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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
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そこにいるのであれば-4

「さて、結果から言ってしまえばそこにいた人物は俺を除いて皆死んでしまったわけだ。」


 物語なんて結果だけを見れば、「なんだ、そんなことか。」と思わずにはいられない。過程がどれだけ素晴らしい作品であっても、そこだけは譲れない。


「最も、その過程に意味を持たせることが人間であり、その過程を尊重してきたのが歴史だ。過去から学ぶとはよく言ったものさ。」


 人類の歴史なんて結果だけを見れば、争いに争いを続けてきた生物だ。それはローマや中華、インドにアメリカと例外はない。未だ嘗て争わずして歴史に名を残した人類はいない。


 太古は神との争い、もしくは悪魔かもしれない。だが、多くの歴史が神や悪魔といった空想上の生き物と争った経験があるのではないか。


 次は村や村、民族や民族といった人同士の争いが中心となっていく。現実的な物になっただけ進歩したと言っても良いのかもしれない。


 人同士の争いを経て、人々は集まり、即ち国々の争いへと進化させていった。そこには利益を求めた行動もあったのかもしれない。もしかしたら、国の繁栄と存続をかけて争っていた国々が多い可能性も捨てきれない。


 その後、国境さえも越えた思想を基に、集団を作り出す。それは資本主義かもしれなければ、社会主義の可能性もある。人々は思想毎に集い、敵対する思想に対し時には激しく口論し、時には戦争という武力による解決を求めた。


 だが、多くの歴史が争いの結果を生んでいるのは、歴史そのものが証明している。人間は争わずして生きられない生物なのだ。


 しかし、その過程に意味を求めてみると途端に意味が変わってくる。そもそも、意味なんて後付けで済む事が多いのだ。


「だからと言って、結果だけを捉えてしまえば、物語が破綻してしまう。だから俺は、見るも無惨に散っていった命を思い出すことにするのだ。そう、俺が皆殺しにしたという結果に対して、どんな意味を後付けできるのか知るために。」




 ––––––––




 かつやと呼ばれていた男が、りゅうとと呼ばれていた男のゾンビに噛まれたであろう二の腕を止血する。その間、泣き喚いていた女は、ただ見ているだけ。典型的な邪魔な存在である。


 人命を救うという時において、最も邪魔な者はその行為を否定する者ではない。その行為を肯定もしなければ否定もしない、所謂野次馬が最も邪魔なのだ。


 なぜなら、人命行為を肯定している人物であればその人命行為に協力するからである。逆に否定的な人物は、その場から立ち去るからだ。では、どちらでもない者はどうだろうか。


 彼らはただ見ているだけ。そんな出来事が起きているのかという客観視しかしない。場合によっては、救急車の進行を妨害するということすらする。全くもって邪魔である。


 人命行為を妨害する存在もいるかもしれないが、少なくとも理由もなく妨害する人物はほぼいない。よって、傍観者が最も邪魔なのだ。


「おい、そこの女。ぎゃあぎゃあ喚いき散らしておいてお前はそこの男を助けないのか?なんで見ているだけなんだ?」


「だ、だって!私は女だから何もできないから!」


「何もできないだと?本当にそう思っているのか?少なくとも、俺とそこにいる彼がゾンビ共を退治している間に止血程度ならできたはずだろ。それをただ助けてと喚き散らすことしかしてなかったわけだが、そもそもその男を助ける気があるのか疑問になる。本当に助けたいなら、助けを求めながらも必死になるはずだろう?お前は、その男が"死んでもいい"と思っていたわけだ。屑だな。」


 俺は言いたい事を言葉にし、相手に反論の余地も与えない自分のリズムでこの女を否定していく。


「それに、本当にその男を生かしていたかったなら、そこの彼を身代わりにすれば良かっただろう。いや、その男すら貴様にとってはただの身代わりだったのかもしれないな。」


 俺の発言に女は違うとだけ反論するが、その言葉に力はない。そして、その言葉を聞いて黙っていられない人物がここにはいる。


「おい。今の言葉は本当か。俺の親友を身代わりだと?ふざけるなよ、本当の事を言えよ。本当の事を言えば命だけは助けてやる。さあ、早く言え!早く言えよ!!!!」


 親友を身代わり呼ばわりされた男は怒りに任せ、女へ銃口を向ける。女が、「その…あ!」など口籠っていると、彼は上空へ一発だけ発砲した。


 その光景を見て、笑わずにはいられない。


「さあ!本当の事を言え!!!!」


「う、後ろ…後ろよ!!!」


 本当に笑わずにはいられないなあ。

 この世界は本当に愉しい。


「あ!?後ろにはりゅうとがいるに……ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 そう、あろう事か彼は親友に噛まれてしまったのだ。


 その悍ましい光景に女は言葉にならない音を発する。

 しかし、まだ足りない。まだまだ愉しくできる。


 懐から取り出したリボルバー(S&W M500)の銃口を女の太腿へと狙いを定め、一発、発砲する。


 その一発で女は転倒するが、無事なもう片方の脚も撃ち抜く。その悲鳴は今日聞いた中で一番大きく、一番響き渡るものであった。


「運が良ければ生き残れるだろう。別にお前がこの哀れな男達を身代わりだと思っていようがいまいが、俺には関係ない。むしろ、あの男がお前に気を取られることが一番の目的だったからなァ。」


 ニヒリ、と悪魔的な笑みを浮かべやる。それが女に対してどんな感情を抱かせるか考えるだけで、より興奮する。


「くそ!くそ!くそ!くそ!ふざけやがって!わたしを、わたしをそんな風に見るなああああああああ!!!」


 そんな悲鳴染みた声を聞き、意志を尊重するべく距離を取る。


 背後から、ゾンビに襲われているであろう女の断末魔が聞こえてくる。この瞬間が本当に愉しい。


「ああ、この前よりずっと愉しめた。感謝しよう。感謝の気持ちを込めて、貴様らゾンビを抹消してやる。」


 二発の銃声と一閃。

 これが、その場で起きた最後の光景である。

本当は男性をイジメてあげようと思ってました。

ですが、男性の醜い姿よりも女性の虐げられた姿の方が役得かなと思い、こちらに変えました。



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