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やりこみゲーマーの異世界生産職冒険譚  作者: スコッティ
第一章 パーティ結成編
8/37

装備を求めて三千里 坑道のリュウ

「さすがに薄暗いな。外はまだ昼だというのに」


 俺は辺りの見回しそう呟いた。

 『モリア坑道』…それが今俺達がいる場所だ。

 イアンの街から徒歩で3日程とそう遠く離れてはいない、良質な鉱物が発掘されると言われている。

 

「奥に行けば行くほど暗くなるうえ、危険な魔獣も現れるそうだ。良質な鉱物は奥のほうがよく取れるそうだけど、いきなり成果を期待するのはやめたほうがいいね」


 良質な鉱物。

 俺達はそれを求めてこの場所にやってきている。

 アイラの刀もそうだが、俺の装備のためにも良質な素材は確保しておきたい。

 街で買ってもいいのだが、街の武具屋には量産物が多く、性能が良い物もあったがそういう品は軒並み高価であった。

 俺はもちろんだが、アイラも決して裕福なわけではなく、むしろ極貧といっていい財布状況で、二人が狩った魔物のドロップアイテムを換金した所で到底手が出るものではなかった。

 この世界では武器や防具は質の悪いものや、良い材料を使っていない武器防具でも結構な高級品である。

 鍛冶屋も存在するが、俺みたいにスキルでパッと造れるモノでもなく、数日かけて一品を作り出す。

 それを武具屋が買い取り販売するのだ。

 人にはそれぞれ体型や体質があり、そういった量産モノはあくまで平均をなぞったモノであり、質が低い上にピッタリと合うサイズはそうそう巡り会えない。

 実際鑑定眼で鑑定してみるとマイナス装備のオンパレードだった。

 RPGではサイズなんて項目は無かったため、現実とゲームの差を思い知らされる結果となった。

 そういうわけでじゃあ自分で造ろうという話になるのは当然の帰結だったわけだ。

 

「いきなり奥に踏み込むのは厳しいか…当分は野宿生活だなぁ」


 俺が嫌そうに言うと、

 

「……白々しい事を。ひと目を気にする必要がないと毎日野草を摘んでは調合を繰り返してニヤニヤしているのはどこのどいつだ?」


 ジトリ、とした横目で俺を見る。

 口角をあげながらからかうようにアイラがそう言った。

 

「いやぁ、まあなんだ。思った以上にコレがまた楽しくてな、スマン」


 俺が採取にかまけたせいで進行速度が遅くなった事もあり、多少バツが悪いのも有り、素直に頭を下げる。

 そんな俺をアイラは肩をすくめてみせた。


 調合。

 コレがまた予想以上に楽しかった。

 錬成もそうだが調合も異なる物を組み合わせて新しいものを造るというスキルなのだが、もともとコレクターというか収集癖のある俺は、実際のゲームでもこういった作業が好きだった。

 コレとコレを合わせるとどうなるのか?

 成功していいものが作れると感動すら覚える。

 例えば『薬草』と『薬草』を組み合わせて調合すると『良薬草』なる。

 効果は鑑定眼を使っても、

 

 『良薬草』

 ・効果の高い薬草。

  

 と、表示されるだけでどれくらい効果があるのかはっきりしない。

 鑑定眼も見たい情報全てを閲覧できるというわけではないようだ。

 アイラに言わせると、「確かに薬草より効いてる感じがするな」らしい。

 

 こういった成功例があれば失敗例ももちろんあった。

 調合は幾つもの素材を使えるため、『薬草』×『薬草』×『薬草』で調合してみたら突如爆発して灰になってしまった。

 いわゆる失敗だろう。

 爆発するだけならまだいいが、どうやらHPとMPが減るペナルティがあるらしいのだ。

 失敗によるHP減少はまだいいんだが、MP減少が痛かった。

 HPは痛みによる不調で薬草を食えばいいのだが、MPは精神的にくるのだ。

 元々が少ないうえ半分になれば頭がふらふらし始める。

 1/4にもなれば熱に浮かされたように目の前が揺れ、0になれば即意識が落ちる。

 どうやらMP切れで死にはしないらしいが、あの経験はそう味わいたくないものだ。

 アイラにも目が覚めたらお説教を受け、進行速度をさらに遅らせる結果にもなって迷惑をかけたし。

 もしかしての仮説ではあるが、HPも0になれば意識を失うだけで死にはしないんじゃないだろうか。

 怖くて試せはしないけど。

 

 まあ、そんなこんなで色々採取&調合できてためした結果、

 

『良薬草』(薬草×薬草)

 ・効果の高い薬草

『解毒丸』(薬草×イチョウの葉)

 ・毒を治す丸薬

『覚醒丸』(イチョウの葉×香草)

 ・眠りから覚ます丸薬

『ポーション』(薬草×薬草×澄んだ水)

 ・傷口にかければ止血作用と傷の治りが早くなる

  HP回復効果はない


 とこれだけの収穫があった。

 もちろんちゃんと調合表を作り、どれとどれが組み合わせられてどんな効果があるなど、組み合わせてはいけないモノも記録している。

 まだまだ調合してみたい材料やパターンなどもあるので時間があればどんどん増やしていきたいところだ。

 ちなみにそれらの成果物や材料は、坑道の探索に必要ない分はアイラが持っていた旅荷物を纏めて入れてある冒険者御用達の巨大な大容量バックパックに。

 必要な分は探索用の軽量サックや腰に吊るした小袋に入れて携帯している。

 

 装備はともかく薬品は結構充実しており、これからの長丁場には何とか耐えられそうだ。

 

 

 

 

 坑道に入って数分、気をつけながら奥に進んでいくと、

 

「! アイラ、ちょっとそこでストップ」


「? なんだ?」


 俺は弓を使うので後方、アイラは剣の接近戦なため前衛を任せるという隊列をとっている。

 アイラは俺の方を向き直り怪訝そうな顔を見せるが、俺は前方上を指差し、

 

「あそこに敵が3匹いるぞ」


「なに、本当か?」

 

『コウモリバット』

 LV5 

 40/40

 0/0

 

 姿は見えないが天井付近に3つポップが表示されているおり、どうやら敵が潜んでいるようだ。

 まあHPやLVにそれぞれ多少の違いはあるようだが、3匹いるらしい。

 便利だとは思っていたが、索敵にも使えるんだな。

 意外なスキルの使い方である。

 

「どうする? LV5だからそれ程強い魔物ではないけど」


「LV5か……。今までの経験から3匹いても苦戦はなさそうだ。弓を打ち込んで場所を特定させてくれ。後は私が切り込むからバックアップを頼む」


「了解だ」


 俺はその言葉を聞き、弓でポップの辺りを狙い矢を放つ。

 

―――カアン!


「ぎ、ギギィ!?」


 直接あたりはしなかったがまさか先制攻撃されるとは思っていなかったらしく、その場を慌てて飛んで混乱を起こすコウモリバット(なんで意味が重複しているのかは知らないが)。

 その隙をアイラが見逃すわけがなく、

 

「そこかっ!」


 風のように駆け、勢いそのままに飛翔する。

 そして剣を一閃し返す刀でもう一閃。

 二つの淡い光とともに魔物が同時に消滅していく。

 

「ちっ……」


 さすがに3匹同時には仕留め切れなかったようだ。

 いやいやこの薄暗い中で十分な成果だろう。

 

「今度はあたってくれよ」


 矢をつがえ、放つ。

 

――カアン!

 

 くそ、また外れた。

 的が小さい上に今度はチョロチョロと宙に羽ばたいてるからな。

 当てにくいったらない。

 

「ハァ!」


 だがアイラは俺の射撃でおおよその位置は掴んだのか、剣を振り魔物を一撃で葬った。

 残心で他に敵がいないか警戒しているが、

 

「大丈夫だアイラ、もう近くにはいない」


「……そうか」


 そう言って刀を鞘に収め、一つ息を吐いた。

 

「結局3匹全部アイラが倒しちまったなぁ」


 矢が当たらなかった俺は少し不満だ。


「お前がいたから敵の位置がわかったんだ、十分すぎるさ。パーティーは役割分担が重要なんだ。本来はシーカーや前衛は探索の役割をするものだが、お前のそのスキルとやらは正直反則的だな。気配を消して身を隠そうと察知されてしまうのだから」


 私の常識が崩壊していくぞ、とアイラが唇をとがらせる。

 まあ確かに反則的だというのは自他ともに認めるところだ。

 

「そう言われてもな、俺としてはなんとも答えようが……ん?」


 坑道の壁をよく見ると、何か不思議な感覚が頭によぎる。

 コレは早くも見つけられたか?

 

 俺はその壁に手を触れながら鑑定眼を働かせる。

 

 『鉄鉱石』

 ・鉄の原料となる鉱石

 

「鉄鉱石だな。意外に近くにあるもんだ。まあ品質は普通みたいだが」


「むう、私にはよくわからんな。どこも同じような唯の岩盤に見えるぞ」


 俺が手を触れている辺りを後ろから覗きこみ不満気にそう口にする。


「まあ一応そういうスキルみたいだしな。しかしこう岩盤に埋まってるんじゃ手では取り出せないな。こんなこともあろうかと」


 俺は腰に差していたツルハシを持ち、見よう見まねではあるが掘り返してみる。

 気分はあの有名なモンスターをハントするゲームのようだ。

 そして周りを削っていくと、ゴロリと地面に塊が落ちる。

 握り拳より大きめの鉄鉱石だ。

 

「案外小さいな…しかも原石だから装備に加工するんなら足りないかもな」


「まあ見つけられただけでも僥倖なんだ。もう少し探してみよう。違う鉱石も見つけられるかもしれん」


「……だな」


 俺はその鉄鉱石をサックに入れて、アイラとともに坑道の奥へさらに進むことにした。

 

 


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