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アンドロイド  作者: 中川 はじめ
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高速戦と決めたこと

エージ「キドラ可愛いじゃねーか」

キドラ「な、なななんだよ!急に!?//」

エージ「初めて見たとき無愛想なやつとかって思ってたけどな(笑)」

キドラ「ば、ばかやろ…。//」

ショウ「なにイチャイチャしてんだおいこら。」

あの戦闘からというもの、キドラのエージの仲が深まっているとラータが言っていた。

言われてみれば二人でいることも多くなっているし、キドラの笑顔もよく見られるようになった。

エージが出掛ける際は何故かついていく。完全になついている。

「キドラー、なんか食う?」

「エージに任せる~。」

ソファーでゲームをしているキドラにカップラーメンにお湯を注いで持って行くエージを見たショウは、キドラの返却が三週間後にあることを思いだし、複雑な気持ちになった。キドラの中でのエージの存在というのは、いわゆる友達以上相棒未満といったところだろうか。

彼としてはキドラの主がエージであることを望むが、本人が以前から頑なに拒否しているために以降の無理強いは出来ない。

「ラーメン…」

「あ、わり…! つい癖でカップラーメンにしちまった…! なんか別のもん探してくる!」

「ううん、いいよ…! 食べる!」

「お、おぉ…! じゃあ俺も…!」

二人を後ろから眺めていたショウは、ほんとに仲の良い二人だなと染々思った。

一方、彼の相棒であるラータは静かにコーヒーを飲んでリラックスしていた。

あれはあれでおしとやかで可愛らしいとは思うが、話しかけてほしいものだとか思いつつ、紅茶を一口飲んで一息着いた。

平和だ。

テレビをつければ新しくリミアド市に大きな動物園が開園されたという内容のニュースが放送されていた。

可愛らしいパンダが笹を持って地面に寝転んでいる映像が流れた。

エンディアが現れなければこんなにも平和だったのか。

エアコンの涼しい風が心地よい。蝉が鳴くこの暑い時期の中、さすがにコートは羽織れないし着れない。半袖でいるショウをエージは珍しそうに見ていた。


スマホが音を出して着信を知らせる。

「エリアB-3にエンディアだ! ただちに向かってくれ!」

平和だった雰囲気を一気に崩壊させられた。ヘルメットを被ってバイクに股がり、ラータを乗せて走り出す。エージには乗り物がないのでタクシーで向かおうとするが、キドラが青紫色のオーラで翼を生成し、エージを運んだ。


エリアB-3では既に破壊の限りを尽くされていた。

到着して間もなくアームドしたショウが辺りを探る。上から声がして見上げると、キドラとエージの姿があったので、上から偵察してくれと要求すると、キドラが1度エージを降ろしてから一人で辺りを飛び回りはじめた。

「……あれ? ショウ、お前アームドしたとき仮面なんて付けてたか?」

「ん? そうそう。なんか最近イスパードやらルーグやら、戦闘兵器を使った“人”が多いからな…特定を防ぐために付けることにした。」

「ルーグはまぁともかくイスパード対策はもう遅くね?」

「うるっさいな。」

仮面を付けると、本当にヒーローのような見た目になることに喜びを隠せないショウはいつも以上にやる気に満ちていた。

「あ、それと、コードネームで呼べ。俺はジクティアだからな。」

「…あだ名?」

「だせー言い方するんじゃないよ。お前はそうだな…『バカ』、『ゴリラ』、『筋肉』、『筋肉バカゴリラ』、どれがいい?」

「全部悪口じゃねぇか! 最後のやつ全部のせだしよ!」

「……『ダンベル』でいいや。」

「はぁ!? どうしてそうなったんだよ!」

「あっそうだ。ほらよ。」

エージの質問を流してどこからか取り出した青色の大きめなナックルをエージに投げ渡す。

「なんだよこれ?」

「その名も、“ドラロクナックル”だ。前にも教えたろ? ここのボタンを押して思いきりこいつでぶん殴る。ちゃんとキドラの瓶の中身を付けてから使えよ。」

戦場だというのにいつもと変わらないようなやりとりをしていると、上空からキドラがエンディアを発見した知らせを受ける。ざっくりと方角を聞いてその場所へバイクで移動する。

現場に着くと、そこには、耳が長くて上前歯がちょっと出ているエンディアを発見した。

「兎か…素早そうだなぁ…。」

『実際私たちも速いですしね。』

「ハァ…また体力持ってかれそう。やるか!」

構えたとたんにエンディアが案の定すばしっこい動きで翻弄してくる。それに負けじと赤色のオーラで素早さを上げて応戦する。

跳んでいる最中にこちらへ飛び込んで膝蹴りを仕掛けようとして来た。

それを見切って両手のひらで受け止めてからそれを押し込んで退かす。そして左手で顔面にパンチを入れて、右手でもパンチを食らわせてやると、頭から全身が飛んでいった。

ショウは上手く着地してから、その地点から少し離れた所に落とされたエンディアへの距離を一気に詰め、上半身を起こし始めたエンディアの胸部に右足で蹴りを入れてやり、更に青色のオーラをそこに纏わせて力強く押し込んでぶっ飛ばす。

今度は上半身から飛んでいき、地面で2、3回ほど転がってから大人しくなる。

綺麗なフォームで着地したショウが相手を見ると、ゆっくり立ち上がる姿を確認できた。

再び高速移動して相手との距離を詰めるが、エンディアが高く飛び上がって背後で着地する。

「_あっ!」

ショウが後ろを取られたことに気付いて急いで止まるが、振り返る間も無く飛び蹴りされる。しかしラータの危険予測機能のお陰でとっさにガードをすることができた。

片足が地面に着いていなかったためにバランスを崩してしまったが、なんとかして踏みとどまろうとする。しかし、その隙を突かれてモロに腹を蹴られてしまい、大きな瓦礫に背中を強打する。

砂ぼこりが舞って咳き込む。ハッとして前を見ると、エンディアが勢いよくこちらに向かってきた。だが次の一瞬で目の前が青紫色に光る。手で光を遮ると、エンディアが転がっていくのが見えた。キドラが直接エンディアを殴ったのだ。

「うぉおりゃああああ!!」

横から突っ走ってきたエージが、早速ドラロクナックルで立ち上がったばっかりのエンディアに攻撃して結構高めにぶっ飛ばす。それを分かっていたキドラが翼を広げて先回りし、飛んできたエンディアに渾身のパンチを食らわせると、垂直に落ちて行った。エンディアが地面に叩きつけられて道路にヒビが入る。

「よっしゃー!!」

大きくガッツポーズをするエージとは反対に小さく同じポーズをするキドラ。もはや二人は…。

だがエンディアは立ち上がる。ショウも立ち上がり、エンディアが自分とは反対側にいたエージらを睨んでいた。しかしなにか様子が変だ。そんなことはどうでもいい。漉きだらけだったので、後ろから近付いて後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす。それに慣れてないショウがそのまま地面に落ちて短い声をあげた。

頭に直撃したようで、痛そうに頭を抑える。

ショウがチャンスだと思っていつもの技を決める。

見事にヒットし、先程と同じようにして押し込むように力をいれてやるとふっとんでいった。

ノックアウトだ。

いつもより早く決着を付けることができた。

「ふぅ…。さて…おいダンベル、政府に連絡を……あれ?」

最後に二人を確認した方を振り向くと、二人の姿は無かった。

『おかしいですね…。エージとキドラの気配を周辺では確認できません…。』

「先に帰ったのかな?」

『考えられません。アームドを解除してサーチ範囲を広くします。しばらくの間、ショウは休憩を。』



エージらは気付くと元々あった廃工場へ移動させられていた。

兎のエンディアを地面に叩き落として着地してガッツポーズした後で急に周りが煙たくなり、気が付くとそこにいたのだ。

移動させたのは、目の前にいるスパードだろう。

生身でちょっと強いだけの武器を持っただけのエージと、普通のアーマーロイドであるキドラにとって彼はまさに強敵である。

精一杯抵抗したが敵わず、エージはもはや立ち上がれない程のダメージを受けていた。キドラがエージを庇ったが、そんな彼女を容赦なくボコボコにし、今エージの目の前でイスパードに体を踏みにじられている。

「面倒になりそうなやつは今のうちに潰す…。“力を持ったこと”を悔いるがいい…。」

イスパードがエージにそう言ったあと、キドラへさらに体重をかけ、彼女を苦しめる。

「フッハッハッハ…。」

楽しそうにキドラを踏みにじる。抵抗もできずにされるがままのキドラがエージに手を伸ばし、口パクで「逃げろ」と確かに言った。

それを見ていたエージが悔しそうに歯を食い縛る。

「くそ…俺は…また…助けてやれないのか…!」

拳を強く握りしめる。

「師匠…俺は…『勝つために』鍛えてきた…。あんたに技術を教えられた…。俺は…そんなあんたに…恩返ししたかったのに…バケモンに負けちまった…。それであんたを失っちまった…!」

その手から血が流れ始めた。あの日の悔しい思いが今甦る。自分はなにもできなかったという絶望と、自分も死ぬのではないかという恐怖を思い出した。

「何が言いたいのか分からないが…終わりにしてやる。」

イスパードが持っていた銃の先がエージに向けられる。

「_ エージ!!」

やっとのことで出したキドラの悲痛の叫びが工場の中をこだまする。

「もう『負けねぇ』って誓ったのに…『下向かねぇ』って決めたのに…! 体が…動かねぇ…!」

立ち上がろうと腕や足に力を入れるがすぐに力が抜けてしまった。

もうだめか…そう思った。しかし、何かがエージの諦めを遮った。それは、ジクティアとして戦い続けるショウの姿だった。

彼は戦いに出掛けると、必ずボロボロになりながら家に戻ってくる。

病院に搬送されることもしばしばあった。それでも誰かのために戦い、挫けそうになっても、死にそうになっても戦い続けた。

「…へ…へへへ…! それじゃ…ダメだよな…! ショウ…!」

彼が何のために、そして何を目指して戦っているかなど分からない。でもそれで充分だと思っている。何故ならエージにとって彼こそがヒーローそのものだったからだ。

気絶していたショウを運んできたラータが、エージに彼が言っていたと教えた言葉がある。

《力を持つ人間が、力を持たない人間を助けなきゃいけない…。》

「“後悔するほどの力”があんなら“誰かを助けるために使えばいい”…。なんて…俺まで毒されちまった…。 …あいつが戦ってんのに…、寝ていられるかよ…!」

突然エージの目が青紫色に光り始めた。そして体を同じ色のオーラが包む。

「力があんなら…最後まで戦う…それがお前の言うヒーローなら…いいぜ…俺もなってやる…。」

光が強くなったのと同時にオーラが大きくなる。

それのせいか髪の毛が風に揺らいでいるように見える。

ボロボロで動けないはずなのに、ゆっくりと立ち上がった。

それは力ではなく、ヒーローを見ていただけで出来上がった勇気と決心、そして覚悟だけでできた。

「な、なに…!? くっ…死ね!」

ついにイスパードが発砲させるが、意図も簡単にそれをかわす。

「…ッ!?」

目の前のことに驚きを隠せないイスパードがまた何発も発砲させるがエージは難なくそれらをすべてかわした。

あの日の自分と同じ思いを誰かにさせたくない。怒りも憎しみも恐怖も絶望も嫌な感情だが、それが源となって覚醒した。

彼がキドラに目を合わせると、キドラにも同じような反応が現れたが、彼女は嫌そうに目を閉じて目線を外す。

「…やだ…契約したら…エージが…!」

片目をわずかに開けてエージを見る。

「構わねぇ。…戦うぞ。」

声が本気だ。ならばアーマーロイドとして、その闘志を殺すわけにはいかない。

もうここまで覚醒しているのなら、尚更だ。

「……分かった…。信じるよ…! 」

キドラの身を青色と黄色と紫の光が包み、それは粒子となって消えると、エージの方へ移動して彼を包む。

するとエージが苦しそうに頭を強くおさえ、両膝を地面に着ける。イスパードはその隙に銃を撃つが、全て跳ね返されてしまった。それはまるで弾丸自らが避けたかのような滑らかな動きだった。

『エージ、契約。』

『アーマーロイドとして、僕はエージに仕える。これから僕はあなたの従者。』

『そして僕とあなたの身は1つ。どちらかが消えれば残された方も消える。』

『文字通り、“僕はあなた”で“あなたは僕”になる。』

『それでもいい…?』

目の前に彼女がいるわけてもないのに彼女の声がする。契約…。そういえばショウやラータもそんなことを言っていたような気がした。そうか、それが…相棒…。答えはとうに決まっている。

強い意思でイスパードを睨む。

「当たり前だ…! 俺と共に戦え…!! キドラ!!」

『…あなたの覚悟、確かに聞き入れた。』

『約束…! 僕はこれからエージの従者…』

『いかなる危険が迫ろうとも…僕はあなたのそばにいるから!!』

「望む…ところだ!!」

ついに全身がまぶしい光に包まれ、それが収まるとそこには髪の色が青色で逆立った形になっており、どこか荒々しい姿をしたエージだった。

「なに…どうなっている…!?」

体を青と紫の2色のオーラが覆っている。バチバチと少量の電流も流れていた。

イスパードは今目の前で起きたことに理解が追い付いていけていない。

そんな彼をよそに、指をパキパキと鳴らして肩を回し、軽くジャンプしてからボクサーのファイティングポーズを取る。

「俺の力…いや、俺たちの力…! マジ最強だぞ!」

語彙力のない決め台詞を言って戦いに挑む。




Android #13 高速戦と決めたこと

エージ「俺らの力、マジ最強!!」

ショウ「なんだその決め台詞」

エージ「お前のよりはマシだろ!」

ショウ「ふ、ふん。…今度考え直してやるもんね!」

ラータ「何やってるんですか。」

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