表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンドロイド  作者: 中川 はじめ
20/49

平和を守る者と奪う者

ラータ「ルアフ国のとある町に住む天才プログラマーの水上(ミカミ) (ショウ)。その正体は正体不明の化け物、通称・エンディアから町の人々を救う正義のヒーロー・ジクティアだった。

そんなある日、サテルが突然に発表したルアフへの宣戦布告…。ジクティアたちは戦争を仕組んだイスパードとの激戦の末、なんとか撃退に成功。その後、見覚えのある彼が…。」

エージ「そういや前回説明してなかったな。今間に合うか?」

ショウ「今済ませてちょーだい。」

エージ「そうか、なら教えるぞ。いいか……」

(略)

ショウ「…。」

キドラ「ショウ…?」

??「よぉ、ジクティア?」

戦争が始まってしまった。

朝から鳴り止まない銃声と悲鳴、爆発音が鳴る。戦争…か…。


ショウとエージは今、目の前にいるルーグと戦闘を繰り広げていた。

耳をほじるような仕草をして余裕をアピールするルーグを見たショウは言葉にできない怒りを覚えた。

ルーグの正体を、事前にエージが彼に教えたのだ。

「あんた…どういうつもりだったんだよ…?」

ショウがルーグを睨んで問いただす。この数年間一緒に暮らしたこと、面倒を見てくれたことはすべて飾りだったのかを。

「…あー、教えちゃったのか。まぁいいか。」

その様子で回答は出た。

「フザケんなよ…! あんたのこと信用してたのに…。」

「あぁ、わかってる。俺もそうなんだぜ? 全部が全部飾りじゃない。お前がボロボロんなって帰ってきたときはほんっとに心配しちまったし、エージが来たときは『賑やかになるな』って、ちょっと嬉しかったもんだ。そういやラータちゃんはエージのこと脅してたっけな? 懐かしい _」

「こっちの気も知らねぇでベラベラ喋ってんじゃねぇよ!」

エージが大声を出して話を遮った。何故か知らないが、ショウよりも彼が怒りに満ちていた。

「はぁ…。まぁいいかぁ。最後に用があるのは、キドラだけなんだよ。あとはおまけで潰せればいいやって感じな訳だ。さて、お喋りはもういいだろう? 俺たちが顔を合わせたらやることは1つだな。」

そう言ってルーグは銃とマチェットを取り出した。

ショウは剣を取り出し、エージはドラロクナックルを装備した。

「来い!!」

ルーグの挑発を合図に二人は一斉に飛び掛かる。

先にショウの剣がルーグの肩をかすった。しかし彼はショウの腕を掴み、どこで覚えたのか分からない専門的な動きであっという間に剣を捨てさせて、投げ飛ばす。後からナックルで攻撃してくるエージには、まず攻撃を避けてから、振り向いたところを回し蹴りで怯ませ、その後に銃を撃って膝を負傷させた。

立ち上がったショウが今度は素手で殴りかかってくる。再びさっきと同じ動作で、今度は背負い投げをした。

「ラータ! 50だ!」

白い泡が弾け、アクティベーションフォームとなった。

赤と白のオーラを纏って高速移動し、ルーグの頭に蹴りを入れようとするが、読まれてガードされてしまった。

「甘い。」

足を退かされてから顔面に3発のパンチを食らった。

ジクティアの仮面にヒビが入った。力の差が圧倒的で、イスパードとは訳が違う。

「さて、さっきも言ったがお目当てはキドラだ。だからエージ、お前には悪いがボコボコにされてもらう。」

「ざッッけんなッ!!」

立ち上がろうとしても、まだ慣れていないためにアームドしても完全に鎧としてなっていない部分をやられてしまった。

真っ赤な血が傷口から流れる。

ショウはそれを見て、エージを守るために必死に抵抗する。

青と白のオーラに切り換えてからタックルを噛ますと、さすがの重量に押されてバランスを崩す。

「ぐっ…。ふっふふふ…。だが…、無意味だ!」

両の肘で背中を強打され、強い痛みが走った。

髪を引っ張られて顔が上がり、腹部を膝で蹴られて投げ捨てられる。

腹を抱え、身体の前後にある痛みに苦しむ。

「そこで寝てろ…。」

ラータは苦しそうにしているショウの体を回復させた。

再び立ち上がり、走って捨てられていた剣の場所へと向かう。それを手にして今度はルーグへと走る。

彼の諦めの悪さにため息をもらした。

「ショウ。今のお前では俺を倒せない。技術面でも力でも経験でもない。“理由”だ。お前は何のために戦っている? 誰のために戦っている? お前は“誰で”戦っている? その答えが今と変わらないなら、俺に勝つ事はできない!」

手のひらを見せるように付きだすと、ショウの体が飛んでいった。

地面に突っ伏した彼は、ルーグの問いの答えを考えた。

何のために戦っている?

_ 今の俺は…何のために…?

誰のために戦っている?

_ 誰の…ため…?

誰で戦っている?

_ どういうことだ…?

考える内にエージのもとへと歩みを進める。

彼はドラロクナックルでルーグを殴った。青い光と共に火花が散る。

「抵抗する力はあるんだな…?」

「お前を絶対に許さねぇからな…!」

強くにらみながら立ち上がってそう言った。


エージが必死に抵抗しているなか、ショウは問いの答えを探していた。

人のために傷ついてきたのに、信用していた人が裏切ったことのショックが大きくて戦う気が失せていた。

どうしてエージは戦えるんだ?

『ショウ…?』

動かない彼にラータが心配して声を掛けてきた。

分からない。分からない。分からなくなってしまった。もうなにもかも、どうにでもなれ…。そういう気分だった。

突然、民間人を襲おうとしていたエンディアの顔面に拳をめり込ませた記憶が蘇った。

「世界の平和を守るため、正義のヒーロー………名前未定が相手をする!」

「ショウ、ダサいです。」

「るせ。」

これは…?

『ショウ、思い出してください。』

そうだ、これはエージとの出会いだ。

エンディアを倒してアームドを解除し、ラータと一緒に帰ろうとしたときだ。

「お前ら…」

後ろから声がしたと思って振り返ると、さっき助けた民間人…後のエージがいたのだ。

「何者なんだ…?」

正体は内緒にしようと思ってたのにここでバレてしまっていた。

「俺は…ただの民間人だ_」

「嘘つけよ…! 民間人が赤と青になって戦うわけねぇだろ!」

こいつは面倒なことになりそうだと、ショウはその時思った。

「…フフッ…。そうだったな…。」

ショウは立ち上がった。さっきまでの自分がバカみたいだと思えるくらいに立ち直れた。

「ほんっと…。面倒なことになった…。」

地面に置いてある剣を手に取り、構えをとる。

何のために戦っている?

_ 俺は平和のために戦っている。

誰のために戦っている?

_ 皆のために決まってる。

誰で戦っている?

_ そんなの…。


「くそっ!」

抵抗したも敵わなかった。

「じゃ、アディオス…エージ…!」

銃口を頭に突きつけられたその時、ルーグの肩に弾丸が当たった。

弾丸が飛んできた方向を見ると、ショウが堂々として立っていた。

「世界の平和を守るため、正義のヒーロー、“ジクティア”が相手してやる!」

『ショウ、やっぱりダサいです。』

「るっさいよ。」

彼にもう迷いはない。そんな様子だった。

「ジクティア…ふん。いいだろう、かかってこい!」

アクティベーションフォームになり、赤と白のオーラを纏って高速移動をして…

「またその技か…。 もう見飽きたわ!!」

今度は直線ではなく蛇行して向かい、攻撃が当たる程の距離になると高く跳んで背後に回った。

「なッ…」

向かってくることを予想していたルーグが攻撃を仕掛けようとするがそれは空を切る。一方のジクティアは背後から剣を思いきり斜めに振り下ろし、相手の鎧に切り傷を刻む。

斬られる勢いに負けたルーグが全身で転んでいった。

「…やるな…。答えを見出だしたか。」

「俺は戦争を終わらせる…! あんたがそれを阻むなら、俺は迷わずあんたを倒す!」

『ショウ…!』

「…………! フフフ……そうか…。」

ルーグは上半身を起こしていたが、再び横になって大の字に両手両足を開き、大きく息を吐く。

「成長したな、ショウ…。」

「あんたに褒められたくないね。」

「ふっ……フフフ……はははは! 今後が楽しみだ! いつかの決着まで生き残れよ! ショウ、エージ!」

そう言ってルーグを白い煙が包み、姿を消した。

「……また助けられちまったか…。」

傷だらけのエージがショウの元へやって来る。

「ヒーローとしての俺を呼んだのはお前だ。…ま、今回は礼を言ってやるよ。」

アームドが解除され、ラータが姿を現すといきなりショウを肘で突く。

「…な…。……わかってる…。」

エージの方もアームドが解除されて傷だからけのキドラが現れる。

「あ…ありがと……な……。」

「お、おう…。」

少し恥ずかしそうに礼を言う彼を、まるで保護者のような視線でラータは見守っていた。

一段落着いたことで、家に帰ろうとした。

「うわっ!?」

キドラが声をあげたので、振り向くとルーグが手のひらを彼女に見せるような形でいたのが見えた。

「なっ…てめぇ…っ!」

「戦闘の後ってのは、どうしてこうも油断できるのかねぇ?」

キドラから青と紫の光が溢れ、それがルーグの手の中に集まっていった。

「エ……ぃ…ジ……!」

苦しそうにエージの名を呼ぶ彼女。これはまずい。

「ラータ!アーム__ !」

「動けばいっそこいつを殺してやる。」

先程の「生き残れ」が嘘だったと言わんばかりの言葉だ。

みるみるうちに光が奪われていく。それに比例しているのか、キドラが膝から崩れ落ちる。そしてそれも奪い尽くした時、キドラは力なく倒れ、ルーグが確かにほくそ笑んだ。

「近いうちにお前たちを始末しに来る。その時に…キドラと再会できるかもな! アディオス!」

ルーグが姿を消すと、エージが走ってキドラの元へと向かった。

「キドラ! キドラ!!」

いくら呼んでも応えない。

髪が黄色と黒色の混合色になっており、呼吸が荒くなっている。これは…。

「どうなってんだよ! ショウ!」

「……恐らくルーグの目的はキドラだ…。さっきの見た限りだと……それは彼女の中にあった『ドラゴンのエキス』…だとしたら今のはエキスを奪い取ったってことになるし、そうなったらキドラは……」

「どうなるんだよ!?」

「……消滅する…。」

「…………は…!?」

ショウの一言にエージの顔が真っ青になった。



Android #19 平和を守る者と奪う者

エージ「キドラ…。大丈夫なんだよな……?」

ショウ「今はなんとも言えない。…くそ…。急展開でなにからやればいいのか…。」

ラータ「キドラを助けるためにはルーグを何とかしなくてはなりませんね…。」

エージ「…。クソッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ