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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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戦争への道

ショウ「........。」

ラータ「ショウ、少しはお休みになられた方が..」

ショウ「気遣いありがとな、ラータ。でも今は休んでられないんだ。」

ラータ「...そ、そうですか...。分かりました。くれぐれも無理をしないようにお願いします...。では...。」

ショウが徹夜でコンピューターの画面を見つめながらキーボードを鳴らしている。

彼が見ているコンピューターの画面に映っているのは、ラータのデータである。

改めて見ると、やはりプログラムが相当入り組んだように設定されている。

ボーッと見ていると、急に何かを見つけた。

「これは...?」

その内容につい目を細めてしまう。

「...な...!?」




朝陽が昇り、その光が窓から射し込んできた。エージはずっと離れずキドラの側につき、そのまま眠りについたようだ。

誰よりも早起きしたウーペは朝食の準備をし始める。

「昨日の夕飯、ショウは食べてなかったけど大丈夫かな...?」

目を覚ましたエージが寝ぼけた様子でウーペを見る。

「あ、おはよー。」

「...はよ...」

寝起き独特の低い声でそう言うと、大きなあくびをしたあとに目を擦って伸びをする。

寝ぼけも少しずつ治り、側で眠っているキドラの頭を優しく撫でた。黄色い光の粒子が宙に浮いて、そして消えた。消滅が始まっているのだ。

「絶対に助けてやる...。」


一方のショウは、例の機械を作り上げた。果物ナイフのようなサイズと形をしたそれを「パワーナイフ」と命名した。

パワーナイフは、中にアーマーロイドの能力を記憶する場所がある。

今はテスト段階でラータの能力が記憶されている。

それは使ったら中身が空になる。空になったらまた補充し、空になったらまた補充しての繰り返しだ。だから戦闘に向けてそれなりに量産しなければならない。

現段階では出来上がった一本をテストするために、それを読み込んで鎧を装着させる装置を作る。

気が遠くなるのを感じていると、メールを受信したことを知らせる着信音が鳴った。

「...誰だよこんな朝早くに。」

メールの送信主は、Moonのミユだった。

「おっはー。眠れた? 私は全然。女の子って辛いんだよ。ま、そんなことでメールしたわけじゃないんだ。いきなり本題なんだけどさ、なんか困ってるみたいじゃん? 私らになにかできることある?」

最初の部分は無視して、何故今まさに大変だってことを知っているのだろうか。気になったショウはスマホの画面にキーボードを出現させ、文字を打って送信した。

「なんで大変だって知っているんだ? ストーカーか?」

「失礼な。メールきたの。黎兎から。」

「...黎兎から?」

「そう。」

ミユは黎兎の正体に気付いているのか? 知らないならば伏せておいた方がいいのかもしれない。

「いや、特にない。それに、女の子は辛いんだろ?」

「そういうこと言うんだね 笑 会ったときはどーてーこじらせたオタクみたいだったのに意外 笑」

「何いってんだ?」

「じょーだんじゃんか。マジにならんでよ 笑」

何言ってるのか分からなくなり、付き合ってられなくなったショウはスマホをデスクに置いて作業を続けようとした。が、また着信音が鳴ったので、渋々内容を見る。

「わたし、力になれると思うよ。」

「今は強化アイテムを作ってるだ。邪魔するな。」

「強化アイテム? そんな強い敵が現れたんだ?」

「そう。だから話してる時間はないんだよ。」

「尚更力になれるね。そっち行く。住所教えて。」

「来なくていい。もうやめろ。」

ショウが返信を送くると、数分の沈黙が生まれた。しかし数分間放って置いたあと、再び着信音が鳴り、メールの内容を見たときに背筋が冷えた感覚に襲われた。

「特定した。今行く。」

どういうことだ。snsだってろくにやってないのにどうやって特定したというのだ。

「はったりはやめろ」

「ちゃんと着けたら褒めてね。正義のヒーロー・ジクティアさん。」

「来れたらな。」

自分でもフラグな気がしてきた。


読みこみ機械の設計にいきづまっていると、チャイムが鳴ったのが聞こえた。

まさか...。

「どちらさまー?」

あのバカエージが応答しやがった。

急いで階段を駆けのぼると、そこにいたのは小柄な銀髪の女の子だった。

今回は紺色のパーカーに、文字の書かれた白いシャツ、そしてジーパン姿だった。

「うそぉん...。」

ショウは間抜けな声を漏らした。

「ちっす!」

本当に来た。

ショウは、仕方がないからミユを地下室に誘った。

「なんで特定できたんだよ。」

「強化アイテムを作るのに力になれるって言ったっしょ。特定なんてよゆーよ。」

とんでもないネットアイドルがいたものだ。

メールで話している相手の携帯に忍び込んで個人情報をかっさらったようだ。控えめに言って恐ろしい。

しかしその腕は確かなようなので、ショウは彼女に手伝って貰うことにした。

一通りのデータは出来上がったため、今度は本体を作る。その作業を二人でやって、一人で充分なところはミユにやらせた。本人の希望だ。その間にショウは仮眠をとったり、アーマーロイドの能力値を計算したりと時間を潰していた。


気が付くと夜になっていた。

パワーアップアイテムがようやく完成した。

嬉しくなった二人は勢いよくハイタッチし、その音が部屋に響く。

一段落着くと、あんなに仮眠したのに眠気が突然やってきた。そしてそれはミユも同じだったようだ。

「はぁーしんど。今日泊めて。」

「なにいってんの。帰りなさいよ。相方が心配事するでしょうが。」

「家、別に決まってるでしょーよ。」

この二人はどこか似ているのかもしれない。

「別に君は変なことしないっしょ? 泊まりまーす。」

「...はぁ。まぁいっか。ありがとな。」

「うーん...。ねむぅ...。」

ソファーで横になって眠ってしまった彼女をそっとし、電気を最小に調整したあと、階段を登る。

目にはいった光景は、キドラから小さな黄色の光の粒子が宙に浮いて、そして消えるものだ。まるでシャボン玉のようなその現象を目にした彼は急がなければならないと、そんな気がした。そばを離れずにいるエージと目があったあと、心配そうに彼女に目線を戻した。こんなエージが見たこと無かった。

早速明日にでもパワーアップアイテムの実験をすることにしようと考えたあと、自室に戻って眠りついた。


「さて、実験を始めようか。」

近所のグラウンドで実験をすることにした。ラータとエージとミユが同行している。

__ まずは変身パッドとパワーナイフの取り扱い説明からだ。

読みこみ機はパッドの形になっていることから、「変身パッド」と命名した。

この変身パッドを腕に当てると自動的にベルトが巻かれる。そしてそれの挿入口にパワーナイフを挿入し、本体をカチッと音がするまでスライドする。(といっても音がするのはすぐだからそんなにスライドしない。)

電子音はなにも入れていないため、ちゃんと読み取ったのか分からない状態だ。

「ショウ、ルーグとかの機械は喋ってたし、それも喋らせたらどうだ?」

説明を聞いていたエージがまともな意見を出した。まともかこれ?

「んー、まぁそれもいいかもな。」

それではいよいよ実践に入る。

パワーナイフの取っ手の部分にあるスイッチを押すと、ナイフの先端が光る。今回はラータのデータが入っているため、赤色に光った。そして変身パッドにそれを挿入すると、光がよりいっそう強くなるので、光っているうちにスライドさせる。

一通りの動作を終えると、変身パッドから赤色と青色の煙が出てきた。

「うわ、なんだこれ!?」

エージが驚いて後ろに退いた。

失敗かと思った瞬間、パッドから生えてきた管が身体中に絡まった。

「なんですかそれ...!?」

今度はラータが退いた。いや...引いた...。

一本の管が他の管と融合し、胸部や腕、足などの様々な部位に透明な塊が出来た。

「それが...パワーアップ...?」

ミユまでも白い目で見てきた。

着色されていた煙がパッドに吸い込まれ、一気に管だった塊の中に液体として流れ始めた。

こうして赤と青色の鎧が出来上がった。

「なんか、いまいちだな。」

このバカゴリラどうやってボコボコにしてやろうかと思ったが、ここからが本題だ。

「ラータ。アームド!」

言われた彼女が渋っていたのが見えたが、彼女は今までと同じような形でアームドした。

すると変身パッドが反応し、再び管が伸びてきた。今度は......どうなる......?

「お、おぉ......!!」

なかなかのデザインだ。

腕には厳ついグローブを付けており、胸アーマーは赤と青で分かれている上にそれぞれ兎の横顔を彷彿とさせるようなデザインが施されていた。腰には紫色のスカートのようなものがあった。持ってきた手鏡で姿を確認すると、髪もどうやら赤と青で分かれて...いやまぁ元々赤と青のオーラを使い分けて戦ってきたわけだ。ここまでくどくても...いいと思う。

そして今まで付けてきたお手製の仮面もリニューアルされ...。こっちもよく見たら兎の横顔みたいになってる。

というかなによりも気になるのがこの大きな兎の耳だ。なにこれ。

「兎要素強くね!?」

ショウが一緒に開発していたミユを見て言った。

「見た目の設定なんてしてないよ私。」

両の手のひらをショウに突きつけるようにして向ける。見た目が本物のヒーローっぽくなったショウは、本当はエンディア相手に力を試したい。しかし今はどこにもそいつはいないので、できる範囲に能力テストをすることにした。

勝手は同じだろう。赤いオーラを纏ってジャンプすればいい。そう思った彼は、構えをとる。しかしいくらオーラを纏おうとしてもそれは現れない。おかしい。ラータは既に纏っている状態だと言った。いきなり不具合が見つかったかと、近くにあった大きめな石ころに八つ当たりして蹴りとばす。すると、あり得ない速度でそれが直線にとんでいった。地面にドーンと音をたてて直撃し、着地地点の土を深く抉った。

「えぐ...。」

エージが目を丸くしてその穴を見つめ、呟いた。

ミユに関してはもはや驚きが一周して無の表情でそれを見つめていた。しかし一番驚いているのはジクティア本人だ。目が点になってフリーズさしている。

「え、えぇじ...。」

ショウは情けなく震えた声でエージを呼ぶ。

「俺...絶対闇落ちなんてしないよ...!!」

「......???????」

アーマーロイドの力を2倍にするその威力は計り知れなかった。正しいことに使わなければ、これはなによりも恐ろしい兵器になる。

ただの石ころが直径約10㎝の大きめな穴を地面に作り出した。そんなに力を入れて蹴ったわけではない。これがもし本気で、しかも蹴ったものが岩だったらどうなっていただろう? 穴の大きさが倍になるか、それ砕けて飛び散り、偶然通った人に怪我をさせるかもしれない。しかし逆に言えば、この力さえあればみんなを守ることができるのだ。大きな力を計算ではなく現実で形として見たショウは、改めて自分が正義のヒーローでなければならないと覚悟を決めた。

一通り能力を試した。能力をフルで発揮した場合のジャンプは、三階建てのビルを余裕で飛び越えるくらいはあった。走力は通常で時速45m。本気で走って80km。赤の力(強化前で言うオーラ)を使うと倍はある。もう車だ。バイクは必要ないと思った。だがその分スタミナを多く持っていかれる。

攻撃に特化した青の力は試すことはできなかった。

「さて、帰るか。」

変身を解除して帰ろうとした。

突然、一瞬だけだが世界が紫色に見え、吐き気と頭痛がした。目をかたくつむってもう一度目を開けると今度は普通で、頭痛と吐き気も治まった。なんだったのか...?



大きな机といくつもの椅子と、その前に大きなホワイトボードがある部屋で、赤黒いコートを着た仮面の男と白い防護服の男がいた。

「さぁて、伝説の龍のエキスでチャージロイドを作るか。」

ルーグが防護服を着た男に言った。彼はバインダーを片手にエキスの入った小瓶を見つめる。

「いや、その前に...あなたも言っていたでしょう? やり方の確認として別のチャージロイドを作るべきだ。」

「あぁ、そうだったな。『強制労働』のロボット...ふん...奴隷のように働いてもらおうか。」




Android #21 戦争への道

ショウ「なんだったんだ...? 今...この辺りが紫色に...?」

エージ「どうした? ショウ?」

ショウ「...いや、なんでも...ん? なんだこれ?」

ラータ「石...? なんですかこれ?」

ショウ「いや知らない...。」

ミユ「...???」

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