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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
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そこにいるのであれば-3

 バイクを走らせる。

 背中には日本刀。そして日本刀をクロスするように背中にかけられたショットガン。このデザインが大好きだ。


 実は壁の内側に住んでいない人は今でも大勢いる。それは、東の壁が権力などに溺れ醜い世界へと変貌したというのを風の噂で聞くからだ。かと言って西の壁に行くには距離がありすぎる。


 こういった人々は、武器と簡易な罠で自衛しているのだ。そこに醜い世界は存在しない、あるのは切磋琢磨する人々と生きる事への感謝、そして住人同士の友情である。


 こういった人々から多少の食料を貰うことも多い。彼らは壁の外で生きる事の厳しさを知っているのだ。故に協力的である。日本の復興を願って。


「そんな事起こるはずもないのに。」


 この世界は狂気に満ち溢れている。人を騙して生き延びる事が絶対悪か、と問われれば多くの人々は場合によると答える。ゾンビという人ならざる者から受けた攻撃は、人々の精神に最もダメージを与えていた。


 生きる事こそ美しい。生きる為には仕方ない。人なんて所詮は自分が可愛いだけの生き物なのだ。他人の事を考えることなど、本質的には不可能なのである。


 それを率先して行っている俺は、一体何になるのだろうか。


 そんな疑問をぶつけるようにゾンビを轢く。足をやられていた辺り、人間と戦っていたのかもしれない。こんなのでも、生前は自分と変わらず息をして、社会に出て働いていたのかもしれない。


 関係ないと言えばそれでおしまいだ。




 そこから三十分程バイクを走らせていると、銃声が聞こえてきた。それと同時に怒鳴り声に近い声と悲鳴のような金切り声。面白いことにでもなってるのかもしれない。


 そんな野次馬精神で近付くことを決断する。いざとなればこちらも応戦すればいいのさ。


 音の発生源へ近付くと、一人の男がゾンビに噛まれたような状態で血を流しながら倒れており、もう一人の男は銃でゾンビに対して発砲。女性はひたすら悲鳴を上げるだけという三人組がいた。


 いや、正確にはすでに二人なのかもしれないが。


 発砲している男が、後ろから近付くゾンビに気付いていない様子だったので、仕方なく援護することに決めた。


「獲物は自分の目の前にしかいないと思うな、背後にも気を配れ。できないなら、壁の外へ出てくるな。」


 男は驚きながらも、「あ、ああ。すまない。助かった、ありがとう。」と答えていた。妙に銃に慣れている感覚がある。


「俺も援護しよう、そこの女も守ればいいのだろう?一体一体を確実に仕留めろ。一体でも見逃せば先程のような醜態を晒すぞ。」


「慣れてるな、だが助言は受け止めておく。すまないな、本当に助かった。」


 右に三体、左に一体。俺は懐からリボルバー(S&W M500)を取り出し、右の三体に対して二発を撃つ。射線上へ並んでいた二体は共に撃ち抜かれ、もう一体も頭を撃ち抜かれる。


 左の一体に対しては日本刀を抜き、一閃。

 首を一つ落とした。


 男の方も上手くゾンビの頭を撃ち抜いていたようだった。一般人にしては銃の扱いに手慣れている。もしかしたら、人を何人か殺しているのだろうか。


 クフッ、心の中で思わずそんな笑みを溢す。


「りゅうと!!ねえ!りゅうと!!目を!目を開けて!!りゅうと!いやああああああああああ!!!」


 うるさいなあ。思わず日本刀と向けそうになるが、仲間がいるなら殺すべきではないと自分に言い聞かせ、自分を落ち着ける。


「っは!りゅうと!止血しなくちゃ!」


「かつや!りゅうとを!りゅうとを助けて!!」


「やれるだけやる!ちょっとどいてろ!」


 倒れている仲間へ向かおうとした男を、俺は辞めるよう制す。もう手遅れであることを察しろと言わんばかりに。


「おい、さっきは助けて貰ったがその行動は許さんぞ。」


「そいつ噛まれたんだろ?ならどうして早く殺さない。もうすでに手遅れだぞ。ゾンビに噛まれれば遅かれ早かれゾンビになる。ゾンビになって人間を襲うようになるくらいなら、人間のまま殺してやるべきだろ。そんなことも分からないのか?」


 崩壊したこの世界での掟である。

 この掟を破っては、碌な目に遭わない。


「くっ…知ってるよ!知ってるさ!だがよ!そいつは俺の親友で、こいつの彼氏なんだぞ!俺なんかより生きるべきなんだ!」


 その言葉に、「このゴミ屑共が、揃いも揃って人類に仇為すつもりなのか!」と叫びたくなった。が、耐える。知り合ったばかりのこいつらの行動を指示する程の権力は俺には無い。






 それに、元々全員殺すつもりだ。


 じゃあ行けよと答え、かつやと呼ばれた男が通り過ぎたところで笑み浮かべる。その笑みは第三者から見れば悪魔のような笑みであった。

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