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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
20/32

出会ったのは-4

 サリーと一緒に家に戻ると、玲奈が食事を作って待っていた。温かそうなスープは、見るだけで涎が溢れそうな見た目と同時に食欲をそそる匂いがしていた。


 だが、なぜ俺にここまでしてくれるのだろうか。

 俺はただ死にかけていただけの人間であり、こいつらとは一切関わりがなかったはず。それだけではなく、玲奈に至っては俺が一度銃口を向けた相手だ。


 普通なら、俺は殺されていてもおかしくない。

 もしくは、その判断すらできないのかもしれないが。そうだとするなら、最高に狂っている。言葉にするのも烏滸がましい程の狂気である。


 そんなことを考えている時に玲奈に話しかけられた。


「あ、サリー、田中さんお帰りなさい。外は寒かったと思うので、温まるものをと考えてスープを作りました。ほら、サリーは山城やましろくんを呼んできて!」


 サリーはそれに応えるように別の部屋へと歩いていった。どうやら俺を助けたのは俺以外にも似たような人物がいたかららしい。


「お前ら二人だけじゃなかったんだな。」


「はい、二人だけだとやはり大変でして。といっても山城さんとの出会い方は田中さんとそこまで大差ないですよ。彼も私が無理言って助けたので。」


 俺と似たような境遇。

 興味を持たずにはいられなかった。一体どんなやつなのだろうか。

 どんな人生を歩み、どんな罪を犯し、どんな出会いがあったのだろうか。


 そんな事を考えていると、話し声が聞こえてきた。


「サリー、君はもう少し大人しい女性になるべきだ。いつまでも騒がしいと結婚できないぞ。ああ、君が一生独身でいるというなら別に構わないよ。きっと寂しい人生だろうなあ!」


「う、うるさいわね!私はきっと素敵な男性に出会えるはずよ!それにあんたみたいなやつに言われたくない!ばーか!」


 そんな会話をしながらやってきたのは、サリーと杖を使って歩く若い男性であった。年齢は二十代後半だろうと思えたが、身体は細く筋肉よりも皮や骨だけのような見た目である。


 俺とは対照的な不健康な身体である。筋トレなど何年もやってないのが分かった。しかし、目が合った瞬間にお互いが理解した。

 人を殺した事があるか否か。


 経験のある人物にしか分からないが、人を殺した事のある人間というのは目が濁っているのだ。真人間でしか発する事ができない光を失っている。その濁った目を目の前の男はしていたのだ。


「サリー、玲奈。この部屋から出ていってくれ。彼と二人で話し合いたい。」


 先ほどまで冗談を言っていた彼とは思えない程の殺気を感じた。

 だが、その判断は正しいと思われる。


「ちょ、山城さん!いきなりどうしたって言うの!?彼はまだ病み上がりなんだから気を遣ってあげないと!」


「気を遣う?サリー、君は正気かい。いや、そんなことはこの際どうだっていい。いいからこの部屋から出ていってくれ!!」


 山城と呼ばれていた男が怒鳴ると、その声に怯えたサリーを玲奈が落ち着かせながら隣の部屋へと向かっていった。玲奈は何も発していなかったが、恐らく山城が何をしたいのか理解したのだろう。


 バタンという扉の閉まる音が聞こえ、どちらも何も発さず沈黙が続いた。


 先ほどからずっと続いている殺気だが、殺気を浴び慣れている俺からすればまだまだといったところである。


「夕食前に悪い気を持ったらすまない。だが、君と同じ空間にいるのは耐えれない。出ていってくれないか、この家から。」


 唐突にそんな要求を求められた。

 反論させる気はなさそうである。当たり前と言えば当たり前なのであるが。そもそも、玲奈やサリーが親しく接しすぎなのである。


「俺は構わないが、貴様も同類なんだろう。彼女たちの安全を考えるなら貴様も出て行くべきなのではないか。いや、そんな事を考えられる脳がないのか。さて、貴様は一体何人を殺した?」


「僕は、確かに妻を殺めてしまった。だが、そこには誰にも譲れないどうしようもない理由があった。だが、君は違うんだろう?別に殺す相手は誰でも構わなかったんだろう?」


「理由があった?はっ、笑わせる。理由の有無に関わらず、人を殺した時点で貴様は俺と同類だ。その事実を受け入れられないお前は、子供が駄々を捏ねているのと変わらない。糞餓鬼、お前はその大罪を背負って尚、事実を受け入れないつもりか?」


 自らの罪を意識しているか否か、これは大きい。

 なぜなら、自らの罪意識していれば自ずと行動が制限されるからである。


「だから、僕は仕方ない理由があったと言ってるだろ!!ふざけてるのか!!!!」


 ふざけてるのはお前だと思わずにはいられなかった。


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