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徒然なるままに書き申したる短編集

世界の終わるそのときに

作者: 森の民

『例えばこの世界に終焉が訪れるとして

しかもそれが明日・・・いや今日、あと数分後だとして

君は何を望む?

君は何ができる?

僕はそれを叶えてあげられるだろう

だって僕は神様なんだから。』


忘れもしないあの言葉。

夢の中で出会ったアイツの言葉はきっと真実なんだろう。

アイツは確かに俺の願いを叶えてくれたのだから。


俺が世界の終わりに望んだこと。


『それはとても簡単でとても難しく。

誰にでも優しくて誰にでも厳しい。

曖昧だけど明確で。

誰もが望むけど誰にも思いつかない。』


そうアイツは表現した。

俺はそうは思わない。

誰にでも思いつく簡単なことだ。


俺は世界の終わる数分をループさせることを望んだ。


−−−−−−−−−−−−−−


「シュウ!良かった・・・最後にシュウに会えて・・・ホントに・・・」

「ユキ・・・」


俺はアイツに出会う少し前までユキという幼なじみと一緒にいた。

もちろん世界が終わると言う情報・・・というか確度の高い噂はすでに全世界の人間が知っているはずだ。

テレビやラジオ、新聞なんかの情報伝達網がなくても目視できるほど明らかなものだからだ。


世界の終わりの理由は簡単。

月が落ちてくる、いや落ちてきている。

専門家の話だと木星と火星の間の衛星が云々とか言ってたけど、理由はどうあれ月が落ちてきて地球が終わる。

ただそれだけの話だ。

月がぶつかっても地球は消えず星として生き残るとかなんとか言ってる奴もいたけど、

人間がというか俺らが絶滅する時点で地球が生き残るかとかどうでも良いと思う。


それよりも今はユキと一緒にいられることを俺は喜びたい。


「ユキ、これは最後なんかじゃない。」

「シュウ・・・でも月がもう近いって。」

「あぁ、月はもう後数分で落ちてくるだろうな。」

「・・・」

「でもそれは終わりじゃない」

「シュウ?」

「詳しいことを話してる時間はないんだ。でも・・・俺を信じてほしい。」

「シュウ・・・わかった、信じる。」

「ありがとう、ユキ。」


ユキの手を引いて俺はある場所へ向かう。

前回のあの場所・・・アイツのいる場所に。


「ユキ、これからある奴に会いに行く。」

「うん。」

「もしかしたら俺だけしか見えないかも知れないし、ユキにしか見えないかもしれない。」

「え?」

「俺にもユキにも見えるのが一番良いけど、最悪の場合は俺もユキもアイツに会えないかもしれない。」

「・・・」

「何を言ってるのか分からないと思うし、気が狂ったと思って貰っても構わない。だけど」

「大丈夫、私はシュウを信じるから。」

「・・・ありがとう。」


アイツがあそこにいる可能性は高い思う。

俺はその為にこの力を望んだのだから。

アイツに力の付与をさせる。

ユキや他の奴にも見えるようならアイツはきっとユキたちにも力を授けると思う。

そんな優しい奴じゃないかもしれないし、ほとんど俺の願望だけどな。


「シュウ、あとどれくらいかかりそう?もう時間が・・・」

「大丈夫、あともう少しだ。」


そう、あと1分もかからない。

アイツが現れる時間まではまだ数分残されてるし、世界の終わりまでさらにもう数分ある。

前回のとおりなら、俺が力を手に入れた時と同じならだが。


「・・・ユキ、ここだ。あと少しでアイツも来るはずだ。」

「ここは・・・?」

「俺の一番好きなで・・・一番嫌いな場所だ。」


ここは俺の爺ちゃんが教えてくれた場所だ。

そして俺から爺ちゃんをうばった場所だ。


−−−−−−−−−−−


俺がまだ小学生の頃、爺ちゃんがここによく連れてきてくれた。

あの頃は両親共働きで家に帰ると爺ちゃんしかいなかった。

婆ちゃんは俺が生まれる前に病気で死んだらしい。

爺ちゃんはそのせいもあってなのか、俺が風邪を引いたりするとつきっきりで看病してくれた。

「死なないでくれ。俺を一人にしないでくれ。」という呟きがよく聞こえてきたのを覚えている。

その頃の俺は爺ちゃんにそんなに大切にされてるのかと無邪気に喜び、爺ちゃんのことが大好きになっていた。

そんな爺ちゃんがよく連れてきてくれた場所が、この神社である。


入り組んだ裏道をひたすら突き進まないと見つけられないこの神社に誰が参拝に来てるのか不明だ。

そして爺ちゃんがなんでこんな場所を知っていたのかも分からない。

でも大好きな爺ちゃんがよく連れてきてくれる、それだけでこの場所が好きになった。

爺ちゃんとの思い出が一番濃く残ってるこの場所は今でも好きだ。


だがアイツに初めて出会った日、そして爺ちゃんがここで死んだその日。

俺はこの場所が大嫌いになった。


その日も俺は爺ちゃんに連れられてここに来た。

今日は何をして遊ぼうか、昨日はキャッチボールをしたから今日はあんまり激しい運動はしないほうがいいのかな?

そんなことを考えながら来た。

しかしその日はいつもとどこかが違った。

神社の見た目はいつも通りなのにどこか別の場所に来てしまったような、そんな違和感を覚えた。

その違和感に恐怖を覚え、思わず立ち止まった。

爺ちゃんは特に何も感じていなかったらしく、急に立ち止まる俺に心配そうな顔を向けた。

その瞬間だ。

爺ちゃんの背後にソレがいきなり現れた。


「爺ちゃん、後ろ!」


俺は叫んだ。

爺ちゃんは立ち止まっていた俺が急に叫んだことに驚きつつも、後ろを振り返った。

しかし、爺ちゃんにはソレが見えないらしく「なにもいないよ、どうしたんだいシュウ?」と再びこちらを向く。

それが俺の方を向いた。

俺に狙いを定めたのかと思い、息をのんだ。

ソレが嗤った。

その嗤いを見た瞬間にゾッとした。

ソレはその顔のまま爺ちゃんの方を向くと爺ちゃんの体に手を入れ、まるで電池を取り出すかのように爺ちゃんから"ナニカ"を抜き取った。

その後ふたたび俺の方を向いて異様に高い声で笑ったあとに消えていった。

爺ちゃんから奪ったであろう”ナニカ”は俺には見えなかったが、ソレの手の形を見る限りでは掴んだままだった。


「爺ちゃん、大丈夫!?」

「シュウ、どうしたんだい?」

「今変な奴が爺ちゃんの後ろにて俺の方を見て笑って、それで爺ちゃんから何かを取ってったんだ。」

「・・・」

「じぃ・・・ちゃん」

「シュウ、爺ちゃんはシュウが狙われなくて良かったと思ってるよ。」

「どう、いうこと?」

「それはね・・・たぶん神様だよ。」

「そんなわけない!あんな奴が神様なわけ」

「シュウ、その神様はきっと爺ちゃんを迎えに来たんだよ。お前もこっちにこいって。」

「そんな・・・やだよ爺ちゃん!」

「シュウ、大丈夫。爺ちゃんはちゃんとシュウのことを見守るから。さぁ今日は帰ろう。」

「爺ちゃん・・・。」


爺ちゃんに手を引かれて俺はおとなしく家に帰った。

その時俺の手を握る爺ちゃんの手は僅かに、けれど確実に震えていた。

爺ちゃんが上を向いていたので顔は見れなかったが、家に着いた時に見た爺ちゃんの顔は寂しそうに見えた。


そして・・・

その晩、夕食を終えて寝床に入った爺ちゃんはそのまま息をひきとった。


そうとは知らず自分の布団に潜った俺は、神社に現れた奴の姿を思い出して震えながらもなぜかすぐに寝付いた。

そこで、夢の中で俺はアイツに出会った。

そのときは神社の奴の仲間なのか、俺を殺しに来たのかという焦りにも似た恐怖を抱きつつも、爺ちゃんの仇としての憎しみの感情を向けた。

アイツはそんなことは一切気にせず、「世界の終わりにお前は何を望むか」と例の言葉を言って消えていった。

当初は何を言ってるのか分からず気にしていなかったが、不思議とアイツの言葉が頭から離れなかった。


翌朝、爺ちゃんがなかなか起きてこないので俺が爺ちゃんを起こしに行った。

俺が泣き出したことで両親が駆けつけ、起きる気配のない爺ちゃんを目にして両親も涙した。


それから数年、世界の終わる当日まで俺はこの神社を訪れなかった。

そして、爺ちゃんとの思い出を掘り起こす為に出向いたところでアイツに出会った。

アイツは言った「やぁ、君の願いは決まったかい?」と。


−−−−−−−−−−−


時間になった。

案の定、アイツはここに現れた。

でもアイツはユキには見えなかった。


「やぁ、君の願いは・・・」

「どうした?」


言葉に詰まったアイツに俺は問いかける。

ユキは俺が何かと話しているのだろうと察し、黙って見守ってくれている。


「詳しくは分からないけど、君の願いはもう叶えられてるみたいだね?」

「・・・」

「うーん・・・可能性としてはタイムリープとかかな?」

「能力はわからないのか?」

「僕が何かしらの力を与えたっていう残滓は感じ取れるけど、それ以上は分からないんだよね。」

「俺の代わりに誰かに力を与えるのはできないのか?」

「できなくはないよ。」

「だったら」

「でも、その人の”大切な人物の命と引き換えにして”だけどね。」

「!?」

「君の場合はお爺さんだったね。」

「お前・・・なのか?」

「ん、なにがだい?」

「俺の爺ちゃんを殺したのはお前なのかって聞いてるんだ!」

「当たりともはずれとも言えるね。」

「どういうことだ?」

「僕の力を授ける代償・・・生け贄に君のお爺さんがたまたま選ばれた。そのときにすぐ側にいた君はその回収作業の現場に居合わせてしまい、偶然にもソレをみてしまった。しかも幸か不幸かそれは君の大切な人だった。だから僕は君に力をあげることにしたんだ。おまけというかサービスに近いかな。」

「・・・つまり、お前のせいなんだな?」

「そうだね。殺したか?と聞かれれば直接手を下した訳じゃないから頷けないけど、僕のせいかと聞かれたら頷くしかないね。」

「お前・・・!」

「でも恨まれるいわれはないよ?」

「はぁ!?」

「だってそうだろう?対価に対してちゃんと君の望む物を与えたんだから。」

「じゃあ、この力を返したら爺ちゃんは生き返らせてくれるのか?」

「それは無理だね。さっきも言ったけど君への力はあくまでもおまけで、君のお爺さんを対価にした力は別の人が持ってるんだから。」

「くっ・・・」

「満足したかい?」

「じゃ、じゃあ別の力に変えることはできないのか?」

「それも無理。だって一度力を使ってしまったんだろう?」

「だからって!」

「使用済みの商品が買ったときの値段のまま返品できる訳ないだろう?」

「それは・・・でも」

「そうだな・・・どうしてもって言うなら対価を支払ってもらおうか。」

「!?」

「君の隣にいる子で良いよ。大切な幼なじみなんだよね?」

「それはやめてくれ・・・ユキだけは・・・。」

「じゃあこれで話はおしまいだね。あ、もうそろそろ世界が終わるみたいだね。」

「・・・ちくしょう。」


アイツはその言葉を最後に消えて行った。

地面に膝をついて意気消沈する俺の頭を誰かが前から優しく抱く。

アイツと俺以外にこの場にいるのは彼女しかいない。

彼女は俺の後ろ頭を撫でつつ言った。


「大丈夫、シュウならできる。」

「・・・」

「相手の人が誰なのか分からないけど、私も関係あるんだよね?」

「ち、ちが」

「だって、お爺さんをーとかユキだけはーとか言ってるんだもん。それくらい分かるよ。」

「ユキ・・・」

「何があったのかとか話してくれる?」

「・・・ごめん、時間が足りない。」

「そっかぁ、残念。」

「・・・なぁ、ユキ。」

「ん?」

「もし大切な人を犠牲にして望む力が手に入るとしたら、ユキならどうする?」

「んー・・・お金、とか?」

「・・・」

「ごめんごめん、そうだなー・・・シュンを犠牲にしてまで欲しい物なんてないよ。」

「茶化すなよ。」

「真面目だよ。」

「・・・そ、そうか。あの、その・・・ありがとう?」

「プ・・・なにそれ。」

「恥ずかしいんだよ。・・・もし力が手に入るのが世界が終わる時、つまり俺もユキも家族も友達も皆あと少しで死ぬとしてもか?」

「なるほどね、さっきのはそういうことだったんだ。」

「あぁ。」

「そのときは、何度でも願いを叶えられる力とかかな。ありきたりだけど。」

「・・・ありがと、ダメ元で聞いてみるわ。」

「うん、頑張ってね。」

「・・・ところでユキさん?」

「なにかね、シュンさん?」

「そろそろ頭を離していただけるとありがたいのですが。」

「もうちょっと待ってね。」


30秒ほど強く抱きしめたあとユキは俺の頭を離してくれた。


「ありがとう。」

「こっちこそ、ありがとう。ユキのおかげでなんと頑張れそう。」

「頼りにしてるよ?」

「お、おう。」


情けない返事をしながら2度目のループに挑みに行った。


−−−−−−−−−−−−−−


前回同様にユキをあの神社まで連れてきた。

今回はアイツが来る前にユキに話したい、いや話さなきゃ行けないことがある。


「ユキ、黙ってついてきてくれてありがとう。」

「うん。」

「それから・・・さきに謝っとく。ごめん。」

「どういうこと?」

「詳しいことを話してる時間はない。でも絶対にユキのことは守るから。」

「・・・わかった、後でちゃんと説明してね?」

「あぁ、約束する。」


話が終わったちょうどのタイミングでアイツが現れる。

きっと最初から見てたんだろう。


「やぁ、君の願いは・・・」

「もう叶ってる、だろ?」

「うん、驚いたな。君の能力は」

「タイムリープみたいな物って思ったんだろ?」

「・・・」

「お前と取引がしたい。」

「へぇ、そんなことまで知ってるのか。なるほどね。」

「対価の話も聞いてる。」

「そう、じゃあ始めようか。」

「その前に一つ聞きたいことがある。」

「なんだい?」

「俺の望む力なら何でも手に入るんだよな?」

「あぁ、君の望む力ならなんでもね。」

「じゃあ、俺の望むことを何度でも叶える力っていうのも手に入るのか?」

「何度でも叶えられるようにすると一回あたりの願い事はすごく小さくなるよ。」

「じゃあ回数制限をつけたらどうなる?」

「反比例的に変化する・・・っていっても母数が分からないか。」

「人を蘇らせるっていうのは何回まで分割できるんだ?」

「一回につき1人っていうならこの国の人口と同じ回数くらいは期待して良いよ。逆もまた然りだね。」

「じゃあ、今来てる月を元の場所に戻すってなると何回までだ?」

「3・・・いや2回かな。」

「じゃあ、2回でいい。」

「・・・一応言っておくけど、代償として差し出した人間を蘇らせることはできないよ?」

「!?ど、どうして?」

「君も見てるはずだけどな・・・。あれは普通の死じゃないから、と言えば良いかな?」

「あの爺ちゃんを殺した奴に関係あるのか?」

「そうそう、アレで回収したモノはその人間の情報そのものでさ。それを文字通り”代償”にして力を与えてるから生き返らせるのは無理なんだよね。」

「つまり、対価として差し出した人間を生き返らせるにはそいつの蘇生だけを望まないといけないってことか?」

「正解。」

「・・・」

「で、どうするの?」

「時間をくれ。」

「時間って・・・月はあと数分で落ちてく・・・あぁそうか、ループすれば時間なんていくらでもあるのか。じゃあゆっくり考えると良いよ。」


くそ、なにが『君が望む力ならなんでも』だよ。

対価にした人間1人とそれ以外の全員のどっちを救うかみたいなところも馬鹿みたいだな。

世界を敵に回しても愛することができるか、ってか?


「なかなか面白い例えをするね。世界を敵に回して恋人をとるか、世界を味方に付けて恋人を見捨てるか。」

「・・・人の心読んでんじゃねぇよ。」

「ごめんごめん、面白そうな顔してたからついね。」

「馬鹿にしてんのか?」

「面白そうなことを考えてる顔って言い直した方が良いかな?」

「それでも勝手に人の心ん中覗いたのは許せねぇけどな。」

「おぉ怖い怖い。で、今回はこれで終わりで良いんだよね?」

「あぁ、今は何にもおもいつかねぇ。」

「そう、じゃあ次の僕によろしくね。」


そういってアイツは消えて行った。


「恋人か世界か、か。」

「私だったら両方かな。」

「・・・両方はないんだよ。」

「それでも私は両方だよ。」

「・・・」

「二人っきりじゃ世界は広すぎるし、好きな人がいなくなちゃ悲しいでしょ?だから両方。」

「そんな選択肢があれば良かったんだけどな。」

「ないなら作れば良いんだよ。」

「作るって、どうやって?」

「選択肢を作れるような人と同じ立場になればいいんだよ。」

「それで?」

「選択肢を作れるってことは新しい選択肢、いわば第三の選択肢って奴を作れるってことでしょ?それを勝手に作って選んじゃえばいいんだよ!」

「・・・ユキってとんでもないこと思いつくよな。」

「まぁね!」

「そんじゃあ、神様とやらになってみるか。」

「え!?なんでそうなるの?」

「いや、なんでって。選択肢を作ってるのが神様だからだろ。」

「・・・神様になってもシュンはシュンなんだよね?」

「たぶんな。」

「そう、ならいいや。」

「わけわからん。」

「シュンが変わらないならそれで良いってことだよ。」


そこまで聞いたところで次のループに移ることになった。

次で終わらせてやる。


−−−−−−−−−−−−−−


今回はユキを置いて行くことにした。

下手をしたらアイツと戦うことになるかもしれない。

ユキを巻き込むわけにはいかない。

ついて行くと言って聞かないユキをなんとか説得して、1人で神社に向かう。

大分時間をくってしまったので全速力で。


神社につくと、アイツは既にいた。


「待たせたな。」

「やぁ、君の」

「願いはもう叶ってる。俺はお前と取引しにきた。」

「対価の話も聞いてるね?」

「あぁ。」

「じゃあ君の望む力を聞かせてくれ。」

「俺は神になりたい。」

「・・・・」

「・・・・」

「中n」

「ちがう、真面目な話だ。俺に神の力をよこせ。」

「神に神の力をよこせとは、面白いことを言うね。」

「面白いかどうかなんてどうでも良い。さっさとよこせ。」

「できなくはないけど、君はもう人間には戻れないよ?」

「それでも良い。」

「OK。じゃあ契約を始めようか。」


−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−

−−−−−


こうして俺は神になった。

そのときに人間から俺に関する記憶、記録は消えてしまった。


「やぁシュン君、神様になった気分はどうだい?」

「別にどうもこうもねぇよ。」

「そう。」

「それで、なんの用だ?」

「先輩として様子を見にきただけだよ。」

「嘘つくな。」

「・・・そろそろホームシックになってる頃かなって思ってね。」

「未練がないわけじゃない。」

「人に戻りたい?」

「戻れるのか?」

「無理じゃないけど・・・」

「けど?」

「元の”シュン”としては無理だよ。生まれ変わりって形になる。」

「じゃあやめとく。」

「そう。」

「・・・まだなにか用か?」

「いいや、もう用事はないよ。気が変わったら気軽に声かけてよ。君のことは責任を持って生まれ変わらせてあげるからさ。」


そういってアイツは消えて行った。

未だに名前を知らないが別に知りたいとも思わない。

俺が変わらずユキのことを好きでいて、こうしてユキのことを見守れる。

それだけで俺は満足だ。

今度ユキの夢に出て行って聞いてやろうかな?

『もし俺が君の願いをなんでも叶えると言ったら、君は何を望む?』と。

そして最後はこう締めくくる。


『だって俺は−−−』

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