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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
27/49

生まれ

ルアフ国のとある町に住む天才プログラマーの水上(ミカミ) (ショウ)。その正体は正体不明の化け物、通称・エンディアから町の人々を救う正義のヒーロー・ジクティアだった。

彼らに迫る謎の秘密結社・テオスの目的を暴き、そして彼と行動する相棒、アーマーロイドのラータと共にエンディアの脅威から平和を守っていた。

ついにルアフとサテルが戦争を始めてしまった。

ジクティアたちはなんとかそれを早く終わらせようと奮闘していた。

昼間、ジクティアとイスパードがルーラとムーラを率いるカズトと戦闘を繰り広げていた。

今回は彼らだけで戦っている。

ジクティアはアクティベーションフォームで多少強化されているが...。

「オラオラオラぁ!! どうしたんだよヒーローサマぁ!!!」

カズトがそんな彼に罵声を飛ばしながら、相変わらずチンピラのように荒々しい戦い方で彼を圧倒していた。

イスパードは二人を相手に上手く立ち回って攻撃が当たらないようにしていた。

「てめぇらは...サテルに飲み込まれて終わりなんだよ!!」

「そんなことはさせない!!」

相手の最初の攻撃のパターンだけはなんとなく読めてきた。よくよく観察すると分かることだったが、カズトは攻撃の威力を、確実に相手が怯むレベルにするため、全身を使って大振りにしている。一発のパンチをする際も大きく振りかざし、そしてぶつけてくる。片足が浮いているため、少し衝撃を与えればすぐに崩れる。それを避けた後は、反対側の腕で殴りかかるか、体勢によっては回し蹴りなどを行う。

そしてこちらがキックをすると、足を掴んで脛をやられる。

__なら...。

ジクティアはカズトの腹部に蹴りをお見舞いしようとしたが、足を掴まれた。彼は高い確率で肘で打ってくるが、既にそれは読んでいる。

だから、ジクティアは飛び上がってカズトの腕に自身の体重で負荷させた。突然のことで対処しきれないため、彼は膝を崩す。

頭を掴み、そのまま膝を顔面に食らわせ、地面に伏させた。

「なに!?」

「この国に住んでいる皆のためにも、お前を倒す!!」

「くっ...!?」

ジクティアの腹部を思い切り蹴って彼を突き飛ばす。

起き上がってジクティアを睨み、助走をつけて蹴ろうとしたが、一足先に体制を立て直したジクティアは、彼の蹴りを見事にさばいて懐に入り込み、背負い投げをしてやった。

そのまま寝転んだ彼に羽交い締めをしてやる。

「力じゃどーにもならないから、俺は頭脳で埋めることにしたんだよ。天ッッ才でしょ?」

「舐めんじゃねぇぞコラ...!」

背中を何度も肘で叩く。叩かれている彼は、青の力を発揮させて彼を片手で持ち上げる。

「さぁ、今からお前に魅せてやる。最高の“勝利”ってやつをな!」

「ッ...!?」

手を離し、そのまま回し蹴りしてぶっとばした。

「てめ...ッ...強ぇじゃねぇか...。」

カズトの表情が柔らかくなった。

だが、次の瞬間、イスパードと戦っていたムーラの胸を誰かが貫いた。

「ムーラ!?」

ルーラがそんな彼女に駆け寄った。

「チャージロイドが“旧式”に負けるとはな。」

ジクティアは射線の出所を探ると、自分の目を疑った。

「ふーむ...改良の余地があるか。」

そこにいたのは、色を反転(ネガ)させ、色を暗くしたジクティアの姿だった。

「君が...噂のジクティア君か。」

彼は手にしていたライフルを下げた。

「ちょっと遊ぼうか。」

下げたそれをしまってジクティアに殴りかかる。

最初はなんとか攻撃をさばいたり避けたり出来たが、途中からこちらの動きを読んでいるかのように動きを変え、圧倒された。

最後は胸部を思い切り蹴り飛ばされた。

「なんだ。そんなもんか。」

敵のジクティア(??)が彼にとどめを刺そうとしたその時だった。

「テメェエエエエエエ!!!!」

カズトが乱入し、相手を攻撃した。

「俺の獲物に...なにより仲間に...何してくれてんだコラァ!!」

ジクティアは何が起きているのか分からなかったが、そういえばムーラが撃たれていた。彼女たちの方を見ると、イスパードが止血させていたのが分かった。

「...やるじゃん...あいつ...。」

『本当は優しい方なのかもしれませんね...。』

彼は相棒のラータと少し話したあとに立ち上がった。

「ジクティア...力貸せ...。」

カズトがボソッと言った。

「てめぇとは敵同士...だが...今はこの乱入者を潰す。それが最優先だ。」

「...分かった。お前の言う通り...決着つけらんないからな...。」

二人は構えを取り、相手を睨んだ。反転ジクティアは、やれやれとため息を吐いて構えを取る。

2対1の戦いだが、ジクティア側は敵同士の即興コンビなだけあって息が全く合わなかった。それもあって相手は余裕の表情で反撃と防御を繰り返していた。

ジクティアは何か閃き、カズトの後ろに下がる。そして赤の力で高く飛び上がり、青の力を発動させて相手の顔面に蹴りをいれた。衝撃でクラっとしたところを見計らい、カズトが渾身の握り拳をぶつけ、そこから回し蹴りをしてノックアウトを図った。

相当なダメージが入ったことは確かだと思ったが、けろっとしていた。

カズトはボディブローをお見舞いされて膝から崩れ落ち、そのまま蹴っ飛ばされてしまった。背後にいたジクティアにも同様に、一発蹴りを入れて無力化させ、そこからさらに蹴りをお見舞いした。

「カズト...。君は自分が何をしたか分かっているのか?」

余裕だ、という表情で、地面に突っ伏したカズトを見下す。

「...あぁ...。よーくわかってらぁ...!」

「なら、何故俺に逆らうような真似をしている?」

「てめぇが...! 俺の仲間に手を出したからだろうがよォ!!」

この時、ショウは、彼が仲間想いのいい奴だと直感した。

「カズト...お前...。」

「あ? なんだよ...?」

「...俺らの仲間にならないか?」

「なんだよ急に。なるわけねぇだろ。」

「まぁ急だし、そうだよな...!」

二人は同じタイミングで立ち上がった。

「まだ立てるんだな。だが...今回はもう良いか。」

敵のジクティアはそう言ってアームドを解除した。

「...は...!?」

目の前に居たのは、黒髪で赤い目をした男だった。しかもその顔には既視感があった。それは、ジクティア自身もあるし、ラータにもある。

その男は、ショウ...水上(みかみ) (しょう)と瓜二つだったのだ。

「俺は川上(カワカミ) 大知(ダイチ)。ジクティア...いや、ショウ。...俺は、お前の...弟だ。」

ジクティアはその言葉を聞いて耳を疑った。自分は一人っ子のはずだったからだ。弟がいたという話も、ましてやその記憶もない。

カズトはそんな彼の複雑な心境を、マスク越しの表情から読み取った。

「おい...大丈夫かよ...?」

カズトが心配して肩に手を置いた。

「嘘だ...そんなの嘘に__」

「いや、本当だ。」

ショウの言葉を遮るように言った声は、ダイチのものでもカズトのものでもなかった。変声機越しにも感じる程の狂気を纏った声...ルーグだ。

「お前はほんの少しでも真実に近づいたハズだ。分からなかったか? 聞いたこともなかった言葉に懐かしさすら覚えていたと思うんだが...?」

そうだ、ルーグの言う通りだ。ショウはある単語の正体が気になっていた。

“ビビ”だ。

「続きはまた今度だ、ジクティア。アディオス...。」

ルーグはそう言って姿を消した。



家では皆が集合し、ラータが記録していた映像からダイチの顔を切り取った画像がプロジェクターによってホワイトボードに表示されていた。

「本当にそっくりじゃねぇか...。」

エージがそれを見て目を丸くしていた。

「双子ってレベルだぞ? 本当に覚えてねぇのかよ?」

彼は続けてショウにきいた。

彼はうつむいて黙ったまま首を小さく横に振った。

「親父さんとかから聞いたとかもないのか?」

ダイスケもショウに問うが、案の定同じ反応を見せた。

「そもそもお前、どんな幼少期を送ったんだ?」

エージが何気に核心に迫った。するとショウは顔を上げ、自分の生い立ちを話した。

「...俺は普通より少し貧しい家庭に生まれた...。」


両親は共働きで、片方が帰ってきた時は必ずもう片方が朝まで帰らない。それが4歳の時までずっとだった。だからこれが当たり前なんだと思ってた。

そうやってなんとかやりくりしていたのに、父さんの働いていた会社が倒れた。

そこから酒浸りで、何かあるとすぐに母さんを殴るような典型的なDV男だった。

母さんは幼い俺だけでもと、必死に働いていたよ。

6歳の時だ。父さんが社会復帰して別の、しかも大手の会社に勤め始めた。稼いだお金は全部、母さんにあげていた。暴力を振るって申し訳なかった、って。

まるで、いや、本当に人が変わったみたいだった。

今まで苦しかったけど、父さんのお陰でなんとかマシになってきた。10歳になる頃には少し贅沢が出来るくらいになった。

しばらく幸せに暮らしてたけど、12の時に両親が仕事で他国に散った。残った俺は、両親の共通の知り合いだった黎兎(れいと)さんに預けられた。

その時からコンピューター、そしてプログラミングに興味を持って、気が付けプログラマーになっていた。


「...弟いねぇな。」

話し終えると生まれてしまった沈黙に、エージが口を開いた。

「そういえば、あっちのジクティアは川上って言ってたな。もしかして隠子なんじゃないのか?」

ダイスケが言った。

「父さんは水上(ミカミ)、母さんの旧姓は野村(ノムラ)だ。...母さんは浮気をしない性格だから、そんなことはしない。」

ショウは浮かない顔でそう答えた。

「離れているときに親父さんが...っ言っても、年がそんなに離れているようには見えないな...。」

ダイスケがホワイトボードに投影されているダイチの顔をまじまじと見つめる。

「推定年齢、21...。ショウの1つ下のように見えます。」

ラータが言った。

「もしかして...兄弟で産まれたけど、なにかやましいことがあったから誰かに預けられた...?」

ウーペが言った。

「確かに貧しい家庭だ。でも母さんは俺だけでもって...。愛情深い人がそんなことするとは思えない。」

ショウは答えたあと、いつものコンピューターの画面を見つめた。

__ パスワードを入力してください。

「『ビ・ビ』...。」


Android #24 生まれ

水上 翔 男

22(推定)

血液型 A

使用アーマーロイド:ラータ


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