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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
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そこにいるのであれば-6

 ターニングポイントという言葉がある。

 人生において多くの起点があるが、その中でも人生に大きく影響している起点のことだと俺は理解している。人間には多くの起点があるのだから、一つのことに拘らず、今まで歩んできた人生そのものを評価すべきだと思われる。


 だが、この言葉ほど俺の人生に当てはまる言葉も無いと考えられる。俺のターニングポイントは日本に来た事だ。得られた事も多いが、失った事の方が圧倒的に多い。


 祖国へ帰ることができない今、存在するものは全て敵だと思わなければいけない。一体いつ敵が襲ってくるかわからないからだ。


 それだけではなく、ゾンビという減ることのない天敵もいるのだから。


 いや、世界は広く無限の可能性を秘めている。もしかしたらゾンビを駆逐した地域もあるかもしれない。


 だからといって、今のこの危険な状況が改善されるわけではないが。


「俺は何を言っているんだ。そもそも日本へ来たのは俺の意志だろ。日本へ来た時点でそれは俺の責任だ。例え何が起きようとも、それを対処してみせてようやく一人前の大人だ。ぐちぐち何か文句を言っても何も改善しない。なら、行動して見せるのが大人だ。


 そう、泣き喚くことなら赤ん坊でもできるのだ。文句があるなら自分が行動して見せれば良い。


 そもそも、人類は歴史上行動して見せている。文句があるなら行動し、それが大勢へと発展して革命へ変わる。そんな歴史が多々あるんだ。


 だから行動してみせるのが、一番良い文句の伝え方なんだ。だが、俺の場合はどれだけ行動しようが伝わらない。普通の人間には理解できないんだ。


 そうは思わないか?」


 問いかける。銃口を向けながら、命を請うのを期待しながら問いかけるのだ。


 命を請えば殺す。解答を答えなくても殺す。

 絶望の色が見たいのだ。


「確かに、それが人類の歴史かもしれませんね。でも、あなたの行動は理解できますよ。あなたはその行動でしか伝えれない。私も同じです。


 あなたは神の子だから、そう言われて育ってきました。両親は私の事より宗教の事を愛しているのです。初めはその期待に応えていましたが、そのうち自分の存在意義が分からなくなりました。」


 銃口を向けながら、その言葉を聞く。

 地味な服装に薄い化粧。恐らく、こいつの両親はこいつを世間から遠ざけたのだろう。自分達の宗教のために。


 しかし、こいつはそれでも美しい。

 容姿的な意味ではなく、その生き様が美しいのだ。いや、語弊が発生している。確かに容姿も美しいが、こいつは俺と同じ理解されない生き方をしている。その生き様が同類の俺には美しく見えるだけだ。


「それでも、私にはこれしかないですから、神様を信じて生きていくことしかできないです。そんな神様はあなたが自分の行いを悔いながら許しを請えば、きっと許してくれます。そんな気持ちがありますから、私を撃っても構わないですよ。私はあなたが神の下へ帰ってくることを願います。」


 狂気。

 他人から見ればそれは狂気だろう。自分で選択する事ができない頃から宗教を強制され、選択できるようになった頃にはそれ以外の選択ができないように教育されている。


 こいつは十分狂っている。


 だから、俺が今殺しても何も愉しくない。嬉しくない。喜びがない。そもそもこいつは、神のためなら殺されることすら“本望”だから。


 俺は静かに銃をしまい、背を向ける。

 殺すことでしか生きられない哀れな俺と神でしか生きられない哀れな女、お似合いじゃねぇか。


「お前は殺さない、殺したくない、殺せない。狂気に満ち溢れた俺が狂気に満ち溢れたお前を殺しても何も生まない。そこにはただ、虚しさだけが残るだけだ。


 それに、文句があるなら行動で示せ。俺が言った言葉だ。俺はお前の神が嫌いだ。殺したい。だからお前と距離を取る。


 じゃあな、次会った時は人間になっていろよ。」


「あなたも、寂しい鬼ではなく人間になれていると良いですね。では、お元気で。」


 昔ながらの友人のように俺たちは別れる。

 しかし、その胸に秘めた想いは、殺意。

 人間のあいつを殺したいという衝動であった。


思っていること全部ぶち込んでみました。

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