終戦、脅威
ルアフ国のとある町に住む天才プログラマーの水上 翔。その正体は正体不明の化け物、通称・エンディアから町の人々を救う正義のヒーロー・ジクティアだった。
彼らに迫る謎の秘密結社・テオスの目的を暴き、そして彼と行動する相棒、アーマーロイドのラータと共にエンディアの脅威から平和を守っていた。
ついにルアフとサテルが戦争を始めてしまった。
ジクティアたちはなんとかそれを終わらせようと奮闘していた。
しかしその黒幕がテオスだと最初から明らかになっており、そしてついに__
断崖絶壁のすぐ下、砂利だらけの地に、ルーグやダイチ、カズトはいた。
ここは森の奥と言うこともあって人通りもなく、崖の上からは町を一望できる。盆地のようにそれに囲まれたここは、みどりの木が生い茂っている。
「こんなところに呼び出して、どういうつもりだ...?」
ポケットに手を突っ込んでいるカズトがルーグらにきいた。
「ルーラもムーラも、チャージロイドだ。そして君の任務に同行させた理由は、それが正常に機能するかの実験だった。」
ダイチは手を後ろに組んで答えた。
「それがなんだ。」
「仲間想いのところを評価して、任務を担当させたのだが...それ故に、味方の我々を攻撃されては元も子もない。」
「回りくどい。つまりなにが言いたい?」
「君を担当から外そうとしたが、同じくチャージロイドのグメアの力を持っていては脅威になる。だから、君を処分させてもらう。」
ダイチはそう言った後、ショウが作ったハズの変身パッドとパワーナイフ(両方とも色が違うだけ)を取り出し、《ジクティア・ネガ》にアームドした。いや、アーマーロイドはいないため、この場合は__
「ジクティア・ネガ。“チェンジ”。」
ルーグはそれを見て自分の爪の手入れをし始めた。
「チッ...そう言うことかよ...。」
「グメアを始末して君を消すことにしようとしたんだが...姿が見られなくてね。どうしたものか。」
ネガはライフルを取り出してカズトに撃った。
なんとか避け、ネガを中点として円を描くように走った。
「...ほう、じゃあ体力が尽きるまで、少し遊んでやろう。」
狙いをカズトから、彼の背後の地面を撃っていく。彼を追うようにして地面の砂利が抉れていく。背後から近付きつつある“死”に、いっそのこと覚悟を決めた。
しかしその瞬間、銀色のスライムがカズトの盾をした。
「...!?」
そして人の形にそれは広がり、正体は彼の相棒のグメアだったことが分かった。
「私の任務はカズトと同行すること。だから死なせない。」
彼女の赤い瞳がジクティア・ネガをとらえ、睨んだ。
「ちょうどいい。お前も始末しようとしていたところだったからな...!」
再び引き金を引き、弾丸をとばしたが、被弾する寸前にアームドして防がれた。
グメアとアームドしたカズトは、ネガに反撃しようと出る。
しかし相手の圧倒的な力に敵うわけもなかった。
「手を煩わせるな、カズト。」
ネガは持っていたライフルを投げ、専用の武器の剣を取り出した。それにあった穴にパワーナイフを突き刺し、構えをとる。黒と赤と青、それぞれの色の光が刀身に集中した。
「くそが...!」
地面に伏せていた彼は悔しそうに地面の砂利を握る。
ハッとして起き上がり、エネルギーを右手に集中させた。
「最後の抵抗か。まぁいい。お前の後は故郷のサテルも沈めてやるから安心しろ。さらばだ、金の戦士よ。」
ネガはそう言うと、剣を横に一振りして斬撃を飛ばした。
カズトは右拳に溜めたエネルギーを一気に解き放つようにして地面を殴った。
轟音と共に砂利や砂が巻き上がり、それがおさまる頃には彼の姿は無かった。
数日後...
「ストロフ...。能力は等は一切不明...てことは使ってみるしか確認の仕方は無いってことか...。あーもう! ストロフとかビビとかダイチとか、課題が多すぎるんだよ!!」
ショウがベッドの上で駄々をこねるように手足をジタバタ動かしていた。ラータはその様子を見守っていた。
彼女が徹夜していた彼を無理矢理ベッドに寝かしたのだ。
時刻はもう朝の4時を過ぎている。ショウはずっとコンピューターの画面とにらめっこしていたのだ。
「今は寝てください。」
「眠れない。一刻も早く謎を解かなきゃ気が済まない。」
「今日の昼過ぎに再開すれば良いのです。」
「今知ってスカッとしたい。」
「じゃあここにひとつ謎を用意します。私は兎ですが、尻尾はあると思いますか?」
「尻尾?」
「ハズしたら今週はカニコロ無しですからね。」
「待って、絶対当てる。うーん...あるか、ないか...。」
考えていると、だんだん眠くなってきた。まともに考えることが出来なくなると、そのうち30分後くらいには眠ってしまった。
それを確認したラータは彼の頭を撫で、そのベッドに腰かけて仮眠をとった。
《こことは異なる世界(以下、異世界と表記する)の西暦は2016年だった。》
《我々はそこの人間と友好的に接触することができた。》
《訪れた場所の地名は「ニホン(ジャパン等とも言う)」というらしく、言語は我々とほぼ同じだ。》
《ビビ...。》
ショウがバッと上半身を起こす。汗だくで息切れが激しい。心臓もバクバクと高鳴りしていた。
「ショウ? どうしました?」
ラータですら見たことないほど、彼は深刻そうな顔をしていた。
「...誰の...?」
「ショウ...?」
彼は眠っている間に見た夢にうなされていた。だが、なにか不自然だった。普通の夢とは違った。自分の視点でもなければ、そもそも自分がいなかったのだ。
それはまさに誰かの記憶を見ているみたいだった。
とても内容は覚えていないが、なんとなく不気味な感じがした。しかしその夢を見たからなのかは定かではないが、強化形態をひとつ思い付いた。
「ショウ、いっか!?」
エージの声だ。どうやら慌てているらしいため、急いで一階に駆け上がった。
「どうした?」
「サテルにやられたらしい。」
ダイスケが冷静に言った。
どうやら第三勢力に狙われたようだ。そしてその勢力こそが今回の戦争の火付け役でもあったテオスだ。
「急すぎて全く分からないんだけど。その情報はどこからなんだよ。」
ショウがダイスケにきいた。
「首相だ。サテルに和平を申し込んだっきり音沙汰がなかったみたいだから、様子を見に行ったら官邸がボコボコにされてたみたいだ。」
答えたのはエージだった。バカでもわかるくらいにヤバい状況だと理解しているようだ。
「じゃあカズトは?」
「分からないの。あーもう! 色んなところで色んなことが起こりすぎてしょ!」
ウーペが答えた。確かにそうだ。どんどん課題が増えていく。今最大のそれが、サテル陥落...。テオスの勢力の危険性だ。
ルアフのそれはダイスケが潰したようだから(信用していいかは分からないが、それが本当なら)少し安心できる。
「本当の敵はサテルじゃない...最初から変わらなかったってことか...。」
ここまで急展開が過ぎている。一体何があったのだろうか。
考えていると、突然携帯が鳴った。出ると、聞こえてきたのは首相の声だ。
《ショウくんか!?》
「首相! サテルに一体何が!?」
《テオスの仕業としか分かっていない! そこにダイスケくんはいるか!?》
「えぇ、います! 代わりますか?」
《そうしてくれ!》
何やら焦っているようだ。ショウは急いでダイスケに手渡した。
「...サカシタです。」
《...私は君を信じていいんだね...?》
「...サテル陥落の件から、テオスの危険性を知って頂けましたか。」
《君はあの時、私に土下座までした。どうして君はそこまで人が変われた...?》
「首相...私は...ジクティアと同じく平和を志していました。しかし上手くいかない現実と自分を恨んだ果て、悪に染まってしまった...。」
あの時ショウたちにも話したことだ。
「究極の力を求めた...。でもジクティアの戦う理由を知ってから、私はかつての自分を思い出しました。そこで分かりました。自分のやっていることは...私が嫌っていた、私利私欲にまみれた、かつての政治家のようだったということに...!」
《...スキャンダル続きだった、後に汚れ政治時代と呼ばれた者たち...か...。》
「私は改心しました。その証拠として、テオスのルアフ拠点を破壊しました。...私はジクティアたちと共に戦い、全てが終わったら自首する所存です...。」
初めて聞いた。話している彼の目は本気だ。ショウは初めて、ダイスケを仲間だと思った。彼は怪我した敵に応急措置をするくらい優しい男だ。そんなこれをもねじ曲げるルーグ、そして究極の力...いかほどのものかが気になってきた。
《分かった...。君を信じてみよう...。それで、元テオスの君に質問だ。》
「えぇ、なんなりと。」
《何故テオスは、いきなりサテルを陥落させた?》
「恐らくは...。」
アーマーロイド技術は元々サテルのものだとされていた。しかし本当はテオスのものだという。それの最新兵器、チャージロイド...。グメアやキドラ、ムーラとルーラが主にそれだが、機能テストをするためにカズトを利用していたとすると答えが出た。
テオスにいた間は全ての内部情報がダイスケにはいる。もちろんカズトのことも。
彼は愛国心が強く、愛する国を守るためにと実績を積み上げて兵士長の座についたという。
つまり、アーマーロイド技術はサテルのものだと信じさせ、「国のためだ」と偽って彼を実験体にした。
非常に仲間想いである点があり、チャージロイド単体の戦闘の正否を確認する実験もできた。(何かあったら庇ってくると予想したため。)
チャージロイドのアームド実験と機能テストは成功したが、イスパードのコア・システムに劣っているとしてムーラを始末しようとしたとき、カズトが激情してテオスの人間を攻撃した。だから人質としていた国そのものを陥落させたと考えた。
要するに、戦闘データを収集し終え、不良品を処分しようとしたところを攻撃されたから陥落させた、ということだ。
データをとった今、カズトも必要無くなったのだろう。だから目の前でムーラを貫いたのかもしれない。
《なるほど...。わかった、感謝するよダイスケくん。》
「えぇ、首相。」
カズトも被害者だったようだ。
「国を人質にして実験体にさせるとはな...。テオス...とんだ集団じゃねぇか...。」
エージがボソボソと言った。
「笑えるぜクソが!!」
彼はソファにあったクッションをぶん殴った。埃が舞い、窓から射した日光がそれを照らして浮かび上がる。
「どうする...ショウ...?」
ウーペが心配そうに彼の顔を見た。
「決まってんだろ...。まずは...サテルを助ける。あわよくばカズトを仲間にする。」
テオスはアーマーロイドの最新版を2体も持っている。
しかしこちらにも強化形態はある。
「よし...ラータをアップデートする。」
「了解しました。」
二人は地下室に降りて行った。
キドラは未だに眠ったままだ。
Android #25 終戦、脅威
エージ「カズトを仲間に...って、どうやんだよ。」
ショウ「今考えてる。」
ダイスケ「...俺のことも信用してくれよ?」
ショウ「...考えとく。」
ダイスケ「おい。」




