冬冷
冷たい風の吹き抜ける雪のトンネルを潜った。暗がりを通ってきたので出口に差しかかると積もる白い氷の数々が反証して目がちかちか眩んだ。
すっかり純白色に染まった公園には誰もいない。
足跡ひとつなかった。
静かに佇むブランコには6センチほどの積雪があった。裸になった木の横にあるベンチに積もった雪を手袋で退けて、ゆっくり腰かける。
細かい雪がちらりと視界から降下していき、たまに頬や鼻が冷たくなるのを感じて鼻から呼吸をすると空気が凍ったように冷たかった。
君はまだいない
しんしんとした空気のなか静かに待機する少女の頬は鮮やかに色づいている
その手にはピンクのリボンのつけられた赤い箱が一つ握りしめられていた。
少女ははあと溜め息を一つついた。
それは白い空気になって冷たい空気にスッと溶けていく。
ふと離れたところからああ、早かったなという声がした。
緑色のマフラーに厚いコートを着た男の子が申し訳なさそうな顔をして走ってくる。
公園の一面の白い床に小さな足跡が二つ。
おそくなってごめんね
うん いいよ ところで、あの これ…
わあ ありがとう
少女は紅い頬を優しく綻ばせた。