happy day
「メリークリスマス!!」
サンタの格好をしたショウが地下室から上がってきた。
「なにしてんだおまえ。」
それをソファに腰かけていたエージが冷ややかな目で見た。
どうやら彼は、今日がなんの日なのかを把握していないようだ。
サンタのショウは、カレンダーを指差して日付を確認させた。
今日は12月の25日、子供たちにプレゼントを配る赤いおじさんが、夜の空をトナカイが引っ張るそりに乗って駆け回る日。
年に一度の日なのである。
元々クリスマスというのは、キリスト教の日(イエス・キリストの誕生日)であり、カップルがイチャついたりそれを妬む日ではない。
この年に一度の特別な日を、特別な人と過ごしていることに越したことはないが...。
「クリスマス!? マジか! パーティーやろうぜ!!」
エージはそう言って起き上がり、急いで外に出ていった。
「エージ! どこ行くんだよー!?」
丁度良いタイミングで部屋から出てきたキドラが急いで彼の後を追って行った。
ショウはそれを見届けると、地下室からもう二人が上がってきた。
「騒がしいクリスマスになりそうですね、ショウ。」
ミニスカートサンタのラータと、
「あーあ。私はなんでこれをチョイスしたんだろ。さーむ。」
同じくミユだ。
「露出多くない? 寒いだろ。」
彼は二人にきいた。
「ばーか。女の子は可愛く見られてなんぼだっつーのー。」
満更でも無さそうな表情でミユが言った。ラータは顔を赤くしていた。そんな二人を見て、ショウは風邪を引かないかと心配していた。
「ショウ!」
エージが戻ってきた。
「ケーキと、あと、なんだ!?」
「チキンとかその辺りで。定番でしょーが。」
「分かった! 買ってくるぜ!」
そう言って彼はまた出掛けた。
「じゃあ俺たちは飾り付けでもするか。」
街はいつもより多くの人たちで賑わっていた。植えられた木々にはイルミネーションが飾られており、これが夜になると幻想的な景色を生み出すのだと思うと、楽しみに思えてくる。
辺りは白色(所々茶色)の雪でいっぱいで、道を進む度にザックザックと鳴り、その感触が靴を通して感じられた。
「エージ、寒い。」
そういってきたキドラの履いているズボンはジーンズだからまぁともかく、上はコート一枚だ。その下は半袖で、じんわりと伝わる風の冷たさが堪えるようだ。
しかも手袋もない。
「手でも繋ぐか? 少しはマシになるんじゃね?」
「え、あ、えーと!!」
エージが手を差し出すと、彼女は顔を真っ赤にしてアタフタし始めた。
彼は自分から彼女の手を握り、ポケットに突っ込んだ。
「へへ、あったけぇーだろ?」
ニッと笑って優しく言った。
「う、うん...!」
彼女もまた笑顔になり、そう応えた。
すると、目の前の背中を見せていた人たちが突然自分達に向きを変え、走り出した。
「なんだ!?」
彼はとっさにキドラを自分の陰に隠して守った。
「オラオラオラ邪魔だどけぇ!!」
そう言って現れたのは...サンタのコスプレをしたトナカイ...のエンディア...??
「は...?」
「なんだお前! 俺様が退けと言っているんだ! 退きやがれ!」
大きな刀のような武器を振り回している。危ない奴だ。だが、何故こんなにもハッキリと言葉が話せるんだ。
「お前こそ何なんだよ!」
「俺様は、“ディアー・クローズ・エンディア”! そりを引っ張って走らされるトナカイの念で生れたてエンディアだぁ!!」
武器をブンブンと振り回して言った。
キドラは何かに引っ掛かっている様子だが、エージはとにかくこの変な奴を倒さなくてはならないと思い、アームドした。
青き鎧を身に纏い、竜の力を使って戦うヒーロー・クレイの姿となった。
「俺はクレイ! 覚えておきやがれ!」
「覚えておいてやるさ! 俺の、トナカイの角で作ったこの武器の錆の一部としてなぁ!!」
『あれ角なんだ。』
クレイは、行くぜ、と大声で言うと、トナカイエンディアに殴りかかった。
力の差が伺えるくらいに押されていた。楽に勝てるかもしれない。そう思った矢先だった。
「ふざけるなよぉ! 俺様はぁ...! クリスマスを台無しにしてやるんだぁぁあ!!」
負け惜しみにそう叫んだ次の瞬間。
「プレゼボンバーァア!!」
赤色の箱を取り出し、クレイに投げつけた。
「やべ__」
ただの箱を投げつけてくる攻撃だと思って腕でガードしたが、そこにぶつかった瞬間大きな爆発がした。
「なに__ッ!?」
「今だ、そらぁぁあ!!」
()相手の言うことが本当なら)トナカイの角で作られた武器で斬りつけられた。
そんなに大したダメージではなかったはずなのに、強制的にアームドが解除された。
「ヨッシ!! じゃあな、クレイー!!」
トナカイエンディアはすぐに逃げていってしまった。
解除されたことによって現れたキドラが、膝立ちになっているエージに駆け寄った。
「大丈夫か、エージ!?」
「...あぁ...。」
彼のポカーンとした様子からただダメージを負ったのではないのは明らかだった。
「大丈夫ならよかった...! さ、アイツも逃げたことだし、買い出しの続きを__」
「買い出し...? 何のだよ?」
ぼさっとした様子できいてきた。
「え? とぼけなくていいよエージ! クリスマスパーティーのだよ!」
「クリスマス...。」
「パーティーの準備が終わったら、アイツ見つけ出してぶっ飛ばそう! そのあとにパーティーやろ! さ、早く!」
キドラはそう言ってエージを立たせようとした。
「なに言っているんだ...? くりすますって...なんのことだよ...?」
真剣な顔でそう言って彼女の手を払った。
「エージ...?」
「...。 くそ...。」
彼はそう呟いて自分で立ち上がり、どこかへ向かって行った。
必死に止めるキドラの言葉も聞かずに。
「なるほど、そういうことね。」
手ぶらな上に相方がいない状態で帰ってきたキドラを正座させ、足を組みながらソファに深々と腰かけていたショウが事情聴取をしていた。
「許せないな...。」
顎を触れながらそう呟いた。
「だろ...! だから早くアイツを見つけ出して、ぶっ飛ばしてエージを助けようよ!」
彼女が興奮気味に彼に訴えた。
「キドラ、『ぶっ飛ばす』なんて乱暴な言葉、女の子が言うものではありません。」
ラータが彼女の肩を掴み、ちょっとした説教をした。キドラは、だけど_ と続けようとしたが、ショウがそれを阻むように立ち上がった。
「許せない。最も笑顔を作る時期であるクリスマスを奪うなんて...!」
目が本気だ。さすがヒーローと名乗るだけはあると、その場にいる皆が思った。
「ショウならそう言ってくれると思ってたぞ! そうと決まれば__ 」
キドラが彼の肩を掴んだ。
しかし、彼女の言葉を遮るように言った彼の一言に、場が冷めた。
「サンタさんが悲しむ!!!」
え?
「あの、ショウ...?」
ミユが彼に何かを言おうとした。
「サンタさんを悲しませないためにも...一刻も早くその変な鹿を見つけないと! 行くぞラータ!」
子供の夢を壊さないためにそう言っているのかもしれないが、彼の表情は、『本気』と書いてマジだった。
「いや、あの...。」
さすがのラータも困惑を隠せなかった。
しかし、すぐにそれを聞かなかったことにした様子できいた。
「仮に本当にいても、どこにそのエンディアがいるのか...。」
「あー。キドラ、ちょっと来て。」
言われた通りに目の前に彼女が来た。
「そいつの特徴を頭に浮かべて。」
再び言われた通りに従って特徴を思い出そうと頭を使う。
すると、ショウが彼女の後頭部に軽い一撃を当てた。
「いでっ!? なにすんだよ!」
「...。データ...転送されました...。」
__ えええええてええ......!?
「なに、今の。」
ミユは苦笑いしてきいた。
「必殺『ご都合主義』。気にする奴はサンタが乗ってるそりに轢かれる。さ、行くぞ、ラータ!」
「どけどけどけぇ!」
ディアー・クローズ・エンディアが再び街で暴れていた。
そこにいた民衆が逃げ惑う。川のように激しく流れる人混みのなかに、それに抗う者が三人。一人はサンタクロースの格好をしている者、一人はウサギの耳を生やしたミニスカサンタ、そしてもう一人は青い髪の毛を風になびかせる女。
「なんだお前ら!?」
トナカイエンディアが武器を突きだした。
「夢と希望の...守護者だ。」
ラータとキドラは、ショウが発言したことによって寒さが増した気がした。
「ぷぷー! なにかっこつけてんだよ! だっせぇぞ、その格好!」
「お前こそ...。多くの人たちの笑顔を奪ってなにしてんだ...!」
ショウの声が怒りに震えていた。変身パッドを持つ手が小刻みに震えている。
バッとそれを突きだし、大きな声で言った。
「人々の笑顔を、何だと思ってる!!」
思ったより気迫があったのか、相手が尻餅をついた。
「生かしては返さない...人々の笑顔のために!!」
変身パッドを腕に巻き付け、パワーナイフを起動させて挿入した。
本体をスライドさせ、初期アームドを完了させると、続いてラータを二重アームドした。
「お前に魅せてやる! 最高の...“勝利”をなぁ!!」
専用の武器を取り出し、トナカイエンディアに斬りかかる。
相手は圧倒的に弱いようで、普通のパンチでも全身が飛んでいった。
「くっそぉ!! こうなったらぁ!!」
相手がクレイにやった爆弾と同じ攻撃を仕掛けてきた。しかし、キドラから貰ったデータを元に回避し、反撃した。
全身で派手に転び、起き上がった。
「ヒィイ!!」
するとエンディアは一目散に逃げ出した。
「おいコラ! 逃げるな!」
ジクティアはそいつの後を追った。
「と見せかけてプレゼボンバー!!」
緑色の箱をジクティアに投げつけた。
「効くかよ!!」
その箱を剣で切った。
目の前が真っ白の煙に覆われた。
「まずい...逃がしちまう...!」
『赤の力を発動します!』
跳躍力を上げ、その場から離脱し、エンディアの頭上から剣を振り下ろした。
「あいだー!!?」
胸部を蹴ってぶっ飛ばす。
「さて、必殺技と行こうか...!」
「ヒィイ!! 待ってくれ! 殺さないでくれ!」
「問答無用だ!」
赤と青の力を同時に発動させ、それを右足に集中させた。
高く飛び上がり、右足を前に突きだしてキックを__
「今だ!!」
当てる寸前に白色の布に包まれた。焦って体制を崩し、技が不発に終わった。
「なに...!?」
ジクティアは混乱し、ただ袋の中でジタバタしている。
「フッハッハ! お前からもクリスマスの記憶を奪ってやるー!」
「くそっ...!」
ここまでか、そう思った瞬間、エンディアに向かって誰かが発砲した。
「ヒデェアブッァア!!?」
トナカイエンディアが聞いたこともないような声をあげて地面に転んだ。
ジクティアは青の力で力を高め、白色の布原で作られた袋を無理矢理こじ開けた。
「しょ....。ジクティア! これ!」
射線の出所にいたのは、ミユだった。
彼女は彼に赤色のプレゼントボックスを投げた。
...武器も持っていない。どうやって攻撃を...?
すぐに考えるのをやめ、箱を開けると、赤と緑のしましま柄になっているパワーナイフが入っていた。
「なにこれ...!? 作ったの!?」
「こんな短時間に作れるわけないでしょ! ...なんか知らないけど、あんたの部屋にあった!」
「...他人の部屋で何やってんだよ。」
「知らない! 光ってたから入っただけ!」
『ショウ、エンディアに集中してください!』
ジクティアはミユからエンディアに視線を戻した。
そして立ち上がり、パワーナイフを起動させた。
「なんか知らないけど...。使うぞ!」
《Merry Christmas!》
起動させた瞬間、声がした。誰の声かは知らない。気のせいだ、と思ってパワーナイフを刺し替えた。
鎧の色が変わり、上半身は白と赤、下半身の鎧は朱色と緑色、そしねスカートがクリスマスツリーのように派手な柄になった。
「おぉ...!?」
ジクティア・クリスマスフォーム。
「なにこれぇ...!?」
一番本人が驚いている。マスクも白色から淡いピンク色になっている。
向き合っていたウサギの模様も、そりに乗っているサンタの模様に変わっていた。
「まぁいいや! さぁ、“お前にも届けてやるぜ、最ッッ高の、『ハッピー』を”!!」
専用の武器は、杖のような形をした飴になっている。
反撃開始だ。
攻撃が当たる度に雪結晶のエフェクトが現れた。音も鈴の音になっている。
どうなっているんだこれ。
「くそ! プレゼボンバー!」
「無駄だ!」
武器を翳すと、落下してくる赤い箱が止まった。一振りすると、それがエンディアの方へと飛んでいき、爆発した。
「いででで...!」
「さぁ、今度こそとどめだ!」
武器を地面に突き刺すと、腰をおろした。全身の鎧の色が光を放つ。
勢いよく武器を引き抜き、クロス状に振ると、赤と緑の斬撃が現れ、飛んでいった。
「うぎゃぁぁぁあ!!!」
当たった。
「くそ...!俺様は...ディアー・クローズ・エンディアなんだ...ぞぉおお!」
体に刻み込まれた赤と緑の光によって悔しそうに言った。
「え? ディアーなの?」
「ディアーだ!!」
「ディアーって...鹿じゃん。」
「え」
「え、じゃなくてさ。」
......。
「.......メリークリスマス!!!!」
鹿エンディアは大声でそう言うと、爆発した。
雪道のなか、手分けしてエージを探していた。エンディアが倒されたことを知った街の人たちがだんだん戻り、三時間する頃には騒ぎが嘘だったみたいに買い物を楽しむ人で賑わっていた。陽も沈み、暗くなってきた。光始めたイルミネーションが幻想的な景色を作り出す。
「エージ!! どこなんだよーー!!」
キドラが叫んだ。
エンディアが倒されたことにより、クリスマスの記憶が戻ったエージは、去年のその日を思い出していた。
「エージ、似合ってるよー?」
赤い球状のものを彼の鼻につけ、満足そうに微笑んだ女性。
数年前に行方不明となった交際相手だ。
急にキドラの目の前から消えたのは、その人のことを思い出したからだ。
どうして忘れていたのだろう。自分が許せなかった。
忘れていた...のではなく、もしかしたら思い出したくなかったのかもしれない。理由は分からないが、はっきりと彼女の“存在”は思い出せても、声や顔、体格は思い出せずにいる。
名前...それは確か...。
「...アカリ...。」
エージが呟いた。
「いた!」
ギクッとして振り向くと、キドラがそこにいた。
息を切らしている。
涙をこらえていたが、堪らなくなってエージの胸に飛び込んだ。
「バカ! 探したんだぞ!」
「...ごめん...。」
懐かしい感覚がした。
しばらくこうして抱きしめることも抱きつかれることも無かったからだ。
彼女の温もりが心地よくて、つい抱き締めてやってしまった。
「エージ、今日はパーティーだよ! 買い出しはショウたちがしたから、もう準備万端だよ!」
「あぁ、そうだったな...! 早く帰ろうぜ!」
「うん!」
二人は手を繋ぎ、まるで恋人のようにして帰った。
空からは綺麗な白色の粒がふわりふわりと、まるで妖精が舞い踊るようにして降ってきていた。
Merry Christmas.
By, Syou Mikami
Android #X happy day
ミユ「あんたさ、サンタ信じてんの?」
ショウ「は? いるに決まってるでしょ」
皆(まじか。)




