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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
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Mein Name ist einsamkeit

 日本の某所。

 死の街(ゾンビシティ)とも呼ばれることのあるこの街で、ある出来事が起きていた。それはあってはならない現象。異常である。


 死の街(ゾンビシティ)とも呼ばれているこの街だが、その名前の由縁たるゾンビが見当たらない。創作物に登場する陽の光や十字架といったものが全く通じないゾンビ達が全く見当たらないのだ。


 この現象を異常と言わずしてなんと呼べば良いのだろうか。


 その現象を引き起こしているのは一つ集団。武装をしていながら、飛び道具よりも剣や槍といった時代遅れ武器を巧みに操る集団。


 その中心にいる人物は刀を帯刀してはいるものの、使っている形跡が見られない。異常現象を起こすのは、異常な者たちが原因である。そんな事を彷彿させる集団である。


 一人一人が武術の達人であり、武術を使ってこなければ反抗する意思すらない。そもそも、人間にしかできない武術ならではの勝負。そんな事ができないゾンビ相手に武術の達人たちが遅れるはずがない。


「こんな雑魚にやられるとは、日本とはここまで堕落した国だったのだな。」


 無手でゾンビを殲滅している金髪の男。

 白人であり、とても大柄な体型である。その身体は、筋肉によってムキムキであり、ゴリゴリである。ゴリラと戦っても勝てそうである。というより、彼はゴリラの進化系ではないだろうか。


「やはり、資本主義とは自堕落な国民を大量に生み出す時代遅れの狂った思想なのだな。皆もそうとは思わないか?」


 彼が全員に尋ねると、反論する者はなく、全員が彼の意見に同意した。


「こんな腐った国家を作り上げる資本主義や自由主義はさっさと潰してしまいましょう!」

「大佐!我々にはできます!やってやりましょう!」

「我々が偉大な革命の音を鳴らせましょう!」


 彼ら以外がいればこう言ったに違いない。狂っている。

 そう、彼らは狂っているように見える。


 だが、彼らは決して狂っているわけではない。

 何故なら、彼らの思想は一時は世界の半分を支配した思想であるからだ。そして、その思想を今でも正しいと思っている。


 つまり、彼らは資本主義社会で生きてきた事がないのである。

 いや、もしくは生きてきたからこそ資本主義社会を下等な社会と言っているのかもしれない。


「いや、同志より受けた命令は日本で革命の音を鳴らす事ではない。いずれは資本主義という狂った思想から救出してやらねばならぬが、今ではない。それよりも成せばならぬ事がある。まずはそれを優先しよう。」


 彼らは一体何者なのだろうか。


「あれですか。」

「本当にやるのですか?」

「それより革命の方が良いのではないでしょうか?」


 リーダーに付き従う彼らは、腕っ節だけではなく頭の回転も速いのかもしれない。今の日本政府が倒れたと同等の状態で、一人一人が共に協力し、ゾンビから国を奪還しようと言い出せば恐らく成功するだろう。ある一定までは。


「今は我々の尊敬する共産主義が活動拠点とする場所が必要なのだ。確かに我々の思想は今の日本では受け入れられよう。しかし、我々自体に力が無ければ、彼らはいつか我々を裏切る。資本主義とはそういうものなのだ。」


 一体誰から命じられたのか。

 いや、そもそも彼らは誰なのであろうか。


 資本主義を怨んでいるような口振りや素振り、共産主義を頂点とする言い方。恐らくは共産主義を目指そうとする国からやってきたのだろう。だが、どこから?


 共産主義を目指すために努力した国は今はない。

 共産主義とは、無政府状態でありながら人々が平等で誰もが幸せな状態なのである。社会主義とは共産主義に至るための通過点に過ぎず、ソ連式社会主義とは、ソビエトが共産主義へと至るための第一段階として用いた社会主義なのである。


「ボリシェヴィキロシアは失敗だ。あれは社会主義の格好をした独裁体制だ。ナチスとなんら変わらない。真に共産主義へと至るには、国家という枠組みに囚われているのがいけないのだ。そもそも、我々の……む。」


「どうしました。」

「同志、何か問題が?」


「そこで聴いている輩、出てこい。別に取って食うわけではない。むしろ私がずっと気付かないほどの技術。素晴らしい!」


 屋根の上からひょっこりと顔を出す男がいた。

 一度見れば忘れられぬ、強者を求める目。


 そう、そこには強者との戦いを誰よりも望むかつての支配者がいた。


「別にあんたらの事が知りたくて聴いたわけじゃないからな。俺はここで寝ていたらあんたらが勝手に会話していたんだ。それを「お前は知りすぎた(理不尽)」とか言って殺すのはなしな。」


 そう言って彼は敵意、闘気、殺気、全てを放出した。

 その行動は逆らったら殺すと言っているようなものであった。そして、共産主義者たちが咄嗟に取った行動は迎撃態勢。もし、この中で戦闘態勢を構えなかった人物がいれば、先ほどの殺気などを感じられなかった弱者。若しくは、構える必要がないと判断する程の強者つわもの


「皆の者、あいつには勝てんよ。全員で掛かれば恐らく倒せるだろう。しかし、それは武を穢す行為。真の武人であれば決闘あるのみ。」


 その言葉に、多くの人間が同意し構えを解く。一人の例外を除いて。


「決闘?武を穢す?笑わせる。そんなものありはしない。この世にそんな言葉が通じる筈がない。弱肉強食の世界なんだ、この世界は。そんな甘ったれた言葉を聞く事があるとは思いもしなかったぞ。」





「貴様ら全員、ここで殺してやる。」





「|Mein Name ist 《我が名は》ーーー」





「Einsamkeit」




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