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クズですが、よろしくお願いします  作者: あきちゃお
第1部 馳け廻る日々
19/32

出会ったのは-3

「あの、田中さん?なんでこんなところで寝てるんですか?風邪引きますから戻りましょうよ。」


 顔を上げると、空は赤みを帯びていた。家々に明かりが灯り始めており、夜は近いことを教えてくれた。

 そして、この子は誰だろうか。何故、俺の名前を知っているのだろうか。


「あのー、すごく聞きにくいんですけどもしかして名前忘れちゃいました?」


「不必要な事は即刻頭から忘却することにしているので、貴方の事は存じておりません。どちら様でしょうか。」


 思い出しつつあるが、気にせずに問いかける。

 確か名前はポニーだった気がする。


「ひどっ!?

 サリーです!サリー・ユーストファ!なんで忘れちゃうんですか!一応命の恩人ですよ!」


 どうやら本当に忘れていたようだ。俺にとって命の恩人でも興味がなければ忘れてしまうようだ。恐るべし。


「じゃあ、玲奈れいなのことも忘れてます?」


仲原なかはら 玲奈れいなだろう?

 命の恩人の事を忘れるわけじゃないか。いや、忘れたくとも忘れられないといった感じかな。ん?どうしたんだ。何か言いたいなら言った方がいいぞ。」


 宗教しか生きる術を知らない女性として知っている。もし、女性からモテモテの男性ならすっとぼけるのだろうが、生憎と俺はモテた事はないし、モテたいとも思っていないので無視する。


「いいです、田中さんがそういう人間なんだって思っておきます。ばーか!ほら、帰りますよ。」


 歩き出したサリーを追うように「ああ。」と一声かけてから歩き始める。だが、そこで足を止める。


「どうしました?田中さん。何かありました?」


 サリーは金髪で髪型はミディアムである。北欧の人の顔立ちをしており、あまり日本人らしくない。スラッとしているが、出るところはきちんと出ており、顔もどこへ行っても恥ずかしくない綺麗な顔をしている。

 十人いれば八人は見惚れるだろう。


 その素敵な女性に問いかける。


「サリーはさ、もし、俺がこれまで人をたくさん殺してきた殺人鬼だとしたらどうする?」


 きっと拒絶されるだろうと思いながら聞いてみる。


「田中さんは大量殺人鬼なのですか?まあ、可能性はありますけど私が直接見たわけじゃないですし、なんとも言えないですね。でも、今までいっぱい人を殺しちゃったなら、その分だけ人を救えばいいんです。それで足りなければもっと大勢の人。そうすればきっと、自分を許せる時が来ると思いますよ。」


 まあ、私は未だに自分を許せないんですけどね。そう付け加えてサリーは歩いていく。


 思わず見惚れていた。俺が今まで考えた事もない考えだった。

 大量の人を殺してしまったのであれば、大量の人を救うために生きる。


「いつか、自分を許せる時が来るといいな。」


 自分に言い聞かせるような言葉に、そうですねと返してくれる。彼女はきっと良い人だ。彼女のような生き方をできる自信はないが、そういう生き方ができたらいいなと思わずにはいられなかった。




 多分、俺が見ていた夢は何かを示していたのだろう。

 サリーの生き方なのかもしれないし、他の事かもしれない。だが、他人を知る良い切っ掛けだと思った。


「あ、田中さん。明日からは働いてもらいますからね。村に入るなら村のために働きなさい!」


 気のせいだったかもしれない。

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