアは白色のパワーナイフを起動させた。
「...!?」
「ウーペ! 俺にアームドしろ!」
「はっ!? そんなのできないでしょ!」
「早く!」
パワーナイフを変身パッドに刺し、起動させた。ウーペも仕方なくアームドすると、ジクティアの姿が変わった。
「...なんだ...なにした...!?」
兎の耳は消え、赤と青は灰色と水色に変わった。
「新しい能力だ!」
フォームアップ。ラータをベースとして別のアーマーロイドをアームドする。もちろんパワーナイフセットを介してじゃないと出来ない。
体への負担も増えるが、その分能力も強化される。
「そんな乱暴なことを...お前は...!」
「平和のために戦う俺の覚悟は、確かだってことだ! さぁ、今からお前に魅せてやる! 最ッッ高の勝利を!!」
水色の腕を相手にかざすと、そこから高圧の水流がビームのように現れた。
勢いにぶっ飛ばされたネガが地面に伏せる。
「能力発動!」
灰色のグローブが変形し、ボクシングに使うようなそれになった。違う点は、そこから無数のトゲが出てることだ。
「串刺しにしてやるぜー!!」
これが灰色の力のようだ。肩アーマーからも足からもトゲが出ていた。
起き上がったネガはライフルを取り出して連射させる。トゲを飛ばして全て防いだ。
『てかすごっ!? 私すごっ!?』
『さすがウーペですね!』
「いくぞ!」
灰色のトゲグローブでネガをぶん殴り、トゲのある足で勢いのある回し蹴りをお見舞いした。
「くっ...!?」
追加効果を選択することでダメージを増幅させることもできる。
「効果、爆破!」
『え?』
起き上がり、反撃をしようとしたネガの腹部を殴ると、小さな爆発が起きた。
「くっ...!? なんだと...!?」
何発でも爆発を食らわせることができる。反動のダメージは受けるが...。
ガードしてきたので、再び高水圧噴水で吹き飛ばす。
こちらも下手をすると飛んでしまうので、グッと耐える。
「遠距離も近距離も可能とか、ウーペって強いな。」
『えっへーん! これは私も知ってることだけど、炎も出るよ!』
試しにコード入力をすると、確かに炎も出るようだ。
これは万能だ。
しかし難点がある。いつもと同じように使うと、例えば赤の力を使おうとすると失敗することだ。ラータがいるとはいえ、彼女の能力は使えないようだ。だから一気に距離を詰めることも、特大のダメージを与えることも出来ない。
「ふっ...ふふふ...やるな、ジクティア...。」
「俺だけの力じゃない。ラータとウーペの力だ。」
『ふふーん!』
『恐れ入ります。』
さすがにダメージが入っているようだ。ここから畳み掛けるようにアクティベーションフォームのナイフをパッドに刺した。
ウーペのエキスが活性化したことによって倍の威力の攻撃が可能となった。トゲのグローブを構える。
「ハァ...分かった...。」
「お? 降参か? 賢い判断だと思うぞ!」
次の瞬間、イスパードの声が聞こえた。振り向くと、ムーラやルーラも参戦していた。
「な...!」
「よそ見をするとはな。」
ネガの弾丸がジクティアの肩を貫いた。
強制アームド解除機能が働き、ラータとウーペが転がった。
「ショウ!!」
二人が倒れているショウに駆け寄る。
「くっ...くそ...!」
肩から血が溢れ、流れていた。
「...そろそろ...のはずだ...。」
「え...?」
エージはそんな二人を黙って見ていた。自分がなにもできないことに失望して膝から崩れ落ちた。
「わりぃな...キドラ...。俺、もう...。」
虚ろな瞳で地面を見ていた。
「え...じ...?」
聞こえた声に振り向くと、キドラが目を覚ましていた。
「キドラ...お前...!」
「なんで、泣いてるの...?」
「へ...?」
本人が気付いていないうちに涙を流していた。
「それより、お前、大丈夫なのかよ...?」
「...? 僕はなんで寝てたの...?」
彼女が上体を起こしてエージを見つめた。
「...へ、へへ...! 良かった...! 良かった!」
エージがキドラをぎゅっと抱き締めると、急なことで一瞬思考が停止したようで、何も考えられなかった。
「あ、それより今、早速だけど戦えっか!?」
「...? ...ぼ、僕...は、大丈夫、だよ...?」
「よっしゃ! わかった! 行くぜ、相棒!」
変身パッドを腕に巻き付けると、キドラのパワーナイフを起動させた。それをパッドに挿入し、シークエンスを行うと、キドラも慌ててアームドした。
アームドした姿が違った。むしろ前よりも派手になった。
髪は銀色になり、瞳は黄色からオレンジ色になった。
「な、なんだこれ...!?」
全身に電撃が走った。
忘れていた。キドラは普通のアーマーロイドではない。今は最新のチャージロイドだった。
「や、やばい...ぞ...これ...!!」
あちこちが痛んだ。動けない。苦しい。
ルーラがそんなエージに攻撃を仕掛けた。
危ういところで誰かに守られた。
それはジクティアでもイスパードでもなかった。
サテルのために戦った金色の戦士、カズトだった。
「大丈夫かよ、お前。」
「...??」
「大丈夫じゃなさそうだな。」
限界になって膝から崩れる。
カズトは敵を捉え、睨みを効かせた。
「テメェら...やってくれたな...。」
ルーグとネガがクスリと笑った。
「俺ァテメェらをぜッッてぇに許さねぇからな...。」
赤い瞳が鈍く光った。
アーマーロイド装着者は、感情的になるとこのように身体に何かしらの影響が現れる。
カズトの静かな怒りが、ルーグたちに向けられた。
Android #26 怒り、仇、金色の戦士




