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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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バカと天才

ショウ「アームド…つまりは変身しているときの姿の名称とかなににしようかな?」

ラータ「……ラビットマン」

ショウ「いやジャンプ力とか? あ、ラータにも関係するのか。 でもラビットマンはなー……」

黎兎「ラビットマスクなんてのはどうだ?」

ショウ「えー。まぁこの話は後でいいや。さぁ、どうなる第2話!!」

「さぁ、かかってこい!」

鎧を纏ったショウがエンディアを挑発する。

2体のエンディアは高速で移動し、ショウを挟むように並ぶ。そして1体が奇声をあげて襲い掛かる。ラータのアームド効果のひとつ、跳躍力上昇で真上に跳び、同じく効果の超重量を利用してそいつの頭にそのまま右の拳を入れてやる。エンディアは殴られて1歩退いた。その隙に左の拳で顔面を思いきり殴る。

するともう1体が後ろから攻撃を仕掛けてきた。それを予知していたショウは、目の前のエンディアを衝撃波で吹っ飛ばし、襲ってきたやつの攻撃を避け、超重量の回し蹴りを入れた。エンディアは青い血を吹き出しながら吹っ飛んでいき、瓦礫に派手な音を出して思いきりぶち当たった。

「どうよ。俺、強いでしょ?」

調子に乗ったショウがアームドしているラータに言った。

ラータは呆れた様子で、はいはいとだけ言った。

冷たいねぇ。ショウは手をヒラヒラさせながら言った。

これで終わったかのように思えたその瞬間、瓦礫の山が四散し、そこからエンディアが高速で飛び出してきた。

急なことで上手く防御をとれず、まともに蹴りによる攻撃を食らってしまう。思わず声を出した。

そのままショウの体は後方にすっ飛んでしまう。2回ほどボールのようにバウンドしたあと4、5mほど転がっていった。

「ぐっ…最悪だ…油断しちまったか…」

鎧の状態であるラータがショウへのダメージを最小限に抑えている。しかしそれでも足りないくらいの攻撃を食らってしまったのだ。

「ショウ、大丈夫ですか?」

ラータがショウに声をかける。

「…あぁ…。」

なんとかラータに自身のコンディションを伝える。“最悪だ”としか言いようがないようだ。

「でも…もしものことを想定して機能を追加したんだよ…!」

ショウは自分の腕をガシッと掴む。

「天っ才の力、思いしれ…!」

オッドアイでそれぞれ異色の目が光を放つ。

そしてそれが収まると、ヒョイっと立ち上がり、重い攻撃をもろで受けた直後だとは思えないくらい軽快な表情を浮かべていた。

「おや、こんな機能をつけていたのですね。」

「あったり前でしょう。しかも自動学習機能もついてる。相手の思考パターンをある程度記録して次の攻撃を先読みすることができる。油断してても、さっきみたいな攻撃はもう食らわないってことだ。」

「ご説明感謝します。あと、右斜め後方から来ます。」

ラータの言う通り、その方向からエンディアが飛び出してきた。

捕捉した敵の距離は見える化しているため、徐々に近付いてきたところを青いベールによって強化した右足で回し蹴りを食らわせてやり、吹っ飛ばす。

派手に音をたてて建物だったものの壁にぶち当たった。

「どう? 最高でしょ?」

「ショウ、1体に集中するのはいいですが、もう1体の存在をお忘れではありませんね?」

「…あ。」


「来るんじゃねぇ!!」

迫りくるエンディアから走って逃げるボロボロな男がいた。

「来るんじゃねぇよ!!」

大声でそう言いながら走るが、エンディアはその男を追い続ける。

そしてエンディアが取り出したレーザー銃が火を吹き、男の足元で爆発した。

男は爆風に吹き飛ばされ、瓦礫に背中を打ちつけ、そのまま地面に倒れてしまう。

「くるな…くるな…」

男は遠退く気を繋ぎ止めてそう言い続ける。

そして男はついに気を失う。

その寸前にうっすらと見えたのは、誰かが赤と青の光を放ちながらエンディアと戦った光景だった。

「くるな」

そう呟こうにも、既に気を失っていた。


「ショウ、民間人です。」

「まずい…。急ぐか。」

ショウは赤と青の光に身を包み、高速移動をした。

そして民間人を襲おうとしていたエンディアの顔面に拳をめり込ませた。

「世界の平和を守るため、正義のヒーロー………名前未定が相手をする!」

「ショウ、ダサいです。」

「るせ。」

エンディアがレーザー銃を撃ってくる。ショウはそれをたまたまアップグレードの時につけた反射鏡で弾いた。

正確には腕部分の鎧に反射鏡の機能を追加した。

そして赤い光をまとって高速移動し、青い光を右足にまとわせて敵の顔面に蹴りをおみまいしてやった。

これがショウの言う“必殺キック”である。

「必」ず「殺」さないように調整はしてある「キック」の略だ。

あくまで倒れたエンディアにとどめは刺さない。身柄を拘束して政府に送りつける。

「さて、これで終わりだな。」

「お疲れ様でした。ショウ。」

ショウはアームドを解除した。

「くー! 俺がヒーロー…! かっこいいな…!」

「…。そうですね。」

「ずいぶんと冷めてるのな。」

戦い終わってからはエンディアの身柄を拘束する。そしてそのあとは政府の役人に電話する。

「もしもし。エンディア2体。ここはーえーと…」

ラータがエンディアを2体並べて置いておく。

そして念のためにエンディア専用の麻酔をかける。

連絡し終わったショウがラータに駆け寄り、一緒に帰ろうとする。

「お前ら…」

後ろから声がしたと思って振り返ると、そういえば民間人がいたと思い出す。

「何者なんだ…?」

正体は内緒にしようと思ってたのにここでバレてしまっていた。

「やべ。」

「俺は…ただの民間人だ_」

「嘘つけよ…! 民間人が赤と青になって戦うわけねぇだろ!」

こいつは面倒なことになりそうだ。ショウは思った。

「…こんなところで話すのも危険だ。どっかに隠れるぞ。」

「ふざさんな! ここで話せ!」

こういうやつは話しても無駄なのは分かってはいたが、なんとか説得してショウの拠点に戻った。

テーブルを挟んでショウと男が顔を合わせる。

ラータがテーブルの上にコーヒーが入ったカップを2つ置いた。

「俺は水上 翔。この町でちょっと有名だろ? エンディアと戦うヒーローのこと。あれが俺。あと、こいつ。」

「ラータと申します。」

名乗ったラータは頭を下げて一礼をした。

「俺は柏木 影次だ。」

男も名乗りだした。

柏木(かしわぎ) 影次(えいじ)…聞いたことがあった。確か地元のボクシング大会で優勝したことで一躍有名になった男だ。

「お前があそこにいたってことは…すぐ逃げなかったのか?」

柏木が下を向いて黙る。

「どうしてすぐに逃げなかったんだ? ボクシングの経験で倒せる相手じゃないんたぞ?」

ショウが影次に問う。影次が顔を上げ、ジムから逃げ遅れた恩人を助けるためだと言った。しかしジムに着いた頃には手遅れだった。その人は瓦礫の山に埋もれていたのだそうだ。

「ボクシングを始めたきっかけの人だったんだ。 だからどうしても助けたかった。俺がチャンピオンになるのがその人へのお礼だったんだ。いつかあの人を越えて…けど間に合わなかった。俺はいつもそうだ。」

影次が再び下を向いた。影次の力強く拳を作っている手を見ると、先程ラータに手当てしてもらった包帯が赤く染まっていた。

「影次だったか。しばらくここにいろよ。どうせ住んでたところもその恩人さんの家に居候してたんだろ?」

影次が驚いたようにしてショウの目を見る。

「なんでしってんだよ!?」

「お前みたいなバカのことだ。そうしかない。」

「バカっていうな。」

影次が“バカ”という単語に反応した。

ショウはデタラメを言っただけだ。だがそれが的中した。こんなこと奇跡だ。本人は冷静さを装っているが、内心では驚き、ちょっと嬉しがっている。その証拠に机の陰で隠していた手でガッツポーズを小さくした。

「ここにいろ。飯も食わせてやるから。な? 地下室にお前の部屋を設けておくよ。ベッドもあるし冷蔵庫は共有だ。でも自分のおやつには名前書いとけよ。俺が食うかもだから。あと洗濯機も共有な。」

「勝手に話を進めんなよ!?」

影次が立ち上がって自分の荷物を持つ。

「俺は行くからな。じゃあな!」

影次がドアノブを掴んだ瞬間、外側からドアを開けられた。

「ショウ! 今日も活躍したそうじゃないか!」

黒人の男だった。

「おー! 黎兎さーん!」

黒崎(くろざき) 黎兎(れいと)はショウの隠れ家の近所に住んでいる。ショウがエンディアと戦うヒーローであることを知った日からサポートに徹してくれている。もちろんそのことは内緒にしており、ショウの良き理解者である。金欠で困ったときは彼がショウに手料理を振る舞ってくれる。年齢は34歳と、ショウとは10も離れているがとても仲が良い。

「黎兎さん、今日はどうしたの?」

「いやぁ? 活躍したことを聞いて何か豪華な料理でも振る舞ってやろうかなってな!」

「いいね! 最ッッ高!」

「だろぉお? ところでー、あの人誰?」

黎兎さんに影次とのやりとりを説明すると、なるほど、と頷いた。そして影次をしばらく見つめ、影次の背中をドンッと叩く。

「よし。じゃあショウもラータも、そしてエージ、お前も俺が面倒見てやるよ!」

そう言ってエージの肩を掴む。

「は…? エージ…?」

エージがその手をどかそうとするが、結構強く掴まれているのか全くどかない。それどころか動きもしない。

「エイジって呼ぶよりエージって呼んだ方が楽だろ? 雰囲気的によ。」

「少ししか違わねぇだろ! ちゃんとエイジで呼べよ!」

「気にすんなって! な、エージ!」

黎兎さんの手がエージの頭をがっちり掴み、そして激しく撫でる。もはや撫でるというより嫌がらせだ。

「うるせぇ! つか俺はここに住まねぇから!」

「住んじゃえよ。 ラータちゃん可愛いだろ? 一緒に寝れるぞ?」

耳元でボソッと黎兎さんが言うと、ずっと抗っていたエージの動きがピタリと止まった。そしてエージは薄目でラータを見る。

ラータはコーヒーを一口飲んでいた。そしてカップを置き、エージを鋭く見詰める。

「私たちは秘密裏に活動している。それをあなたは目撃した。ショウのミスでもありましたが、重大な秘密をあなたは見てしまった…。」

そして瞬く間にラータはエージの元に移動し、喉元にフォークを突きつけた。

「ショウがアーマーロイド装着者であることは国家機密事項です。あなたには秘密を守る義務がある。しかし私はあなたを信用できません。」

エージの額を冷や汗が伝うのが見えた。黎兎さんが自主的にエージからどけた。恐らくこの次に言う言葉を察したのだろう。

エージは目で黎兎さんに助けを求める。しかしラータの目が光ったことにより、視線を黎兎さんからラータに戻す。ラータはエージの喉元のフォークの先を喉に浅くめり込ませる。

「あなたを殺します。」

場の空気が一気に冷めた。その冷気の正体はラータが発する殺気だろう。

エージは堪らなく生唾を飲み込んだ。

「お……お世話になります…」



Android #2 バカと天才

1話の倍くらい長くなりましたが、いかがでしたか?まだ盛り上がる所までは長いですが、気長に待って頂けると幸いです。

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