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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
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そこにいるのであれば

  2019年、世界は宣戦布告をされた。曰く、敵は補給を必要としない。敵は死の概念がない。敵は増殖していく。敵は、昨日の味方、友である。そう、やつらは不死身の肉体を持った生物、ゾンビである。


  各国は奮闘した。ある国は自慢の戦車を使った。ある国は物量で押し通した。ある国は高い技術を持った兵器を駆使した。しかし、結果には繋がらなかった。


 理由も判明していないが、やつらはいつの間にか隣の戦友を仲間へと引き込み、遂には休息の必要としない攻勢。今まで人類の戦ったことのないジャンルであった。そこには、戦術を根底から覆す事実ばかりが叩きつけられ、人類は研いできた刃を浴びせることができなかった。我々の技術は、あくまでも対人技術であるのだ。


 人に対して有効な攻撃が人ならざる者に対して有効である証拠など、どこにもありはしない。それが世界の答えであり、真実であった。


 しかし、人類もただ衰退していくだけではなかった。人ならざる者達が侵入できない壁を作り出し、その内部で農作物を作り、ゾンビに対して有効な一撃を浴びせるため、各国と連絡を取りながら機を待ち続けていた。


 だが、この世には常理に従えないどうしようもない者達が存在している。数多の人々が忌諱する行動を平然とするどうしようもない者達が、僅かながら存在しているのだ。


 その者達を人々は様々な名で呼ぶ。サイコパス、キチガイ、正気の沙汰など様々な名が付けられている。


 この物語の主人公は、人々から恐れられる、そんな人ならざる者に近い人間の話である。



 ––––––––



「た、助けてくれ!頼む!そこのあんた!助けてくれ!!」


 家々に火が着き、運良く生き残ったと思われる男が倒れてきた木材の下敷きになり、助けを求めている。その光景を俺は見ていた。


 助けを求められていることは理解している。そして、哀れな男に手を差し伸べる能力があることも理解している。


 だが、助けない、敢えて助けない、何度求められようと助けない、意地でも助けない。助けない理由なんて存在しない。


 そもそも、理由といったら助ける理由がどこに存在するのであろうか。この哀れな男を助けて、俺は一攫千金を手に入れることができるのか、あり得ない。そんな金があるなら、ボディーガードの数人くらい雇う筈だ。


 ゾンビが蔓延る世界で金持ちがボディーガードを付けずに壁の外を歩き回るとは、想定できる筈がない。よって、この哀れな男は無一文に近いと判断する。


 哀れな男に向かって、愉しいか、とだけ呟いた。


「あ、あああ、悪魔だ!!貴様は悪魔のような人間だ!畜生!!俺はこんなところで死にたくない!ゾンビなんかに食われてやつらの仲間入りするくらいなら、自殺した方がマシだ!!!」


 ほう、と口から思わず零れた。

 つまり、この哀れな男が今一番欲しているのは死であるらしい。そして残念なことに、俺にはこの男に死を与えてやることはできるのだ。


 背中にかけた日本刀を抜く。そして、刃を首元へ近づけ、解釈してやるとだけ呟いた。哀れな男の絶望に染まった目を見て、思わず笑みが溢れてしまう。


 耳を塞ぎたくなるような汚い悲鳴を上げる男。ああ、愉しい。こんな世界を作ってくれた神様はきっと"良い性格"をしているんだろうな。と思わず感じてしまう。


「さて、ゾンビが寄ってくる前に撤退するか。想定以上に楽しめたからな、記憶の片隅にでも置いといてやるか。」


 ハーレータイプのバイクに跨り、燃え上がる村を背に走り出す。自分が屑なのは理解している。しかし、そう産まれてしまったのだから、仕方のないことだと割り切るべきではないか、なんてくだらないことを考えられずにはいられない。


 ああ、神はあまりに罪深い。

はじめまして。

これから細々と更新させていただきます。

読んでいただければ幸いです。

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