街の中で
俺との思想が相容れず、とても激しい言い争いをした俺と山城であったが、今は一時的に休戦としていた。
神の道へ進む事を決めた俺だが、実情はまだまだ足りないとこだらけである。元々俺は軍人として生きており、戦場で何人もの命を屠ってきた暗殺者でもある。
こんな暗殺者が神の道へと進むには重ねた罪が些か以上に大きい気はするが、彼女のような素敵な人の隣へ行ける可能性があるのであればそれに賭ける。それが那由多の彼方であろうとも。
そして、山城は俺との思想は相容れなかったが、実力は本物であった。
彼の本領は政治能力、この街には大体百世帯程度の人々が住んでいるのだが、防衛能力はどうなっているのか不思議に思うだろう。ましてや、この街の南側には多くのゾンビが蔓延る死の街がある。防衛能力が高くなければ街が存続することすら難しい。
その防衛を可能にしたのが彼だ。
相手はならず者。この街の防衛を彼らに傭兵としてお願いしたところ、お金を要求された。それも三十年分としての要求であった。利息も崩壊前では考えられない要求だった。
しかし、相手がならず者であればこちらは頭の回る実力者。
未来の価値を現在割引価値へと戻す割引計算を彼らの目の前で行い、三十年分どころか全部合わせても十年分程しかない額を示し、「あなた達が示した金額を現在の価値に戻すとこの程度しかありません。この程度のお金と未来、つまりあなた達も安全に住まう事のできる場所のどちらが欲しいですか?」と言い放ったらしい。
一触即発。
そんな空気を破ったのは当時のならず者たちのリーダー。
山城の頭のキレを見事と褒め、ならず者たちの未来を想い、提案を呑んだらしい。しかし彼は、自分へのケジメをつけるとの事で街には住んでいないらしい。
街から少し離れた小屋で、共に着いてきた馬鹿者たちの面倒を見ながら暮らしていると聞いた。
山城の手腕は褒めるしかない。
それどころか、ならず者相手に立ち向かう事のできる勇気は誉め称えるに値する行為である。
「だからこそ、思想で相容れないのだろう。」
彼は現実の見れる現実主義者、自分の行動にも意味を持たせなければ心が折れてしまう。恐らく、彼の殺人はそういった意味が含まれているだろう。
崩壊前の日本であれば、多くの場所で活躍できたろうに。なんとも言えない気持ちが胸の底から湧き上がってくる。
この気持ちを言葉に変えるにはどうすればいいのだろうか。
足を進めながらも考えていたが、上げた右足を前に出さずに戻す。
そして、罠が仕掛けてあることに気付く。
「やるせないなぁ。」
保険として帯刀していた事が結果的にこんな事になった。とは考え難いが、少なくとも警戒は解いてくれたはずだ。
罠を避けて通ろうとした瞬間、紐のようなものに足を引っ掛け、カラカラと音が鳴り響く。日本ならではの罠であり、名前があったのだが思い出せない。
無視して一歩を踏み出そうとしたが、足を引っ込める。なぜなら、俺が足を出した場所に銃弾が撃ち込まれているからだ。俺が気付かずに足を出していたら大きな負傷をしていただろう。明らかに警戒されている。
「はぁ……俺は無害だ。もし疑うのであれば武器を棄て無力になろう。」
俺はそう宣言すると、帯刀していた刀を自分の前に置き、その場に座り込む。
相手がどう動くかある程度予測しなければならない。今の俺を見ていきなり攻撃してくるような事はないだろう。そう信じたい。
今の俺をすぐに攻撃してくるような奴らなら、足を狙った攻撃ではなく、頭を狙った筈だから。
正座をして座っていると、目の前に顔を隠した全身タイツが現れる。
見た目は凹凸のある身体をしているので、恐らく女性だと思われる。
「何をしに来た。」
「それを知るのはお前ではない。お前みたいな奴では話にならないからさっさと通せ。」
ならず者の元リーダー。
俺の読みが正しければかなりの大物なはずだ。
「さて、お前はどうする?
どんな行動をする?」




