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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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裏と味方

ショウ「moonのミユってあんな感じだったんだな。」

ラータ「ほぼライブの時と同じでしたね。」

ショウ「うん。…あ、てかあのダンベルバカなにやってんだ?」

ラータ「現れる気配がないですね?」

ラータが家を出たあと、エージは呑気にカップラーメンにお湯を注いでいた。

出来上がるのを待っている間、彼は5分のなかでランニングをして時間を潰すことにした。玄関のドアを開けると、遠くの方に見たことある人影を見つけた。黎兎だ。奥さんとサテルに行ったはずの彼が目の前にいた。エージは声をかけることにしたが、直後に黎兎が謎の板のような機械を取り出したのが見えた。エージはとっさに物陰へ隠れ、様子を伺うことにした。

黎兎はスーツのポケットから小さなクリスタルのようなものを取りだし、それを機械にはめた。

《コア・チェンジ! ルーグ!》

電子音声が鳴った。コアチェンジ…? 機械についてあるボタンを押すと、黎兎を黒い煙が覆った。数秒でそれが消えると、そこにいたのは__……。

「…嘘だろ…。…黎兎が…ルーグ……!?」

エージは目の前で起きたことに驚きを隠せずにいた。今までショウたちと一緒にいた男が一番の敵だったのだ。

たまらなくなってルーグのもとへ走る。

「ん? お前は確か、この前覚醒したばっかの…。」

「…………嘘だよな……?」

「……。」

「……なんとか言えよ!!」

生身でルーグの顔面に一発食らわせようとしたが、寸でのところで受け止められてしまった。

「エージ!? どうした!?」

キドラが彼の大声に驚いて家から出てくる。彼女はルーグがいることと、そいつに生身で戦おうとしているエージを見て驚く。

「キドラ! アームドだ!」

「…わかった…!」

青と紫の光の粒子に変化し、ルーグに腕を掴まれているエージを包む。

アームドが完了すると、掴まれている腕を払って反対側の手の拳で腹部を殴る。ルーグは堪らず掴んでいた腕を離し、後退する。

「んん…。やるな…。」

「何言ってんだよこの裏切りもんが!」

『エージ? 何言ってるんだ…?』

「こいつの正体は…黎兎だ…。目の前で変身したところを見た……!」

『は……!?』

エージが彼女に言うと、黎兎は隠す気を無くしたのか、目の部位がそれぞれ発光している仮面を外した。いつもは黒かった黎兎の瞳がエメラルド色に光っていた。

「とうとうバレちまったか。…別に殺しゃしねぇよ。ジクティアのやつにバラされても、俺に損害はない__。」

黎兎…いや、ルーグは手をヒラヒラと動かして余裕ぶる。

エージはそんな彼を睨んでファイティングポーズで構える。

「__ 1つだけ言っておこう。イスパードの正体は政府の役人だ。気を付けないと、後ろから刺されるぞ。…まぁこういうのは、“他のやつと雰囲気が違うやつ”に気を付けるべきだな。」

そう言い残してルーグは、煙を発生させて目の前から消えた。

エージは逃がすまいと、立ち上がる煙のなかに突進したが、彼が掴んだのは裏切り者の腕ではなくただの空気だった。

「……ッソ……! クッソ! クソォオオオオ!!!」

裏切りの怒りで頭がパンクしそうだ。エージは、ここまで怒りに満ちたことはかつてなかった。どうすることもできない怒りに満ちている。それのあまりに、彼の目が紅い光を放っていた。


「あのエンディア…イカか!」

現場についたショウが見る先にあったのは、頭から腰にかけてイカ被り物を被っている変なやつ…かつてないタイプだ。

『イカのような感じではなく、イカですね。』

前回のタコのような厄介な墨を吐かれては、また昏倒することを覚悟しなければなるまい。ショウは剣にも銃にもなる“優れた武器(開発者は自分)”を取りだし、構える。

グレードアップさせたために切れ味は抜群だ。今なら例えアルマジロや亀のような装甲を身に付けている厄介なやつなどが出てきたとしても容易に倒せるハズだ。

イカのエンディアは触手を急に伸ばして攻撃を仕掛けてきた。直線に来ることを予想して1歩分右に避け、伸びている触手を掴む。タコのときとは違ってヌルヌルしていない。そのまま触手を縮めてきたので剣を逆さに持って胸部にブッ刺すと、エンディアの短い声がした。

掴んでいた触手を離したと同時に剣を抜いき、そのまま銃の形態に変形させて何発も腹部に撃ち込む。

ショウが使っている武器の銃形態には2つのモードがある。1つは相手を気絶させるだけのモードで、それでは相手を射抜くことは不可能だ。弾丸を飛ばすのではなく、小さな衝撃波をそれのように飛ばす。威力は最大でいつものキックと比例する。もう1つは、殺傷モード。対ルーグ・イスパード専用だ。何十発も撃てば殺すことだって容易い。

イカのエンディアに撃ち込んでいるのは前者だ。

気絶したエンディアを運んでもらえるよう、政府に連絡しようとしたその時、足元の地面を弾丸が抉った。

急いでその場から離れ、物陰に隠れてから射線を辿ると、イスパードが建物の屋根で堂々と立っていた。

「イスパード…!?」

「今回は貴様らの終焉を告げに来た…! ルーグがサテルにいる同士たちに応援を要請した! もう貴様らは終わりだ!」

何故か彼は今、感情的になっている。

「死にたくなければ我々に抗い続けることだな! フッハッハッハッハァ!!」

そう言ったあと、鎧から煙が出てくるとみるみると自分の全身を包み、それが晴れる頃には姿は消えていた。

「なんだあいつ…?」

『今後の動きに警戒はしておいた方が良さそうですね。』

つけていた仮面を外すと、赤と青の光の粒子が散ってショウの目の前に集まり、それがラータになった。

政府に連絡を入れて一段落つくと、

「さ、帰りましょう。」

そう言って彼女はショウの手を握った。


地下にある部屋でショウとエージは二人でいた。

「ショウ、そういえばお前は“ジクティア”ってコードネームでやってんだろ?」

エージが腕立て伏せをしながらきいた。

「そうだけど? なに、文句ある?」

「俺にもつけてくれよ!」

一旦筋トレを中止させてその場に座り込み、ショウを見る。

ショウはまた何かを作っているようで、ずっとコンピューターの画面とにらめっこしながらキーボードを鳴らしていた。彼もそれを中止させてエージを見る。

「ダンベルでいいって言ったじゃん。」

「言ってねぇよ! もっとかっけーコードネーム付けろ!」

「お前は何がいいのよ?」

「“ドラゴンファイト”なんてどうだ!」

エージの予想外すぎたネームセンスにその場の空気が冷たくなった。

「…却下。」

「何でだよ!?」

「キドラの身にもなりなさいよ。キドラが可哀想でしょうが。」

「かっけーだろうが! ダンベルよりかは!」

「これだからバカは…。俺が真面目に命名してやるよ。」

「おう…。」

「その名も…“クレイ”だ。」

「クレイ…? どういう意味だ?」

「粘土。土。」

「やだわ!」

「いいから聞きなさいよ。俺は“勝利”と名高い戦士だ。お前は俺の勝利の礎となるんだよ。」

それを聞いたエージはついに立ち上がってショウがいる所へ向かう。いい加減にしろよ、というような表情だ。

「そして…、土は花の土台だろ? お前には平和という花の土台を築く戦士…つまり、勝利の後…未来を担う戦士ってことだ。」

「…悪くねぇな…。」

エージの顔が堪らずにやける。意味がある名前を付けられて少し嬉しいようだ。

半分ほどショウが雑に即興で考えただけであるともしらずに。

「あ、そうだ。イスパードの正体なんだけどよ。」

「え、バカのくせに分かったの?」

「一言余計だ。ルーグのやつが言ってた。政府の役員らしい。」

「政府の役員…覚えておく。さんきゅー。」

エージはイスパードの情報をショウに教えたが、次に黎兎のことを話すか迷っていた。


Android #17 裏と味方

ショウ「なんか知らない間に俺とラータが他の作品に出てるってほんと?」

ラータ「どうやらそのようですね?」


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